プルラリズム
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 僕は、御崎という名前だ。時間の先を見ることが出来た。僕は、公的な機関に所属していて見通せる未来を機関に報告することが仕事だ。だが、未来を具体的に明示し実行すると未来は大きく変わる。だから僕は出来る限り未来に変化の起きない程度にしか予言が出来なかった。例えば、競馬の当たり馬券を見てきて買う、こういった特に自分自身に関わることは絶対に適わなかった。2020年の菊花賞で三冠馬が生まれなかったのは僕のせいといっても過言ではないがその事は僕しか知らない。未来を見るのは未来に行ってそこで見てくることだった。それは夢の中で見てきたものだ。比喩的に言えば長い道があってそれが時間の軸だった。そして僕は過去や未来を見渡してきた。過大な影響を与えればその未来は消え去り、影響を与えない程度の予知で変えられるものは少ない。地震予知を見事に外したことには重大なお叱りを受けたが、自分としては満足している。そして僕は、ある時見つけたんだ。時間の道の中に梯子のようなものがあるとこを、あくまで時間軸移動は僕の主観によって生まれているアレをなんと呼んでいいのかは分からないが、僕にはそうとしか喩えようがなかった。2024年8月10日から梯子が出来ていた。その梯子は、別の道に通じていてまるで違う階層のようだった。便宜上その世界をB世界と呼ぶとして、その梯子の先のB世界と僕がはじめからいたA世界はほとんど変わらないものだった。そして、その梯子はまるで世界の中心にあるかのように存在していました。その世界の中心がまるで貴方であるかのようにですよ近江咲世さん。

 いきなり、目の前でそんなこと言われても困ると至極当然のことを咲世は考えていた。

 とは言え、自覚はあった。だから自分の中で相手の言うことを簡単には否定が出来なかった。例えば、今までの経験がなかったら相手が未来がわかるなんて言うのも信じることはにわかには不可能だろう。しかしながら、相手の言うことが事実なのだから仕方ない。

 「確かに私は時間移動を行ってきました」

 「いえ、貴方は時間移動者ではありません」

 私は時間の流れを行き来して、過去現在未来だけでなく異なる時間軸を見ることも出来ますが。それは、異なる時間軸を作る人間がいて初めて可能なのです。咲世さん貴方は、自分が時間移動だと思ってる行動の後の世界がどうなったかという想像を行ったことがありますか?A世界のあなたは失恋の翌日に行方不明、貴方の両親はじめとする家族は必死に探し回り、衛さんは貴方への返答を出来なかったことを晩年まで悔いたといいます。そうそう、ワイドショーでは結構な話題なんですよ。さて、今いるのが便宜上のC世界です。A世界の私、つまり今はなしている私ですが、間もなく死ぬ運命です。おそらくタイムパラドックスを恐れて現れないBおよびC世界の私がそのうち来ると思います。貴方は、時間を移動していると思っていますが、実際は起点となる時間から始まる新しい世界を作っているのですよ。世界という花を咲かせるとは、名前にピッタリですね。私の御崎という名前と同じですね。そろそろ時間です。特に、どうという忠告に来たわけではありません。貴方がおそらく自分の力を自覚していないと思っての助言ですよ。今後の参考にして下されば幸いです。それでは、御機嫌よう。

 咲世は、おかしな夢を見た。はっきり思い出せる不気味な夢だ。とはいえ、そちらにかまっている訳にもいかない。今度こそは、奇病の薬を開発するのだ。機材や人材、時間はまだある今度こそ絶対に間に合わせるんだ。と咲世は誓った。

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