新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 外伝 第004話
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新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 外伝 第004話「もう一つの物語の始まり」

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「やぁ逓さん。今日も法さんと逢引きかい?」

「ち、違いますよ。おじさん何言ってるんですか!?」

ただ今正義は買い物の為に出ていた鈴華の手伝う為に彼女に付いていた。

村の者は鈴華のことを逓さん逓さんと呼び慕っていた。

法さんと呼ばれたのは正義である。

この国の習慣に合わせるのであれば、輝守正義では格好が付かない。

それに輝守という姓も特に想入れは無い。

だから新しい姓と名、字を名乗る事にした。

姓は法、名は正、字を孝直と名乗り、真名を正義とした。

自分の三国志の知識にもそんな人物がいたような気がしたが、実際に会ったときは会ったときであるので、今はこの名を使う事にした。

正義がこの時代に来て一ヶ月が過ぎようとしている。

未だ自分が何故この時代に来たのか判らないが、この村の人たちも得体も知れない自分を受け入れてくれて、のんびりと暮らしている。

また村の者が受け入れてくれた理由も、「逓さんが大丈夫と言うから」である。

鈴華のこの村での人望は計り知れなく、いざと言う時は、皆彼女の為に命すら投げ出すとも言っていた。

正義のここ最近の日常は、まず朝日が少し昇る前に目が覚める。

顔を洗い、木を割って、一日使う分の薪作り、無くなりそうになれば山に拾いに行く。

朝日の光が出始めると鈴華を起こし、彼女が顔を洗っている間に朝食を作る。

現代人の彼は、電化製品に慣れてしまい、この時代の日常に戸惑うかと思いきや、全くそんな素振りは見せない。

記憶には無いが、どうやらサバイバル経験があるようだ。

知識と体が覚えていたのだ。

そして顔を洗い終えた彼女が途中から参加をして、二人で朝食を作る。

鈴華はいつも必要以上の料理を作る。

話を聞くと、彼女が妹と共に暮らしていた時、その妹はよく食べる子だったらしい。

朝食ですらいつも十人前程作っていたと言う。

一人でいる時はその感覚は正常らしいが、どうも隣に人がいると作り過ぎてしまうらしい。

流石にその妹と同じ十人前を作る訳ではないが、それでも最低五人前は作ってしまう。

正義自身は五人前を出されてもいつも食べきるのだが……。

朝食を終えると二人で山菜取りや猪狩りに出かける。

正義が来る前までは、彼女はその豪腕で猪を仕留めていたらしいが、今では彼のベレッタで頭を打ち抜いて仕留めている。

最初はそのベレッタの発射音に鈴華もびっくりしていたが、最近ではもう慣れたご様子。

この時代では手に入れることの出来ない銃の弾をこんな所で消費していいのかとも思うが、彼は自身の知識のみで弾をコツコツ作り、今では数個のマガジンも出来ている。

そういう事で彼はいつも狩りの時はベレッタで仕留めていたが、時にはナイフを使い感覚を鈍らせないようにもしていた。

そして動物の皮や薬草、漢方に仕える熊の肝などを売りに行く。

村人やたまにここを訪れる商人などに売りつけを終えると、村の店で昼食を済まし自宅へと戻る。

正義はこの時代に来た時に一番最初に行ったのは、字を覚えることであった。

この世界で何か行うことがあろうとも、字が読めなければ話にならない。

記憶には無いが、彼は東大出のエリート。

勿論漢文は読めなくもない。

だがそれぞれの地方の独特の言い回しや書き方など出されたら彼も戸惑う。

そこで昼が終わると自宅で鈴華に教えを乞うた。

彼の頭が良いのか、鈴華の教え方が良いのか正義は三日でこの時代の漢文をマスターした。

それ以降の日は鈴華の自主演武に付き合った。

二人は向かい会い、それぞれの武器を構える。

正義は両手にトンファを持ち、鈴華が構えているのは御手杵。

切先から石突までの全長は3.8m、刃先も138cm、茎まではあわせて215cmは在ろう槍を構えていた。その昔、項羽や呂布の持っていた方天画戟でも1.8m〜2.2mである。

それを考えると相当長い。

『御手杵』とは、戦国時代、下総国結城の大名結城晴朝が作らせた天下三槍の一つ。

何故この時代にそんなものが在るのかは、説明するより便利な言葉がある。

“外史だから!!”……これで十分である。

まず先に仕掛けてきたのは鈴華であった。

彼女の突きを寸での所で避けると、彼女は槍を引き、続け様に次の突きを放ってくる。

次に彼女は大振りでその長い槍を振るうと、正義は咄嗟に柄の部分に入り攻撃を防ぐ。

柄の中央に入り、その衝撃を少しでも和らげるが、それでも受け止めるのがやっとな一撃だ。

彼女の槍の重さは少なくとも20kは超えているであろう。

更に長さは3m強。

それにかかる遠心力も加え、リーチの長い武器を扱う割には、切り開始もかなり早い。

自分より小さな体で、その細い腕の何処にそんな力があるのか謎である。

そんな事を正義は考えているが、本来トンファの長さは45cmぐらいである。

だが彼の持つ獲物も80cmはあり、かなり木も厚く、さらに持つ所以外は全て鉄の筒で包まれているので、そんな簡単に折れる代物でもないであろう。

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鈴華は元軍人と言うこともあったので、やはり武術における力量、判断力、武器を繰り出す速さに於いては正義が適う訳が無い。

現段階で彼が彼女に勝っている点は、攻撃のリーチの幅が大きい彼女に比べれば、正義ははるかに短い。

だが、リーチが短いということは、それだけ次の攻撃に入るタイミングが速くなることでもある。

そう考えていても、鈴華の切り返しもかなり速く、これに関してもわずかに正義が優っているぐらいである。

これも彼女の腕力といくつもの戦場を潜り抜けて来た経験により成せる技なのだろう。

そうと判れば彼は攻めて攻めて鈴華に攻撃の隙を与えない。

だが彼女は彼の猛撃を軽く払っていき、やがて正義の左手の持つトンファを一つ、槍で取っ手の部分を引っ掛け弾く。

だが彼はそんな事にも動じず、弾かれた遠心力を使って回転をし、鈴華に蹴りを放つ。

そんな規格外の動作をされ、彼女は咄嗟に槍で構えて蹴りの衝撃を受け止めると、かなり後ろに後退してしまった。

正義と鈴華。

純粋な力圧の勝負で言えば正義は彼女の足元にも及ばないのは承知している。

だが彼女の力を利用した上で、なおかつそこに自分の力を足せば、彼女を仰け反させることも可能だ。

鈴華の怯んだ隙に正義は蹴りの動作の際に既に用意したナイフを空の左手に持ち、彼女に掛かる。

すると突然鈴華は自身の持つ獲物を足底で正義に蹴り放つ。

放たれた槍の勢いが強すぎたのか、正義は避けることが出来ずに重量20kの槍の重さを諸に受け止めてしまい、何とか槍を自分の方向から逃がす事に成功するものの、気付いた時には目の前に鈴華が居り、彼女の主塔がは正義の右脇に打ち込まれた。

その脇に激痛が走ると、ナイフを持つ左手の握力が弱くなり、鈴華は上空に弾く。

彼女は右手のトンファも叩き落とし、最後に回しローキックで正義のバランスと崩し、上空に放ったナイフを右手に握る動作と、彼の首を左手で掴む動作を併行して行い、左手で彼を叩きつけ、倒れる彼の咽下にナイフを構えた。

降参とばかりに正義は両手を挙げると、今日の演武を終了させた。

 

「いや、まさかあそこで鈴華が獲物を手放すとは思っても見なかったよ」

「敵に勝つには手段を選びません。貴方の規格外の動きに対抗するには、こちらも予想出来ない動きをすればいいのです」

「なるほど、ということは、あの動きは俺の動きをマネいたのか?」

「さて、それはどうでしょう」

彼女が小さな拳を作って口を軽く押さえ、「ふふっ」と笑う姿に、彼は少し顔を赤らめた。

鈴華が「風邪か?」と聞くと彼は「なんでもない」と言い顔を背けた。

そんな日常が流れていき天水の村に、反董卓連合により董卓が討たれたとの報告が入った。

かつての仲間は捕らえられ、妹であり唯一の家族である呂布も行方不明。

董卓の善政に支えられていた彼らは、洛陽に於いて董卓が悪政を働いていると聞いても信じられなかった。

さらにその董卓が討たれたのもより信じられなかった。

村の者が嘆き悲しんでいる時に、鈴華は激励を飛ばした。

泣いている場合では無い。

董卓がいなくなった以上、自分の身は自分で守らなければならない……っと。

董卓が亡くなって一番悲しんでいるのは、この村ではかつて彼女に仕えていた鈴華に違いないのを思うと、自分達がその彼女に励ましてもらっているようでは駄目だという考えを持ち、彼らが行う自主演武にも力が入る。

元々は鈴華に施されて行っていた自主演武も、この村ではいつの間にか生活の一部となっており、村に住まう若者も、いつの間にか軍に所属する兵と同じくらいの力を持ってしまっていた。

だから周辺の土地勘をもつこの村がこの地で戦えば、下手すれば普通の国の精鋭部隊以上の力を放つ。

鈴華と正義の住まう住宅の庭では、彼女が槍を振るっている。

董卓がいなくなった以上、自分がこの村を護らなければという気持ちが彼女を駆り立てる。

「………鈴華、何を無理している」

「無理などしていません。私は村長です。私がこの村を護らなければ」

「まぁ、これを見ろ」

正義はそう言うと、彼女にとある紙を渡す。

「私が調べた情報によれば、董卓は悪政を行っていなかった。それどころか洛陽を住みやすくしようと奮走していた。今回の戦、どうもキナ臭いと思えば、劉弁の策略だったようだ。その劉弁は勅命により、西涼の影村と天の遣いと名乗る者達に処刑されたようだ。その成果により、影村は長安をやこの天水の地を与えられたそうだ。聞けば彼は『鬼善元帥』と崇められ、彼の治める地で行われている政治は、民の心を良く聞き罪を犯した者は身分も問わずしっかり罰せられているらしい。この村もきっと彼がしっかり護ってくれるに違いない」

正義が調べた影村なる人物の名前を彼は何処かひっかかっていたが、今は鈴華を鎮めることが先と思い何も考えずに彼女を説得する。

しかし彼女は正義の渡した紙を軽く確かめただけで、再び槍を振るい始めた。

そんな彼女を見かねて彼は行動に出た。

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「――鈴華、訓練には相手が必要であろう。私が相手になってやる。構えろ」

彼女がこれを聞くと彼に向かって構え始める。

背中に何かを背負っている様に見えるほど、彼女の肩は下がり、いつもと比べれば明らかに弱々しい。

やがて鈴華は無言のまま突っ込み、彼に突きを放つ。

正義がその突きを避けると、続いて次の突きが彼に襲い掛かる。

突きは鋭く速いのだが、明らかに足りないモノがあった。

重さである。

だがその重さは決して力のことではない。

むしろ力に関しては、董卓が討伐された悲報が流れた時から訓練を重ねて来た彼女だ。

上がっているとも言っていい。

それでは彼の考える重さとは何か。

それは重さではなく想さ。

武人が放つ一撃の想さが明らかに欠けているのである。

この想さが欠かるだけで、武人にとっては大きな痛手にもなり得る。

鈴華は槍を突けど、振るえど、上より叩きつけど、正義は彼女の攻撃を軽く受け止めた。

流すのでは無く、受け止めているのである。

本来重い一撃というものは受け流そうとするのが普通であろうが、彼は”あえて”鈴華の一撃を正面から受け止めているのである。

その攻撃をまどろっこしく思ったのか、彼女はより攻撃を速くするが、結果は同じ。

すると突然正義が攻勢に出た。

いつもは正義の攻撃を受け流している側が、今は正義の攻撃に圧されている。

「こんなはずでは――」と思うのは簡単であるが、現実は現実。

やがて彼女が持つ獲物は弾かれ、鈴華は家の壁に叩きつけられた。

その彼女を逃がさぬ様に彼女の両肩を両手で抑え付けた。

「落ち着け!冷静になれ!一体何を我慢しているのだ!?そんなに気を張っても董卓は(生き)帰って来ないのだぞ!!」

その一言に鈴華は力一杯にもがき、彼に抵抗するが、全く彼の拘束が解かれる事が無い。

「黙れ!!貴方に何が判りますか!?貴方に月様の何が判りますか!!?余所者の貴方に!!」

最後の一言を言ったとき、彼女は「しまった!!」と言わんばかりの表情になった。

記憶も無く、頼れる者無く、突然この地に放り出された彼に、最後の言葉だけは言ってはいけないと思っていた。

だが彼は続けて答えた。

「確かに私は余所者だ。董卓のことも知らないし会ったことも無い。誰かが『アイツは暴君だ』と言えば信じてしまうだろう。だが、そんな余所者でもこれだけは判る。大切な者が亡くなったのであれば泣けばいい」っと。

その瞬間鈴華を拘束していた彼の腕は解けると、彼女は今まで我慢していた事を思い出す。

そして目元から大量の涙が溢れ、崩れる顔を手で押さえてヘタリ込みその場で泣き出した。

「月、月」と泣き叫ぶ彼女を、正義はそっと抱きしめた。

「泣きたいなら泣くがいいさ。この胸で良ければ貸してやる」

やがて鈴華は正義の胸を借りて思いっきり泣いた。

鈴華は日が沈むまで泣き、そのまま寝てしまった。

翌日、起きて気付けば彼女は自分の寝室の寝具の上で横になっており、隣には椅子に座った正義が腕を組み眠っていた。

恐らく鈴華が寝付いてもずっと見守ってくれていたのだろう。

鈴華は正義に自分のかけていた布団をかけると外に出て朝日を浴びながら体伸ばす。

昨日は精一杯泣いた。

悩みも吹き飛んだ。

あとは決断するだけであった。

正義が起きて来た頃には、既に鈴華は朝食を用意していた。

「正義、私はこの村を出ようと思います」

彼女のこの発言に彼は口に頬張っていた米を飲み込み、箸を置き彼女の言葉に耳を傾ける。

「月様……董卓の事ですね。彼女のことは仕方がないとは言いたくはありません。しかし私にはまだやることがいます。以前に妹がいることは言いましたね。名は呂布奉先。彼女は戦場で行方不明になったと聞きました。生きているのなら、私は救いたい」

「そうか……わかった。俺も行こう」

そう言うとまさかそう返されるとも思っていなかったので、鈴華もつい「何故?」と聞き返してしまう。

「俺も何故自分がここにいるのかの理由も知りたい。それに……いざという時、君も泣けないだろう?」

ニヤつきながらそう言うと、鈴華は顔を赤くして包丁を振り回す。

実際正義は今回の件で彼女の強さも弱さも知った。

それに小さなニヤつきだが、彼は今心の底から笑っている。

今の彼の記憶には無いであろうが、正義は例の友人が行方不明になってから一度も笑ったことが無かった。

笑う時はいつも(表情の)仮面を付けており、今この時まで心の底から笑うことも忘れていた。

鈴華も包丁を振り回してはいたが、内面では嬉しさと戸惑いを見せていた。

戸惑いは言うまでも無いが、嬉しさはこんな私に着いて来てくれるのか?という意味もあり、今まで全く笑顔を見せたことの無い彼が笑顔を見せたのだ。

そういう意味での嬉しさもあった。

その後、村の者に話せば彼らは快く「行って来い」っと言ってくれた。

ちらほらと「法さんと宜しく」や「法さん。逓さんの事幸せにしてやるのだよ」などと声が出てくると、彼も「任せろ」だの冗談を言うものであるから、また鈴華は顔を赤くして彼に向かって槍を振るった。

こうして二人の物語が始まった。

 

説明
おはようございます皆さん。

合宿も終わり、無事免許も取得してきましたww

今回も外伝を投稿ですが、別に本編がネタ切れというわけではないです。
それでは( ^ω^)_凵 どうぞ

これは上書き修正しています。2015/04/07
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真・恋姫無双 正義 鈴華 奴の名は法孝直 

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