太守一刀と猫耳軍師 第30話 |
風邪で倒れてから数日が経ち、俺はようやく復帰した。
結局2日目には倒れた事は皆が知る所となり、愛紗に小言を言われ、桂花に怒られ、朱里や紫青に心配され。
なんだかみんなに迷惑ばっかりかけた気がする。
で、風邪が治ってまともに動けるようになったので政務を再開したその日の夜。
紫青を部屋に呼んだ。まぁ、当然、紫青の望みを叶えてあげるためだけど。
「はう……」
事が終わった後、ぼーっと赤い顔でこっちを眺めている紫青。
両手は俺の体に回されていて、ぴったりくっついて離れようとせず、時折キスを求めてくる。
今日はここに泊まっていく事に決め込んでいたらしい。
「ちょっと激しすぎ、です……」
紫青の不満に言葉は返さずに軽く髪を撫でると心地よさそうに目を細める。
なんだか安心したような、幸せそうな笑顔。
俺の所に来た当初のあの笑顔が作り物だったとよく分かる。
紫青が心から笑った笑顔は、本当に幸せそうに見える。
「紫青は、何があっても一刀様の隣にいます、片方は桂花さんでしょうけど、その反対側に居させてください」
その言葉が嬉しくて、こちらからも軽く紫青を抱いて。
体格相応だけど、桂花よりも出るとこ出てて抱き心地がいい。絶対口には出さないけど。
結構着痩せするタイプなのかなぁ、なんてろくでもない事が頭に浮かんできたり。
「もし、いらないって言われても、ついていきます」
「言わないよ、そんなこと。紫青のことを大切に思ってるんだから」
「皆に、そう言ってるんですよね」
その言葉に思わず苦笑する。
軽く紫青の髪を撫でながら、徐々にまぶたは重くなり……。
「でも、紫青は一刀様をお慕いしてますから」
紫青の言葉を聞き、肌の暖かさを感じながら俺は眠りに落ちた。
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翌日、今日は久しぶりの4人会議の日。
この日は俺が倒れた事でうやむやになっていた、税のごまかしをやっている領主についてどうするかというのが4人会議の議題になった。
桂花は紫青の事について気づいてる様子だけど、特に態度が変わったような様子はない。
朱里は気づいてるかどうかわからないけど、いつもと微妙に雰囲気が違うような。
「で、詳細はどういう状況なの?」
「え、ええと。まず、税収を少なく見せかけていて、こちらへあまりお金を渡してこないようになってます。
さらに、こちらの指定した限度を無視して税率を引き上げているようです」
「ってことは、民への負担が増えてるわけか」
朱里の言葉に軽く頷く。
「そうです。民からの不満は領主のほうで握りつぶし、すべてこちらが悪いというように言ってるようですね……。
呉との戦のために税を上げているのだ、と」
「なら、遠慮は無用か。でも、内紛、となると呉の動向が心配だなぁ」
「紫青は、呉については平気だとおもいます。
我が軍が魏を破った直後のもっとも攻めやすい時期に攻めてこなかったですから。
正直あの時攻められていたら、かなり厳しいことになっていたと思います」
「最後通告も無視してきてるから、さっさとどうにかしないとだめよね」
紫青と桂花の言葉にしばし考えて。
「その領主の処理なんだけど、華琳……曹操に任せようかと思うんだけど」
「えぇ!?」
三人三様に驚いて、それぞれが微妙にしぶい顔。
「もちろん、華琳達の単独でやらせるわけじゃないし。話の持って行き方次第ではキッチリ仕事をこなしてくれるとおもう
それに、魏の傘下に居た時はそんなことしなかったっていうなら、一番適材適所じゃないかとおもってさ」
「……、私は曹操と交渉するの、イヤよ?」
「俺がやるよ」
「まぁそこまで言うなら止めないわ。交渉に失敗した場合はどうするのかしら?」
「だめだったら、霞と星、それからこの中の誰かにお願いしょうかとおもってる。
どう転んでも俺が指揮を取るつもりではいるけどね」
話がまとまった所で会議を締めて、俺は早速華琳の元へと向かった。
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「というわけなんだけど」
座る華琳の後ろに立つ秋蘭、その正面に俺が座ってる形。前と変わらない構図だ。
「それで、私にどうしろっていうの?」
「この前いってた、王っていうものの手本を見せて欲しくてさ」
「ぷっ……」
笑われた。若干へこむんですけど
「あれを本気にしていたの? そもそもそれを本当に頼みに来るあたりで既に自覚がないのよ、あなたは」
「そう言われてもなぁ……」
「やっぱり面白いわね、あなたは。それで、私に見返りはあるのかしら?」
「今回一緒に行く将は、張遼、関羽、司馬仲達の予定だよ。
それと、華琳達が望むなら、立場を変えれるとおもう」
「私にあなたの部下になれ、と。そう言いたいわけ?」
俺はゆっくりと頷く。秋蘭の眉がピクリと動いたのが怖い。確実に今、俺に向けて殺気を放ってきた気がする。
「部下でなく、仲間であって欲しいとはおもうけど、どうだろう?
そうしてくれるなら相当の自由は約束できるけど。」
「あなたも身の程知らずよね、この曹孟徳を部下にしたいだなんて。
いつか、あなたを裏切ってその首を取りに来るとか、そういうことは思わないのかしら?」
「華琳はそういうことはしないと思う。華琳が俺を憎んでるとは思わないし。
憎い相手に真名を許したりしないだろ?
それに、墓参りをして、その道すがら町を見て、俺をのやり方を認めてくれたような事を言ってくれたし。
俺はそれを信じたいと思ってる。それに……。
華琳が大切にしてきた魏の民を苦しませ、悲しませる輩を、華琳は放っては置かないだろ?」
「うまいこと言うわね。いいわ、乗ってあげる。その愚か者をこの曹孟徳の名の下に粛清しましょう」
「それと……。これはまだ誰にも相談してないから口外無用で頼みたいんだけど」
「まぁ、黙っていろというならそうするわ、何かしら?」
「いずれ、もとの魏領は華琳達に任せるつもりなんだ。それなら、俺の仲間でいてもらったほうが都合がいい」
今度こそ、呆れたというような、呆けた顔。
「本当にあなたは人が良いのね、それこそ、本当に反乱を起こされかねないというのに」
「そうかもなぁ……。でも、俺は華琳を信じたい」
「その言葉に二言は無いのね?」
「俺の気持ちだけでいえば無い。ただ、曹操達の今後次第とは言っておくよ。
手は尽くすけど、仲間の大多数に反対されたら押し通すのは厳しいのは事実だしね。
今回の事も結構無理を言ってる部分はあるし」
「実力で勝ちとれということね。あなたは誰に物を言ってるのか分かってるのかしら?」
そういって、華琳は自信満々に笑った。
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その後、華琳を連れて夏侯惇の居る離れへ向かった。
夏侯惇も連れて行こうと思ったらしいのだが、相変わらずの様子だと伝えると、とうとう華琳がキレたらしい。
「春蘭、あなたはいつまでそうしてほうけているのかしら」
「か……、曹操様!」
離れの前に座ってぼーっと空を眺めていた夏侯惇がばっと立ち上がり、華琳の方を見て、その隣に立つ俺を見て嫌そうな顔。
「まだ分からないの? 私の臣であるあなたが、名をかけた約束を履行しないことは、私の顔に泥を塗っているのと同じだということが。
私の側近であるあなたが、その約束を違えるということは私の顔を潰す事になるのよ?
あなたは、曹孟徳は側近の臣すらまともに躾けられない、愚かな王であったと言われても平気なのかしら?」
「いえ、そのような事は……」
「北郷が甘い王であったことに感謝なさい。北郷はあなたが明確な拒否をするまで、反故とはせず、保留で留め置いてくれているのだから。
もし違っていれば、私があなたの首を刎ねる事になったかもしれないのよ?
春蘭、あなたが本気で反故にするなら、今ここで首を刎ねるわ」
「おい、華琳……」
「貴様……!」
「春蘭! 北郷も、黙っていて」
俺が華琳を真名で呼んだ事で、夏侯惇が俺に掴みかかろうとしてくるが、華琳がそれを鋭く制する。
「私が北郷を認め真名を許したのよ。私が認めた者にさえ、あなたは仕える気にならないのかしら?
仕える気があるなら、北郷の前に跪きなさい。家臣として礼を尽くし、その命に命をかけなさい。
安心なさい、私はあなたを裏切り者と罵りはしないし、罰する事もしない。
あなたは私のために勝負をし、運悪く負けてしまっただけなのだから。
あなたはその勝負に負けたことによる罰はもう受けているでしょう?」
夏侯惇は緩慢な動きで俺の前に跪き、家臣の礼を行う。言葉は無い。
「北郷、あなたはこれで春蘭が約束を履行したと認めてくれるかしら?」
「あ、ああ……」
「私の名は夏侯惇元譲……、よろしくお願いします、北郷……様」
「よろしく」
「それで、春蘭の立ち位置はどうなるのかしら?」
「最初は華琳が紫青……司馬仲達直属の部下で、その下に秋蘭や季衣、夏侯惇がつく、っていう形になる。
季衣や秋蘭がそれをよしとすれば、だけど」
最初から皆と同格に扱うと反発されるのは分かってるし。そこらは華琳も分かってくれた。
「な、華琳様!? まさか北郷に……」
「春蘭? 私はまだ禁を解いてはいないわよ」
「も、申し訳ありません!」
華琳に睨まれてものすごい勢いで謝る夏侯惇。華琳の罰則というのは相当厳しいらしい。
「そう、私は北郷の配下になったの。良かったわね、春蘭、あなたは私の下を離れなくていいそうよ」
「は、はい!」
「でも、春蘭、あなたは私の上に北郷が居るという事を絶対に忘れてはいけないわ、いいわね?」
「はい!」
「なら早速仕事よ。不正を行う者への処罰を行うわ。私が育てた魏の民を苦しめる者よ、遠慮はいらないわ。
すぐに準備しなさい」
曹操がそう言うと、夏侯惇は準備をしに走っていく。
「それで、兵はどれぐらい集めるのかしら?」
「相手は集められてせいぜい5000がいいとこだから、倍の1万。
内訳は、魏からの投降兵5000を華琳達にまかせて、残りの5000はうちの兵でいく。
まぁ戦闘にならないのが一番望ましいんだけどなぁ……」
「つまり、あなた達の5000は監視ってことになるのね。
まぁ仕方のない事だわ、そうでもしないと私が出る事に誰も納得しないでしょうし。
あなたは命令して納得させる事をしないもの」
「基本的にあんまり命令ってものをしないしね」
華琳は俺の言葉にため息をつき、俺は苦笑いを返すのだった。
あとがき
どうも黒天です。
前に、桂花の事後シーンを! っていうコメントがあったのでので、
桂花さんのは終わってしまったので変わりに紫青さんで……
ってことで軽く書いてみました。
どこまでセーフなんだろうかとか考えつつ、チキンレースしてる気分でした。
今回は華琳さんに仲間になってもらうべく、また華琳さんメインでした。
こんな感じでいいのかなぁ、華琳さん……。結構不安です。
しばらく拠点とはいいましたが、次回は戦闘が入って来る予定です。
さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。
また次回にお会いしましょう。
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今回は紫青の話しの続きを少し、と、また華琳がメインな話しになります。 あと春蘭がようやく約束を履行します。 |
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…ん〜、夏候姉妹以外でも、史実とは別キャラに描かれた恋姫は多いですな。魔王董卓とはほぼ真逆な「月」を筆頭に、裏切りの代名詞たる呂布に対し絶対裏切らない「恋」、暴君だった公孫賛に対し普通の人な「白蓮」、真面目一筋な警備隊長の趙雲に対し変人代表な「星」等…。(クラスター・ジャドウ) >>クラスター・ジャドウさん ふむふむ、実際は夏侯淵の方が強かったのですね。何故逆転して描かれたのでしょうね(黒天) …寧ろ、史実で猛将だが短慮だったのは、夏候惇の従兄弟だった夏候淵。ぶっちゃけ、恋姫の夏候姉妹は、史実の二人とは性格「も」逆転してると思って下さい。…で、史実の夏候淵の短慮には曹操も悩んでいたらしく、「汝の妙才を見てみんと欲す(もう少し頭を使った所を見せろ)」 と、夏候淵の字を交えた苦言を与えた記録が残っています。 (クラスター・ジャドウ) …曹操からの叱責により、漸く夏候惇が臣下になったか…。この春蘭は猛将にして「愛すべきおバカ」ですが、実際の夏候惇は曹操と寝床を共にする事が許されるほど重用された(これは、主君から臣下に対する最大級の信頼の証だったとか)物の、別に猛将でも戦上手でもなかったようです。(クラスター・ジャドウ) >>Alice.Magicさん まぁ桂花の事後シーンはまた後日ということで……(黒天) ううむまぁ紫青可愛いからいいですけれど・・桂花を(ry いやはや御馳走様ですwww(Alice.Magic) >>風見海斗さん お気に入りユーザ限定という手もあるんですね。今度はそれでやってみましょうか(黒天) >>naoさん 可愛いといってもらえるととても嬉しいです。一刀はニブいのでわかってませんがかなり焦ってますw(黒天) >>飛鷲さん 飴と鞭w 座布団1枚!(黒天) >>いたさん たしかに、白蓮とともに貴重な元太守ですからね。そういえば最近白蓮さんの影が薄くなってきたなぁ、そろそろ書かないと……。(黒天) >>たっつーさん ですね、なまじ気持ちがわかるだけに、強いことは言い難くなるかも。季衣に毎日食べたいだけ食べさせると、北郷軍の食糧事情が大変なことになりそうですねw(黒天) >>きまおさん 確かに、いろいろと甘すぎますからねぇ……一刀は(黒天) まぁ明確な表現をしてないから大丈夫だとは思うけど、念のためR指定になりそうな話のときはお気に入りユーザー限定にすれば何とかなると思います。(風見海斗) 紫青もかわいいですね〜四人会議の中で一人だけ抱かれてない朱里は焦ってるんじゃないですかね?w華琳が仲間になるのは心強い!!(nao) ↓↓↓まさに飴(一刀)と鞭(華琳)だな。(飛鷲) ↓同意見です。元太守の華琳の意見は、とても貴重なはずですので、当分権力が無い御意見番、皆に認められれば副官扱いで宜しいじゃないかなと。後、事後シーンの事はTinami様の投稿の時の注意だかに記載してありますので参照してもらえばいいと思います。自分も投稿した身ですので。駄作をまた改編してだそうと準備してますが。(いた) 一刀が甘すぎるのは事実だから、かりんたんが補う形はいいんでない?、元からの一刀の部下ではあまり強く進言できない部分もあるだろうし。ズバット参上・・・じゃなかった、ズバっと言えるひとは貴重だしね。(きまお) |
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