超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ルウィー編 |
「ランランルー♪」
「−−−−!!!!?!?!?!?!!?」(←声にならない絶叫)
それは一見、風に見えた。
自由にどこからも吹く自然な風に見えた。
しかし、それは右往左往に動きながら、時に回転をして大気を貫くような螺旋を描く風だった。
天使の様な機械的の四対の翼から吹かれるブーストと、嵐と言うべき乱回転する中心で夜天 空は楽しそうに鼻歌を歌い、アイエフと紅夜は掴んでいる片手だけが生命線のジェットコースターに涙目で味合わされていた。
竜巻のように回る視界、胃の中はシェイクされ、意識がぶっ飛ばしそうな加速に既に臨界点突破したアイエフは白目向いて気絶していた。紅夜は、この時ばかりはアイエフのように気絶しない自分の強靭な肉体を呪った。
「と…ま…すと…ぷ…」
「えー!?聞こえないよ!!」
どこで選択を間違った紅夜は自問自答する。
こうなるなら、((漆黒の皇神鎧|アーリマン・ディメイザスケイルメイル))を装着して付いていった方がはるかに安全だった。空気がまるで鋼鉄のように固く、体を叩きつけた。
「おっ、見つけた。紅夜、離すからアイエフを拾って無事に着地してね!」
突然、支えていた物がなくなり、紅夜達は無重力を感じた。
「プロセッサユニット・アサルトモード!!」
手を離した空は叫ぶと、プロセッサユニットが光を発しながら変形していき、ガントレットは黄金色の鉤爪を生やし、天使の様な翼は展開式の大型スラスターへと変わった。
一斉に光の粒子が吹かれる。先ほどとは、けた違いの加速力は、流れ星のように地面に急接近して木々を電光石火の如く駆け巡る。
そして、二人の少女に大口を空けた狼型の巨大なモンスターの間に入った。
「ハードブレイク〜〜〜………」
左脚部のプロセッサユニットから光の粒子を吹き出し、左足が霞み消え、その刹那にはモンスターの左顔に叩き込まれた。
「キック!」
狼型のモンスターは空の姿を理解できずまま、空の彼方に飛んでいき星となった。
◇
「あ、あの野郎…!」
地面に着地失敗したのが原因で腰に走る激痛と激しいジェットコースターにでも乗った後の嘔吐感を抑えながら、未だに気絶中のアイエフを背中に背負って俺は、いきなり手を離した空を憎しみの邪念を心の中で呟いている。
漆黒のコートもアイエフに被せている。そして、帰りを考えた時イォマグヌットを使って炎の加護を纏いながら歩いて帰るより、((漆黒の皇神鎧|アーリマン・ディメイザスケイルメイル))を使って速攻で帰った方が効率がいいと判断して、俺自身は紙の様な防寒性能しかない服装で雪道を歩く。ネプテューヌは大袈裟と思っていたが、確かに寒い!
『はしゃぎ過ぎだよね破壊神め、何かいいことでもあったのか?』
「さぁな……ったく!」
それにしてもアイエフ軽い、少なくてもコンパより軽い。
本当にちゃんと食べているのか心配になってくるほどだ。
さきほど空間に大きな衝突音と衝撃が響いた。同時に木々の間に積もっていた雪が一斉に落ちたのが見えたので、空の居場所は大体特定できる。
歩きづらい雪の地面に足を取られないように慎重に足を進めると、写真に写っていた二人の少女が倒れていた。空は、そのうち一人の手を持って観察するような目つきで体と手を目比べていた。
「……おっ、来たね」
既にその身にはプロセッサユニットはなく身を隠す様な真っ白のコート姿になっていた。空は自分が診ている少女とは違うもう一人の少女に指を向けた。
「そっちをお願いね」
「何処に行くだ?それにいきなり離すなんていきなりすぎるんだろ!俺は良かったものの、アイエフだったら大けがしていたぞ!お前は自分が異常だと言うことを理解して、他人に少しは合わせろ!!」
「あー、あー……てへぺろ(・ω<)♪」
とりあえず殴った。石頭なのか俺の手が麻痺した様に痺れて痛かった。
「……大丈夫?」
「お前、どんだけ頭が固いんだよ…!」
お前の頭の強度って((漆黒の皇神鎧|アーリマン・ディメイザスケイルメイル))を軽く上回っていないか?ぶっちゃけ、思いっきり頭突きされたら兜でも粉々にされるぞ!痺れた手を振りながら、倒れている二人の少女に視線を向ける。
「あぁ、暗示を掛けられていたから術式を破壊して今は気絶中だよ。目覚めるまではちょっと時間が掛かるけど、心身ともに異常ないね」
「暗示?どうしてそんなことを、いや何が目的で?」
「さぁ?そこまで僕もこれだ!って言えるような目的が分からないよ……犯人は分かってるけど(小声)」
肩の力が抜けた様に、魂が抜けるような深いため息で脱力する空。この二人が安全だと分かったことからの安心なのか、それとも疲労から来るのか判断しずらい。
「今から、教会にこの子達を送るけど、流石に二人いっきりに抱えるのは不安定だから、紅夜手伝ってよ」
「えっ、でも俺はアイエフを「ほい」アイエフ!?」
空が手を振ると同時に背中の重みが消えて振り向くとアイエフの姿が消えた。
『空間転移、そんな一瞬で出来るものじゃないはずだけどねぇ……』
「空間を入れ替えるだけ、こんなの簡単だよ」
「……いや、無理だから。ってかこの子達もそれで教会に送ればいいだろう…」
「内部構造を詳しく知らないから、下手したら壁の中に転移しちゃうよ?だからって外に出すわけにはいかないでしょ?」
よいしょっと空は水色のコート(俺達の様な全身を隠す様な物でなく、可愛らしいスカートが付いたタイプ)の少女を足と背中に腕を回して持ち上げた。アイエフを転移させられ、地面に落ちたコートを羽織って俺はピンク色のコートの服装をした少女をお姫様抱っこで持ち上げた。双子なのか顔つきがそっくりだった。
「行くよ。起こさないように慎重にね」
「あ、ああ……」
風を操作して、足元に小さい竜巻を作りふわりと空が言った様に一気に加速せずゆっくり浮遊していく。
目を凝らせば山の中に教会が見えた。空を飛んでいるので障害物などなく、おそらく30分くらいで着くだろう。
視線を横に逸らせば、特に表情を変えず教会を見つめながら飛翔している空。それを見ながら、ふと思ったことを口に出す。
「空、お前は確かプラネテューヌで働いているだよな」
「そうだけど……何かあるの?」
「いや……プラネテューヌって教祖も女神も不在なんだろう?色々と大変なのにお前なんでこの国に?宣教師って役目は絶対に合わないし」
いや、そもそも他国からの信仰者は異端者として扱われるので、宣教師はルウィーだけだったな。
空は、んーと暫く何もない空へと視線を逸らした。
「僕の仕事は優秀な従者に任せたよ。モンスター討伐用にバルザイの偃月刀と会話用に音声変換器も渡しておいたし、ネプテューヌの妹ーーーネプギアとも、うまくやっていると思うよ」
「優秀な従者……お前、部下なんていたのか」
「なんだよーその言い方、僕はどこぞのツンデレ女神の様に思ったことは、はっきり言うタイプだから友達はそれなりにいるよ。少なくても誤解されそうなことしないし」
……空の従者か、こいつのイメージは孤立だ。
ありとあらゆる干渉を拒絶して、一人だけで道を歩く孤独で孤高……そんな感じだったが、少し認識を改めよう。それに、この二人の少女をかなり気遣っているし……あれ、それにしてはアイエフには冷たかったような。
『(コイツは差別意識がかなり強い。子供に対しては凄く甘いんだけどね)』
なるほど。優しいところあるんだ。空の新しい一面を知れたことを心の中で喜びながら、俺達は女神のいるルウィー本教会を目指して空を翔けた。
◇
場所はゲイムギョウ界の中で一番を獲得している高いビル、プラネテューヌの街並みを眺めることが出来るプラネタワーの真ん中部分の誰も使っていない倉庫部屋で、どこにでもありそうな机と椅子に座っている者。
それは、まるで少女漫画でも参考にしたような好青年が、机に収まりきれず地面にも置かれている書類をせっせと片付けていた。
現在、プラネテューヌは危機的状況である。モンスター拡大の上にそれを防ぐ女神と組織をまとめる教祖が不在、核とも言える存在が二つともない状況の中で、プラネテューヌの軍を巧み操り、モンスターの被害に対しての対処も迅速で、女神候補生しか顔を見ることしか出来ないと決めつけられた謎の人物はふと窓を見た。
「テケリ・リ」『主様が呼んだ気がする……おっと、仕事しないと』
「ポチさん、ここに書類を置いておきますね」
桃色の長髪とまん丸い可愛らしい瞳が特徴的なセーラー服姿をした少女が、床に更なる書類を置いた。
机に山となっている書類を除いても、机の周囲に置かれた書類の束の量はキングサイズベットが作れるほど多い。
しかし、ポチと呼ばれた青年は悲しむわけではなくむしろ笑みを作りネプギアにお礼の言葉を口にする。
「テケリ・リ!」『ありがとうネプギアちゃん。それにしてもその歳でしっかりしているよね。君なら立派な女神になれると思うよ』
「あ、ありがとうございます…」
首に掛けられたマイクからポチの言葉はゲイムギョウ界の言葉に変換され発せられる。
ネプギアは少し顔を赤くして頬を掻く。そして、机を飲み込む勢いで積み重ねられている書類を視線を向ける。
「ところで、このところずっと眠っている様に見えないんですけど……大丈夫なんですか?」
ある日、この場に座っていた空が急用があるから暫く来れない。変わりは従者がやる…とだけ言い残し入れ替えるようやって来たのかポチだった。
ポチはとても優しく穏やかな人で、ネプギアは安心した。前にいた空は嫌いではなかったが、苦手だったからだ。
「テケリ・リ」『このぐらい朝飯前だよ。主様の元だと徹夜続けが普通だったからね』
「えっ……空さんは、そんなにポチさんを働かせていたんですか?」
「テケリ・リ」『そうだねー、でも私だけが働くことはほとんどなかったよ。あの人は責任感が強いから従者に全部任せることは少ないんだ。基本的にこういう作業も隣に主様がいたね』
「…………」
確かに、ネプギアの知る限り夜天 空は朝昼夜問わずここで書類を片付けているか、モンスターの討伐をするか、ネプギアの稽古相手にもなってくれた。とても、しっかりして、面倒見がいい。……しかし、ネプギアは空が苦手だった。
「テケリ・リ?」『何か思いやんでいる顔をしているね?主様で何か困った事があるの?』
ポチからの指摘にびくっとネプギアは肩を揺らした。
書類をを片付ける速さは変わらない。左目でネプギアを見ながら、右目で書類を読んでいた。
「……気持ち、悪いんです…」
「テケリ・リ?」(気持ち悪い…?)
自分を守る様に手を体に纏わせ、震えた声でネプギアは口を開く。
「((私を見ている筈なのに私を見ていない|・・・・・・・・・・・・・・・・・))……そんな感じが怖いんです」
空の瞳は確実にネプギアを映していた。まだ女神化も出来ない貧弱な女神候補生を見ていた。
しかし、それには違和感がある。空は正しいことを言っている筈なのに、まるで自分ではない自分に言っているような感覚になるのだ。他人に話しかけるようで、その内容は確実に自分のことを言っている。……その((ズレ|・・))がネプギアにとって一種の拷問のようだった。
「おかしいんです……私とは違う、私に向かって話しかけているような……空さんは、まるで幽霊と話しているような……私の方がおかしいんでしょうか?」
「テケリ・リ」『いや、それは違う……はぁ、主様はやっぱり自己中心的で差別意識が高いなぁ……それがなければいい人なのに……えっとねネプギアちゃん』
ポチはため息を吐いた。忠誠を誓っている身ではあるが、従者として会ったら伝えないといけないことがあると胸に刻み、ポチは空が見ている者をネプギアに伝える。
「テケリ・リ」『主様が見ているのは、きっとーーーー((前回の君|・・・・))だよ』
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