涼宮ハルヒの恋姫 4
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これは、ある少女が話してくれた出来事。少女は武術の訓練をしていた。少女の名は馬超、字は孟起。そして若い男性の名は馬騰、…馬超の父親である。ふと…馬超の構えが若干震え始めたのに気付き、馬騰が、

 

馬騰「…翠、お前、何か隠し事をしているな。」

 

馬超「な、何言ってんだよ!あたし、今朝はオネショなんかしてな…あっ!! ///」

 

馬騰「ははははは…そうかそうか、隠し事はオネショか。だったら…特訓は下着、変えてからにしな。」

 

ごまかすつもりが墓穴を掘ってしまい、顔が赤くなる馬超。

 

馬超「け、けど、なんで分かったんだよ!?あたしが隠し事してるって…」

 

馬騰「武術というのは正直なものよ。心にやましいところがあれば、それが気の濁りとなって表れる。」

 

馬超「…それじゃあ…」

 

馬騰「あぁ。翠、お前の構えには、心気の曇りが感じられた。」

 

指摘され、馬超の顔が暗くなる。話を聞いていた馬超も、どこか落ち込んでいた。

 

馬騰「どうした?オネショぐらいで気に病むことはないぞ?」

 

馬超「そんなんじゃないよ…父ちゃんはあたしの構えを見てあたしの気持ちが分かったのに、あたしは父ちゃんの気持ちが分かんなかったのが悔しくて…」

 

落ち込む馬超に、馬騰は声を掛ける。

 

馬騰「なんだそんなことか…大丈夫。お前達もちゃんと鍛錬すれば、すぐに“気”が読めるようになる。」

 

馬超「ホントに!?」

 

馬騰「もちろん!! 」

 

その時の馬騰の顔は、とてもいい笑顔だった。

 

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第四話『馬超、曹操を討たんとするのこと』

 

 

馬超「父ちゃん………あたし、いっぱい練習して……頑張るから…だから…」

 

馬超が目を覚ますと…止まっている宿だった。もう一つのベットには関羽さんと鈴々が寝ていた。

 

馬超「あれ……夢、か…」

 

星「やっと起きたか。」

 

と…いつの間にか布団の間の床で寝ていた星が起きあがる。

 

馬超「って、なんでそんなとこで寝てるんだ?」

 

星「好きで寝てるわけじゃないさ。お主が寝返りを打った時に私を突き飛ばしてきたのだ。」

 

馬超「げっ、マジで!?///ゴメン!! ///あたし寝相悪いから…///」

 

無意識とは言え突き飛ばしたことを詫びる馬超に、星は…

 

星「気にすることはない。お返しに私もお主を………いや。見たところ生娘のようだから、何をしたのかは言わないでおこう。」

 

と、馬超をじっくり見ながら、やたら意味深な言葉を返すのだった。

 

馬超「……って、あたしたちになんかしたのかオイ!?」

 

馬超が慌てながら星を問いただしている。

 

キョン(起きてはいるんだが、聞かなかったことにしよう。)

 

 

 

全員が起床した後、一同は朝食を取り始める。

 

馬超「いやー、相部屋させてもらった上にメシまでおごってもらって悪いなー!」

 

鈴々「気にすることないのだ!『旅は道連れ、世は』……『世は情けない』っていうし!」

 

関羽「それを言うなら『世は情けだろう』!」

 

箸を進めながら関羽さんが鈴々の間違いを注意する。

 

キョン「まぁ…二人部屋に無理言って五人泊めてもらってるわけだから、情けないと言えば情けないか…」

 

鈴々「武闘大会の賞金、ちゃんと貰ってくれば良かったかなぁ?」

 

馬超「そうだよなー。でも今さら取りに行くのもなんか悪いよなぁ」

 

と…ここで星が口を開く。

 

星「お主たち、こんな話を知っているか?」

 

キョン・関羽・鈴々・馬超

「「「「?」」」」

 

星「昔…越という国の王・勾践は、敵国に囚われた時の恨みを忘れぬよう、寝室の天井に苦い肝を吊るし、それを舐めては復讐の気持ちを新たにしたという。」

 

馬超「…へぇ〜そうなんだ。で、今の話と何か関係あるのか?」

 

その馬超の質問に対し、答えは……

 

星「いや。特に関係ない。」

 

キョン「関係ないんかい!!! 」

 

俺は思わず突っ込んじゃった。

 

 

 

 

袁紹が治める街の付近に、曹操の陣が敷かれていた。

 

荀ケ

「華琳様!お疲れ様です。戦況はどうでしたか?」

 

曹操「えぇ、我が軍の勢いは順調よ…私が出るまでもなかったわ。」

 

荀ケ「随分汗を掻いてますね…今すぐお拭きします」

 

曹操「えぇ…ただし、私の汗は手ぬぐいではなく桂花…貴方の舌でね。」

 

荀ケ「えっ…///華琳様…で、でも…///」

 

曹操「どうしたの?もしかして…イヤ?///」

 

荀ケ「………っ///(フルフル)」

 

曹操「それじゃあ…」

 

 

 

 

 

 

 

曹操「あっ…うん…そう…いいわ…ふふ、そうよ…また、上手くなったわね…」

 

夏侯惇「華琳様。あ……」

 

曹操「いいわよ桂花、続けて。」

 

荀ケ「はい…///」

 

曹操「…春蘭。何か報告があったんじゃないの?」

 

夏侯惇「は、はい。敵主力はほぼ全滅…首謀者も捕らえ、現在は夏侯淵達の部隊が残兵の掃討に当たっています…」

 

曹操「そう…御苦労さま。下がっていいわよ。」

 

夏侯惇「はっ!! 」

 

 

 

???「どうしたんだ夏侯惇。」

 

夏侯惇「いや、お前には関係ないことだ、馬孫。」

 

馬孫「……そうか。」

 

 

数分後、街の中を捕虜達が投獄された檻を乗せた馬車が行脚する。

 

曹操「どうしたの春蘭、まだすねてるの?」

 

夏侯惇「別にすねてはおりません…」

 

曹操「そんなにむくれないで。今夜は桂花ではなく、貴方を寝屋に呼んであげるから。」

 

夏侯惇「な、何を言って…私はそんな…」

 

夏侯淵「ふふふ………」

 

夏侯惇「なんだ、秋蘭!!?何がおかしい!!?」

 

…………………………………

 

 

 

鈴々「荷物運びのお仕事、思ったよりお金がもらえて良かったのだ!! 」

 

馬超「ま、なんといってもあたしの働きが良かったからな♪」

 

鈴々「ってそれだけじゃないのだ!!俺様だって頑張ったのだ!! 」

 

キョン「まあまあ落ち着けって鈴々。」

 

路銀稼ぎの仕事から帰ってきた俺と鈴々と馬超も、人だかりに気付いて中に入る。そして行列の先頭を歩く人物を見た。あれは曹操じゃないか。

 

鈴々「あ!曹操なのだ!」

 

馬超「曹操…!?」

 

声をかけながら近づいてきた鈴々に、曹操も行進を止める。

 

曹操「お前達はこの前の…今日はあの黒髪の者は一緒ではないのか?」

 

鈴々「うん、愛紗は別の仕事してるのだ!」

 

キョン「っておい!」

 

曹操「へぇ…、あの者は愛紗というのか。」

 

鈴々「愛紗は真名で、名前は関羽なのだ!」

 

俺と鈴々、そして曹操さんで関羽さんの話をしていた…次の瞬間。

 

馬超「曹操………覚悟ぉっ!!!!!!! 」

 

突然、馬超が衛兵から槍を奪い、曹操に飛びかかってきたのだ!! 寸前のところで一人の少女が攻撃を防ぎ、もう一人の少女が咄嗟に曹操を庇う。

 

夏侯惇「何奴!!?」

 

少女の問いに応じ、馬超が。

 

馬超「西涼の馬騰が一族…馬超推参!! 父の仇…とらせてもらうぞ!! 」

 

夏侯惇「曹操様を殺そうとした愚か者よ!捕らえてくれるわ!! 」

 

一同が戸惑う中、馬超は再び斬りかかろうとする、やばい!止めなきゃ!俺はデカイ剣を持った少女の攻撃を木刀で防ぐ。衝撃が来るが関係なく馬超の持った槍を左手で掴んだ。

 

夏侯惇「何!!?」

 

馬超「!!?」

 

キョン「痛ってぇ!!! 」

 

運が悪かったのか、左手で掴んだ場所は刃がある所だった。左手から血が出てくる。凄く……痛い。

 

馬超「なっ…何しやがんだジョン!!! 」

 

夏侯淵「……はっ!! 何をしている!ひっ捕えろ!」

 

俺が槍を掴んでいる間に、馬超はまんまと衛兵たちに囲まれてしまうのだった…

 

 

 

 

 

 

関羽・星

「「おかえりなさいま…え?」」

 

舞台はメイド喫茶店に代わる。

 

夏侯淵「私は夏侯淵。ここに関羽という御仁がいると聞いたのだが。」

 

関羽「え…??」

 

鈴々「こいつらヒドイのだ!馬超が斬りかかったら、怒って馬超を捕まえちゃったのだ!」

 

星「…お主の説明だと、相手が悪いように聞こえないが?」

 

倉庫に場所を移した一同は、改めて夏侯淵から事情を聞いた。

 

関羽「なるほど、そうでしたか…分かりました。馬超は私の妹分の友…見過ごすわけにはいきません。とりあえず、会って話をしてみましょう。鈴々、私はこれから曹操殿の元へ出向いて、馬超に会ってくる。鈴々は星と一緒に宿へ戻っていてくれ。」

 

鈴々「どうしてなのだ!鈴々たちも行って、馬超を取り戻すのだ!」

 

星「短気なお主が行けば、まとまる話もまとまらなくなるだろう…ここは、愛紗に任せましょう」

 

鈴々「でも…!」

 

関羽「鈴々、私を信じろ…心配するな、馬超は必ず連れ戻す。」

 

星「……しかし、ジョン殿が馬超と夏侯惇とやらの攻撃を防ぐと言うのは……不思議なものですな。」

 

夏侯淵「私も驚いたさ。それと彼は我が陣にて治療している。」

 

関羽「ジョン殿……」

 

 

 

 

 

ここは、馬超が投獄された檻がある天幕。檻の中で座り込んでいると…夏侯淵さんに付き添われ、関羽がやってきた。

 

関羽「馬超」

 

馬超「!関羽…」

 

関羽「話は聞きましたぞ」

 

馬超「へへ…あたしたちとしたことが、頭に血が昇って…とんだドジ踏んじまった。まさかこんな所で会うなんて思わなかったし…ジョンに邪魔されてさ…」

 

自分たちの失態を嘲笑う馬超…ここで関羽さんは改めて聞いてみた。

 

関羽「…お主、何故…曹操殿を殺そうとした?」

 

その質問に……馬超は険しい表情で答える。

 

馬超「曹操は、我が父を………あたしの父ちゃんを殺したんだ!! 卑劣極まりないやり方で!! 」

 

関羽「!! 」

 

 

 

曹操「・・・それより、手は大丈夫なの?」

 

キョン「対したことじゃありません。あのままにしていれば二人共ただでは済まなかったと思いますし。」

 

曹操「そう……貴方の腕もなかなかのものね。客将と対応にできるかもしれないわ。」

 

キョン「客将……ですか。」

 

そんなこんなで曹操と話していると、

 

夏侯淵「華琳様。関羽殿が参られました。」

 

曹操「通して。」

 

関羽さんがやって来た。

 

関羽「ジョン殿!大丈夫ですか!?」

 

キョン「あぁ対したことじゃないから安心して下さい。」

 

曹操「ジョン。私の陣を歩くことを許可するわ。」

 

キョン「………有難う御座います。」

 

そう言って俺は外に出る。

 

関羽「曹操殿…」

 

曹操「意外だったわ。まさかこんな形で、貴女と再会するなんて。」

 

関羽「単刀直入にお聞きするが…馬超をどうなさるおつもりです?」

 

曹操「もちろん斬るわ。」

 

関羽「そんな…!」

 

曹操「理由はどうあれ、この曹操の命を狙ったのよ。それなりの報いは受けなければならないわ。」

 

関羽「い、いや…だが…」

 

曹操「官軍の将の命を狙ったのよ?無罪放免というわけにもいかないでしょう?」

 

関羽「それは…そうですが…………曹操殿!馬超の命…なんとか救っていただく訳には参らぬか…!?」

 

曹操「…関羽。そんなに馬超たちを助けたいのなら、私と取引しない?」

 

関羽「取引…?」

 

曹操「えぇ…今夜一晩、私と寝屋を共にするの。そしたら、馬超の命…助けてあげてもいいわ。」

 

関羽「なっ…何をバカな…!///」

 

曹操「始めてみた時から、貴女のその艶やかな黒髪…手に入れたかったの。そして私は…欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れる。」

 

関羽「ひ、人の命がかかっているのに、そのようなたわごとを…!」

 

曹操「そうよ。貴方の気持ち一つで、人の命が救われる。」

 

関羽「っ!」

 

曹操「どうなの?」

 

 

 

やがて………

 

関羽「……ほ、本当に一晩寝屋を共にすれば、馬超を助けてくれるのだな…!?」

 

曹操「えぇ…約束するわ。」

 

ニヤリ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

関羽「…………………」

 

場所は代わり。俺には言いづらい寝屋。

 

関羽「そ、曹操殿……本当に、これで馬超を…?///」

 

曹操「約束は守ると言ったでしょう。」

 

そう言いながら寝巻を脱ぎ……同じく全裸になった曹操も布団の中に入る。思わず身体を背ける関羽さん…だが曹操は構うことなく、関羽さんに近づく。…って聞いた話なのに何を言ってんだ俺は!

 

関羽「っ……!///」

 

曹操「もしかして初めて…?」

 

関羽「……(コクコク)///」

 

曹操「ふふ…ますます気に入ったわ…」

 

スゥゥゥ……

 

関羽「っ…あぁ…!///」

 

曹操「ふぅん…本当にしっとりツヤツヤなのね…」

 

華琳は愛紗の上に覆いかぶさるように身体を動かしていた。

 

関羽「あ……///」

 

曹操「…怖がらなくてもいいのよ…」

 

そう言いながら関羽さんの目を見つめる曹操。関羽さんも震えながら、曹操の目を見た……次の瞬間。

 

ドンッ!!

 

曹操「きゃあっ!?」

 

ドッ!!!!

 

突然中から曹操の悲鳴と、何かが落ちてきた音が聞こえる。まさか……

 

関羽「ぐうぅぅぅ…!」

 

黒装束「っ…!」

 

どこから入ってきたのか、黒装束が短刀を構えていた手首を、関羽さんが必死になって抑え込んでいた。その状態を見て、天井に潜んでいた賊が飛び降り、関羽さんが咄嗟に曹操を突き飛ばして守ったのだと曹操は推測した。

 

曹操「曲者!」

 

黒装束「曹操覚悟!!! 」

 

そして黒装束は関羽さんを後にして曹操に向けて短刀を振る。曹操は反応するが守れるものが無いことに気づく。

 

曹操「くっ…!! 」

 

次の瞬間ー!!

 

 

キョン「お邪魔しまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁす!!!!!!!!!!! 」

 

ドガッ!!!

 

黒装束「グフッ!!?」

 

曹操「!?」

 

関羽「ジョン殿!!?」

 

何とか間に合った。どうやら曹操と関羽さんは無事のようだ。

 

黒装束「ちぃっ!!(ヒュッ)」

 

夏侯惇「華琳様!! 」

 

俺が防いだことで失敗だったのか、賊は煙玉を投げる。夏侯惇が駆け寄ったと同時に煙幕が広がり、賊はそのまま脱走した。

 

キョン「逃がすかぁ!!!! 」

 

俺は逃げた黒装束を追いかける。

 

夏侯惇「くっ…華琳様!大丈夫ですか!?」

 

曹操「えぇ無事よ!それよりも、今すぐ賊を追え!! 」

 

夏侯惇「はっ!! 」

 

華琳に命じられ、外へ向かう夏侯惇。その一部始終を…関羽さんはしっかりと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

数分後…寝巻を纏った関羽さんと曹操が天幕で待っていると…夏侯惇が戻ってきた。

 

夏侯惇「華琳様」

 

曹操「賊はどうしたの?」

 

夏侯惇「申し訳ありません、スミスと言う男が捕らえた時には既に…」

 

曹操「そう…」

 

報告を聞いて複雑な顔をする曹操…ふと、関羽さんが質問する。

 

関羽「曹操殿…先ほどの刺客は一体…?」

 

曹操「出る杭は打たれる…都では私達のことを煙たく思っている輩もいるということよ。…邪魔が入って興がそがれたわ。今夜は早く寝た方がよさそうね。」

 

そう言いながら曹操は立ち上がり、天幕を後にしようとする。

 

関羽「あの…曹操ど」

 

曹操「関羽。賊の手から私を守ってくれたこと、そしてジョン。貴方にも感謝してるわ…褒美として、馬超の命は助けて取らす。」

 

関羽「!曹操殿…!」

 

曹操「ただし…私は貴女のことを諦めた訳ではないわ。その美しい黒髪、必ず手に入れてみせる…だから、その時を楽しみにしてて頂戴。春蘭。関羽に馬超を引き渡せ。」

 

夏侯惇「かしこまりました。」

 

後のことを夏侯惇にまかせ、曹操は寝屋へ向かった。

 

夏侯惇に率いられ、俺と関羽さんは馬超が囚われている天幕へと向かっていた。と、ここで関羽さんが口を開く。

 

関羽「夏侯惇殿…一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

夏侯惇「私に答えられることなら、なんでもいいぞ」

 

関羽「その…曹操殿が馬超の父を手に架けたというのは、本当なのですか…?」

 

おそらく聞かれるだろうと分かっていたのか、夏侯惇は一旦足を止める。

 

夏侯惇「関羽殿……今から私は独り言を言う。」

 

関羽「え…?」

 

キョン「……?」

 

夏侯惇「あれは、数年ほど前…都で、何進大将軍の屋敷に招かれた時のことだった…」

 

そして、夏侯惇は「独り言」という形で当時のことを語り始めた…

 

 

 

…………………………………

 

 

 

 

何進は、現皇帝である霊帝が治める後漢王朝の大将軍を務める、銀髪のグラマーな美女。ただし短気で過激な上に優柔不断で、曹操からはあまり快く思われてはいない。そんな何進がある日、曹操を招いて宴会を開いていたのだが…

 

何進「曹操。」

 

曹操「なんでしょう?」

 

何進「妾はお主を智謀の師と思うていたが、聞けば剣の腕も中々とか。」

 

華琳「恐れ入ります。」

 

何進「どうじゃ?この中の誰かと立ち会うて、その腕前を見せてはくれまいか?」

 

曹操「大将軍の仰せとあらば…」

 

立ち上がる曹操…しかし周りの人々は曹操の強さを知っているが故、誰も名乗りを上げようとしなかった。と、何進の目に酒を飲んで大分酔っている馬騰が止まる。

 

何進「馬騰殿、いかがかな?」

 

馬騰「ほ?…お望みとあらば…相手にしてもいいですぞ………」

 

そう言いながら立ち上がろうとする馬騰だったが、曹操が待ったをかける。

 

曹操「お待ちください。…馬騰殿は見たところ、かなり酔っておられる様子…座興とはいえ、剣を交えるのはとても…」

 

馬騰「なぁに、こんなのは寄った内には入らぬ、っとと…ああぁっ」

 

曹操の待ったも気にせず立ち上がった馬騰だったが、そのままよろけて尻もちをついてしまった。

 

何進「ん〜、見たところ曹操の言うように馬騰殿は酔っていると見られる…無理をせんでも良いのだぞ?」

 

回りがクスクスと笑う上に何進からもそのように言われ、恥をかいたと思った馬騰はその後も浴びるように酒を飲んだ。そして宴会が終わり、馬騰はお伴も着けず帰ろうとしたのだが……酔いすぎたのも相まって、そのまま落馬してしまったのだ。たまたまその辺りを警備していた夏侯惇の部隊が見つけたものの、頭を強く打ったため、既に虫の息だったという……そして馬騰は、夏侯惇に告げたのだった。

 

馬騰「…酔って馬から落ちて死んだなど、愚問の恥……このことは、どうか内密に…してく……」

 

 

 

………………………………………………

 

夏侯惇「その場にいた連中には固く口止めしたんだが…どこかで見ていた奴がいたのか、しばらくすると妙な噂が広まったんだ。」

 

キョン「妙な噂…?」

 

夏侯惇「あぁ。私の主が恥をかかされた腹いせに、馬騰殿を襲わせた…てな。」

 

関羽「!どうして、そんな…」

 

驚く関羽さんに、春蘭も浮かない顔で答える。

 

夏侯惇「我らが主は…少々誤解されやすいところがあって、こうした出来事があると、すぐに口沙汰ない者があらぬ噂を立てるのだ。おそらく、馬超もそれを鵜呑みにしているのだろう。」

 

関羽「それならば、何故真実を話さないのだ!! 」

 

思わず関羽さんが反論するが、夏侯惇は慎重に答えた。

 

夏侯惇「私たちもそう申し上げたのだが、我らが主は…「西涼にその人ありと謳われた馬騰ほどの武人が、最後に口にした頼み、聞かぬ訳にはいかない」と…それに、親の武勇を誇りに思っている子に、親の無様な死に際を知らせたくはなかったのかもしれぬ……最も、これはあくまで私たちの推測だがな。」

 

関羽「しかし、それでは曹操殿が…」

 

夏侯惇「そういうお方なのだ。私達の主は」

 

一言呟いて黙りこむ夏侯惇を見て…俺達は決意し、関羽さんが頼み込んだ。

 

関羽「夏侯惇殿…今の独り言、馬超の前でもう一度して頂く訳には参りませぬか?」

 

 

 

 

ゴスッ!! と、鈍い音が響く。

檻から出してもらった馬超が、先ほどの夏侯惇の独り言を聞いて「信じられない」と言わんばかりに、檻に拳をぶつけたのだ。

 

馬超「そんな…!! 父ちゃんが…あたしの父ちゃんが酔って馬から落ちて、死んだなんて……!! 」

 

落ち込む馬超に、関羽が声をかける。

 

関羽「馬超。曹操殿は馬騰殿と…お主のことを思って、黙っていたんだ。武人としての体面を重んじる、馬騰殿の気持ち…それを尊重して、自ら悪評を受け入れた曹操殿の振る舞い…いずれも、立派なモノだと思う。だが、そのためにお主が曹操殿に恨みを抱き、その命を狙うのであってはお主のためにも良くないと…」

 

馬超「嘘だ!! 曹操どもの手下の言うことなんか信じられるもんか!! 」

 

しかし馬超は受け入れようとせず、逆に夏侯惇が嘘をついていると叫ぶ。

 

夏侯惇「ほぉ…では私達が偽りを言っていると?」

 

関羽「夏侯惇殿、馬超は今取り乱していて…馬超、お主の気持ちも分かるが、今は落ち着いて…」

 

馬超「触るなっ!! 大方お前らも曹操に丸めこまれたんだろ!?上手くいったら、召抱えてもらう約束でもしたか!! 」

 

関羽さんがフォローしようとするも、更にありもしない言動を繰り返す馬超…………と。

 

夏侯惇「馬超、立って武器を取れ!! 」

 

関羽「夏侯惇殿!?」

 

キョン「………………」

 

それまで黙っていた夏侯惇が、突然馬超に勝負を挑んできたのだ。関羽さんが驚くのも構わずに、夏侯惇は話を続ける。

 

夏侯惇「私だって武人だ…嘘つき呼ばわりされて、黙って引き下がれるか!! 」

 

馬超「望むところだ!! 仇討ちの景気づけに、貴様の首を飛ばしてやる!! 」

 

そのまま馬超と夏侯惇は、己の武器を手に拠点近くの草原へと移動した。止めない方がいいな。

 

関羽「止めぬか二人共!! こんな無益な争いをして、何になるのだ!?」

 

夏侯惇「止めるな関羽殿!! 死なねば治らぬ病気もある!」

 

馬超「ほざけっ!! 」

 

武器を構え、対峙する二人…関羽さんには、見守ることしか出来なかった。二人のにらみ合いはしばらくの間続いていたのだが……

 

 

馬超「(なんだ、こいつ…全然隙がない…深い林の木立のように静かな構え…それに…澄んだ水のような“気”が伝わってくる…)っ!! 」

 

 

 

馬騰「武術というのは正直なものよ。心にやましいところがあれば、それが気の濁りとなって表れる。」

 

 

 

そして馬騰の教えの通り、夏侯惇からは決して気の濁りが見られなかった。

 

そのことは、夏侯惇が嘘をついていないという確かな証拠だった。

 

馬超「っ……!! それじゃあ……こいつの言ってることは、本当で…!! 父ちゃんは……」

 

真実を悟った馬超が構えを解き、その場に座り込む。夏侯惇もそれに気付き構えを解くと、関羽さんが馬超の元へ近寄る。

 

関羽「夏侯惇殿の心気に濁りがないのを感じて、貴女が嘘をついていないと分かったのでしょう。」

 

馬超

「…………っ、わあああああああああああああああ!!!うああああああああああああああ………!!!!! 」

 

馬超は泣いた。関羽さんに抱きついて、思い切り泣いた。悲しいけれど、それは真実を受け入れたから出来たことだった。馬超の涙を照らすように、夜空に星が光っていた。

 

キョン「……………」

 

武術ってのは素晴らしいな。

 

 

 

 

 

あれから数日後。

 

袁紹の街を離れた一同は分かれ道に差し掛かり、ここで馬超と別れを告げることになった。

 

関羽「それでは、ここでお別れだな」

 

鈴々「せっかく仲良くなれたのに…残念なのだ。」

 

星「やはり一度、西涼に戻られるのですか?」

 

馬超「あぁ。故郷の連中に本当のことを話しておかなきゃならねぇからな」

 

キョン「そうだな…それが良い」

 

真実を話しておかなければ、再び今回のような騒動が起きてしまうかもしれない。それを防ぐためにも西涼に戻るという馬超の決断は、正しいものだろう。

 

馬超「あの、関羽、ジョン…アンタ達には本当に世話になったな」

 

関羽「何、それほどでは…」

 

キョン「そうだぜ。」

 

馬超「それと…」

 

と、ここで馬超が照れくさそうに俺と関羽さんを引き寄せ、耳元でこっそり呟く。

 

馬超(あたしが泣いちゃったこと、秘密にしといてくれよ。特に、張飛にはな)

 

その言葉に俺と関羽さんが笑顔で返した後、馬超は一同に背を向け、西涼への道を進んでいった。

 

馬超「あばよー!またなー!! 」

 

鈴々「バイバイなのだー!」

 

馬超を笑顔で見送る鈴々に、ふと星が、

 

星「友との別れだと言うのに、随分ニコニコしているな?」

 

鈴々「人は別れ際の顔を覚えてるものなのだ。鈴々は馬超に、鈴々の一番いい顔を覚えていてもらいたいのだ!」

 

星「ほう…」

 

きっと、またどこかで会える……そう信じて、俺達は馬超を見送ったのであった。……その途中。

 

関羽「じっ…ジョン殿!」

 

キョン「ん?何ですか?」

 

関羽「あの……その…貴方に真名をあずk…「お腹が減ったのだ!」……」

 

キョン「さっき食ったばっかじゃないか。…それで、何でしたっけ?」

 

関羽「なっ…何でもありません!! 」

 

キョン「…?」

 

……何だったんだろう?まぁいいか。

 

-3ページ-

 

あとがき

 

 

ども、ガリ眼鏡です。

 

キョン「キョンです。」

 

いやぁ…この小説もついに四話になりました。

 

キョン「まだ序版だが此処までくると早いなと感じるぞ。」

 

手の方も疲れてしまうことがあるが、まだまだ書き続けるぜ!

 

キョン(後から出る気合いは何処から出てくるのだろうか、2ミリでいいから俺にも分けて欲しいね。)

 

さて次回なんだが、あの最強の飛将軍の登場であり、涼宮ハルヒの憂鬱で出てくる脇役も出てきます。

 

キョン「あいつらがでるのか……」

 

では、次回の予告を……

 

星「次回、涼宮ハルヒの恋姫。第五話『キョン、化け物を退治せんとするのこと』」

 

勝手に取らないでっていったよねぇ!!?

 

キョン「元気にしてるかな?」

 

説明
苦労したがなんとか投稿です。

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