超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ルウィー編 |
俺達は、肩を並べて空を飛んでいた。
その腕には、双子と思われる容姿のよく似て、一見すれば服の色しか変わらない。
幾つもある教会が血相を変えて捜索するように動いたほどのこの子は大企業のご令嬢か、それに近いほど有力な人物の娘とかなんだろう。
ふと、視線を逸らして空を見つめる。
その腕に抱きかかえている五歳くらいの少女、確かロムちゃんと言っていたっけ?そして俺の方はラムちゃんという名前だ。なぜ、空がこの子達の名前を知っているのか謎だが、少なくても空はこの子達に対して気を掛けていることは確かだ。とは言っても、ちょうど指で数えれるぐらいの歳でこの子達と空の間に何が合ったんだろうか、それを聞こうとしたが既に教会の上空に着いてしまった。
「降りるよ。起こさないようにね」
「本当に慎重なんだな」
「ここで起こしてしまって見知らぬ人を見た子供は結構な確率で恐怖心を抱くよ。この二人は、人見知り激しい方だから尚更ね。ここで泣かせて下の教会メンバーに聞かれて目撃されてみてよ……幼女誘拐の変態犯罪者の出来上がりだよ」
「……そ、それは、嫌だな……」
空の言うことは確かに正論だ。背中に嫌な汗が流れる。
風を操作しながら、ゆっくりと空と共に教会に降りる。
上空から降りている俺達を教会の前で、集団を作っていた人たちが見上げて、騒ぎ始めた。
「あ、貴方達は…!」
「はい、迷子のお届けだよ」
地面に降りたところで空は、紅いコートに帽子とメガネをした教授を連想させる女性にロムちゃんを手渡した。
「紅夜は、そこの女性に渡して」
「あ、ああ……」
空の指示の元、ラムちゃんはその女性の隣にいたメイド服を着た女性に手渡した。目をぱちくりしながら、同様に固まった声で感謝と共に頭を下げた。
「あ、ありがとうございます!旅のお方でしょうか?是非お礼をしたいのですが…!」
「んー、僕はいらないから紅夜貰っておいてよ。旅をしている身だし、あっても困る物じゃないと思うけど」
「いや、この二人を守ったのもお前だろ?だったらお前が、貰うべきだろ」
俺がしたことってラムちゃんを運んだくらいだろ。
あの時、空が俺達を離してロムちゃんとラムちゃんの場に向かったのってモンスターに襲われていたからという理由があるだろう。あの距離でモンスターの気配を察知するのは、デペアでも難しいだろうが、こいつは色々と規則外だから、それが証拠だ。
「……はぁ、それじゃ二人で貰おう。それで文句ないよね?」
「……分かった」
面倒臭そうに顔に手を当てて、空はため息を吐いた。
納得いかないが、ここで空に反発したら永遠に抗議が続きそうなので、俺も口を閉じた。
それを見た女性を互いに納得がいったことを確認して、ぺこりともう一度頭を下げた。
「私は、この国の教祖を務めさせていただいています西沢ミナといいます」
「零崎 紅夜です」
「………夜天 空」
空だけそっぽを向きながら、面倒臭そうに呟いた。
西沢ミナさんは「こちらです」と教会の中に案内してくれた。彼女の部下がメイドさんと彼女の腕の中で眠っていたロムちゃんとラムちゃんを受けたり部屋の奥に消えていく。
中央教会の中は、ネプテューヌ達と訪れた教会より豪華だった。外の寒い環境から温かみを覚える紅い絨毯等、ほっと小さくため息を安心して出来る空気がここにあった。
空は、窓から雪が降るルウィーの風景を見つめていた。俺も特にすることが無かったので同じように見ていると西沢ミナさんは部下の話が終わったのかこちらにやってきた。
「是非とも女神様がお会いしたとおしゃっています。どうぞ付いてきてください」
「…………断っていいですか?」
「……えっ?」
「なんでもありません。ただ……うん、大工とか手配したほうがいいですよ」
西沢ミナさんと俺は顔を合わせて傾げる。
なぜここで大工が出てくるのか分からない。何か巨大な力で部屋が壊されるのか?と思ったが、なぜそんなことになるという過程が全く想像がつかないので、考えを放棄した。
女神様に会うということは、モンスターについても聞けると言うことだ。出来ればここで鍵の欠片について情報が手に入ればいいな。
西沢ミナさんがこちらですと案内するために歩き始めたので、俺達はそれについていく。
「あの……お二人は、旅人でしょうか?」
「んにゃ、プラネテューヌからの諜報員だよ」
「ス、スパイ!?」
ビクッと肩を震わせて、こちらに体を向ける空はそれに手を振りながら渇いた声で笑う。
「冗談だよ。まぁ、プラネテューヌで働いている一般人」
「お前なぁ……えっと、俺は旅人で少し探し物があるんです。鍵の欠片……それについて、何か知りませんか?」
「………まことにすいません。私もそのようなアイテムは初めて聞く名前で……」
むぅ、流石にあっさりとは分からないか。
横に歩いている空に視線を向ける。既知感があった。記憶もないのに、確かな感覚が体を覚えている。
オリジナルである零崎 紅夜はデペアやニャル男さんの話から察するのにとても仲が良かったのは知っている。俺は、最後まで俺であることは決意したが、やっぱり紅夜と空の間で何が合ったのかを少しだけ知りたかった。
そうこう考えているうちに他の部屋とは違う雰囲気がする扉の前にたどり着いた。中に女神がいることが感じられる。西沢ミナさんが扉をノックする。
「ブラン様、お連れしました」
『分かった。入れてちょうだい』
「かしこまりました」
扉を開けて、西沢ミナは頭を下げた。
こっからは、二人だけということだろう。
部屋に入ると、ルウィーの景色が一面して見えるように床以外透明な壁をした部屋だった。その奥にカーテンで隠されている所から、ネプテューヌ位と同じくらいの少女の影が目に入った。
「えっと……「黒閃ね」…はい」
早速その二つ名ですか、俺って女神の耳に入るほどの有名人だっけ?
「そして……なぜ、貴方がここにいる」
「偶然としかいいようがないね……ま、一応弁解しておくけど君の妹達に僕は何もしていないからね」
「……その言葉、今は信じさせてもらうわ」
何故だろう、いきなり視線と視線での剣戟が見える。
この国の女神であるホワイトハートと空との間に何か良くないことがあったんだろうな。そういえば、ノワールもベールもこいつを知っているような口ぶりだったよな……。
「……な、なぁ」
「言ってなかったけど、あの二人は次の時代を担う双子女神。つまり目の前のホワイトハートの妹たちだよ」
「………マジかよ」
空の先読みも驚いたが、あの二人が女神候補生だと言う事実の方が勝っていた。確かに、それは空も慎重になるはずだ。プラネテューヌの中核的な所で仕事をしている空が問題を起こせば、プラネテューヌとルウィーとの国際問題になりかねない。
「テメェに聞きたいことがある」
「何かな?」
「テメェは一体何者だ?」
その一言に空は目を細めた。
「神界はプラネテューヌの教祖、そして私達女神しか踏み入ることしかできない神聖な大地。なのに、テメェは、抜け穴でも見つけた様に入り、油断していたと言え((一撃|・・))で私達を一時的に無力化した。……テメェの存在は、明らかに異常だ」
「君たちが弱いだけだよ。あんな弱小の一撃で痛い痛いと転んでいる時点で、見た目通り女神でもないただのーーー子供だ」
「−−−−」
ぷちっと糸が切れる音がした。
同時にカーテンが吹き飛ぶほどの激風と光が発生して、飛び出した白い閃光が空の頭上で止まった。
「ぶっ潰す!!!」
「見え見えだよ」
空の様な蒼白い髪をして幼い顔つきながら怒りを表すホワイトハート様の手にはいつの間にか身の丈を超えるほどの巨大な戦斧が握られていた。
あ、まずいと思ったその時は空に向かって振り下ろされて、空はそれを紙一重で横に体を逸らして避けた。
振り落された戦斧は、床を木端微塵に破壊してその衝撃に態勢を崩して腰が付いてしまった。
「君の攻撃は単調、当たればいいけど、逆に当らなければ意味がないんだよ」
「ッーーー!!」
空は、地面に突き刺さった戦斧を踏みつける。
その結果、戦斧を持ち上げようとするホワイトハート様の動きは止まった。
そして、空はホワイトハート様の頭に手を置いて強引に髪をぐしゃしゃにした。
「これが((戦い|・・))なら、ここで頭と体が永遠にバイバイだよ」
「テ、テメェ……!!!」
耳元で空がホワイトハート様に何か言っているようだが、ここじゃ聞き取れない。
けど、このままだとお互いにマジで戦い合う様なことになれば、この場所が滅茶苦茶になることは必然だ。
急いで立ち上がり、空とホワイトハートの間に入る。
「空、挑発的言動はやめろ。これじゃお前の方が喧嘩を仕掛けているみたいじゃないか」
「挑発ねぇ……分かった。ごめんなさい」
「……チッ」
力のない謝罪の言葉を口にして空はホワイトハート様から離れた。
ホワイトハート様は忌々しそうに口を尖らせ、女神化を解除してくれた。
姿を現したのは、可愛らしい容姿だが人形のように無表情で、白い帽子と白いコートが特徴的なちょうどネプテューヌぐらいの背をした女の子だ。
「貴方はいつか私がぶっ飛ばす」
「期待しないで、待っているよ。貧「空!」……女神様」
あ、危なかった。さっき空の視線がホワイトハート様の胸を見た時、嫌な予感がして咄嗟に呼んだがもう少し遅かったらアウトだったかもしれない。
「………黒閃」
「えっと、なんでしょうか?」
ホワイトハート様は空を睨むと、今度はこちらを向いた。
「ロムとラムを助けてくれてありがとう」
「え……と…それは…」
横目に空を見ると背を向けられた。
「お礼は後でしっかり送らせてもらうわ……あと『黒閃』の腕を見込んで依頼を出したいの」
「依頼……ですか?」
ホワイトハート様が頷いて説明しだす。
まだ公に公表されていないが、今ルウィーに謎の失踪事件が相次いで発生しているらしい。
犠牲者は、赤子や老人と幅広く、特にエンジニアが多いらしい。
この事件に共通しているのは、まるで存在そのものがいなくなったように姿を消す所だ。あの双子も西沢ミナさんがお世話していて、突如様子が変わったと思った瞬間には姿を消していたと言うことだ。
「まだ何もわかっていない。今は猫の手でも借りたい状況、貴方の様な実力者だとどこにでも行ける移動力がある。勿論、それなりの報酬は約束するわ」
「分かりました。あ、報酬の代わりに調べ物をしてほしいのですがよろしいでしょうか?」
「報酬の代わり……?」
「鍵の欠片というアイテムなんですけど、それを俺達は探しているんです」
鍵の欠片と呟いたホワイトハートは暫く黙り込んで口を開いた。
「分かったわ。それにしても……それだけでいいの?」
「はい、それだけで十分ですから」
実を言うと、金銭面は全く問題ない。
リーンボックスのあの事件、ベールから直々に謝罪金と言う形で豪華な家をローンを組まず一気に買えるほどのお金を貰ったのだ。
断ろうとしたら、チカやケイブにもデペアにも貰っておけということなので、女神としての問題だということで受け取った。流石に現金は持ち歩くことは出来ないのでカードしているが、なんだかこんな大金を持っているのは、色々と怖い。
「噂と違うのね」
「また噂ですか……」
確かに凶暴なモンスターの数々を倒しているけど、だからと言って俺自身が化物扱いされるのは本当に複雑だ。理解はできるけど、納得しきれない自分がいる。
「悪事千里とはいうけど、君はたった一年で女神を除く四大陸ではトップクラスの実力者にのし上がった。仕方がないよ」
「俺はもっと平凡に生きたいんだけど……」
「君の意思は無自覚で悪事に向かう一瞬の運命だよ。だから、君の意思が君の運命になるんだろうね。ま、君の様な英雄に似た思想者は、どんな世界でも、いつの時代でも疎まれるものさ」
そんなぁー……。
俺は只、困っている人を助けたい一心でハンターの世界に入ったのに、どうしてこうなった。
「はぁ、ま………いいか」
「……随分、あっさりとしているわね。そういうのは一生付きまとうわよ」
一生ーー……俺に残れた時間は、あとどのくらいだろうな。
少なくても、人の人生より遥かに短いだろうな。
「他人の評価に振り回されちゃ俺は俺じゃなくなるんですよ。空が言った通り、運命にとやらは俺の結果ですから……だから、受け止めて自分の出来ることをやるんです。俺は一人じゃないから、仲間がいるから、頑張るんです」
「…………」
柄にもないこと言った気がするが、まじまじと聞くホワイトハートに今更ボケることは出来ない。
「全く、そういうところを見ると自我を持っていると感じられるよ。僕の知っているこーーー………!!!」
「……空?」
空が突如天井を見上げた。
先ほどの呆れ混じりの表情じゃない。驚愕の瞳で、頬に雫が流れた。
「−−−−((零神化|ゼロハート))!!」
袖から素早く虹色に輝く宝石を取り出し、それを握り潰して空は光を纏う。
顕現したのは、女神だけの防具であり武器である奇跡の鎧プロセッサユニット。
それを装着した空は、バックプロセッサから光の粒子を勢いよく吹かしながら天井を突き破り、白金の流星となって空を翔けた。
「「……………」」
そして、残された俺達は呆然と口を開いていた。
床は粉砕、天井には風穴……大工を手配しなきゃいけない。
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