真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第七話
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 話は一刀が馬騰に促され謁見の間から退出した所から始まる。

 

 ・・・・・・・

 

(さて、どうやら此処からが俺の仕事の始まりのようだな)

 

 俺は懐の中の物をそっと握り締める。

 

「それではこの部屋でしばらくお待ちを…えっ?」

 

 侍女さんが俺の方を向いてそう言った瞬間、俺は懐の中の物を取り出し

 

 息を吹きかけてそれを侍女さんの方へ漂わせる。すると、侍女さんの瞳

 

 の焦点が定まらなくなり、ストンと力が抜けたように部屋の中の椅子に

 

 腰をおろしてしまう。

 

「よし、うまく効いたようだな…俺の声は聞こえるか?」

 

「…はい」

 

 侍女さんはトロンとした眼のまま、俺に返事する。どうやら薬の効果は

 

 うまく働いているようだ。これは北郷家に代々伝わる薬で…分かりやす

 

 く言うと催眠薬だ。俺一人でこれを使うのは初めてだったのだが、ちゃ

 

 んとじいちゃんから教わった通りに作ったし問題は無いと思っていたけ

 

 どね。さて、それじゃ…。

 

「今、馬騰さんって何か知られて困る事ってあるのかな?」

 

「…馬騰様は何も仰ってはいませんが、思いつめた表情で考え事をしてい

 

 る事があります。韓遂様からの書状が届いた後は特にそれが強くなって

 

 いるようです」

 

「その韓遂さんとは仲が悪いのか?」

 

「…韓遂様は涼州連盟の盟主に自分ではなく馬騰様が選ばれた事に不満を

 

 持っておられるようで、それ以来あまり…」

 

 韓遂…確か馬騰さんと同じく涼州の有力諸侯の一人だったっけ?

 

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「それで?」

 

「…前にお部屋にお茶をお持ちして入ろうとした直前に『月、すまない…

 

 私だってお前に協力する事が陛下や殿下の御為になる事は分かっている

 

 んだ。でも…くそっ、韓遂の奴めが!何故この馬寿成があのクソ野郎の

 

 為にここまで苦しめられなければならんのだ!!』…と吐き出すかのよ

 

 うに言われていた事がありました。これは誰にも言ってはいけない話だ

 

 と私にも感じられました」

 

 ほう、どうやら董卓さんに協力出来ない理由はその辺りにありそうだな。

 

「それで?一体それは何なのか知ってる事はあるのかな?」

 

「…私は何も。でも前に馬超様が『すまない、蒲公英…少しの間だけ辛抱

 

 しててくれ。必ず姫君と一緒にお前の事も助け出すから』と呟きながら

 

 中庭で槍の稽古をされていた事が…」

 

「蒲公英?姫君?誰の事だ?」

 

「…蒲公英は馬超様のお従姉妹の馬岱様の真名です…姫君というのは私も

 

 知りません。でも、馬騰様の命で馬岱様が誰かを迎えに行くという話は

 

 聞きました」

 

 そうすると…馬騰さんに言われて馬岱さんが『姫君』とやらを迎えに行

 

 ったけど、二人とも韓遂に捕まってそのせいで馬騰さんが董卓さんに協

 

 力出来ない…というより協力しないよう脅されているという事か。

 

「他に何か知ってる事はあるかな?」

 

「………………」

 

 これだけか…まあ、侍女さんだしこれだけ聞ければ十分だろう。俺は懐

 

 に手を入れると、違う薬を取り出して侍女さんに吹きかける。ちなみに

 

 これはさっきの薬の解毒薬だ。

 

 

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「………………はっ!?私…一体何を?」

 

「大丈夫そうですね。部屋に入ったらいきなりぼうっとなられてふらつか

 

 れていたので、椅子に座らせたんですけど…」

 

「えっ!?そうなんですか!申し訳ございません、お客様の前でそのよう

 

 な…本当に申し訳ございません」

 

「いえいえ、別に気にしてませんから。それに…」

 

「それに?」

 

「貴女のような綺麗な女の顔をじっくり見れたんですから結構役得でした

 

 しね」

 

 俺がそう言って微笑むと、侍女さんの頬が一気に赤くなる。

 

「えっ!?…あの、その…し、失礼いたします!ごゆっくりどうぞ!」

 

 侍女さんはしどろもどろにそう言って部屋を後にしようとするが、

 

「あ、あの…私で良ければ何時でも良いですから」

 

 赤い顔のままそう言っていた。一体何が良いんだ?しかも何時でもって

 

 …うう〜む、良く分からん。

 

「さて、とりあえずは…輝里に話をしておかないとな。でも謁見の間じゃ

 

 兵士さんとかも沢山いるんだろうし…あれ?謁見の間から人の気配があ

 

 まりしないな。兵士の配置も少し遠巻きになっているようだし…二人の

 

 話が終わった頃に行ってみるか。その前に出来れば後二・三人位聞いて

 

 みよう」

 

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「…という話だ。他にも下働きの人や巡回の兵士さんにも聞いてみたが大

 

 体似た事を言っていたよ」

 

 謁見の間に行き輝里と話をした後、輝里に宛がわれた部屋に入って俺が

 

 聞いた事を伝えると、輝里は納得のいったように何度も頷いていた。

 

「なるほど…そういう事でしたか。しかしさすがは一刀さんです、董卓様

 

 が見込まれただけの事はありますね」

 

「?…もしかして俺が董卓さんから別命を聞いていたのを知ってたのか?」

 

「ふふ、直接は何も。でも私が指名したからってわざわざ執務室にまで呼

 

 ばれたという事はそういう事を依頼されたのかなって思ってただけです」

 

 それだけでそこまで察するとはさすがは徐元直といったところだな…。

 

「本当はこのまま韓遂の所に行って調べてみたいんだけど、輝里の護衛と

 

 いう名目で来てる以上そういうわけにもいかないな…」

 

「大丈夫です。今から私が董卓様宛の書状をしたためます。そしてあなた

 

 は私に命じられてそれを董卓様に届けるのです。その後の事は董卓様が

 

 ご命じくださいますでしょう」

 

「でも護衛は…」

 

「私はしばらく馬騰様への直談判を願う為に此処に留まります。馬騰様も

 

 邪険に追い出したり殺したりするようなお方ではないですしね」

 

 輝里はそう自信満々に答える。実際それがいいのかどうかは分からない

 

 けど、此処はそれが一番マシといったところか。

 

「分かった、それじゃ書状を届ける役目は引き受けた」

 

 

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 そして二日後、俺は天水に戻ったその足で董卓さんに会いに行く。

 

「…さすがは輝里さんですね。北郷さんもありがとうございます。馬騰様

 

 が幾ら私や輝里さんが聞いても話をはぐらかしてばかりいた理由がよう

 

 やく分かりました。確かにそういう事情でしたら」

 

 董卓さんはそう言ってしきりに頷いていた。俺に輝里の同行を依頼して

 

 きた時に、董卓さんから『馬騰様の内部の事情を探ってきてほしいので

 

 す。出来れば最近何か変わった事や困った事が起きてないかを。今まで

 

 協力的だった馬騰様がここ最近手のひらを返すような事が多いので』と

 

 別の依頼をされた時には驚いたが董卓さんは何か裏があるとその時から

 

 確信していたようだ。

 

「俺は完全に実証を掴んだわけではないけど?」

 

「いえ、それだけ掴めれば十分です。北郷さん、もし可能なら韓遂の城に

 

 入ってその方々をお救い出来ますか?人数がいるようなら出来るだけは」

 

「報酬は別請求で良ければ。それとあくまでも救出するかどうかは俺の判

 

 断に任せてもらいたい」

 

「もちろんです」

 

「なら今から行ってきます」

 

「…? 璃々ちゃんには会っていかないのですか?」

 

「それは全て終わってからにします。それと人数はいりませんが、もし配

 

 置出来るなら韓遂の領地との境目辺りにお願いします」

 

「分かりました、やっておきましょう」

 

「それではお願いします」

 

 俺は韓遂の城へと向かったのであった。

 

 

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「どうやら手応えがあったようね」

 

「夢様…はい、あなた様が仰られた通りでした。探索能力にとても秀で

 

 ているようです」

 

 一刀が辞して少し経ってから李粛が現れると、董卓はそう答えていた。

 

「あら、月も見抜いていたんじゃないの?」

 

「私は霞さんとの模擬戦は少ししか見てなかったので完全に確証を掴めて

 

 いたわけではなかったのですが…」

 

「でもこれでこの仕事を完遂出来たらその時は…」

 

「もしかして空様の様子も見に行かせるおつもりですか?」

 

「ええ、あの母様がそう簡単にやられてるわけ無いとは思うけどね」

 

 李粛のその言葉に董卓は驚きの顔をする。

 

「その顔はどういう意味よ?私だって母様の心配位するけど?」

 

「ふふ、そうですね。夢様は昔から空様にべったりでしたものね」

 

「なっ!?…それ今言う事?」

 

「はい、今言う事です♪前に空様が『最近は夢の奴があまり私の事をかま

 

 ってくれないから寂しいなぁ』とか仰られてましたから」

 

「あーあーあー、聞こえない、聞こえない。とにかく北郷殿の手腕に期待

 

 するわ。私達の悲願と母様の為にもね」

 

 李粛が顔を赤くしたままそう言って部屋を出て行くのを董卓はにこにこ

 

 しながら眺めていたのであった。

 

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 それから三日後、場所は変わり韓遂の城である。

 

「ほう、それで董卓の使者はまだ武威にいるのか?」

 

「はっ、馬騰様への面談を願っては門前払いをされているようです」

 

「くくっ、さすがの西涼の狼もあれをこっちに握られては、どうする事も

 

 出来ないと見ゆるな。くくくっ、ははははは!よし、その事を張譲様に

 

 もお伝えしておけ。この韓遂の力で目障りな馬騰を抑えている事を付け

 

 加えておく事も忘れるなよ」

 

 この笑っている男こそ韓遂である。本来であれば涼州連盟の盟主である

 

 馬騰の指揮下に入るべき立場にあるのだが、元々反りが合わなかったの

 

 もあって、常に馬騰に取って代わる事ばかりを考えていた所を張譲の誘

 

 いを受け、密かに手を結んでそれを後ろ盾に自分が盟主になろうと企ん

 

 でいたのである。しかも今の彼には馬騰にとっての弱みが手許に転がり

 

 込んできた事も手伝って、得意の絶頂にあった。

 

「さあ、後はあれをうまく始末して五胡の連中と馬騰の奴を戦に引きずり

 

 込めば張譲様が…そして今度こそこの俺が盟主としてこの涼州に君臨す

 

 るのだ!!わっはっはっはっは!!」

 

 韓遂の笑い声はしばらく止まる事は無かったのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「なるほど、そういう事か。董卓さんの推測通り、韓遂一人での事では無

 

 かったようだな。それにしても張譲とは…確か洛陽にいる宦官の筆頭の

 

 人だったな。どうやら背後関係はなかなか大きいようだ」

 

 俺は韓遂の部屋の裏手に身を潜めて話を聞いていた。最初は変装でもし

 

 て潜りこもうと思ったのだが、警備が意外なほど緩いのを見て思い切っ

 

 て忍び込んでみたのだが…本当にザルだな、ここの警備。幾ら気配を殺

 

 しているとはいえ、よそ者がここまで入れるって…まあ、俺は楽でいい

 

 けどね。

 

「さて…それじゃ次はっと」

 

 

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 俺が続いて向かったのは城の台所である。実は城に入る前に城から出て

 

 きた下働きの男に酒をしこたま奢ると本来ならしゃべっていいはずが無

 

 いような事までペラペラとしゃべり始めていた。見た感じ口が軽そうに

 

 見えたから声をかけたものの、正直あれだけしゃべるとは驚きだった。

 

 その中で『台所にいる料理番が他の者とは別に料理を二人分作り、それ

 

 を受け取った兵士が何処か奥の方へ運んでいく』という物があった。

 

 ならばそれを尾けていけばと思い台所の裏手に回ったのである。

 

『用意は出来たか?』

 

『はい、此処に二人分』

 

『ご苦労』

 

 俺はそこから去っていく足音を辿る。すると…。

 

「おや?何か物置みたいな所に入っていくな」

 

 兵士はすぐにでも出てくるつもりなのか、扉を開けっ放しになっていた

 

 ので俺は辺りに他の人間の気配が無い事を確認してそこに潜り込む。

 

 すると中から先程の兵士が出てくるのが見える。ならば…。

 

「ぐえっ!」

 

 俺は死角から当て身を食らわしてその兵士を縛り付けておき、中に入っ

 

 ていく。中には地下へと続く階段があり、そこを降りていくと奥の方か

 

 ら話し声が聞こえてくる。もしかしてこれが…?

 

 俺は他の人間の気配が無い事を確認しつつ奥へと歩を進める。

 

 

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「誰?食事ならさっき貰ったわよ!協力なんか絶対してやらないって言っ

 

 てるでしょう!帰れ、帰れ!!」

 

 俺の足音に気付いたらしき娘の声が聞こえる。(ちなみに足音はわざと

 

 たてたのだが)

 

「へぇ…捕まっている割には随分元気だね」

 

「?…誰よ、あんた?見かけない顔だけど」

 

 俺が格子越しに話しかけると先程叫んでいたらしい女の子が訝しげな顔

 

 でこっちを見る。

 

「質問返しで申し訳ないけど、君が馬岱さんかな?」

 

「…そうだけど?」

 

「そう、それじゃ奥にいるのが『姫君』さんとやらだね」

 

「だから何よ!?一体何の用なわけ!?」

 

「名乗り遅れたけど俺は北郷、董卓さんに頼まれて来た者だ」

 

「月に!?それじゃ助けが来るの!?」

 

 俺が『董卓』の名を出すと、馬岱さんの表情がみるみるうちに明るくな

 

 っていく。

 

「俺一人だけなんだけどね」

 

 しかし俺がそう言うとその顔は暗い物に変わる。

 

「ちぇっ、とんだぬか喜びだったみたいね。それで?月はこれからどうす

 

 るって?」

 

 

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「どうするもこうするも…こうするだけさ」

 

 俺はそう言うと鍵を取り出して牢を開ける。何故俺が鍵を持っているの

 

 かといえば、先程兵士を気絶させた時に懐を探ったら案の定持っていた

 

 ので拝借したからだ。

 

「えっ!?何で鍵持ってるの!?…それにあんた一人だけなんでしょう?

 

 一体どうやって此処から出るっていうのよ?」

 

「とりあえずは…俺についてきてもらえれば分かる。そちらの姫君様もそ

 

 れでよろしいですか?」

 

 俺が問いかけると奥にいた女の子は大きく頷く。

 

 そうと決まれば…。

 

 ・・・・・・・

 

 どっかーーーーーーん!!

 

「何だ!?何事だ!!」

 

 眠っていた韓遂は突然起きた爆音に慌てて起き出し、部屋を飛び出す。

 

「申し上げます!五胡の姫君を閉じ込めている牢が燃えております!!」

 

「なっ…姫君は!?」

 

「不明です!今必死に消火にあたっていますが…」

 

「早くしろ!早く安否を確認するんだ!!」

 

 韓遂に言われた兵士は慌てて駆け出す。

 

「くそっ…今此処で死なれては計画が…これでは俺が五胡の標的にされて

 

 しまうではないか」

 

 

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「ほう、そういう事か」

 

「なっ、誰だ!?姿を現…ごはっ」

 

 俺は韓遂の死角に回り込むと当て身を食らわせて気絶させて縛り上げる。

 

「ほへぇ…すごいね、北郷って」

 

 それを見ていた馬岱さんと姫君様は驚きの声をあげる。

 

「いやいやこんな程度。俺の師匠でもあるじいちゃんに言わせればこんな

 

 のではまだまだ赤子のようなものだって言われてるし」

 

「一体どういう一族よ、それ…」

 

「それよりまずは此処から無事脱出する事だ」

 

「どうするのよ?」

 

「まずは…」

 

 ・・・・・・・

 

「止まれ!何処へ行く!?」

 

 消火と捜索にあたっていた兵士が城門へ向かおうとしている馬車を見つ

 

 けてそれを止める。

 

「そちらこそ無礼である!此処に韓遂様がおられるのが見えないのか!」

 

 そう言われた兵士が馬車の中に眼を向けると、そこには確かに韓遂の姿

 

 が見えたので、慌てて平伏する。

 

「これは失礼しました!しかしこのような時にどちらへ?」

 

「韓遂様におかせられてはこの混乱に乗じて捕虜が城外に逃げ出している

 

 事を懸念されて、自らの眼で確かめに参られるとのお考えである!」

 

「分かりました!ならば護衛を…」

 

「護衛は他に手配してあるので無用、皆は消火と城内の捜索にあたるよう

 

 指示が出ている。この混乱で伝達が滞っているかもしれないが」

 

「そうでしたか、それでは任務に戻ります。ご無理はされぬよう」

 

 兵士がその場を離れると馬車は城門を出て行った。

 

 

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「…ふぅ、何とかばれずに済んだみたいね」

 

 城外に出てしばらくしてから兵士の兜を脱いだ馬岱さんがそう呟く。

 

「蒲公英、まだ敵地。気は抜かない」

 

 姫君様がそう言うと馬岱さんは頷いていた。しかし彼女が馬騰さんと友

 

 好関係にある五胡のとある部族のお姫様で、馬騰さんとのさらなる友好

 

 を結ぶ為に来ていたとはね…そこを韓遂に衝かれたという事か。

 

「この…俺にこのような目を合わせて無事に帰れると思うなよ」

 

 ようやく眼が覚めた韓遂が縛られたまま怒りの口調でそう言うが、

 

「そうか?悪いがあんたの部下はボンクラ揃いみたいだけど?大体俺みた

 

 いなのが入って来ていても誰も気付かないっておかし過ぎるでしょう」

 

 御者台にいる俺がそう言うと、忌々しげに唇を歪める。ちなみに馬車は

 

 四人乗り用で後側に縛り上げた韓遂を座らせ、前側に馬岱さんと姫君が

 

 座っている。

 

「さて、さすがにそろそろ気付かれるだろうし、飛ばすぞ」

 

 俺はそう言うと手綱に力を込める。

 

 ・・・・・・・

 

「北郷、まだなの!?」

 

「あともう少し!!」

 

 馬岱さんの慌てた声に俺はそう答えるのが精一杯だった。

 

 あれからさすがに事態に気付いた韓遂の部下達が追ってきたので全速力

 

 で逃げているのだが、さすがに馬を乗りこなす涼州の人間なだけあって

 

 その間隔は徐々に狭まってきていた。

 

 

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「はははははっ、このような馬車で逃げ切れるものか!おとなしく降参し

 

 ろ!!」

 

 韓遂は勝ち誇ったような顔でそう言うが、

 

「馬岱さん、そいつもう落としていいから。さすがにそいつが落ちてきた

 

 ら向こうの速さも少しは落ちるだろうし」

 

 俺がそう言うと、ひきつった顔になる。

 

「確かにそうだね。どうせもう邪魔だし」

 

 馬岱さんはそう言うと後側の馬車の扉を開けて韓遂を外へ蹴り出す。

 

 そして韓遂は悲痛な叫び声をあげて馬車から落ちていった。

 

 それを見た韓遂の部下達は俺達の事をそっちのけで韓遂の所に駆け寄っ

 

 ていた。おいおい、普通は一手をこっちに差し向けるんじゃないのか?

 

 まあいい、少し軽くなったからこのまま速度を上げよう。

 

「飛ばすからしっかり捕まっていろよ」

 

 俺達はそのまま境目を越えて無事に董卓さんの領内に入る事に成功した

 

 のであった。ちなみに、韓遂は落ちた時は気絶していたようだが、眼が

 

 覚めると同時に俺達を追いかけるよう慌てて指示を出したようだが既に

 

 それは後の祭であったのは言うまでもない。

 

 

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 それから数日後、天水にて。

 

「すまなかった、月。こちらがあんな態度を取ったにもかかわらず…」

 

「いいのです、葵様。私も同じような立場でしたらそうしたでしょうし」

 

 事態を聞いた馬騰さんと馬超さんが駆けつけてきていた。

 

「蒲公英〜、良かった…良かった〜!お前の身に何かあったらと思うと私

 

 は…私は…」

 

「翠姉様〜、みんな見てるって…ほらっ」

 

 董卓さんと馬騰さんが話している後ろで馬超さんが馬岱さんに抱きつい

 

 て大声で泣いていた。馬岱さんは人目を気にしてか恥ずかしそうにして

 

 はいたが、嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

「ところでこのような時に聞くのも何ですけど…」

 

「ああ、分かっている。私に出来る事であれば何でも協力させてもらおう。

 

 どうせ洛陽から何を言ってこようが、こっちへどうこうする程の力はも

 

 はやありはせんしな」

 

「よろしくお願いします」

 

 董卓さんと馬騰さんがそう言って握手をしていると、

 

「どうやらうまくいったようですね」

 

 そこに李粛さんが現れる。ちなみにその後ろには口をへの字にしたまま

 

 の李儒さんとそれを呆れ顔で見ている王凌さんの姿があった。

 

 

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 馬超さんと馬岱さんはいきなり現れた三人を少し訝しげな眼で見ていた

 

 が、馬騰さんはその姿を見るなり…。

 

「これは…ご無事で何よりでございます。劉弁殿下、劉協殿下、王允様」

 

 そう言って平伏する。

 

 えっ…今なんて?そこにいるのは李儒さんと李粛さんと王凌さんだよね?

 

 でも今確かに馬騰さんは『殿下』って…しかも劉弁と劉協って確か皇帝

 

 の子供の名前じゃ……………。

 

「ええええええっ!?」

 

 俺は驚きの声をあげる事しか出来なかったのであった。

 

 

 

 

 

                                           続く。

 

 

 

 

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 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 またモチベさんが何処かへ行ってしまったようで今回の話を

 

 仕上げるのに此処まで時間がかかってしまいました。まこと

 

 に申し訳ありませんでした。

 

 しかし自分で書いておいてなんですが、韓遂陣営がザル過ぎる…。

 

 ご不快に思われた方も多いとは思いますが、何卒ご容赦の程を。

 

 後いろいろまたすっ飛ばしていますが、それは次回以降にて。

 

 さて、次回は…とりあえず命達の正体を知った一刀の心情辺り

 

 からいきたいと思います。

 

 

 それでは次回、第八話でお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 追伸 前作の外伝は現在構想中…もう少しお待ちくださいませ。

 

 

 

 

 

 

説明

 お待たせしました!

 前回、馬騰の下を訪れた輝里と一刀。

 其処での馬騰の対応に裏がある事を知った一刀

 が探りに入ります。一体何が見つかるのか?

 それではご覧ください。
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コメント
平野水様、ありがとうございます。いえいえ、何もしてませんよ。実はそういう事に薬を使うなとじいちゃんから厳しく教えられているとかいないとか…。そもそも笑顔一発で相手にその気にさせる天然ジゴロですし。(mokiti1976-2010)
禁なる玉⇒金球様、再びありがとうございます。でも基本的に一刀に拒否権は存在しないのです。そして本人に逃げる気があるかどうかも…。(mokiti1976-2010)
作者様へ、〇ロスは友の為必死に走り抜きました、同様に一刀(推定エ〇ス)は自分の平穏の為にも必死で逃げると思われます。逃げて超逃げて。(禁玉⇒金球)
summon様、ありがとうございます。そりゃ種馬ですから…でも一刀本人はまったくそれに気付かず。そして命はもう少しふくれっ面が続く予定です。(mokiti1976-2010)
さすがは、一刀さん、名もなき侍女をおとすぐらいわけないってことですね!しかし、まだ納得がいってなくてふくれっ面な李儒さまかわいい!(summon)
Alice.Magic様、ありがとうございます。自分のペースに巻き込めば間違いなく明命に勝てます。そして…やはりそこは我らが種馬、侍女さんをオトす位わけない事で。しかし一刀本人は気付いていませんが。(mokiti1976-2010)
一刀君強いですなーこの分だとみんめーにも勝てるのでは?それにしても訪れた先の侍女すら落とすとは・・・名もなき侍女たん可愛すぎワロタ (Alice.Magic)
観珪様、ありがとうございます。バレた後どうなるか、一刀はどうするかが次回のお話の中心です。そして…姫君様に関しては検討中です。(mokiti1976-2010)
禁なる玉⇒金球様、ありがとうございます。残念ながら逃げる事はもはや許されないのです。これからもっと混乱の渦中に巻き込まれますので。それと…白蓮さんの出番はしばらくありませんよ(エ。(mokiti1976-2010)
たっつー様、ありがとうございます。確かにそこら辺の方々はそういう値が低いですね〜。そもそも内部に潜り込まれる事を頭から想定していないという残念さです。(mokiti1976-2010)
氷屋様、ありがとうございます。はい、遂にばれました。そして…姫君様については検討中です。侍女さんは…その内勝手に居ついてたりして(マテ。(mokiti1976-2010)
naku様、ありがとうございます。いえいえ別に平均年齢上昇を防止しているわけではないですよ〜、結果そうなっているだけで(オイ。(mokiti1976-2010)
あら、弁さまと協さまがバレてしまったww しかし、とらわれだった姫君さんが気になりますねー……蔡?ちゃんとかだったら面白いんですけどね(神余 雛)
逃げるんだ一刀十二分に義理は果たした金貰ってどこかの田舎で嫁さん貰ってたった一人の女性を腰砕けにゲフン愛し続けるんだ、一刀「そういうのもいいな、というかそれが普通では?」白蓮「普通と聞いて登場」一刀「普通が一番」(禁玉⇒金球)
あぁら正体ばれちゃった♪一刀もこれから大変だの、姫君さんもその内一刀に・・・知らないうちに馬騰さんとこの侍女もきてたりしてねwそしてごめん・・・・・蒲公英の存在すっかり忘れていたわw(氷屋)
いた様、ありがとうございます。この姫君の部族が仲間になる関係でいろいろと…という風には考えております。この姫君御本人についてもいろいろと考え中です。(mokiti1976-2010)
きまお様、再びありがとうございます。ほう…そのようなゲームがあったのですね。そしていずれ来るであろう連合との戦いは…いろいろ考え中です。当然馬陣営は重要ポジションです。(mokiti1976-2010)
D8様、ありがとうございます。そうです、今は捕まっていますけどね。そしてここの一刀はいろいろありますのでお楽しみに。(mokiti1976-2010)
この展開ですと、五胡の姫君も仲間に入ると言うわけですねw(いた)
二度目ですが補足:天誅は忍者ゲームで気配を隠しつつ背後から首をかっきったり手裏剣で一撃必殺があります。侵入ルートも天井裏や床下など複数。そして薬を使う一刀がかっこいい!月たん陣営だとはずせない連合戦がありますし、馬陣営がどうかかわっていくのか楽しみです。(きまお)
空さんという方はやはりお二人の母君ですか。にしても一刀君カッコイイですね。催眠薬だとまで持っているとは。(D8)
アーバックス様、ありがとうございます。はい、遂にです。さてこれからどうなる事やら…。(mokiti1976-2010)
遂に正体がばれましたねw(アーバックス)
陸奥守様、ありがとうございます。さすがに性別が違うので…。(mokiti1976-2010)
カノン様、ありがとうございます。実際出来るかは探りを入れてみなければ分かりませんがやる事自体は可能です。そして…璃々の件は実はもっと後で知る事になる話なので此処ではまだ触れておりません。もうしばらくお待ちください。(mokiti1976-2010)
じゅんwithジュン様、ありがとうございます。確かに近いというよりほぼそうなりかけてますね…さてさて。それと…やはり一刀のじいちゃんは無敵超人的な設定の方がかっこいいと私は思っております。(mokiti1976-2010)
きまお様、ありがとうございます。予想通りでしたか…これからはもう少し捻りを加えていかなければ。それと…天誅はあまり詳しくないので。(mokiti1976-2010)
yoshiyuki様、ありがとうございます。ふっふっふ…後々そういう事をするかもしれません。それと…一刺ししたい所ではありましたが、蹴り飛ばすだけに留めたと蒲公英さんが申しておりました。(mokiti1976-2010)
一丸様、ありがとうございます。まあ、暗部というかエージェントというか…結局似た事はするのですけどね。そして…確かに韓遂は雑魚扱いですね。多分今後もずっとそうだと…。(mokiti1976-2010)
神木ヒカリ様、ありがとうございます。その辺がまだまだ未熟な一刀君でしたというところですね。(mokiti1976-2010)
「実は韓遂こそが黄忠の正体だったんだよ!」「なんだってー!」・・・うそ。(陸奥守)
大局的に正しいかはともかく、その気になれば空様の救出や張譲を始末するぐらいはやってのけそうですな。ところで前話にあった、璃々を連れていけばもっと早くお母さんに会わせてあげれたというのが気になりますな。今回の話では母親の気配すら感じなかったのですが......(カノン)
もはや一刀がチートに近いww そういえば大体の二次創作で一刀の爺ちゃんはめちゃくちゃ強い設定ですよね(じゅんwithジュン)
たんぽぽが居ないから多分・・・と思っていたら予想通りだったか。なんか一刀が天誅みたいになってるwあれは背後から一撃必殺するのが楽しかったなあ。ただ酔いやすい自分はぐるぐる視点を変えるだけで吐きそうになるので好きでもプレイでき無かったよ・・・orz(きまお)
一刀君は薬も扱えるんだ。そうすると、昔の忍者漫画でよくあった「風下に回ったがウヌノ不覚よ」という戦い方ができる。 韓遂捨てるのなら、一刺しぐらいしても罰はあたらんよ。(yoshiyuki)
うん・・・前回のコメントで忍者と書いてたけど・・・どっちかというと、暗部ですねwwまあ、似たようなものですがww・・・そして、韓遂陣営がザルなのは、序盤の雑魚ですからしょうがないですよww・・・・ではでは、続き楽しみに待ってます。(一丸)
一流を目指すなら知っていたよ、という態度でいなくちゃね一刀。(神木ヒカリ)
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