キーンとかき氷 |
「メロンだろ!!」
「いちごだってば!!」
夏休みが終わって1日目、残暑にイライラして隣の席の男にムキになる。
やっぱり、かき氷は絶対にいちごが一番だと思う!
ちょうど、後ろを通ったけーちゃんに、ヤツは尋ねた。
「一番好きなかき氷の味は?」
突然のことに一瞬びっくりした顔をしたけーちゃんだけど、にこやかに「メロンかな」と答えて自分の席に向かった。
「ほらみろ」
漫画のように高くなった鼻が目に見えるようだ。
「あ〜あ。さすがアツアツなこと!!」
このくそ暑いって日になんなのさ。
「なにがアツアツだよ…」
「私、知ってるんだから。けーちゃんのこと好きなんでしょ」
ため息混じりに私をばかにしたような顔を向けた。
「違う」
「でも、仲いいじゃない」
けーちゃんの笑顔が、あんたの前ではちょっと輝きが違うことは、みんなが気づいてる。
あんたも本当は知ってるんじゃないの?
「俺は他に好きなやつがいるんだよ」
「へぇそぉ。その子とはうまくいきそうなの?」
「…いや」
「なんだ」
「ばかにすんなよ」
「だって…小さくて、かわいくて、頭もよくて、男の子みんなに注目されてるけーちゃんよりいい女の子を追うって相当な身の程知らずなんじゃない? あんたの分際で」
「うるせーよ」
顔を背けたヤツを見て、無性にイライラする。
きっと、暑いせいだ。
かき氷食べたい。
大きい氷をのせて、かき氷器で砕いて。
あまいいちごのシロップかけて。
食べたらきっと、熱も冷える。
そう、最近気づいたこいつへの想いだって。
身の程知らずは私。
いつだって、素直になれない私。
それだって情けないのに、あんな女の子と同じ人を好きになるなんて。
一気に回想したら鼻の奥がつんと痛くなった。
一気にかき氷を食べて頭が痛くなるみたいに。
「おまえは好きなやつ、いないのかよ」
「いたっていなくたって、あんたには関係ない!」
人の気も知らないヤツに、またかわいげのない返事をしてしまう。
嫌われたいわけじゃないのに。
行動で表せない私は、言葉でしか伝えられないのに。
そーかよ、とまた横を向いてしまったヤツに向かって、私はボソッと呟いた。
「…いる」
私の目の前に。
言ったら、どんな顔をするんだろう。
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ほのぼの恋愛ショートです。 | ||
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