仮面ライダーオーズ×ポケットモンスター 氷の中で燃える炎・欠ける虹 10話 |
人知れず起こった戦いから一夜明け、朝食を済ませたリト達はサトシのいる寝室に集まっている
そこではリトが古びた本を片手に仰向けになっているサトシに何か探るような動作をしていた
「…確かに昨日アイツが言ってたのは間違いじゃないな」
「ってことは…」
「今は意識がない。サトシの感覚を通してこっちの喋っていることを聞かれることはない」
昨夜サトシの体を乗っ取り、戦った相手…ギルは眠っている状態にあるらしい
その事を確認し終わった途端、デントが質問をした
「ねぇ…君は本当に何者なんだい…?その本といい、昨日の……あの姿といい…」
「……そうだな、じゃあまず俺のことを話すかな」
サトシが服を着たのを確認し、何かをポツポツと思い出すようにリトは話始めた
「まず、俺がここの世界とは別の世界……まあ、異世界から来たのは言ったな?俺はもといた世界で地球を滅ぼす敵を倒したことがある。でもそいつは宇宙の為にやったことが周りに迷惑になっただけだったんだ。そして俺はそいつを救えなかった……。だから俺は償うために何をするべきなのか考えたんだ。でも見つからずに一ヶ月たったある日…夢を見た」
「夢?」
「辺りがなにもない空間に、最初はポツンと俺一人が浮かんでた。でも目の前に……赤い光が現れて、それが人の、いや巨人の形になったんだ。銀色の体をした巨人…そいつは自らをノアと言った。それで頼み込まれたんだよ……別の世界を旅して、存在する歪みを正してくれって」
「歪みって……何の?」
「ノアが言うには、それぞれの世界の人間、生き物から出る負の感情…怒り、悲しみ、怨み…そんなものが世界に収まりきらずに、異常なほど溢れたときに発生するものらしい。まあ、まだ俺あったことがないからどんなものかは知らないけど」
「随分と曖昧な…」
タケシがリトの不安定な説明に肩を落とした
そんなタケシにリトも苦笑い
「はは……、話を戻すぞ。ノアはいわば宇宙人みたいなやつでさ…別宇宙を移動していくうちに別の世界の移動方法、そして世界の管理権限を手に入れたらしいんだ。俺と会うまではノア一人で歪みを正してたんだが、それができなくなってきたらしくて…」
「えっ…、何で?」
「ほぼ全ての世界には『物語』が存在する。ノアもまだ終わってない物語の登場人物の一人でさ。自分のやるべき物語を進める為に別の世界へ移動できなくなったんだ。でもそこで目をつけられたのは俺だった。物語があるとは言えない世界出身で、戦闘力も十分ある俺を二番目の管理権限を持つもの…管理者にスカウトした」
「それでスカウトを受けたんだ」
「まあな、他の世界とはいえ誰かの涙が流れてるのならほっとけないし。それで俺は二番目の管理者になったってわけ。そんで俺に与えられたのが…この輝石だったんだ。これは不思議な石でさ、身に付けてると時の干渉をほぼ受けずに別世界を旅できるんだ」
「「「???」」」
リトの説明に頭の上からハテナマークを浮かべるサトシ達
正直分かりづらかったのだろう
「えっと…簡単に言えば、俺はこの石を身に付けて別世界に二十年いたとしても、俺の世界の時間で一日しか経ってないし、俺も一日しか時間経過してないってことになる。つまり俺は別世界で二十年経っても一日しか成長しない。ある意味、半永久の十五歳だな」
「「「――はぁああああああああ!?」」」
リトの最後の言葉にサトシ達は絶叫
分かりやすかったが、それ以前にリトの言葉が信じられなかったのだろう
「ちなみに俺、30年くらい旅してる」
「ってことは…リト歳上!?」
「大丈夫、俺の年齢自体はかわりなく15歳だから」
タケシとデントが同年代だと思ってたリトが歳上だと思って混乱
リトはそれを静止させた
「あともう一つ。受け継いだ管理権限は基本的に『創造』と『破壊』を司る。と言っても存在が不安定になった世界を一回『破壊』して安定なものに再『創造』する感じだからそんなに物騒じゃない」
「不安定…か」
「ふぅ……ここから話すことは俺の事でもあり、サトシの事でもあり……この世界にとっても重要なことだから」
リトは一息つき、少し顔を引き締めて言う
そこには先程の緩い雰囲気はない
「………俺の感覚で5年と半年前…俺はある世界に訪れた。そこはこの世界で言う800年以上も昔の文化、技術があった世界。ただ違っていたのは……そこに錬金術があって、それによって作られたオーメダルがあることだった」
「オーメダルって……サトシが変身するときに使う、あの?」
「ああ。それを作ったのは錬金術士達だけど作らせたのはその世界にいた王の一人……ギル王」
リトの口から放たれた名は昨日サトシの体を乗っ取った、ギル
その事にサトシ達は目を見開く
「ギルは世界の全てを手に入れる為に、神に近い存在になろうとして、その為に欲望の結晶であるオーメダルを作らせた。神に近い存在になるためには膨大な量のセルメダルとほぼ全てのコアメダルを必要としていたが、それにはセルメダルが圧倒的に足りなかったんだ。だからこそ、人間の欲望をヤミーとして産み出し、セルメダルを増加させる存在……グリードを作り出した。だけどグリード達はそれを拒絶した」
「えっ?何でなんだ?」
「グリード達は他の奴に指図されることを嫌ってたからな。自分の欲望に忠実なだけあるよ。だけど…強制的にセルメダルを作ることになってしまった」
「どっ…どうして…?」
「コアメダルは元々は五色の十枚セットだったんだ。でもそれでグリードを作ったら何もしない人形のような存在だった。けど十枚目のコアメダルを抜いた時、九枚と言う掛けた数字になった事で、その掛けた部分を埋めるように欲望が生まれ、人格ができた。アイツは……ギルはその抜いたメダルを利用して、自分に逆らわないように脅したんだ。引き抜かれたとしてもそれはグリードの一部。俺達で言う、心臓を人質に取られているようなものだったろうぜ」
その言葉にサトシ達は息を飲み、青ざめる
とてもではないが、想像しがたい恐怖だったのだろう
「ひどい……」
「それだけじゃない。ギルはヤミーを産み出す貪欲な人間を作る為に、城下町の周りに貧困街をわざと建てて高い城壁で囲った。貴族達は今の性格以上に裕福な生活をしたいと言う欲望を、貧困街の人々は今の生活をよくしたいと言う欲望を利用され、ヤミーを作る道具にされた」
「あんまりだよ……そんなの…」
「でもこれが現実なんだ…!」
リトは拳に力を入れた
まるで救えなかったことを悔やむように
「……俺はグリード達と戦った。五人のグリード達は全員が強くて、かなり苦戦してさ……でも勝った。そして改めてさっき言ったことを聞いたんだよ。そして理解もした。あいつらが本当に欲しているものを」
「欲しているものを…って欲望の塊のグリードだから色々なものが欲しいんじゃ…」
「そうなんだけどさ…昨日の昼言っただろ?グリードは所詮『モノ』でしかない…つまりは欲しいものを手に入れても満足することはないんだ。だからあいつらはなりたかった…満ち足りることができる、本当の命に」
「本当の…命に…ね…」
「それを聞いて俺はすぐにギルの所に乗り込んだ。ついでにグリード達もな。そこにいた兵士達を退けて、ギルから十枚目のコアメダルを奪い返して、グリード達は自由に…なれるはずだった」
「はずだった?」
「もうぐギルの計画は最終段階まできていた。いままで貯めたセルメダルとその場にいたグリード達のコアメダルを錬金術士達の術で…ギルと一体化させたんだ」
「「「!?」」」
「十枚目のコアメダルはなんとか守ったが、五色九枚のコアメダルを吸収し、ギルは化け物になった。理性がない怪物…そいつにはもうギルの意識はなかったんだよ。でもまだ、グリード達の意識はあった。だから俺は助けようとした」
「そっ…それで、どうなったの?」
「限りなく成功に近い失敗。化け物を倒して全てのコアメダルを取り戻したんだが…倒した勢いでグリードの意識が宿ったコアメダルが壊れかかってしまった。なんとか直せないかと思って錬金術士達を探したんだが、ギルに潰されて死んでいた。でも見つけたんだ。錬金術士達がオーメダルやその他の錬金術の全てが書いてある本…この錬金術士の本を」
リトはテーブルの上に古びた本を置く
先程使っていた本だった
「この本には人間の体にコアメダルが入った時の対処方法や、オーメダルの直し方まで書いてあり、俺はそれを使ってオーメダルを直したんだが…その時だった、ギルがもしもの為に用意した六系統目のコアメダル……紫色の恐竜メダルが動き出したんだ」
「それって昨日のメダルじゃないの!?」
「そう……紫のメダルにはギルの人格、記憶、錬金術の技術を全てコピーしてある。もしもギルが計画をできずに死んだら起動するようになっていてな。起動した時の力は空間を歪ませるほどだったからな、けっこう焦ったよ」
「それで……別のアタシ達がいる世界へ?」
「行った。でもその前に、その世界にあった全てのメダルを回収してオーメダルの設計図を全部燃やした。もう二度とグリードを産み出さないようにな」
「…ちょっと待って!グリードはそのあとどうなったの!?まさかその世界に…」
「いや、その世界にはいない。グリード達は……」
アイリスの質問に答えようとリトは胸に手を当てる
そして、真実を言った
「今、目の前に。俺の中にいる」
今、目の前にいる……その言葉に、サトシ達は絶句
ミミ達も目を大きく見開いていた
「……さっき言ったオーメダルの直し方……それは欲望の源である人間の体内にオーメダルを入れること。そうすることでメダルは欲望を吸収し、元に戻る。その代わりに……入れられた人間はグリード化するけどな」
「ってことは、昨日の姿は……グリード化した姿!?」
「でもまだ完全じゃない。俺の体に埋め込まれてるアークルって言う石の力で限りなく進行を遅めてる。だけど、もう五年以上経ってるからな、視覚と味覚…あと昨日のグリードへの変身で聴覚を失った。結構ヤバイんだよな」
サトシはリトを見つめた
自分と同じ境遇にいるのにこうも自分を助けようとしたのか
「グリード達とは五感を共有しててな。今も俺の中で話してるんだよ」
「へ、へぇ…」
「話を戻そう。紫のメダルはさっき言った世界…まあ『SPECIAL』の世界に行って俺も追いかけた。だけど、途中で見失って、途方に暮れた時に…レッドと言う少年に出会った。そこからは各地方を旅して図鑑所有者と事件解決した日々を送っていたんだが…大体五年くらいたった時の事件……ロケット団が悪さしてたんだが、そのロケット団の飛行船の原動力に紫のメダルは使われていた」
「使われていた?動いたりしなかったの?」
「正しくは動けなかった、だな。世界を移動するのに力を必要以上に使ってたらしくて、まともに動けなかったんだ。五年の間に少しずつ力を取り戻してたんだけど、その力を動力源に使われてて動けなかった。チャンスだと思ってそれを破壊しようとしたんだが、急に飛行船が落下しだしてさ。その衝撃でメダルは起動……この世界に流れ着いたんだ」
「それで…その事件はどうなったの?」
「……事件は解決した。…けど、それに巻き込んでいたレッド、グリーン、ブルー、イエロー、そしてシルバーが………石化した」
本日何度目か分からないがサトシ達は再び目を見開く
――サトシはミュウツーと最初に会ったときに石化したのだが、ミュウツーによってその記憶が消されている為、ひどく驚いていた
「その世界のオーキド博士にレッド達を頼んでこの世界に来たんだが……本当に良かったのか、まだ迷ってる」
「きゅん……」
暗い顔になったリトを心配そうに見上げるコン
すりよって元気をだしてと言いたそうな顔で鳴いた
「ありがと…コン。……ここまでが俺のことだ。あと俺が言うことは、サトシをどうやって人間に戻して、ギルを倒すかだ」
タケシ達はやっとか、と言う顔で緊迫した状態になる
だが、リトは独りでに…喋り始めた
「……オーメダルを作った錬金術士の一人にギルに反感を持つ奴がいてさ…そいつはセルメダルを産み出すグリードを倒すためにあるものを作った。それはコアメダルを三枚使って変身する…戦士」
「…リト?」
「…ギルが言ってたことにこんな言葉がある。……『無限と言う文字はOを二つ並べている。人間の可能性が無限と言えるならば、我はOを三つ並べた……無限を越えた存在になる』ってな」
「何を言って……」
「錬金術士はメダルを三枚並べたところから、ギルは無限にOを足したところからそれを名付けた。錬金術士が産み出したオーズドライバーで変身する戦士と神に近い存在の名は、皮肉にも同じ」
「それが………オーズ?」
リトは黙って頷き、再び語り出す
「さっき言ったように俺は歪みを正す為に存在する。確信はないが…この世界にも歪みが存在する」
「ええ!?」
「正確には『SPECIAL』の世界とこの世界で歪みが存在する。『SPECIAL』の世界では本来悪意を持たない人物が悪意を持っていた。そしてこの世界は……時が止まっている」
「時が…?でも止まってないじゃない!」
「この世界の時間じゃなくて人の成長する時間のことだ。だが、誰も気付いていない…ディアルガさえもだ」
「でも何でこことその世界だけ?コアメダルがやって来たから?」
「そうでもあるけど、元々『SPECIAL』の世界とこの世界はバランスをとって存在している。どちらかに異変が起こるともう一方に異変が起きる……まさに一心同体だな」
「そうか……でも何でそんなことを今話すんだ?」
「――これがサトシを救う方法の一つだからさ」
その言葉にリト以外の全員が立ち上がる
どういうことだ、と言いそうだ
「……俺はこの五年の間にグリード達と対話して、もしも誰かにコアメダルが入ったらどうするかを話し合っていた。そこで思い付いたんだ…『下剋上作戦』を」
「下剋上作戦?」
「下剋上は簡単にいえばしたのものがうえのものを打ち倒して身分を入れ換えること。それをこう置き換えればどうだ?『サトシ』が『ギル』を打ち倒して『紫のメダルの所有権』を入れ換える…ってな」
「そうか!…でも仮に出来たとしてもサトシはグリードになってしまうんじゃ…」
「そこのところは安心してくれ。この本には人間の体でコアメダルを扱うことができる項目があった。それを使えば…」
「なるほど…じゃあ具体的にはどうするんだ?」
タケシに質問され、リトは元々部屋にあった黒板に何かを描き始める
人形のものがいくつも書いてある
「まず最初にサトシに俺の中にあるコアメダルでオーズに変身させる。十枚目のコアメダルは力が強いからな。いつも以上の力にサトシの中のギルも警戒する。その間に俺の残りのコアメダルを使ってギルの意識が宿るコアメダルだけを確保…それと同時に俺は本で術をかけてサトシを元々の年齢にさせ、メダルの所有権をサトシに移す。後は紫のメダルの力で出たコアメダルを砕く。サトシも俺も人間に戻れるって言う作戦だ」
「へぇ〜、錬金術って年齢を上げれるんだ〜」
『――戦友よ、まだ説明が足りていないぞ』
黒板を使った説明が終わり、マサトが錬金術に感心していると、今まで黙っていたミュウツーが喋り出す
「!ミュウツー……だけど、あれは…」
『サトシには知らなくてはならないことだ』
「な…なぁ。なんのことなんだよ。俺のこと?」
サトシはミュウツーのテレパシーに疑問を感じる
自分が知らなくてはならないこととは何だろう…?そう思いながら
『サトシ、父親について何か聞いたことはあるか?』
「パパ?いや、俺が小さいときにポケモントレーナーになるって言って出ていったから何も…」
『出身は?』
「確か……ジョウト」
『そうか……戦友、もう話したらどうだ?』
「……はぁ…分かったよ」
リトは再び席につき、項垂れる
まだ何か言うことを躊躇しているようだ
「……前からおかしいと思ってたんだ。何でギルは時が止まっているとは言え十歳の子供の中に入ったか…」
「……………」
「この世界に始めてきたとき、ママさんにサトシには何か特別な力とかはないかって聞いたよ。でも答えはNO。でもこんなことを聞いた。サトシの父親にはそう言った力はあったって」
「サトシの……パパさんが?」
「触れたポケモンの傷が治ったり、枯れた植物が元通りになった…とかな。前者の能力はイエローも持ってるが後者は知らない。そこで俺はミュウツーにあるポケモンを探して貰った」
「えっ…何でポケモンを?サトシのパパさんじゃないの?」
ハルカに質問されるがリトはそれに答えない
まるで答えがもう少しで出るから待っていろと言う目で見つめ返した
「……ここにミュウツーがいるってことは見つかったってことなんだよな?」
『ああ、彼にも事情を聞いたからな』
「なら、決まり……だな」
椅子の向きをサトシの方向に変え、真っ直ぐにサトシを見る
リトのその目には……もう迷いはない
「昔はポケモンも人間も子供を産めたらしい。シンオウの図書館で見たことだ。でも今も昔も……ポケモンと人間の間に子は産めたんだ」
「…………?」
「サトシ、お前は半分怪人で1/4は人間……残りは――」
「ホウオウ…だ」
どうもXXXです
なんか所々メタいのがありましたね
さて何でか知んないけど中盤の話はあと3、4話位で終わります
なんかね……早くポケスペ編やりたいの……と言った理由じゃありませんよ?
と言う訳で、次回があるかどうかわからないけどサヨナラ、サヨナラ、サヨナラ…
説明 | ||
書き忘れてましたけど最終決戦中盤にやって後半戦闘やりながらギャグやるつもりです | ||
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