バカとIZUMOと悪霊退治 序章 文月学園 |
僕の名前は吉井明久。
文月学園2-Fに所属する「……学園始まって以来の((観察処分者|もんだいじ))で学園一の『バカ』だ」……。
……こら、雄二。
どうして人の解説に割り込んで余計な事を言うのさ。
言わなければバレないのに……。
それにお前だって観察処分者じゃないけど問題児の一人だろ!
「今更何を言っている?そんなことはもはや周知の事実だ。文月学園全校生徒全てが、お前がバカだと言う事を知っている。連想ゲームでバカと言われれば誰もが吉井明久と答えるくらいにな」
「…共通認識」
「あきらめるのじゃ明久」
黙れ!霧島さんに対して素直になれない雄二と自分がムッツリだと言う事を認めないムッツリーニと、自分が美少女だと自覚しない秀吉にだけは言われたくない!
「だからワシは男じゃと言うに……」
まったくこんなに可愛いのにどうして素直に認めないのかな…?
「明久様……安心してください…」
「我々も、お前がバカだと認識している」
「ま、常識よね」
「あきボンがバカやなかったら、この世にバカはおらへんって事になるからな」
精霊達まで((契約主|あるじ))の僕を裏切ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「大丈夫よ、明久君」
ああ、僕の味方は君だけだよ。
「例えアシハラノクニ一のバカでも、私は明久君が大好きだから///」
フォローになってないよ……、しかも何気に範囲が広がっているし……シクシク…。
僕らが文月学園に入学して一年が過ぎ、二度目の春が訪れた。
遅刻した僕を待ち受けていた鉄じ――西村教諭が僕に所属クラスが記された封筒を渡してきた。
「今、鉄人って言おうとしなかったか?」
「気のせいです、西村先生」
僕の配属クラスは……。
『吉井明久……Fクラス』
僕の最低クラス所属が確定した。
バカデカい教室のAクラスを覗いた僕は、その設備の充実さに度肝を抜かされた。
デカいプラズマディスプレイ、システムデスク、ノートパソコン、リクライニングシートはともかく……個人エアコンや冷蔵庫は無駄に豪華だと思う。
Aクラス全員に個人エアコンつけなくても、大型エアコンが4つくらいあれば、空調は万全だろう。
電気代の無駄だよ。
しかも教材はともかく、冷蔵庫の中身まで学園側が支給するなんて……贅沢にも程がある。
そして、Aクラス代表として紹介されている霧島翔子さん……。
僕らの学年を代表する才色兼備の双璧の一人…。
でも、美人なのに誰とも付き合わないので、女の子が好きだってウワサが流れているけど……。
ところ変わって僕の所属することになるFクラス。
入室と同時に悪友のクラス代表から蛆虫呼ばわりされ……システムデスクどころか卓袱台。
リクライニングシートどころか座布団。
腐った畳に割れている窓ガラス……天井を見ると蜘蛛の巣が張っている。
何だAクラスとの差は…いくら最下層のクラスとはいえ酷すぎる。
ここ、本当に教育機関なのか?
担任教師である福原先生から言われ、自己紹介が始まった。
僕たちのオアシス、木下秀吉。
演劇部に所属する男と女の垣根を超越した存在。
相変わらず可愛いが、生物学的に♂に分類されているのが残念だ。
眠れる黒豹、土屋康太。
またの名を『((静かなる性識者|ムッツリーニ))』の名で呼ばれる学年一のスケベだ。
本人は否定しているが……。
僕の天敵、島田美波さん。
僕を殴るのが趣味だと公言する恐ろしくピンポイントかつ危険なドイツからの帰国子女。
なんか僕の知り合いばかりだな。
誰だ!類は友を呼ぶなんて考えた奴は!!
しかし、そんなことどうでも良くなるくらい有り得ない人物が一人……。
むさ苦しい((男共|バカ))ばかりの中に存在する彼女……。
先ほどAクラスで見た霧島さんと並ぶ才色兼備な女生徒……北河麻衣さんだ。
彼女は入学以来、常に霧島さんと首席争いをしており、一学期の期末テスト、二学期の中間テストでは霧島さんを抑え学年首席となっている。
無論それ以外、一学期の中間と二学期の期末では霧島さんが首席だったけど……。
更に彼女は霧島さん以上の人望があり、一年にして生徒会長に推薦され、見事当選してしまったのだ。
教師からの信頼も、優等生として名高い秀吉の双子のお姉さん、木下優子さんよりも上だ。
そんな才女である彼女がFクラスにいる理由は、彼女は振り分け試験を途中退席してしまったのだ。
何でもテストが始まって直ぐに、彼女の保護者である北河神社の神主さんが倒れて救急車で運ばれたという連絡が入り、北河さんは試験を放り出して病院に駆けつけたとの事だ。
そして僕よりも遅く遅刻してきた彼女――姫路瑞希さん。
霧島さんと北河さんには及ばないが、彼女たちに次ぐ学年三位の成績を持つ彼女もFクラスに所属している。
彼女の事は僕以外知らなかった様なので、クラス全体が騒然となった。
彼女は、振り分け試験中に熱を出して退席した為、0点扱いにされFクラスにされてしまったのだ。
姫路さんといい、北河さんといい、テストを受けれなかった事情があるのに問答無用で0点扱いにした学園側は酷すぎると思う。
姫路さんの方は体調管理を怠ったので自己責任と言われてしまえば、反論は難しい――納得は出来ないが…。
北河さんの方は完全に本人の責任じゃないだろ!
教師たちからも北河さんに対しては「再試験を受けさせるべきだ」という意見が出たらしいが、教頭先生が例外を認めなかったと聞いている。
他の須川君とか横溝君とかモブ連中はどうでもいいから紹介を省略して……。
「「吉井殺す!!!!」」
最後に僕の悪友、坂本雄二。
Fクラス代表で、小学生の頃は「神童」と呼ばれるくらい成績が良かったらしいが、中学の頃から「悪鬼羅刹」の異名で呼ばれる程の悪童に堕ちた奴だ。
僕は姫路さんと北河さんが気の毒に思い、雄二に試験召喚戦争を持ちかけた。
特に姫路さんは体が弱いのでFクラスの環境は、彼女にとって酷なモノになる。
雄二も、僕に言われるまでもなく試召戦争を行うつもりだったらしく、快く引き受けてくれた。
Dクラス戦では姫路さんのおかげでFクラスの勝利に終わった。
Dクラス代表の平賀君もまさか、学年三位の姫路さんがFクラスとは思わなかった為、不意を突かれたのだろう。
ちなみに北河さんは温存していた。
Bクラス戦は、北河さんを中心に初日は有利に進めたのだが、Bクラス代表の根本君の卑怯極まりない策によって、姫路さんと北河さんを戦力外にされてしまった。
姫路さんは三日前に書いてて、恥ずかしがって僕から隠した例の封筒を根本君に奪われて脅され、北河さんは生徒会長としての仕事の為、2人とも戦線離脱を余儀なくされた。
後でわかったことだが、この仕事も根本君の差し金だった。
でも、そんな根本君の策謀もむなしく、僕と美波――Bクラス戦の初日に彼女からそう呼ぶように命令された――の活躍と400点オーバーのムッツリーニの保健体育によって敗れ去った。
姫路さんを苦しませた根本君には、雄二から素敵な制裁が下され、Bクラス戦は無事に終了した。
最後のAクラス戦だが、雄二は代表同士の一騎打ちを仕掛けると言い出した。
Aクラスも面倒な戦争を手軽に終わらせられる事には有難いようだが……メリットがないと言って難色を示した。
そこで雄二は、先の戦争で僕達が負かしたBクラスとDクラスを嗾けると脅した。
流石のAクラスも連戦は厳しいのだろうし、先の根本君への――女子制服を着て「Aクラスに対し戦争の意思と準備がある」と伝えさせた――嫌悪感もあるので、代表同士の一騎打ちを認めた。
雄二なんかよりも、北河さんの方が適任だと思うんだけど、それだったらAクラスも承諾しないだろう。
Aクラスの交渉人である木下優子さんは、姫路さんと北河さんを警戒していた……特に北河さんを。
「代表が調子悪くて、姫路さんが絶好調だったら問題次第ではどうにかなるかもしれないし、北河さん相手だと、流石の代表もかなり危ないしね」
まるで姫路さんが軽く見られているような木下優子さんの発言だが、まったくの的外れではない。
それだけ霧島さんと僕らとは実力がかけ離れているのだ。
そして、北河さんに対してはまったく油断していない。
何故なら、彼女は生徒会長としての雑務をこなしながら、霧島さんと首席争いをしていたのだ。
勉強に集中できた霧島さんと生徒会長としての雑務に追われていた北河さん。
どちらにハンデがあったかは自明の理だ。
何故なら、北河さんの雑務は観察処分者である僕よりも遥かに仕事量が多かったからだ。
にもかかわらずのこの成績だ。
なので、才色兼備の双璧と言われながらも、実際は北河さんの方が実力は上だという評価もあるのだ。
そこで木下さんは、一騎打ち七回で先に四勝した方が勝ち、というルールなら受けてもいいと言ってきた。
なぜ五人で三勝にしなかったのは、僕でも解った。
三勝だと、雄二と霧島さんの代表同士の一騎打ちの前にFクラスの勝利が決まってしまう可能性があるからだ。
北河さんと姫路さん、そして保健体育だけは霧島さんと北河さん以上のムッツリーニ。
ムッツリーニには、彼と同じく保健体育の得意な工藤愛子さんを当てるつもりのようだが、確実に勝てるとは言えない。
工藤さんは自信があったようだけど、結果としては予想通り……いや予想以上のムッツリーニの保健体育の成績500点オーバーで、工藤さんの446点を圧倒して勝ってしまった。
姫路さんは、現在の学年次席である久保利光君と総合科目で霧島さんに匹敵する点数で勝利し、北河さんも霧島さん以外では相手にならず圧勝だった。
ちなみに秀吉は、優子さんの振りをしてCクラス代表の小山友香さんに対し「豚」呼ばわりした事を咎められ、不戦敗になり……(ガクブル)。
僕と美波、須川君はあっさりとやられてしまいました。
僕は今まで出さなかった本気を出した。
実は僕は左利きだったんだ……なのに瞬殺されて負けてしまった。
「このバカ。テストの点数に利き腕は関係ないでしょう!」
美波がそう言って、僕の召喚獣の左腕を捻り上げてきて、フィードバックで僕も痛かった。
でも、美波だっていくら数学がBクラス並でも、Aクラスには歯が立たずあっさりと負けたくせにって僕の間接がありえない方向に曲がって痛い!
須川君に関しては……僕と同じく瞬殺だった。
そして最後、雄二と霧島さんの一騎打ち。
教科は日本史で、小学生レベルで100点満点の上限あり。
雄二の作戦は旨く行き、霧島さんは「大化の改新」の年号を間違え、97点。
でも、肝心の雄二がたかが小学生の問題と侮り、53点。
……僕らFクラスの卓袱台がみかん箱になるという結末で、今次の試験召喚戦争が終わった……。
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この作品はライトノベル「バカとテストと召喚獣」とPCゲーム「IZUMO2」とのクロスオーバー作品です。 |
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