たまゆり2
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かおる視点

 

「うは〜。ねえ、ぽって。見てみなよ」

「え?うわぁ〜」

 

 とても良い天気前日の強い雨の後は雲一つない晴天が私たちの目の前に現れた。

同じ空なのに見上げるとすごく空間が広く感じられた。

 

 それはぽっても同じようで思わず写真を撮ろうとするほどだ。

同じとこに住み始めてからぽっての細かな表情や変化が楽しめて幸せな気持ちになる。

 

 私は空をみて感動した後すぐにぽっての横顔を笑みを浮かべながら

覗いていたことに気づく。好きっていう気持ちは所謂恋愛的に熱くなるだけではなく

こうやって落ち着ける相手と笑い合えるのも一つの形ではないかと思ってる。

 

「ぽって、今日はこの辺散歩していく? もしかしたら少し世界の表情が変わってるかも」

「かおちゃん、今日は随分詩人だね〜。でもそうかもしれない。いこっか」

 

 同じ地域には住んでいるものの、前とは違って卒業してからはアパート住まいだ。

少しずつ互いに仕事で貯めたお金でもう少し良い場所に住もうかと思っていたが

綺麗な自然に囲まれていて思っていたより良い環境であった。

 

 建物は少々古いけど…。

 

 学生の頃と同じ空気を吸っているけど、二人一緒だとまた違ったものを感じる。

一緒に「いる」と「住む」だとだいぶお互いの心の持ちようが変わってるから。

 

 歩きながら視線を合わせると思わず笑いがこぼれ出てくる。

その間にもぽっては周りに目を配らせて綺麗なものがあれば撮り

仕事をがんばっている人を見かけては撮り。その後ちゃんと本人にも許可をもらっている。

 

「わんわん!」

「わぁぁ、かおちゃん。ワンちゃんかわいいね〜」

「ほんとだね」

 

 犬を散歩させていたお姉さんが私たちの様子を見て微笑んでいた。

少し照れくさくて私はちょっとだけ視線を逸らす。こそばゆくて幸せな一時だ。

 

「ごめんね、かおちゃん」

 

 犬にばいばいって手を振りながら見送った後に少し困ったような声で言うぽって。

私は彼女がどんな顔をしてるか後ろにいるからわからなかったが。

また気を遣わせてしまっているのだろう。

 

「この辺でもポプリの勉強できるとこあるし。プラス、バイトも兼ねちゃえば

問題ないでしょ」

「他に行きたい場所あったかもしれないのに…もしかしたら私のために」

 

「それはないな」

「え?」

 

「夢も大事だけど私には必要な成分があるの?」

「成分?」

 

 振り返って首をかしげる仕草をするぽってが可愛くてつい顔がにやついてしまう。

私はそんなぽってを抱きしめて匂いを嗅ぐ。

 

「ぽって分だよ…」

「私分…?」

 

 よくわかってないような反応をするが私の気持ちは伝わったのか抵抗せずに

私に身を預けてくる。人の少ない、木々が多いその場所でそっと口付けを交わす。

 

 その後にびっくりしたような顔をしたぽっての顔を見て私は我に返る。

いくら人の少ない場所でしたとはいえ、不意打ちのようにぽっての唇を奪ってしまった…。

 

「ごめん」

 

 いくら恋人でも嫌な時もあるかもしれないし。相手の了承を得てからじゃないと

マズイかなと思ってやや俯いていると、パシャッという軽い音が聞こえた。

 

 顔を上げてぽっての方を見ると嬉しそうにシャッターを切っていた。

 

「ぽって…?何を…」

「あっ、今のかおちゃんの表情がとても可愛かったので」

 

 そう言って笑顔を浮かべるぽっての表情も真っ赤になっていて可愛かった。

あ、私今すごくぽっての匂いを嗅ぎたいと思ってもう一度強く抱きしめる。

 

「やっぱり私…大好きだ…」

「かおちゃん?」

 

「私の胸の音聞こえる?」

「さすがに聞こえないよ…。でも、吐息がとても熱っぽいので」

 

「ぽって…好きだよ…」

「私もだよ…かおちゃん」

 

 お互い息が苦しくなりそうなほど好きな気持ちが強くてたまらない。

愛おしくてずっとくっついていたくなる。

 

「く、苦しいかも…」

「あ、ごめんごめん」

 

 苦笑しながら離れるがまだ彼女の残り香が私の中に入っていく。

やっぱりいい匂いだ。

 

 気まずい沈黙が流れて私はその空気に浸かるのがきつくて苦笑しながら

こうぽってに声をかける。

 

「帰る?」

「どうしようかな…」

 

 ぽってが名残惜しそうに周囲を見渡すと、勢いよく歩き出した。

方向的に来た道とは反対に奥の方へと進んでいく。

 

 徐々に坂が高くなっていき、ちょっとした山登りをしている気分になる。

そういえば学生の頃はお姉ちゃんによく連れていってもらったっけ。

かなり大変だったけど…。

 

「わぁ〜」

 

 上りきるとさっきまで木々が沢山あって視界が狭かったのに、一気に広がって

少し眩しかった。ぽってが感嘆とした声を上げていて、私も目を細めていたのを

開けて見渡した。

 

 心地よい風に吹かれていて奥の方を見ると柵があってベンチなども設置されていた。

人がいなくて狭い場所だけど、きちんと整備されてるように見える。

 

「かおちゃん、こっちこっち」

 

 ぽってに腕を掴まれ引っ張られていく。景色は緑と海が広がっていて

小さい島の山も見える。空気がとても綺麗で深呼吸すると気持ちよかった。

 

 そしてさっきぽってとくっついていた時の熱はすっかり取れていて

私たちは写真をとったり、ポプリの材料になりそうなものを探していたり

それぞれ好きなことをしていた。

 

 そういうことをしていると、時間というのはあっという間に過ぎるものであり、

徐々に日が傾いていたことに気づくと私はぽってにそのことを伝えると

すごく驚いていた。

 

「もうこんな時間!」

「暗くなる前に帰ろか」

 

「うん」

 

 ぽっては頷くと当たり前のように私の手を繋いで握ってきた。

私もそのやわらかさと温もりが愛おしくて…絶対に離さないようにという気持ちを

込めて少しだけ力を加えた。

 

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 家に戻ってからお風呂に入るためにお湯を沸かして私はポニーテールにまとめてた

髪を下ろすと背後からぽってから声をかけられた。

 

「そういえばかおちゃんさ」

「なに?」

 

「私の匂い好きっていうけど、家にいる内はいつでも嗅げるのにどうして外でも?」

「好きな人の匂いってずっと嗅いでたいじゃん」

 

「そ、そうなの…?」

「あ、今ちょっと引いた?」

 

「そ、そんなことないよ」

 

 笑いながらちょっとふざけあって、他愛のない話も交えてそんなまったりとした

時間を過ごす。

 

 いつもは別々のお風呂だったが、今日は無性に一緒に入りたくなってぽってを

誘ってみるとちょっと照れながらもOKをもらった。

 

 恥ずかしがりやのぽってだから断られるかと思ったけど、ダメもとでも

誘ってみるものである。

 

 久しぶりに二人で入って体も心もホカホカしてから下準備をした材料でごはん作り。

テレビをつけて、話をしながら美味しくいただいて。お腹も膨らみぽってのアルバムを

見ながらおしゃべりして昔を懐かしんでいた。

 

「久しぶりにみんなに会いたいね」

「そうだね…」

 

 みんなそれぞれ目標への勉強は進んでいるのだろうか。麻音に関してははっきりと

目標が決まってるかどうか怪しいけれど。まったり、急がずに道を見定めていきたい。

 

「ぽっては写真家目指すの?」

「わからない…。でもお父さんもしてたことだしやってみたいかも」

 

 身近にプロの先生がいるから今でも時々会って教わっているみたいだ。

 

「だけど、私もかおちゃんみたいに…かおちゃんとは離れたくないかな…」

「うん…お互いの近くで出来るようになれるといいけどね…」

 

「お店持っちゃおうか」

「お互いの?」

 

「うん」

「それは難しくないかな〜」

 

 私は苦笑しながら言うとぽっての目は輝かせながら笑っていた。

 

「不可能じゃないと思うし、夢は大きい方がいいかなと思ったので」

「あー、堂郷が言ってたことね」

 

 暑苦しくてめちゃくちゃするけど、ほんと生徒想いの良い先生だった。

 

「少しずつ夢に向かってがんばろう、かおちゃん」

「うん…」

 

 二人見つめあって少しの間、沈黙が流れた後に二人でキスをした。

厭らしい音が響いて相手の感触を味わう。とても心地よくて興奮して愛おしい。

 

 こんな生活を私は夢を見ていた。将来とはまた別の人生の夢。

ずっとぽってと一緒に道を歩いていきたい。

 

 どこかで転ぶ時もあるかもしれない。でも、道は一つではない。

私たちは否応なく進んでいく、問題はどうしたいかだ。

 

 やりたいこと、求めるものさえ見つかれば後は自分次第。

 

「がんばろうね、ぽって」

「うん!」

 

 キスが終わり二人で確認し終わった後、眠そうにしているぽってと一緒に

ベッドの中に入って手を繋ぎながら目を瞑った。

 

 学生の頃とは違った幸せが今ここにある。彼女の温もりを感じる。

私は今確かに幸せだ。この幸せを続かせるために私はこれからもがんばっていく。

 

 私は匂いを愛しているから…。

 

お終い

説明
卒業した後の二人の話。イチャイチャして後のことを考えながらすごすのとかいいなぁとか思ったらこういうお話に。
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