魔装機神サイバスター・トータル・イクリプス |
第三話『帝都、燃えゆ後篇』
時は少し遡り、雅樹が勝手に京都へと向かって行った後、ミオはと言うと・・・・
「あ〜も〜!!マサキったら勝手にどっかへ行って〜!!」
ウェンディさん達に言いつけてやる〜〜!!と叫びながら目の前で左腕を損傷しながらも孤軍奮闘する戦術機、94式『不知火・壱型丙』の横を通り抜け感情の赴くままザムジードの拳をBETAに叩きつけた。
『なっ!?何だお前は!?』
青い94式『不知火・壱型丙』のパイロットで唯依達の教官を務めた男『真田晃蔵』は突然自身の横から現れた謎の機体に警戒を現す。
「悪いけど今はそんな事はどうでもいいの!それより貴方は早くここから撤退して!!ここは私が食いとめる!!」
『なっ!?無茶だ!たった一機で数百体のBETAを相手にするなんてっ!』
「だいじょーぶっ!私もザムジードもこの程度の奴らにやられないから!!それにおっちゃん怪我してるでしょっ!?早く治療しに行かないと!!」
そう言いながらリニアレールガンを乱射するザムジードに妙な安心感と頼もしさがあり、それを感じ取った真田は唸った後、済まないといい撤退していった。
「さーて、魔装機神ザムジードの力、見せてあげる!!」
真田が撤退していったのを見送り人を奮起させてBETA達へと向かって行った。
「まずはコレ!レゾナンス・・・クエイクッ!!」
ゴゴゴゴ・・・・ドガガガガッ!!!!!!
ザムジードの左腕に装備されている振動発生機を地面へと叩きつけると地震が起ったその後、地面から土の槍が下からBETA達を襲い刺し貫いた。
「うしっ!ゴクー、ゴジョー、ハッカイ!一緒に行くよ!」
「まっかせてくだい」「いきますえ〜」「頑張ります〜」
三機のハイファミリアが先陣を切りザムジードもそれに続く。
「おりゃりゃりゃぁあっ!!!」
向かってくる向かってくる突撃級と要撃級に対してミオはザムジードの拳で砕き、ツインフラクチャーで薙ぎ払い、ハイファミリアで撃ち砕いて行った、
たった一機で数百ものBETAを相手取るその姿はさながら鬼神の如く。
「ハァハァ・・・さ、流石にちょっと疲れたかな・・・?」
ミオは荒い息を吐きながら辺りを見回した。カーキ色だったザムジードの機体がBETAの返り血で真っ赤に染まっていた。たった数十分で数百もいたBETAを残り五十体まで減らしていた。
「でも、もうちょっと!」
『いや、その必要はない』
「え?」
突然入った通信にミオは首を傾げると上空からいきなりそれはやって来た。
「バーニングダイブっ!」
その機体は流星の如く群がるBETA達へと突っ込んでいき次々とBETAを巻き込んだのち爆発した。
「逃さん、厭魅蟲毒の法!」
撃ちもらしたBETAは四条の紅い光線が襲いかかり、BETA達は爆散した。
そしてその光景を目のあたりにしたミオは仲間の名前を叫んだ。
「ファングさん!ガエン!来てくれたんだ!」
「遅くなった、ミオ」
かつて自身の師が乗っていた機体、『ギオラスト』に乗りながらファングは炎の中から現れた。
「マサキは戻ってきていないのか?」
猛禽類を思わせ後頭部から伸びたテールが特徴の機体『ゾルガディ』を駆るガエンがミオに問いかけた。
「うん。って言うかどうしてファングさん達が?」
「俺達だけではない。アンティラス隊のほとんどが京都防衛線に参加している」
「マジ!?」
ミオの驚きにファングは苦笑しながら頷き、アンティラス隊で決まった事を説明し始めた。ギドに地上の事を説明され、更には雅樹達の定時連絡と探査ブローブで撮影されたBETAの姿、京都の現状を憂いた代表であるワグネルはアンティラス隊に京都防衛を指示、それと同時に先遣隊であるマサキとミオの救援を指示した。そこで機動性のあるギオラストとゾルガディの二機に乗るファングとガエンの二人が雅樹達を迎えに行く事になり、残りは帝国軍の援護に回った。この時、やっぱりと言うか案の定、クリスカとイーニャが異議を唱えたがウェンディとテューディ、セニアの説得で何とか納得してもらった(それでも、不満げであったが)。そして現在、京都各地でアンティラス隊が京都を防衛している。
「もう、エネルギーが心許無いだろう。お前は一旦フリングホルニに戻って補給受けろ」
「うん。でも、二人は大丈夫?」
ミオの心配にファングは安心させるように微笑した。
「安心しろ。ここに来るまでに実際に対峙してみたが、思ったほど大した事は無い」
「寧ろあれなら死霊装兵の方が数段手強いな。有象無象の奴らに後れは取らん」
「・・・うんっ!じゃあ二人とも気お付けて!」
ミオはそのままフリングホルニへと飛び立った。
「・・・行ったか」
「ああ、来たぞ」
ミオを見送った後、ファングとガエンの前にBETAの残党が群がって来た。
「今しがたギドから連絡が来た。級とに巣食う奴らの数もだいぶ減ってきているようだ」
「ならば、残りのコイツらさっさと潰すぞ」
「ああ。行くぞっ!」
そう言ってファングのギオラストは西洋の剣に似た造りの『ディスカッター』をガエンのゾルガディは両手にジャマダハル『ファントムエッジ』を装備しBETA達を迎え撃った。
そして澪は帰還する途中でマサキに通信を送りそこで今までの経緯を説明した。
そして、時は戻り現在。フリングホルニへと戻った雅樹は、
「それで?何か言い訳は有るか、マサキ?」
般若と化したテューディとセニアの前で正座させられていた。
後ろでウェンディがオロオロして、その隣でミオがゲラゲラと笑っているがいるが目の前の二人が恐ろしすぎて何も言えない。
「い、いや・・・あのな?」
「何だ?」
ギロリと見下ろしながら睨みつけるテューディ。元が美人な分、余計怖い。
「・・・・・なんでもない」
「ね、姉さん。今は戦闘中だしなによりさっきの現象についても話し合わないと・・・」
完全に縮こまってしまったマサキにウェンディが助け船を出した。
「・・・ふむ。そうだなまだまだ言い足りないが、今はそれどころではないか」
テューディも納得し、マサキはほっと一息ついた。
「ねー。さっきの現象って?」
状況が飲み込めないミオはウェンディ達に尋ねた。
「さっき、マサキが帰還して負傷者を医務室に運ぶ途中、グランヴェールがフレアー現象を起こしたのよ」
「・・・フレアー現象?」
謎の単語にミオは首を傾げる。
「フレアー現象っていうのは精霊が多数集まりエーテルと干渉すると起る発光現象よ。マサキやミオも経験したことがある筈よ」
「あー。そう言えば、サイバスターを初めて見た時にそんな事が起ったな」
「あー、あったあった。・・・・あれ?って言う事は・・・」
マサキとミオが思い出すと、ミオがある事に気付いた。
「さっき救助した二人のどちらかがグランヴェールの操者になるって事?」
「その可能性は高いわね」
「今、治療と同時に二人の精霊特性を調べているわ。その結果次第ね」
「おいセニア。分かってるともうが・・・」
「分かってるわよ。二人の治療が最優先でしょ?」
睨みつけてくる雅樹にセニアは肩をすくめながら息を吐いた。
「・・・どうやら、あの髪の長い娘は一命を取り留めた様だな」
携電の画面を見ながらテューディが先ほど医務室から来た連絡の内容を告げてきた。
「マジか!?」
「ああ。今は二人とも眠っている」
「そっか・・・」
テューディの報告にマサキはホッと安堵のため息をついた。
「はい!じゃあ雅樹の心配ごとも無くなった訳だし、さっきギドから戦況の報告がきたわ」
緩くなった雰囲気をセニアはパンッと手を叩いて引き締め直した。
「まず、京都に侵攻していたBETAはほぼ殲滅できたわ」
おお〜っとマサキとミオは感嘆の声をあげた。
「で、現在ギドとトレイスは五摂家、だっけ?その人と防衛線の司令官に私たちの事を説明してきているわ」
「五摂家って随分と大物が出てきたな」
五摂家の名前が出てきた事にマサキは神妙な面持ちになった。
「マサキ、その五摂家って何?」
そんな雅樹にウェンディはラ・ギアス組を代表して疑問を放った。
「あん?ギドから訊いてねぇのか?」
「私たちが訊いたのは、地上の情勢とBETAの事、後は国連軍についてね」
「あーなるほど・・・」
セニアの捕捉にマサキは面倒臭そうに頭をポリポリと掻いた。
「簡単に言うと五摂家っていうのは、煌武院、斑鳩、斉御司(さいおんじ)、九條、崇宰(たかつかさ)っていう五つの家の総称でその内の一つ煌武院家は確か現将軍、つまりこの国で一番偉かったっけ?んで、他の家はこの国ではかなりの権力を持ってたな」
「もっと正確に言うなら今の当主は煌武院悠陽って言って歳はマサキと同じだったよ」
ミオの捕捉にラ・ギアス組がギョッとする。
「ちょっと、それって大丈夫なの?」
セニアは言外にそれで国が成り立つのかと尋ねてきた。
「さあ?実際にあった事は無いから分かんないけど、まだ新任はしてなかった筈だよ?」
「まっ取りあえずその五摂家に会えた事は不幸中の幸いだな」
「そうね。それにギドならこっちが不利になる様な事は無いしね」
「それでは、ミオとマサキはファング達が戻ってくるまで待機していてくれ」
「んじゃ、俺は医務室に行ってくるわ」
そして、マサキは格納庫を後にした。
フリングホルニ・医務室
その頃、医務室で寝ていた唯依はとある夢を見ていた。
(ここは・・・?)
夢の中の彼女は炎の中にいた。
猛々しく荒々しいが温かく包み込むような炎。
唯依は不思議と父親に抱かれた様な安心感を覚えた。
(ち、ちちうえ・・・?)
自身の幼い頃、死んだ父に抱かれている感覚に懐かしさがこみあげてくる。
「■、■■■■■?」
(な、なんだ・・・?)
懐かしさがこみあげて来ている途中、目の前の炎の壁が割れそこから強大な炎の巨人が現れた。
「――――――――――――――――――――――――ッ!」
(な、なんだ?何を言っている・・・?)
巨人は口と思しき個所を開き何かを喋っているようだがノイズが走っていて何を言っているのか聞き取れない。
「―――――――・・・・・」
(ま、まって・・・)
巨人は自分の言っている事が通じていないと悟ると山吹色に光る目を寂しげに光らせながら唯依に背を向けながらゆっくりとした足取りで去っていった。
そんな巨人の背に唯依は手を伸ばすが、彼女の目の前が真っ白になっていった。
「ハッ!?」
「おっ!目が覚めた見てぇだな」
目を覚ました唯依が最初に見たモノは見知らぬ天井と自分の顔を覗き込む自身と同年代の少年だった。
「ここは・・・?」
「ここはフリングホルニの医務室だ。お前ともう一人は救助されてされてここに運び込まれたんだよ」
フリングホルニと言う聞き慣れない単語が出てきたが唯依はそれより今一番気になる事があった。
「山城さん・・・もう一人の人は・・・?」
「安心しろ。お前の隣でぐっすり眠ってるぜ」
確認するように隣を向くと包帯だらけだがしっかり息をしている上総が横たわっていた。
「ホッ・・・(よかった)」
「安心しな。アイツに比べたらお前はずっと軽症だ。戦闘も大分落ち着いたし―――」
「あ、あの・・・」
いろいろ訊きたい事がたくさんあるが、唯依はもう一つ気になる事があった」
「ん、なんだよ?」
「貴方の名前は?」
「ああ、龍見雅樹。魔装機神サイバスター、お前が見た銀色の機体の操者だ」
「龍見、まさき・・・雅樹、・・・・雅樹!?グッ!?」
唯依は雅樹の名前を噛み砕いて認識すると突然彼の名前を叫び跳ね起きた。が、全身に走る痛みに顔を歪める。
「お、おいおい!急に起き上がるな!!アイツより軽傷とは入ったがそれでも重症である事には変わりないんだぜ!?」
慌てて唯依を抱き止める雅樹に唯依は彼の服を掴むとブルブルと震えだした。
「お、おい・・・」
「ほ、本当に雅樹、なの?う、嘘。どうして・・・」
「お、おい!急になんだよ!?」
突然の唯依の行動に雅樹はうろたえながら問い返した。
「お、覚えてないのか?私だ。篁唯依だ!」
「タカムラ、ユイ・・・・!!お前、あの唯依か!?」
「そうだ!雅樹、今までどこに行ってたんだ!!私もお母様も、巌谷のおじ様もみんな、みんな心配していたんだからな!!」
そう言って雅樹の胸に顔を埋める唯依に雅樹は赤子をあやす様に彼女の頭を優しく撫でた。
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