機動戦士ガンダムSEEDSTRATOS 第三話 あえて言わせてもらう!ライバル兼ヒロイン登場の回であると
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『第五プログラム班は待機。インターフェイス、オンライン、データパス、アクティブ。ウィルス障壁、抗体注入完了……』

 

ナスカ級高速艦ヴェサリウスでは奪取した四機のガンダムをザフトの赤服であるアスランたちと整備士たちが機体のOSを書き換えている途中であった。

そんな四機を上から見物している人物がいた。ビリー・カタギリ。長身の身体を白のスーツで固め、長い後ろ髪を後頭部でまとめている髪型が特徴的な男だ。ザフト軍モビルスーツ開発技術顧問でもある。

 

(ふむ……なるほど)

 

カタギリは眼鏡フレームを指で押し上げてうなずいた。

 

「あれが例の?」

 

一人の女性がカタギリの隣に立つ。

 

「おや、いいのかい?MSWADのエースがこんな所にいて」

 

「もちろん、よくないだろうね」

 

女性の名前はクレアス・エーカー。一見すると女性実業家を思わせる風貌をしている。癖っ毛の金髪に、しかしまだ少女のあどけなさが残る面立ち。今はスーツを着こなしているが、正式にはザフト軍直属第一航空戦術飛行隊━━通称MSWADに所属、階級は中尉だ。

カタギリはクレアスと五年前からの付き合いである。若干十五歳という異例の若さで、ザフトの次期正式採用モビルスーツのテストパイロットに抜擢されたクレアスは、その卓越した操縦テクニックで成果を上げ、トップファイターの仲間入りを果たした。若いのに前時代がかった口調を好み、その行動もストイックそのものだ。カタギリは、日本人の曾祖父に教えられた『サムライ』や『武士道』という言葉がとてもよく似合う女性だと認識している。一言で言えば変わり者だが、研究一辺倒で三十歳を過ぎても恋人を作ったことのないカタギリも同じようなものだ。そう言う意味では、二人はとても気が合った。パイロットと研究者とはいえ、自分の信じる道を追い求めている姿勢に互いに共感したのかもしれない。

 

ヴゥーッ!ヴゥーッ!

 

『クルーゼ隊長機、帰還!被弾による損傷あり。消化班、救護班はBデッキへ』

 

そのアナウンスが流れたとき艦のクルーは皆驚愕の色を浮かべた。それはクレアスたちも例外ではなかった。ラウ・ル・クルーゼはこの艦の中でもトップエースのパイロットだ。それもナチュラルでありながらである。

そのクルーゼが被弾して帰ってくるという報告に誰もが信じられないでいた。

しばらくして、ヴェサリウスのハッチが開くと両腕を失ったクルーゼのシグーが姿を現した。

 

「あのクルーゼ隊長が両腕を!?」

 

「ほう……」

 

クレアスは両腕の無いシグーを興味深そうに見つめる。それはまるで、幼い子供が新しい玩具を見つけたときのようだった。

シグーから降りてきたクルーゼは下で強奪したガンダムたちのパイロットとなる少年たちに囲まれていた。大方、誰にやられたか聞こうとしているのだろう。

 

「驚いたね。まさかあのラウ・ル・クルーゼが両腕を失くして帰還するなんてね」

 

「確か奪えなかったガンダムはストライクと言ってたかな?」

 

工作員のレポートにあった話だと、ストライクは3タイプのパックを使い分けることであらゆる場面に対応できるバランスタイプの機体らしい。

 

「レポートが確かならね、けどあの未完成のOSでシグーの両腕を落とすことなんてできるのか?」

 

カタギリは強奪したガンダムたちのOSを書き換えている整備士たちを見て思考する。その時クレアスは、半年ほど前に戦ったとある機体の事を思い出していた。

 

(もしや……)

 

「六機目のG兵器!?」

 

声を上げたのは赤服の一人、イザーク・ジュールであった。

クレアスはその単語を耳にした途端、クルーゼたちのいるシグーの側にまで向かった。

 

「失礼」

 

一番近くにいたイザークを押し退けると、クレアスはクルーゼの正面に立つ。

 

「貴様!いきなり何を━━」

 

「失礼と言った」

 

イザークの不満の声を、クレアスは一蹴する。

 

「私に何か用かね?クレアス中尉」

 

仮面の男は冷めた目でじっと、クレアスを見つめる。人によっては裸足で逃げ出すレベルのものをクレアスはなんともなさげに受け流す。

 

「単刀直入に言おう、貴殿と戦ったG兵器の情報が欲しい」

 

後を追ってきたカタギリはやれやれといった感じで頭に手を添えていた。

一年前、当時無敗の記録を誇っていたクレアスはとある紛争コロニーで一機のモビルスーツと戦闘し、初の敗北を味わった。それからというものの、彼女はあらゆる部隊を転々としてその機体を探し求めていた。自分に唯一黒星をつけた機体を倒すためだけにだ。

 

「別に構わないが、大したものはないぞ?なにせ戦闘時間はさほどのものではなかったのだからな」

 

事実、シグーとの戦闘時間は五分にも満たしていなかった。

 

「どんな些細なものでも構わない。例えばGNドライヴがあったとか」

 

「レーダーに反応がなかったからおそらくついていただろうな」

 

「数は両肩と背中の計三つ」

 

「背中を見せたのは私の方だからな、見てはいないな」

 

「アンカーが付いてたとか」

 

「ああ、シグーの腕がやられたのは主にそれのせいだったな」 

 

「そう、それだ!!」

 

クルーゼが何気なく口にした言葉に思わずクレアスは大声を上げてしまう。が、聞きたいことが終わるやいなや、クレアスはカタギリの元へと戻っていった。徐々に遠くなるにつれ聞き取りづらくなるが、その会話の中にはソルブレイヴス隊だとか準備だとかそんな単語が飛び交っていた。

 

「……何なんですか?あの人」

 

それを見つめている中、ニコル・アマルフィは皆の言葉を代弁して一人呟いた。

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シグーをヘリオポリスから追い出すことに成功し、一息吐いた俺達。現在は地面に着陸したアークエンジェルに移動していた。ストライクとダブルオーはアークエンジェルの右脚の部分、いわゆるリニアカタパルトデッキへと着艦する。この時トレーラーに残されていた各種ガンダムの予備部品と予備装備、それとシグーの左腕にあったバルカンシステム内装防盾はアークエンジェルの整備員たちが収容してくれていた。

 

「ラミアス大尉!」

 

カタパルトデッキに響く声。ダブルオーのモニターで見てみると、黒髪をショートカットにした女性軍人がこの艦のクルーを引き連れてこちらに向かって来ていた。

 

「バジルール少尉!」

 

ストライクの手から降りたマリューにバジルール少尉は敬礼をした。マリューも即敬礼を返す。

 

「ご無事でなによりです」

 

「貴方達こそ、よくアークエンジェルを。おかげで助かったわ」

 

その様子を見ながら、いつまでもダブルオーのコクピットにいるわけにもいかず、コクピットのハッチを開放してカタパルトデッキに降りる。キラも俺がコクピットから出たのを見てか、同じくストライクのコクピットから降りてきた。その様子を見ていた整備員たちからざわめきの声が聞こえてくる。その声の矛先は俺ではなくキラだ。

 

「おいおい、何だってんだ。子供じゃねぇか」

 

整備員のリーダー格でもあるコジロー・マードックの呟きにその隣にいた別の整備員が口を挟む。

 

「それにあのG兵器、あんなの有りましたっけ?」

 

「いや、初めて見るな……なんだありゃあ?」

 

ボソボソと小声で話しているつもりなのだろうが、あの変態に魔改造され、常人とは比べものにならない身体能力、そして五感を得た上に純枠種、そして超能力に近い能力を得た俺からすれば殆どが丸聞こえだったりする。

……考えるまでもなくナチュラルはともかくしてコーディネイターでさえも比較にならないほどのスペックだよな、この身体は。

 

「ラミアス大尉、彼等は?」

 

キラに近寄っていくサイ達を横目に、バジルールがそう尋ねる。

だが、マリューはそれにどう答えるべきか迷っていると、気まずい雰囲気を無視して唐突に話に割り込んできた男がいた。男はパイロットスーツを着ていて金髪だった。

 

「地球軍第7艦所属、ムウ・ラ・フラガ大尉。よろしく」

 

ムウが敬礼すると、後からそろって敬礼をするクルー一同。

 

「第2宙域、第5特務師団所属、マリュー・ラミアス大尉です」

 

「同じく、ナタル・バジルール少尉であります」

 

二人の紹介が終わると、ムウは敬礼していた手を下げた。

 

「乗艦許可を貰いたいんだが、この艦の責任者は?」

 

ムウのその言葉に、一瞬沈黙したナタルが口を開いた。

 

「……艦長以下、艦の主だった人名は皆、戦死されました。よって今は、ラミアス大尉がその任にあると思いますが」

 

「え?」

 

「無事だったのは、艦にいた下士官と十数名のみです。私はシャフトの中で運良く難を……」

 

「艦長が……そんな……」

 

「やれやれ、なんてこった。あー、とにかく許可をくれよラミアス大尉。俺の乗ってきた艦もザフトにやられちまってねぇ」

 

「あ、はい。許可致します」

 

マリューのその言葉で、取り敢えず艦のゴタゴタについては一段落した。となると次は……

ムウが俺やキラ達の方へと視線を向ける。

 

「で、あれは?」

 

「ご覧の通り、民間人の少年達です。……男の方はジャンク屋を名乗っています。少年の方は、襲撃を受けた時に何故か工場区にいて……私がストライクに乗せました。男の方はこのヘリオポリスに観光目的で来ていた所を先程のザフト襲撃に巻き込まれ、あのモビルスーツで対抗したそうです」

 

ジャンク屋の掟その一。『やられたらやり返す。倍返しだ』を実行しただけだ。

 

「少年の方がキラ・ヤマト。男の方が織斑一夏といいます。彼らのお陰で先にもジン一機を撃退し、あれだけを何とか守ることが出来ました」

 

「ジンを撃退した!?」

 

ナタルの驚愕の声に、クルー一同がざわめき立つ。

 

「俺はあれのパイロットになるひよっ子たちの護衛で来たんだがねぇ。連中は……」

 

そう尋ねてくるムウに答えたのはナタルだった。

 

「丁度、指令ブースで艦長に着任の挨拶をしている時に爆破されたので共に……」

 

「そうか……」

 

ひよっ子とは言っても、このヘリオポリスに来るまで同じ釜の飯を食ってきた仲間だ。それなりに思うところがあったのか、ムウの表情はどこか沈痛なものだった。

だが、それもすぐに振り切り、俺達の方へと近付いて来てキラ、そして俺をじっと見つめてくる。ここはキラよりも年長者である俺が対応すべきなのだろう。特にキラはコーディネイターらしいし

 

「何だ?」

 

「お前さん等、コーディネイターだろ?」

 

「ぅ……、はい」

 

途端に、奥にいた兵士達が銃を構えた。その光景に驚愕と同時にムッときたのか、トールと折野が同時にキラの前に出た。

 

「な、なんなんだよそれは!」

 

「キラが、貴方達に何かしたんですか!?」

 

「トール、壱佳……」

 

「コーディネイターでも、キラは敵じゃねぇよ!さっきの見てなかったのか?どういう頭してんだよ!」

 

「まぁ、確かにさっきの光景を見ていて俺達を敵だと判断する方がどうかしていると思うね」

 

「一夏さん……」

 

キラの声を聞きながら二人の前に出る。

 

「そこの二人の言うとおり、さっきのシグー戦を見ていながら俺達を敵と見なすのか?それもいいだろう……だけど、そっちがその気ならこっちもそれ相応の対応をさせて貰うけど……構わないよな?」

 

腰のホルスターに収められている拳銃を抜き、兵士の一人に狙いを定める。

向けられた兵士が一瞬ビビったようだがそんな些細なことはどうでもよかった。

そうして睨み合う双方の間にマリューが割り込んでくる。

 

「銃を下ろしなさい」

 

マリューの命令により、兵士達は言うとおりに銃を下ろす。それに習って俺も拳銃をホルスターに戻した。

 

「ラミアス大尉、これは一体」

 

「そう驚くことも無いでしょう?ヘリオポリスは中立国のコロニーですもの。戦火に巻き込まれるのが嫌でここに移住したコーディネイターがいたとしても不思議じゃないわ。違う、キラ君」

 

それが分かってるのならどうして中立コロニーでモビルスーツを作ったんだと文句を言ってやりたかったが、話がややこしくなりそうなので心の内にとどめておいた。

 

「ええ、まぁ僕は一世代目のコーディネイターですから」

 

「両親はナチュラルってことか。いや、悪かったなとんだ騒ぎにしちまって。俺はただ聞きたかっただけなんだよね。ここに来る道中、これのパイロットになる筈だったひよっ子のシュミレーションは結構見てきたが、奴等のろくさ動かすのに四苦八苦してたぜ。やれやれだな」

 

さっきキラに見せて貰ったけど、あんな雑なOSでガンダムを動かすのを強いるなんて土台無理に決まっているんだよ。

 

「ムウ・ラ・フラガ大尉でしたっけ?一応言っておきますが俺、ナチュラルですから」

 

別にコーディネイター扱いされても仕方の無い事なんだけど、やっぱりこういうのははっきり区別しておかないといけないと俺は思うんだ。

 

「は?お前さん、コーディネイターじゃないのか?」

 

ムウの言葉に頷く。大方彼は俺のダブルオーを連合の作った五機のG兵器の一つと勘違いしているのだろう。今のうちに訂正しておくべきだな。

 

「勘違いされちゃあ困るから先に言っておくけど、ダブルオーは連合が作ったんじゃない。元々はクルジスのものだ」

 

クルジス、という単語に折野を除くクルー一同と学生組は驚愕の顔でこちらを見た。

中立コロニー【クルジス】。二年前、この世界にやってきた俺を受け入れてくれた人たちが住んでいたコロニーで、白式がダブルオーガンダムとなった原因の地でもある。

何故クルジスは滅ばなくてはいけなかったのか?それは未知のGN粒子を原動力としたGNドライヴの存在、そしてそれを搭載している五機のガンダムの存在がとある戦争屋からザフト、連合の両軍に知れ渡ってしまったからだろう。元々は作業用として採用されていたガンダムだったが、それを差し引いて尚危険と判断した両軍は条約違反してまでこれらを強奪すべく襲撃、その場で戦争となった。

一週間続いた戦争で命を落とした数は計り知れず、俺は生き残った者たちと共にトレミーそしてガンダムを持ち出してクルジスから脱出した。

 

「お前さん……クルジスの生き残りだったのか」

 

「同情はいりませんよ。被害者からすれば、そう言った目で見られる方が迷惑なんだから」

 

実際、子供達は過去にもそう言った手の経験を受けて心を深く傷付けられかけた奴だっているんだからな。

 

「それもそうだな……ところでモビルスーツのパイロットとしての経験を聞かせてくれ。来ると思うか?」

 

何が、とは聞かない。もちろんザフト軍の事だろう。

 

「まず間違い無く来るでしょうね。何せザフトは全て強奪するはずが一機残しているんですから、破壊かまたは再奪取を狙いに襲撃に来るのは確実だと思います」

 

「だよなぁ。特に外にいるのはあのクルーゼ隊だ。奴等のしつこさを考えれば少なくともこのまま……ってことはないだろうさ」

 

「「え!?」」

 

クルーゼ隊、という単語に反応したのはマリューとナタルだった。

 

「奴等のしつこさを考えればここでのんびりしている暇はないと思うがね。ジャンク屋の彼もまた来ると判断してるんだし……早いところ迎撃準備を整えた方が良くないか?」

 

そう言うと、ムウはカタパルトデッキを後にした。

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アークエンジェルの部屋のベッドで寝息を立てている音が一つ。ストライクを動かしたキラだ。キラは二段ベッドの上で寄りかかるように寝ている。

 

「それじゃあ、コーディネイターは生まれる前の段階で遺伝子操作をされた人たちの事で、そうされなかったのがナチュラルってことなの?」

 

「うん、そういうことになるね」

 

壱佳はそこでミリアリアからこの世界の人種について聞いていた。もう気付いているかもしれないが壱佳はこの世界の住民ではない。一夏とは違う、ISの世界からやってきた世界初のIS女子搭乗者なのである。

ミリアリアから話を聞いて、壱佳は静かに拳をふるわせていた。

 

「……どうして、どうして人はそんな理由で争おうとするんだろうね」

 

壱佳の世界では一夏とは逆の世界、男尊女卑社会が当たり前となっていた。それもこれも、全ては男性にしか乗れないISに原因はあった。

 

「壱佳……」

 

「ただ遺伝子操作をされたされてないだけ、たったそれだけのことで、どうして人は傷つけあうのかな……?」

 

理不尽な社会の中を生きてきた壱佳にとって、この世界は自分の世界とどこか似通っていて、同時に悲しみを感じていた。

 

「にしてもキラの奴、こんな状況でよく寝れるよな……」

 

ベッドの上で寝ているキラをトールはどこか呆れた目で見ていた。

 

「キラ、本当に大変だったからね」

 

「……((大変だった|・・・・・))…かぁ、確かにそうなんだけどさ……」

 

ふいにカズイがそんな言葉を漏らす。

 

「何が言いたいんだ?カズイ」

 

「別に、ただキラにはあんな事も((大変だった|・・・・・))で済んじゃうもんなんだなって思ってさ。キラさ、OS書き換えたって言ってたじゃん?アレの、それっていつさ?」

 

「いつって……」

 

今でしょ。なんて言えない……

 

「キラだってあんなモンのことなんて知ってたなんて思わない。じゃあアイツはいつ書き換えたんだよ」

 

今でしょ(ry

カズイはベッドの上で寝ているキラをもう一度見た。

 

「キラがコーディネイターだってのは前から知ってたさ、けどさ、遺伝子操作されて生まれてきたコーディネイターってのはそんな事も((大変だった|・・・・・))で済ませちまうんだぜ?そんなんと戦って勝てんのかよ地球軍は?」

 

この場の全員が不安の表情を見せているその時、部屋の中に一人の男性が入ってくる。

 

「重要なのは、勝ちとか負けとかじゃない。どうやってこのバカげた戦争を終わらせるかだ」

 

「織斑さん……」

 

部屋に入ってきた男性、織斑一夏の両腕には食料が抱えられていた。

 

「丁度ウチで補給しておいたモンだ。腹も空いている頃合いだろうし、持ってきた」

 

先程一夏の艦であるプトレマイオスことトレミーと合流したアークエンジェルは、余分に補給しておいた食料を分けてもらっていた。一夏は忙しい彼らに変わってキラ達の分を持ってきてくれたのである。

 

「すみません、わざわざ」

 

ミリアリアが一夏から貰った食料を皆に配り始める。キラは相変わらず寝たままだ。

 

「……俺たち、どうなるんだろうな」

 

受け取った食料を眺めながら、サイは呟いた。

彼らは元々軍人ではなく民間人だ。本来ならばシェルターに避難しなくてはならないのだが、外の状況が分からない以上、ここにとどまることしか道は無かった。が、このまま行けば地球軍と行動を共にしなくてはならないのでは?と考えてしまい、結果どうしようもない感情が溜まるばかりだった。

 

「世界はいつだって、こんなはずじゃないことばかりだ」

 

「一夏さん?」

 

「……昔、クルジスで出来た親友が言ってたんだ」

 

その親友はテレビや新聞で戦争の話を見たり聞いたりする度にその言葉を口にしていたと言う。

 

「今、まさにその通りなんだって実感できる。明日は今日と同じで、平和な1日を送れる。その筈だったのに、戦争は無慈悲にそれをぶち壊していく……」

 

そう語る一夏の目には、悲しみの色が濃く映っていた。

聞けば一夏は、この一年間の殆どを紛争コロニーで過ごしてきたらしい。人が撃ち、撃たれ、嘆き悲しむ姿は嫌と言うほど見てきた。そう語っていた。

 

「何故、人は同じ過ちを繰り返す?何故、人は過去から何も学ぼうとしない?何故、人は互いに理解しようとしない?」

 

次々に投げ掛けていく一夏の言葉。その何れかにも壱佳達は答えなかった。否、答える事が出来なかった。

 

「たはは、ごめんよ。難しいこと言っちゃって」

 

そう言うと一夏はクルーゼ隊の警戒のため、ダブルオーセイバーのあるカタパルトデッキへ向かって行った。

それからしばらくすると、目を覚ましたキラがベッドから降りてきた。その顔は酷く窶れているように見えた。

ヘリオポリスに爆発が起きたのは、ほぼ同時刻だった。

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トレミーの4基ある回転式コンテナブロックのうちの一つで、ダブルオーセイバーの出撃準備を終えた一夏は苛立っていた。戦術予報士でもある一夏の予報が的中してしまったからだ。

一夏は先程、連合軍に民間人を安全な区域に送るまでの間だけ護衛をすることを約束した。理由としてはやはりアークエンジェルの戦力にあった。ストライクはキラ以外使えない、だが当の本人は民間人でこれ以上戦争に巻き込ませるわけには行かない。ムウのメビウスも、大破しているので出すことは不可能。とすれば自ずとザフトに対抗できるのは一夏たちだけとなる。

目の前の画面にはスオウの【ラファエルガンダムアルデウス】、優樹菜の【ガンダムサバーニャレギルス】、奏の【ガンダムハルートヴァルキュリー】が出撃準備完了の合図を送っていた。マリューにはあらかじめキラを強制させないよう釘を差しておいたし、ムウはメビウス・ゼロがシグーとの戦いで大破しているので出撃は不可能。一応もう一機ガンダムがあるにはあるが、パイロットがいないので事実上、今回の戦闘はこの四機で乗り越える事となる。

 

「チッ、まさかこの俺が軍の為に戦わなくちゃいけねぇとはな!」

 

ラファエルからの回線でスオウが悪態を吐きながらヘルメットを被る。クルジスで兄と両親、そして仲間達を同時に失ったスオウはここの誰よりも軍を、そして戦争を嫌悪していたからだ。

 

「スオウ、これは連合を守るための戦いじゃない。民間人を守るための戦いだ」

 

事実、これ以上ザフトの好きなようにさせてヘリオポリス内を暴れでもされていたらヘリオポリスの人々に危害が及ぶかもしれない。一夏はそう言う意味で連合と共同前線を張ることを決意したのだ。

 

「わぁってるよ!」

 

ぶっきらぼうにそう答えるとスオウは通信を切った。それを後の二人がクスクスと笑う。この流れはいつものことなので一夏もあえて咎めたりはしなかった。

 

『それでは敵機の報告をします』

 

アークエンジェル及びトレミーの全画面にロイドの顔が映る。その顔は普段のテンパり少年とは違い、しっかり者の顔だった。普段からそれなら良いのに……トレミーのパイロットと子供達はいつもそう思わずにはいられなかった。

 

『熱源反応の数は4。ジンが三機、うち二機はD装備を確認。イージス、ブレイヴ五機でしゅっ!〜〜っ!!』

 

……噛んだか

 

「噛んだね」

 

「噛んだな」

 

「……」ジュルリ

 

オイマテコラ優樹菜。このオタクショタロリガールめが、なにがジュルリ。だコラ。

 

『そ、それでは各機モビルスーツ。出撃お願いしますっ!』

 

カタパルトデッキのハッチが開いたのを確認すると、各々が出撃前の台詞を口にしてから空を駆ける。

 

「オーライ!スオウ・ラケルス、ラファエルガンダムアルデウス。目標を木っ端微塵にぶっ壊す!」

 

「アイ・ハブ・コントロール!ハルートヴァルキュリー、篠波奏、迎撃行動に入るよ!」

 

「四宮優樹菜、サバーニャレギルス。目標を狙い撃ちつつユッキユキにしてやんよ!」

 

『ヤンヨ!ヤンヨ!』

 

サバーニャレギルスのコクピットにはほかのガンダムマイスター達には無いものがある。それが独立AI式球形小型汎用マシン【ハロ】の専用ポッドである。

 

「……織斑一夏、ダブルオーセイバー。目標を駆逐する!」

 

今、ジャンク屋ソレスタルビーイングのガンダムマイスター達とザフト軍の戦闘が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレミーから出撃すると同時に俺たちは散開し、アークエンジェルはゴッドフリートからビームを放った。ロイドの報告通り、敵機はイージス、ジン三機(うち二機は対艦・対拠点用装備)にブレイヴ五機の計九機であった。ゴッドフリートから放たれた四条のビームは、敵が散開したことでそれを回避した。

 

「優樹菜はトレミーを足場にジンのD装備を!スオウと奏はブレイヴを!イージスは俺が討つ!」

 

「がってん!」

 

「judge」

 

「オーケイ!」

 

スオウ、奏、優樹菜の順に返事が返ってくるのを確認した俺はトリプルドライヴを稼働させ、一気にイージスと距離を詰め、GNソードXで斬り掛かるがそれはイージスのビームサーベルによって防がれてしまう。ならばGNソードWフルセイバー フルセイバーモードを振るうがそちらもビームサーベルで防がれてしまう。互いに両腕を防いでいる状態が均衡すると誰もが思ったそのとき、腹部に光が集まり始める。

 

「喰らえ!」

 

「やばっ!」

 

それがイージスの武器が一つ、580mm複列位相エネルギー砲スキュラであると気付いた一夏は慌ててGNフィールドを形成、スキュラを無効化する。

 

「なんだとっ!?」

 

「隙だらけだ!」

 

至近距離でのスキュラを回避するのではなく、無効化した。それがイージスのパイロットに精神的ダメージを与えていた。その隙を逃すほど甘くない一夏は、その場でグルリと回転すると左足に装備されていたGNカタールでイージスの右手を切り落とした。

 

「くぅ!」

 

ショートしだした右手を押さえながら、イージスはダブルオーセイバーから距離をとる。

そこにトレミーから通信が入る。

 

『一夏さん!』

 

「フェイト?」

 

通信の相手は、優樹菜の代わりを勤めているフェイト・テスタロッサだった。その声には焦りの色が伺えた。

 

「何かあったのか?」

 

イージスの攻撃をひょいひょいと楽に避けながらフェイトと通信を続ける。イージスのパイロットはそんな動きが癇に触ったのか、さらに激しくビームサーベルを振り続ける。

 

『は、はい!アークエンジェルからソードストライクと、それとエクシアリペアが……!』

 

「何!?」

 

一夏はカメラの対象をイージスからアークエンジェルとトレミーに向けた。そこにはそれぞれのカタパルトからキラが乗ってるであろうソードストライクと、搭乗者不明のエクシアが姿を現した。しかし、エクシアに関しては以前宇宙海賊との戦闘で中破されたままなためにボロボロの姿だった。

ストライクに関してはキラが自ら戦うと決意したからなのだろう。が、エクシアリペアについては何も分からなかった。

 

『『一夏さん!!』』

 

ダブルオーのモニターに二人の顔が映る。一つはストライクからキラ、そしてもう一つはエクシアリペアから━━驚くことになんと折野が映った。

 

「……マジ?」

 

いい加減鬱陶しくなったイージスの顔面にパンチを加えて吹き飛ばしながら一夏は唖然としていた。

しかし、ここはあくまでも戦場。何時までも唖然としてるわけにもいかないので一夏はコホン、と大袈裟に咳をしてからまずキラに話し掛ける。

 

「キラ、戦う気なんだな?」

 

「はい。本音を言えば僕は戦争なんてしたくない。それにアークエンジェルには一夏さんたちが居てくれている。……でも、もしも僕が戦わなかったせいでサイやトール達が死んでしまうなんて事になったらと思うと……」

 

幼いながらも、友人を守るという決意を固めるキラ。その目に嘘偽りは無かった。

 

「そうか、なら俺からは何も言わない。友を守るために精一杯頑張れ」

 

「はいっ!」

 

元気よくそう答えると、キラは通信を切ってから地面に這い蹲っていたイージスの元へ向かう。獲物を奪われた……なんて考えてないからな?

続いて折野の方に視線を向けるが……正直何を聞けばいいのかわからない。よって

 

「……折野、後でそれ乗った理由を聞かせて貰うよ」

 

「ふえ?あ、はい……」

 

答えると折野はジンの方へと向かった。

 

(さて……)

 

俺、これからどうしよう?イージスはキラに取られちゃったし、ジンは武装全部サバーニャレギルスに取られちゃってエクシアリペアにボコられてるし、ブレイヴは健在みたいだけど四機ともラファエルとハルートヴァルキュリーが相手してるし………………ん?((四機|・・))

 

ピーピーピーピー!!

途端、上からの敵襲を知らせるアラームがけたたましく鳴り響き出す。……ってやばい!

 

「こなくそっ!」

 

一夏は背中のトリプルドライヴの稼働率を高めることで上昇させた機動力を使い、その場から離れた。その瞬間、さっきまでダブルオーがいた場所には変わりにブレイヴがいた。

だがしかし、そのブレイヴは通常のもののカラーとは違い、蒼い色で統一されていた。

 

「久し振りだな、ガンダム!」

 

接触回路によって聞こえてきた声に、一夏はドッと滝のように汗が流れてきた。

 

「お前は……まさかっ!?」

 

知っている。俺はこのパイロットの事を知っている。何故なら半年前にやりあったばかりだから、そしてそれからも執拗に追い掛けられ続けてきたから、一夏は知ってしまった。そう

あのブレイヴに乗っているのは……!

 

「クレアス・エーカー、君と君のガンダムの存在に心奪われた女さっ!」

 

世界一、俺が苦手とする女性なのだから……

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あえて言わせてもらう!一夏の前に立ちふさがったのはグラハム・エーカーの性転換版であると!

もう一つ、あえて言わせてもらう!クレア嬢はこの時点で一夏の正体を知っている上で心奪われているとな!

最後にあえて言わせてもらう!三人目のヒロインはクレアス・エーカーであると!

 

※書き忘れ

クレア嬢のcvは遠藤綾。オリノンは中島愛です。(とあるユーザーさんのを参考にしました)

説明
ついでにオリノンの機体の断片が出てきます
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コメント
車両系は砂漠の虎で出せそうです(アインハルト)
また、シードからデスティニーになる為の先行試作艦船とか車両系とか航空機系もいいかもしれないです。(駿河)
いいでしょう。タケミカヅチ系の試作艦船とか、(駿河)
ケイさんへ あー、たぶんそうです。でも今更どうやって直せばいいんでしょうか……(アインハルト)
……自分はまだまだということですか……(アインハルト)
アインハルトさんへ、返信ありがとうございます。詳しく説明しますと、「C.E.73 Δ ASTRAY」に登場するロッソイージスならMS時でも使用可能ですが、イージスはMA時のみです。ひょっとしてロッソイージスの方と勘違いされたのでは?(ケイ)
ザフトには階級が存在しない筈では?白・黒・赤・緑で区別されているとおもうが?(西湘カモメ)
ケイさんへ …………マジ?どうしよう……(アインハルト)
初めて書き込みます。本編で気になったことが、イージスのスキュラはMA形態時のみ使用可能です。(ケイ)
駿河さんへ 車両系に航空機かぁ……ガンダムシリーズから登場のものでも構いませんか?(アインハルト)
今作の優樹菜は他ほど一夏ラヴではないですね。まぁ、それでも一夏ラヴなのには変わりませんが……(アインハルト)
俊さんへ とりあえず捕まらないよう頑張らせます。言い訳……考えてなかった(アインハルト)
返信お待ちしています。次回も楽しみです。(駿河)
リニアガンタンクやシグーやブルドックとかの、マイナー車両系や航空機や艦船、MS が大いに活躍して欲しいです。(駿河)
しかし、此処の優樹菜は一夏ラヴじゃ無いんだな。オタクショタロリガールって、まともな恋愛出来るんだろうか?(俊)
重度のストーカー、クレアに追いかけられる一夏。今後の対応が楽しみです。トレミーに格納していたエクシアリペアに乗り込んで戦場に出て来たオリノン。どんな言い訳を言うのか、次回が楽しみです(俊)
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