ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー STORY5 準備 |
STORYX 準備
キリト視点
翌日、俺はカーテンの隙間から入り込んでくる朝日によって目を覚ました。
ゆっくりと瞼を開けると、見覚えのない天井が視界に入り、次いで背中の柔らかい感覚に気付く。
キリト「なんで俺、こんなところで寝てるんだ?」
思わず口から出た呟きに、隣から答えが返ってきた。
?「お前が食後すぐに眠ったから、俺が運んだんだ」
キリト「っ・・・!?」
突然の声に驚いた俺は、がばっと体を起こして視線を横に向ける。
そこにいたのは、解除したはずの赤いコートを纏い、長い両手剣を背負ったデュオだった。
デュオ「よう。よく眠れたか?」
視線だけでこちらを見てから、視線を戻しウインドウ操作を再開する。
キリト「あれからずっと起きてたのか?」
デュオ「まさか。俺だって人間なんだから、睡眠は摂るさ」
デュオはウインドウ画面を閉じて立ち上がると、机に置いてあったマップを手に取った。
デュオ「それより、これを見ろ。」
俺がマップを受け取ると、デュオは指でマップの一部をなぞる。
そこには並行して並ぶ2本の線の間に、垂直な線が何本の書かれている。
キリト「線路・・・!?」
デュオ「ああ。そして、その先には・・・」
デュオは、マップの線路上に指を滑らせていくとある1ヶ所で止まる。
そこに表示されていたのは、((station|ステーション))、つまり【駅】の文字だ。
キリト「((station|ステーション))ってことは列車があるのか?」
デュオ「3分前に走って確認してきたが、ちゃんと運行してるし、切符さえ買えば乗ることも出来る」
キリト「なら・・・!」
俺は、ばねに弾かれるようにしてベッドから飛び起き、急いでウインドウを操作する。
デュオ「残念ながら、まだアスナたちを探しに行くわけにはいかない」
キリト「なっ・・・!?」
予想外の一言に操作を間違い、装備しようとしたロングソードをドロップさせてしまい、俺の背中に吊るされるはずだった長剣は、石畳の床に落下して金属音を響かせた。
しかし、そんなことは気にも留めず俺は、デュオに食って掛かる。
キリト「どうして!?」
デュオ「列車の切符は2種類あった。1つは今までに行ったことのある街を選択してそこへ向かうもの。もう1つは列車自体がランダムに行き先を決めるものだ」
デュオはマップを仕舞い、もう一度椅子に腰を下ろす。
デュオ「ゲームが始まったばかりで、ここ以外の街を知らない。つまり、乗るなら後者しかない。だが、行き先がランダムに指定される以上、闇雲に突っ込んでもどうにもならない。むしろ返り討ちにされて終わりだ」
久しく見たデュオの真剣な眼差しは、俺の思考を一気に冷やす。
冷静になって考えてみても、その意見は正しいと思う。
前回のデスゲーム、SAOにおいて、初日から迷わずフィールドに出られたのは、ベータテストの経験から得られた多くの情報があったからだ。
だが、今は状況が違い過ぎる。
自分たちのいる場所がどこなのかも、どこに行けば武器が手に入るかも、もっと言えばゲームクリアの方法もわからない。
そんな状態で突っ込めば、アスナたちのもとに辿り着く前にゲームオーバーになってしまうだろう。
そこまで思考を巡らせた俺は、再びベッドに腰を下ろして視線を下げる。
キリト「ごめん・・・」
デュオ「本当に、お前はアスナのことになると、歯止めが効かなくなるな」
その呟きに続いて、デュオが立ち上がる気配がした。
デュオ「よし、狩りに出ることにしようぜ」
キリト「えっ・・・!?」
あまりに唐突な一言。
俺は頭を上げ、見開いた目でデュオを見つめる。
デュオ「どのみち、このままじゃ埒が明かない。取り敢えずフィールドに出て、((資金|ルート))調達ついでに感覚を取り戻しに行こう。その方が気も紛れるだろ?」
キリト「あ、あぁ・・・」
デュオはいつも通り調子に戻ると、床に落ちたロングソードを拾い上げた。
相棒の対応に戸惑いながらも、俺は彼の差し出す剣を受け取る。
手が離れ、渡された剣の重みによろめきそうになって慌てて持ち直す。
その様子を見たデュオは、片頬に笑みを浮かべた。
デュオ「行くぞ」
それだけ言うと、部屋を出てて行く。
キリト「ま、待てよ・・・!」
急いで剣を背負い、ロングコートを装備してデュオを追いかける。
振り返らずに歩いていくデュオの背中は、何よりも頼もしく、そしてどこか遠く見えた。
街を出て、しばらく北に行った先にある森で狩りをすることになった。
ここはモンスターのリポップ率が非常に高く、さらに何時間続けても変化がない。
しかも、ドロップする((通貨|ルート))はそこそこ高いので、狩りの相手としては最適だ。
俺たちは、到着から日没まで無限に湧き出す熊や巨大な昆虫と戦い続けた。
今までと違い、ダメージを受けるとその部分に痛みを伴うので、俺は防御と回避を最優先に考えるやや苦手な戦闘になったが、デュオは痛みなど感じていないかのように、SAOと変わらぬ戦い方をしていた。
狩りを終え回復を済ませた後の帰り道、俺たちはウインドウと睨めっこしながら、街までの道を歩き続ける。
10時間以上に及ぶ長い戦闘で、すでに足はフラフラだが、気力を振り絞って足を動かす。
デュオ「かなり戦ったけど、やっぱりレベルアップとかは無いみたいだな」
キリト「らしいな。だとすると強化方法は別にあるわけか・・・」
デュオの意見に、俺も賛同する。
再度ウインドウ画面を操作して確認してみたが、やはりレベルはなく、HPなども変化していない。
だが・・・
デュオ「((金|ルート))は凄い貯まってるけどな」
キリト「あれだけ倒せばな〜・・・」
自分たちが今まで死に物狂いで戦っていた状況を思い出し、背中に嫌な汗が滲む。
だが、その分収穫も大きく、すでに所持金は20万を超えている。
これだけあれば、新品の装備一式を揃えてもお釣りが来るだろう。
デュオ「疲れたし、とりあえず宿屋に戻ろう。」
キリト「そうするか・・・」
俺たちは街に戻ることにした。
帰り道、突然デュオが背中の鞘から剣を抜いた。
デュオ「なぁ、キリト・・・」
キリト「何だ?」
デュオ「そろそろ武器を新調したいと思うんだが・・・」
そう言って見せてきたデュオの両手剣は、至る所に刃毀れや亀裂があり、いつ折れてもおかしくはない状態になっている。
気になって自分の剣も確認すると、こちらも似たようなものだ。
さらに防具やコートも破れたり、擦り切れたりしていてボロボロ。
耐久値が表示出来ないので詳しいことはわからないが、もう限界が近いのは明らかだ。
キリト「そうだな。さすがにこの剣じゃ、これ以上はきつそうだ」
デュオ「よし!じゃあ街に着いたら、装備を買い替えるか」
キリト「そうだな」
俺たちは、若干歩調を速めると街を目指した。
街に着くと、早速武具屋に向かい、店主に声をかける。
店主「いらっしゃい!何をお探しで?今日はいい掘り出し物が入ってますよ!」
勢いのある話し方をする若い男性は、NPCとは思えないほど人間らしく感じられ、NPCの持つ違和感が全くない。
デュオ「掘り出し物?」
不意にデュオが訊くと、店番はパチンと手を叩いて説明する。
店主「そう!本日限りの特別商品!その日によって品質は変わるが、今日はなかなかの業物もありますよ!」
店主がそう言うと、カウンターテーブルの上にウインドウが出現した。
縦に並んだ4つの項目は、上から順に《買う》、《売る》、《掘り出し物》、《修理》となっている。
俺たちは、掘り出し物の項目をタップして商品を見た。
そこに並んでいたアイテムは、どれも最初に買ったコートよりも遥かに高い。
だが、同時に性能もかなり高く、少なくとも今まで倍以上の攻撃力と防御力を備えている。
回復アイテムは昨日の内に沢山買い込んでいてそれほど必要ではなく、所持金に余裕があったので、迷わず売っている最高レベルの装備を選んだ。
俺が買ったのは、【コート・ザ・シャドー】、【エボニー・インナー】、【サイレント・ハイド】【インペリアル・エッジ】というどれも黒を基調とした防御と隠蔽を両立する防具。
それに対してデュオが買ったのは【ジャッジメント・コート】、【ペトリア・シャツ】、【スピアリア・ブレード】、そして普段はあまり見ることの無い銃火器【ヴァリスタ】だ。
その他に、2人揃って【バリアパンツ】と【パワーグローブ】を購入する。
性能重視で選んだのだが、どういうわけかいつも通りの格好になってしまい、店を出る前に顔を見合わせて苦笑した。
宿屋に戻った俺たちは、バスルームでシャワーを浴びた後、部屋に戻る。
コートを解除してストレージに戻してから、それぞれのベッドに潜り込んだ。
アンチクリミナルコードがないことを聞いていたので、剣は鞘に納めたまま片手で握っている。
キリト「【掘り出し物システム】って便利だな」
寝転んだまま、俺は隣のベッドに横たわる相棒に話しかけた。
デュオ「あぁ。これで、しばらくは装備を気にしなくて済みそうだ」
彼は満足げな声で俺の意見に同意すると、穏やかな声で言ってくる。
デュオ「明日はみんなを探しに行くんだ。今はゆっくり眠っておけ」
キリト「ああ、そうだな」
今度は、俺が相棒の意見に賛同して目を閉じると、みんなのことを思い出す。
そして、みんなで笑っている姿を思い浮かべた。
キリト〈大丈夫だ。みんなSAOを生き抜いたんだ。今度もきっとみんなで帰れる〉
そう思った後、長い戦闘での疲れもあって深い眠りに陥った。
掘り出し物システム
NPCショップ限定のシステムで、店主に話しかけるとカウンターテーブルに出現する購入ウインドウを開き、その項目から掘り出し物を選ぶと表示される。
5個〜10個のアイテムが、1日ごとに商品が入れ替わる。
初期レベルの装備からショップ購入可能な中で最上位クラスの装備までがランダムに出現する。
プレイヤーの所持金やゲームの進行度とは全く関係がないので、初期から強力装備を入手することも出来る。
だが、逆に強力な装備が販売していても所持金に余裕がない場合はその日の間に((通貨|ルート))を集めなければならず、ほとんどの断念するしかなくなってしまう。
アイテム説明
【インペリアル・エッジ】
黒みがかった鋼色の刃を持つ両刃のロングソード。
片手剣にしてはかなりの重量があり、無理に振ろうとすれば自分が振り回されかねないが、その分、威力、強度ともにかなり高い。
【コート・ザ・シャドー】
黒一色の革素材で作られたロングコート。
特殊なモンスターの革で出来ていて、高い防御力とハイディングボーナスを得られる。
【エボニー・インナー】
見た目は普通のものと大差ない、黒いインナーシャツ。
とても肌触りが良く、通気性や保温性にも優れ、また羽のように軽い
しかし、見た目とは裏腹に高い強度を持ち、剣で切ってもほつれることさえない。
【サイレント・ハイド】
靴底に特殊加工が施された黒革のブーツ。
靴全体が厚めに作られており、その中に消音、耐久加工が為されている。
装備者の動きを妨げないように、無駄を一切省いているので、見た目より軽く、動きやすい。
【スピアリア・ブレード】
鍔の無い両刃の大剣。
上質な鋼鉄を、高温高圧の環境で鍛え上げたもの。
強度、切れ味ともに高いが、かなりの重量のため扱いが難しい。
(モ〇ハンのカ〇レライトソードだと思ってもらえれば大丈夫ですw)
【ジャッジメント・コート】
鮮血のように紅い革から仕立てられたロングコート。
コートの端が破れてボロボロになっていて、戦場から帰還した戦士を思わせる。
【ペトリア・シャツ】
岩石にも匹敵する強度を持った黒のインナーシャツ。
頑丈なわりに、布のような触り心地で意外と着やすい。
【ヴァリスタ】
銀色のフレームと黒いグリップを持つ、やや大型のリボルバーマグナム。
弾倉が改造され、装填数が12発になっている。
強い反動と引き換えに、超高威力の貫通弾を発射可能にした銃。
ハンドガンにしては、ありえない射程距離を持つ。
【バリアパンツ】
その名の通り、防壁のような耐久力を持つ黒革のパンツ。
防御力の他に、柔軟性も高く動きを阻害しないように出来ている。
【パワーグローブ】
装備者の筋力値を底上げする、黒いグローブ。
摩擦力の高い素材で出来ていて、剣の滑り止めにもちょうどいい。
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コメント | ||
本郷 刃さんへ お察しの通り、簡単にはいきません。むしろある意味では、SAOを生き抜いた仲間だからこそ、辛い状態になっています。(やぎすけ) SAOを生き抜いたから大丈夫だろう…とは、問屋が卸してくれないんでしょうね〜、果たして何が起こるのやら…(本郷 刃) |
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