超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ルウィー編
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モンスターの体に鋭い一閃が引かれ、ずれて落ちる。

幅の広い長剣を巧みに操り、圧倒的な美しさと威圧感を醸し出す白金のプロセッサユニットを装着している空は、向かってきたモンスター達を殲滅して、粒子なって消えるモンスター達を見ることは無くバックプロセッサから低出力でブーストを吹かしながら、低飛行でダンジョンの奥へ進んでいく。

ここは、積み木の様なカラフルなブロックで構成された『世界中の迷宮』と呼ばれるダンジョン。

空は、教会の天井を突き破りこのダンジョンの最深部へとやってきた。

 

「……はぁ」

 

目的地に到着すると同時に空は理解したくない物を見てしまった様に手を顔に当てて、頭を軽く振りながらため息を吐いた。

空の目前にあったのは、真っ黒に焦げた地面だ。

 

「間に合うとは思ってなかったけど……まさか、欠片も残っていないとは」

 

あるはずの祭壇も、そこにセットされているディスクも存在しなかった。

見る限り、圧倒的な火力で一瞬で消滅させたんだろうと、空は膝を地面に付けてトラップ類が仕掛けられていないか慎重に地面を触りながら推測する。

 

「少しでも残っていれば、錬金術で復活は出来たんだけど……」

 

立ち上がり、空は焦げた地面に背を向けた。

 

「ナイアーラトホテップめ……。邪魔されないためにロムちゃんとラムちゃんを誘導に使ったのか……?」

 

空を仰げば、カラフルな天井が目に映った。

忌々しそうにこの向こうに広がっているであろう空の舌で冷笑しているだろう邪神に悪態をつきながら、このダンジョンに仕掛けていた探知型のトラップの術式を修復させ、別の術式を組み込む。

そして、天使のような四対の翼をしたバックプロセッサをスラスターが開き、莫大な量の粒子を吹かして移動を開始した。

 

「…………」

 

ふと、空は左手を見た。

そこには、ガントレットが空の腕を覆っているが、左手の甲に刻まれた|旧神の証《エルダーサイン》とその奥に封印されている『鍵』のことを考えた。

 

「強制発動……あるかもね」

 

この場で復元させることも考えたが、まだこの地のどこかで潜んでいる諸悪がいる以上はここで復元しても何らかの方法で、また消滅される可能性がある。そうなればイタチゴッコになってしまい、こちらが直ぐにスタミナ切れで倒れてしまうことは直ぐに予想が出来た。

力比べならともかく、頭では勝てないと理解しているからこその判断だった。

 

ダンジョンから抜け出し、蒼白い空へ機械的な翼で風を掴むように広げる。

空は、遠くなっていくダンジョンを横目で見つめながらその場から離れていく。

 

「良くないことが起きる予感しかしないぃ……」

 

人間の様に、女神の様に変えが効かない((秩序と循環を司る物|・・・・・・・・・))が破壊されてしまい、これから起きることに対して頭を抱えながら空を翔けた。

 

 

 

 

 

 

「えーーー!女神様と会ってきたの!?」

 

「声が大きいネプテューヌ、ボリューム下げろ…!」

 

大声でびっくりするネプテューヌに指を口に近づけて静かにしろと伝えた。

コンパも驚きを隠せなく表情で、口をポカーンを空けていた。

俺はホワイトハート様が空に消えていった空に向かって暴言を連発し始めたのを見て、巻き込まれないように颯爽とここに戻ってきた。

 

「一応、ある依頼を受けて鍵の欠片について調べてくれるように頼みこんだ」

 

「さすがこぅちゃん!で、依頼って?モンスター討伐?それとも隠したい黒歴史が書かれて本を人知れず燃やすこと?シンプルに人探しとか?」

 

「お、正解だ」

 

ネプテューヌが珍しく答えを当てた。

それにしても二番目は意味が分からない。自分で燃やせばいい話だろう、他人に任せるような物じゃないな。

 

「ちょっと、耳を貸せ。ホワイトハート様からも公にしたくないことだからな。他人に言うのは禁止だぞ」

 

「分かったー私こう見えても口はカッチカッチだから秘密は守るよ!」

 

「わ、分かったです。私も絶対に他人には喋らないです」

 

一番ネプテューヌが怖い。うっかり、口を滑らしそうで。

因みにアイエフは布のコートを羽織って、暖炉の前で暖まっている。

聞いた話によると、頭から雪の積もった地面に突っ込んでコンパがネプテューヌと初めて会った時のようになっていたとか、直ぐに助けられたが体を少し冷やし過ぎたのか、軽い風邪を引いてしまっているので今は話から外れている。

 

「この頃、ルウィーで行方不明者が続出しているらしい、その行方不明者について調べるのがホワイトハート

様から頼まれた依頼だ」

 

「行方不明者?みんな迷子になっちゃったの?」

 

「みんな、ねぷねぷみたいです」

 

ザクッとコンパの何気ない言葉がネプテューヌに突き刺さった。

確かに目を離せば、いつの間にか居なくなってしまいそうだ。

 

「情報だと神隠しの如く、いきなり消えるらしい。これから情報を揃えるためにルウィーで一番大きい街ランドームシティを拠点にするためにここから移動しようと思うんだが……どうだろう?」

 

「私はこぅちゃんのこと信じているから、それがベストな選択だよ」

 

「そ、……そうか…」

 

そんなことを言われると何だか照れる。

コンパもネプテューヌの横で頷いているので、同感のようだ。

 

「それじゃ……顕現せよ。荒れ狂う暴虐の炎嵐。限りあるものを焼き尽くせーーーイォマグヌット!」

 

詠唱を唱え右手を虚空に向けて差し出すと、どこからともなく|紙片《ページ》が手に集まっていき銃の形を造り、一斉に燃え上がる。手を振るうとそこには赤黒い鮮血の色をした禍々しい気迫を発する((自動式拳銃|オートマチック))が顕現した。

 

「その出し方ってカッコイイよね!中二みたいで」

 

「……それ、言わないで」

 

『まぁ、邪神って存在そのものが中二病みたいなものだし。それに連なる物をそうなるよ』

 

ネプテューヌの悪意のない言葉が胸に突き刺さった。確かに紙が集まって燃えたらと思ったらカッコイイ銃を握っているこの出し方は、カッコイイと思えるのだがなんだか恥ずかしい。

 

「さて、これを炎の加護が使えるだけまで出力を落してアイエフに渡そう。ここにアイエフを置いとく訳にはいかないからな」

 

「「…………」」

 

時間が掛けられないということで風邪で毛布を羽織っているアイエフを俺が抱きかかえ、ネプテューヌは変身してコンパを抱きかかえて、飛んで移動することにした。

空中ならモンスターに襲われることは少ないし、時間短縮にも繋がる。教会から電話を借りて宿の予約は取ったので、後は行くだけだ。それにしても、どうしてネプテューヌとコンパは不満そうな、そして羨ましそうな複雑な顔をしているんだろう?

 

 

 

 

 

「悪、い…わね。コホコホ」

 

「別に気にするな。それよりも見てみろよ……綺麗な景色だぜ」

 

目的地、ランドームシティを目指して俺達は空の旅をしていた。

始めてこの地にくるネプテューヌを後ろにして、俺は風を操りながら前方を進む。

少し前に行った山の中にあるルウィー本教会からは、少し離れた場所にあるので20分くらいで到着する予定だ。

 

「……そうね。まるで…絵本で描かれる様な世界ね」

 

アイエフの顔は赤いものの、炎の加護も合ってか体調はそれほど悪くは無さそうだ。

因みに今の体制は、ラムちゃんを運んだ時と同じようにアイエフをお姫様だっこして移動している。

 

「リーンボックスのような果てがない雄大な自然もいいが、ルウィーの幻想的な雪降る風景も好きだな」

 

「紅夜…て、自然な物が好きなのね」

 

「あぁ、大好きだな。モンスター狩りをしているから、いろんな場所に行っては楽しんでいるぞ」

 

まるでタンポポの種の様に降り注ぐ粉雪、そして真っ白に染まった山々。

眼前に広がる大地もどこを見ても雪が積もっている。遠くを見れば、灰色の空を引き裂いて日が差し込み、思わず見惚れる美しさに心を奪われる。この国の環境だからこそ見える光景だ。

 

「ふふっ、プラネテューヌの百階ある塔に行ったことあるかしら?私は五十階でギブアップしたけど、中々外から見える景色も良かったわよ」

 

「あー、そこか……いつか行きたいと思ったんだけど、時間がないんだよな。プラネタワーの屋上でプラネテューヌの街々を見たけど……流石、先進国って感じがしたな。リーンボックスにはない物があそこには一杯あるからな」

 

ベールも度々メガネを掛けて変装をして、薄い本を買いに行ってことを思い出す。

あれをこれをと買ってきて、オススメとタイトルの隅っこに18禁と書かれた本を渡された時は、脂汁が止まらなかった。(表紙には二人イケメン男性がダブルベットで寝ていた)

 

「そういえば、紅夜ってあんまりゲイムギョウ界を探検したことがないのかしら?知識だけは凄いけど」

 

「まだ一年ちょっとしかゲイムギョウ界を見ていないからな」

 

「あー、そういえば貴方も記憶喪失だったわね。ネプ子とあまりに違うから、忘れていたわ……コホコホ」

 

「それ、どういう意味よ。あいちゃん」

 

コンパを抱きかかえた変身時のネプテューヌが俺と肩を並べた。

相変わらず露出が激しい格好だ。見る場所を迷ってしまう。

ネプテューヌは口を尖らせ、つまらなそうな物を見るように俺達を見ていた。コンパは頬をハムスターが頬に食べ物を詰め込んだようにふくらませていた。

 

「紅夜の方がしっかりしているって意味よ」

 

「むぅ……」

 

自覚があるのか、更に口を尖らせた。

その時だった。雲を切り裂いた白金の流星が見えたのは

 

「………あれは…」

 

「どうしたの紅夜……あれは確か夜天 空?」

 

光の軌跡を描きながら、物凄い速さで飛翔する。

遠くからでも薄らと分かるプロセッサユニットの光は俺達と徐々に距離を詰め始めた。

 

「……あいつ…絶対に文句言ってやるわ」

 

アイエフは、雪の地面に顔面を突っ込ませた犯人だと言うことを覚えているらしく、イォマグヌットを強く握りしめた。因みに弾丸は入れていない。

ネプテューヌは驚き半分、そして尊敬するような眼差しを空に見つめていた。俺達の頭上を通り越した辺りでほぼ直角に進路を変えて、空は俺達の肩に並んだ。

 

「天井を壊したことでホワイトハート様は滅茶苦茶怒っていたぞ」

 

「だろうねー」

 

はははと空は軽く笑った。

 

『破壊神……何の用だ?』

 

「もうちょっと、雑談してから本題に入りたいんだけど」

 

『…………』

 

「はいはい、そんなに睨まないでよ。えっとねーーー僕は君たちパーティーと暫く行動を共にするよ」

 

「「「「…………はっ?」」」」

 

えっと……それは、つまり

 

「私たちの仲間になるってこと?」

 

「んー、仲間というよりただの協力者だね。期間限定でパーティーに加入するのってゲームでもよくあることだよね?それと同じ」

 

俺達は一斉に顔を合わす。

モンスターを召喚できることが出来る怪しい奴。しかし、今まで俺達に危害を加えたりすることは一切していない。

むしろ、ネプテューヌが毒でやられて解毒剤の為の薬を材料を集めてくれたり、俺が暴走した時は真っ先に駆け付けてネプテューヌ達を守りながら戦ったとのことだ。

 

『……何が狙いだ』

 

「ちょっと色々あってね。ま、一番は紅夜が再度暴走するのを監視することかな。あの時は間に合ったけど、今度は間に合う確信がないからね」

 

その発言に俺を除いたネプテューヌ達は顔を青褪めた。

((魔龍|ジェノサイド・ドライブ))を使って俺は、リーンボックスの森の一部を地図から消した。恐るべき力を俺は全くコントロール出来ず逆にコントロールされながら全てを破壊尽くそうとした……俺自身、その時の記憶が一切ない。でも、この力でネプテューヌたちを傷付けてしまったことは分かっている。

 

「私は歓迎するわ。夜天 空」

 

「ネプテューヌ……?」

 

どうしようと考えている時、最初に答えを出したのはネプテューヌだった。

 

「貴方の力、そしてその姿は、女神に通じる物と見て取れるわ。貴方も紅夜と共にホワイトハートに会ったと聞いていると言うことはルウィーで起きている事件を知っているのよね?」

 

「……まぁ、誘拐事件についてなら知っているけど」

 

ネプテューヌはきっと空を女神だと思っているだろう。

確かに思い出せば、空のしてきた行動は間違いなく人を危機から救うことだった。

ラステイションの時だって、恐らくハードブレイカーを一撃で沈めれたが、それをしようとせず空は人を逃がすことに専念した。

 

 

「君、もしかして僕が女神だと思ってる?」

 

「……えぇ、そう思っているわ」

 

コンパとアイエフが驚いた顔で空とネプテューヌを見た。確かにそう見えるかもしれない、少なくても俺の見てきた夜天 空という存在は女神らしい行動が見て取れた。空は、暫く腕を組み黙った。

 

「貴方はプラネテューヌの女神なの?」

 

「違う」

 

小さく首を振って空は否定した。

 

「僕には、女神の素質が絶望的にない。確かに力はあるよ……けど」

 

「けど?」

 

「絶対的に、女神としてなくてはいけない根源的な所から僕は破局している」

 

一瞬だけ、俺にしか分からない程の一瞬険しい表情に変えて、見えてきたランドームシティに視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕は、人間が大ッ嫌いだ」

 

 

 

 

感情を押し殺した声で、空はそう呟いた。

説明
その6
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