バカとテストと召喚獣 五つの鎧を持つもの 第三十四話
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 その日の夜のこと、鋼牙は皆にあることを話そうと冴島邸の大広間に皆を集めた。

「何なんだ鋼牙?改まって。」

「実は皆に前もって話しておかなければならないことがあるんだ。烈火と邪美は既に知っていることなのだが今夜行われる花見についてだ。」

『花見?』

 皆は鋼牙の言ったことがいまいち理解できなかった。

「ねえ鋼牙君、この時期に花見って変じゃない?」

「・・・愛子の言う通り。今は夏。」

「本来はな。だがここ冴島邸に植えられている桜はまか不思議な桜だ。この時期の満月、つまり今日冴島邸に生えている桜が咲く。」

「そんな桜があるんですか?」

「普通は無い。だがここにある桜は不思議な桜だ。最も、この世界のものではないがな。」

「?それってどういう・・・・」

 姫路が聴こうとした瞬間であった。ゴンザが扉を開る。

「鋼牙様、皆様、お時間でございます。」

「わかった。土屋。」

「・・・・なんだ?」

「少し頼みがあるんだ。これから起こることは一般的常識ではありえないことだ。お前が写真を撮ったとしても売れないだろう。だが・・・・」

「・・・なんだ?」

「それでも撮ってくれないか?大事な思い出を残しておきたいんだ。」

「・・・・俺はそういうことをするのが趣味だ。言われなくても撮る。」

「すまないな。」

 鋼牙は土屋に礼を言うと皆の方を向く。

「さあ、宴会の始まりだ!」

 

 夜の花見のためもあってか女子全員が浴衣に着替えた。というのも鋼牙に柄に眠っていた浴衣が丁度あったためどうせならとのことで女子全員が浴衣を着た。

「こういうのもいいですね。」

 ピンクの生地に桜の絵が描かれている浴衣を着ている姫路が言うと、紫の生地に鶴の絵が描かれている着物を着た霧島が相槌を打つ。

「・・・・本当。」

「でもよく虫に喰われなかったわね。」

 オレンジの生地にひまわりが描かれている浴衣を着た優子が感心する。

「ゴンザさんって何でもこなす執事だから出来たんじゃない?」

 蒼い生地にいるかの描かれた着物を着ている美波がゴンザを褒める。

「でもこういうのを着ると誰かに見せたくなるね。」

 水色の着物に紫陽花が描かれた着物を着ている工藤がそういうと心なしか皆頷いた。そしてすぐ近くで土屋が何回もカメラのシャッターを切っている。

「ムッツリーニは必死じゃのう。」

「まああいつはあれを売るのが商売だからな。そういやあいつが売る写真を確認している時に工藤の写真だけ見ないな。」

 雄二と秀吉も何か話しているな。しかし・・・・気のせいだろうか?美波と優子のが美化されて見える。

 そんな鋼牙に工藤が歩み寄る。

「もしかして鋼牙君優子を美波ちゃんに見とれてる?」

「ん?多分な。」

「まあ浴衣は胸が無いほうが魅力的だというもんね。」

「それで土屋を翻弄し淫行をするはら手口か?」

「な、なにをいっているのかなっ!ぼ、ぼぼっぼ僕はそんなことするつもりは無いよ!!」

「・・・・・ほんの冗談で言ったつもり何だがな・・・・・」

「うう・・・・・鋼牙君って何かと鬼だね。こうなったら・・・えい!」

 工藤は太股をチラッと見せる。刹那、土屋が鼻血を噴出しながら倒れる。

「む、ムッツリーニ君!」

「あ、薬渡すの忘れてた。」

 

 そして満月がちょうど夜空の中心へと昇ろうとする頃、一同桜の木下で立っていた。

「で、一体誰を待っているんだ?」

「もうすぐ来るぞ。」

 鋼牙がそう言い放った瞬間周りが騒がしくなってくる。そして徐々に暗がりから人のような姿が見えてくる。しかし一同はその陰の正体を見て驚く。

 尻尾が狐のように映えている人、河童のように見える人、猫耳の映えている人などまさに日本の妖怪のような人たちが鋼が立ちのほうへと歩み寄ってきている。

「こ、鋼牙・・・・あれって・・・・」

「ああ。あの人たちが今日のお客さんだ。驚くのも無理は無いが見た目より皆さん優しい。」

「で、でも流石に妖怪のような姿は・・・・」

「俺も最初の頃は驚いたがもう慣れた。」

「お〜い、鋼牙〜。」

 向こうから一人の男性が話し掛けてきた。

「黄さん。お久しぶりです。」

「ああ。そちらの方々は?」

「同じ学校の同級生です。」

「さ、坂本雄二です。」

「・・・霧島翔子。」

「・・・土屋康太。」

「ひ、姫路瑞希です。」

「島田美波です。」

「き、木下秀吉じゃ。」

「工藤愛子です。」

「き、木下優子です。」

「うむ、若くて元気があるのはいいことだ。私は黄竜。黄と呼んでくれ。」

「黄竜って・・・・あの四神の中心のか!」

 雄二が驚く。

「なんだ知ってたのか?」

「いやすごすぎだろ!四神の中心になる竜ガ今ここに、しかも目の前にいるんだぞ!」

「ゆ、雄二よ。少し落ち着くのじゃ。」

「そうよ坂本。それに四神ってなに?」

「お前ら、平城京と平安京は知っているな。」

「・・・もちろん。」

「東西南北を守る髪の名前は知っているか?」

「確か・・・・青龍、朱雀、白虎、玄武でしたっけ?」

「そうだ姫路。北の守り神が玄武、西の守り神が白虎、、南の守り神が朱雀、そして東を守る神が青龍だ。それを四神とも言うんだがその中心で四神の長とも言えるのが黄竜なんだ。」

「まああやつらが若気の至りで日本に進撃してきた元の軍勢を神風で転覆させたときはちっとばかし叱ったな。」

「元って・・・・鎌倉時代のか!」

「おお、確かそんな名前の時代だったな。だがワシは二回目に来たときの奴らをゲップ噴いたせいで転覆させちまったがの。」

「おい!日本の歴史に何かと介入しているぞ!」

「まあ気にするな。過ぎたことだ。」

「鋼牙!流石に過ぎたことで終わらないぞ!」

「そんなにわめくな。それより黄さんはいま人間の姿をしているが他の人たちの大半は人間の姿をしている。気にしないでくれ。」

「何の妖怪化髪なのかは聞いていいんだな。」

「ああ。だが女性には年齢は聞くな。それでひどい目にあったからな。」

「そ、そうか・・・」

 そんな状況の中一同は桜の木下へと向かう。桜の木は花どころかつぼみすらない。

「鋼牙よ、一体いつ咲くというのじゃ?」

「今からだ。その前に少し儀式が必要だがな。」

 鋼牙はそういうと桜の木からフィールドが広がる。

「これって・・・・」

「試召フィールドと同じものだ。どういうわけか知らないがウチでは代々この日に限ってこれが展開される。最も、俺がここで鎧を召喚するのは始めてだがな。」

 鋼牙はそう言うと懐から牙狼剣を取り出し抜刀、刃をザルバに擦り付け剣先を天に向け円を描く。描かれた円からは光が漏れ、牙狼の鎧が召喚される。

 牙狼の姿を見て周りの人たち(?)は微笑ましく思っている。牙狼は左手の甲に牙狼剣の地肌を

擦り付け勢いよく引くと牙狼剣に魔導火が纏われれる。牙狼は何処からか矢を一本取り出し、牙狼剣に纏わせている魔導火を矢に纏わせると牙狼剣を弓代わりに使い矢を引き、桜の木に向け矢を放つ。放たれた矢は桜の木に当たり桜の木に魔導火が渦を巻くようにまとわれてゆき、徐々に徐々にと桜の花が咲いてゆく。雄二達は驚きを隠せなかった。

 鋼牙は鎧を解くと皆の方を向いて言い放つ。

「さあ、花見だ。」

 鋼牙がそう言い放った瞬間雄二達以外の皆は歓声を上げる。

 

 花見を楽しんでいるなか、雄二達は少しばかり緊張しながら飲み物を飲んでいた。

「こ、こういう経験は全く無いのでそうしたらいいんでしょう・・・・・」

「ま、まあ楽しめばいいんじゃないか?」

 硬くなっている雄二達に黄が話し掛けてくる。

「お前ら、なんでそんな端っこにいるんだ?」

「い、いや・・・その・・・・」

「あいつを見ろ。たしか・・・・・土屋といったか?カメラを取ってるぞ。」

 黄が指を指す方向には美人な人たちを撮っている。

「あ、あいつはどっちかというと職業病みたいなものです。」

「ははは、まああういう臨機応変な対応ができるやつは好きだな。工藤ちゃんは別の意味で好きそうだね。」

「な、なななな何のことですか!」

「はっはっは、別に隠さなくてもいいよ。まあ若くて恋するのはいいことだ。」

「うう・・・・・なんで鋼牙君やその知り合いの人はこういうのに鋭いのかな・・・・」

 工藤は顔を紅くする。

「まあこうして鋼牙が友を連れてきてくれたのは嬉しいことだ。あいつと仲良くやってくれ。」

 黄がそう言うと皆は返事をする。

「ところでその飲んでいるものって酒ですか?」

 美波が聞くと黄はそれに答える。

「いや、これは『妖力酒』。妖怪の力の塊みたいなものだ。」

「人が飲んでも大丈夫なのか?」

「う〜む・・・・・これ自体はのんアルコールだが・・・・」

 黄が視線を余所に向ける。視線の先にはハイテンションになっている鋼牙の姿があった。

「いひょ〜し、のみくらへひゅすひょ〜。」

「あんなふうにたまに酔ってしまうのだよ、人間は。」

「あんな鋼牙初めて見た。」

「まああいつみたいになれとは言わんが――――」

 黄は右の人差し指を立てると雄二達がふわりと浮く。雄二達は驚きを隠せない。

「――――今を楽しめ。」

 人差し指を曲げると雄二達は飛ばされ花見の宴会の中に強制的に入らせられた。

「おお、来たネ!」

「まってい〜たよ〜。」

「おんめらまだ酒ばのめねぇがたのしめいや。」

 なまりの強い人や軽い人など色々な人たちが話し掛けてきた。雄二達は自然と話している内に打ち解けていった。

 

翌日の朝、姫路、美波、優子は目を覚ますと自分のお帰れている状況にどう対処したらいいのかわからなかった。自分たちは花の無い桜の木下で眠っている。そこまではいい。だが問題は三人とも鋼牙に抱きかかえられるかのように眠っていることだ。

「え、えと・・・・・」

「これって・・・・・」

「どういう・・・・・状況?」

 姫路達は昨日の花見のこと思い出す。

 黄さんの力によって他の人たちと打ち解けながら花見をした。

 ↓

 そのあと酒に酔った鋼牙が絡んできた。

 ↓

 そして一緒に『妖力酒』を飲んでハイテンションになった。

 ↓

 そこから先は覚えていない。

「とりあえず・・・・・どうしますか?」

「こ、このままもいいんじゃ・・・・ない?」

「ね、眠いしね。」

 そういうことで三人は二度寝のフリをして過ごした。ちなみに雄二は霧島を無意識のうちに抱きしめながら寝ており、土屋は工藤に抱きつく形で眠っていた。秀吉、烈火、邪美は唯一『妖力酒』を飲まなかったためベッドで寝ていた。

 こうして冴島邸での夏休みが終わった。

 

説明
コジキニナッテカラアノトキヤッテオキタカッタコトッテナイカ?
「花見」
オマエハマダミセイネンダゾ。
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