超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ルウィー編 |
低い機械音が空間中至る所で起きる。
幾つものクレーンから運ばれたコンテナが開き、その中に敷き詰められたパーツが運び出される。
虚ろな瞳をした作業服を着た人間が、ケーブルなどで繋がっている巨大な兵器を整備している。
天井から映し出される光に鋼鉄の装甲が反射をして、この空間にある全ての機体の存在を証明した。
「……素晴らしい」
まだ完成していない物も含めれば数十機はあるキラーマシン。そしてそれらを統括するための五機のハードブレイカーを建造されている光景に手すりを強く握りしめ、興奮を抑えれない様子で男性は呟く。
「これだけの戦力があれば……」
「−−−大陸一つ征服……いや、支配できるでしょう」
男はその高い声に反応して手すりから手を離し背筋を伸ばす。照明の合間にできた闇から這い寄るように冷笑が似合う中性的な容姿、燕尾服を着こなした男性が現れた。
「あなたですか『ナイア』さん」
「えぇ、製造は順調ですか?」
「完璧ですよ。貴方が用意してくれた資金、設備施設、機材等で私たちの力は一気に倍となりました」
と、男は首に掛けられたロケットペンダントを手で掬い開けた。
そこに納められていたのは、男性によく似た8歳くらい子供と同じくらいの女の子の写真が入れられていた。
「……それは?」
「はは、幼馴染って奴ですよ」
恥ずかしそうに男性は頭を掻いた。
そして、悔しそうな怒りに孕んだ表情へと変わっていき、手を震わした。
「リーンボックスでの粛清で俺は両親を見捨てて、こいつを見捨てて……誰も守ることも、救うことも出来なかった……!俺だけが生き残ってしまったんです!」
「…………」
怒りに蓋を締めるように開いたロケットペンダントを優しく閉じて、男性は力なく笑った。
「このルウィーに来て、同じようにただ大陸に住む女神を信仰しなかった……ただ、それだけで、異端者と罵り追放して、影に押し込んだ腐った教会の連中に復讐してやるって心に誓った」
「えぇ、確かに伝統ーーーと言うべきでしょうか、自身の仕える女神を絶対と崇める固定観念を持った教会からすれば、生まれたその地の女神を信仰しなければ、それは到底理解できぬものとして異端……と呼ぶでしょう」
「それだけじゃない!女神も結局は何もしなかった!この地で教会の奴らから隠れて生きていくしか、俺達には出来なかった!だから今度は俺達は粛清してやる!」
男は荒々しく手すりに捕まった。
照明に映された女神を駆逐する為の兵器に暗い希望を託すように男性は叫んだ。
「俺達はーーー自由を手にしてやる!!!」
◇
「こ、これは手作りなの!?これでも大陸廻って数々のご当地料理を制覇してきたネプ子さんでも……こ、このシュークリームは次元が違う!」
「甘いだけじゃないわ。なんというか、美味しいわね」
「凄く綺麗で、こんなお菓子も作れるなんて凄いです!」
「……お前、プラネテューヌでパティシエとして働いているのか…?」
「別に、暇の時に勉強しているウチに趣味になっただけだよ」
人間大っ嫌い宣言をした空と共に俺達は、ルウィーの一番中央街であるランドームシティの宿に無事に到着した。着くまでは、やはり気まずい空気が流れていたが、到着すると空はアイエフに対して風邪薬を渡した。
その風邪薬が驚くほどの効力で飲んでちょっと横になっただけで完治した。
そして今は、宿の食堂で昼食を取った所で女神化を長い時間を使用したネプテューヌがもっと食べたいと騒いだところで、空がどこからかシュークリームを取り出してあげたのだ。
因みに全員の反応の通り、滅茶苦茶美味い。
生地はふっくら柔らかでまるで泡を触っているような感触だ。
カスタードクリームは、鼻孔と食欲を過激に反応させる甘い香り、一口頬張れば濃厚な味なのに後味がしつこくなく口の中で一杯に広がった甘さは、徐々に虚しさと共に消えていく。その甘味がまだ口に残っている間に、新しいシュークリームへと手に伸ばしてしまう魔力が宿っていた。
『ちっ……流石、あのキチデレですら唸らせた腕だ』
「ははは、……うん、僕もあいつに気に入られるのは予想外過ぎたけど」
デペアは俺との感覚を繋げているので味が分かる。
それと同時にデペアも口では言っていないが、美味いという思いが俺にも分かった。
「ねぇねぇ、もうないの?」
「ないよ……て、十五個も作っておいたのに無くなるの速すぎでしょ」
空の目が太るよ?と伝えている様にちらりとネプテューヌ達の腹に視線を降ろして、コンパとアイエフには通じたのか顔を真っ赤にして俯いてしまった。だが、残念ネプテューヌには通じても思考が違っていた。グットサインと笑顔を空に向けた。
「大丈夫!いっぱい動くもん」
「………はぁ」
空が机に頬杖をつきため息を吐いた。花より団子を選びそうなネプテューヌは目をキラキラとして、空を見つめていた。
「晩御飯にプリンを用意するからもうダメ」
「プリン!?OK!私大好物なんだ!」
上手い。偶然かネプテューヌの大好物を用意すると言った空はネプテューヌの胃袋の暴走を止めた。
そして、空で死守していた最後の一個を口に放り投げた頬張った。
「あむっ……ん……まだまだだね」
「まだまだってあんた間違いなくプロ以上のレベルよ?」
「僕が初めて食べたシュークリームの味には程遠いよ」
「上には、上がいると聞きますが、世界は広いです……」
「これ以上に美味しいシュークリームか……」
そんなものが合ったらリアルに頬を落ちてしまいそうだ。
空は口直しの為かコーヒーを注文したところで、俺達もそれぞれ飲み物を注文した。
「さてと……「はいはいはい!」どうしたのパー……ネプテューヌ」
質問があるのかネプテューヌが手を上げた。空はそれに肩を下ろして一瞬女神としての名前を口に出そうとしたが、直ぐに口を閉じて彼女の名前を口に出した。
「まずは、新しい仲間の自己紹介からしようよ!何度か会っているけど」
「……だから、僕は協力者だ。君達のキャキャフフフしながら仲良くパーティーに入ったつもりは微塵の一つもない。まぁ……デペアから聞いていると思うけど異世界の神で種別的には破壊神だね。名前は『夜天 空』、差別主義者なのでドキツイことを言ったり、無視とかすると思うけどよろしく」
「「「「……………」」」」
とりあえず、これ以上近づいたら刺すぜみたいな自己紹介だった。
ネプテューヌも頬を吊り上げながら、ヘルプと訴えているような目で俺達に見てきた。それに一番最初に口を開いたのはコンパだった。
「あの……空さんって呼んでいいですか?」
「いいけど僕はコンパって呼ばせてもらうよ」
「あ、はいです!えっと空さんはどうして私達のパーティーに?」
空は来るものは拒まないタイプなのか?不穏になった空気を溶かす為に一歩進んだコンパに普通に答えた所から空は、コンパのようなタイプを嫌いって訳じゃないんだろうか。
「それは言ったけど、紅夜の暴走が怖いんだよね。君たちは見たから分かると思うけどあの場に僕が駆けつけなかったどうなっていたか……分かるよね?」
「「「…………」」」
三人の顔が一気に青くなっていく。俺はさっぱり記憶がないが、まるで理性を失った獣のように暴れまくったらしい。
「また、紅夜が暴走する危機があるの?」
「今の所はまずないね。まぁ、あれは暴発的には起こる可能性はないと言ってもいいほどで、ぶっちゃけ切欠がないと発動できないようにさせられているようだし……まぁ、保険で居るだけだよ」
「それじゃ貴方は紅夜じゃなくて別の目的があるの?」
「ふっ……想像にお任せするよ」
そういって湯気の立ったコーヒーを飲む空。
やっぱり破壊という物騒な名でも神であるのか、その仕草はとても品があった。
「他には質問は?あ、君達の前だと刀剣を主に使っていたけど僕は基本何でも使えるから、正気を疑う様な指示じゃない限りは従うよ」
『コイツの武器は基本チートだと思っていいよ。あの『煉獄ヲ裁断スル切ッ先』以外になら……『((真理切り開く絶対の業剣|ジャバウォック))』とかあるね一振りでそこら辺の山を粉砕できるよ』
「あれは魔力をバカに使うから無理、あと今の僕じゃ持つ事態がキツイ」
『……あぁ、そっか今の君って弱体化しているだね』
「「「「………えっ?」」」」
弱体化……?今まで散々、普通できない異常なこと、そして理解不能な技を使いまくってきたコイツが弱くなっているの?マジで?こいつ女神であるノワールの斬撃を斬撃が弾き飛ばしたり、ハードブレイカーを片手で掴んで放り投げたり、高速で放ったベールの刺衝を手で掴んだりと滅茶苦茶しているのに?
『だって、こいつ力が強すぎで素の状態でこの世界に来たら、世界がこいつに耐え切れなくて崩壊していくぜ。何と言っても、こいつコントロールがめちゃ下手!』
なにそれ恐い。
俺達全員が思った事である。あと、散々俺のことを核爆弾とか言ってきたけど、お前の方が圧倒的に危険だ!
「聞くけど、君達にとって『破壊』ってどんなイメージ?」
理解できないことに頭が混乱するが、空はそんな俺達を面白がっている様に両手で肘杖をついて俺達に質問を投げてきた。
「えっと……爆発?」
暫く考え後、ネプテューヌの呟き俺達は頷く。
身近に破壊といえば、工事現場などで見かけるビルの解体処理だったり、ミサイル等による爆炎による蒸発などが思いつく。空は口を尖らせふーんを声を零した。
「まぁ、破壊の定義って結構ややこしい所があるからそういうものか……えっとね僕が扱う破壊は自然だね」
「……自然?」
「嵐とか、洪水とかそういう自然的な破壊を僕はすることが出来る。まぁ、簡単に言うと世界そのものを操ることが出来るんだよ」
『だけど、本人がコントロール下手くそで破壊としての形じゃないと発現出来ないから破壊神って呼ばれているんだよね。プークスクス!だせぇww』
「まだまだ修行の身だよ…はぁ、うぜい」
無邪気な子供のような声で笑うデペアを睨む空。
ポカーンとしているネプテューヌ達を見ながら俺はため息を付いた。
そんな最初から誰も抗えないような能力を持っているのにそれを多用せずに純粋な身体能力と武術だけで空は戦っているんだと……それも物凄く弱体化した状態で
「まぁ、それはともかく……はい」
空が指を鳴らすと、一瞬だったが薄くネプテューヌ達の服が赤い膜が覆って消えた。
「炎の加護だよ。ルウィーは寒いからね……けど、これは寒さから身を守るためであって君たちの体調を守る者じゃない。調子に乗っていると体調崩しから注意してよね」
「すごーい。確かに服が温かくなったかも」
「女神様も凄いけど、やっぱり異世界の神様も凄いのね」
「こぅさんのコートこれじゃ借りられないです…」
……こいつやっぱ優しい?ネプテューヌ達をかなり気遣ってくれている様に見える。
そういえば、デペアが言ってたけど子供に甘いとか言ってたな……女神も凄く長生きすると聞くし、やっぱり空も長生きしているんだろう。だとすれば、空にとってネプテューヌも子供のような物なのか?……あと、コンパ?なんでそんなに残念そうなんだ?
「さてとーーそろそろ真面目に僕が君たちのパーティーに加入した理由を話しておくよ」
喜んで(一人は複雑そうな顔)いるネプテューヌ達に手を叩いて視線を向けさせる。
聞く限り何でも一人で出来そうな空が一人で行動せず、わざわざ俺たちの元に来てパーティー加入を志願した理由を話す気だ。
空は嫌なことを思い出したようにため息を付いた後、真面目な顔で腕を組んで口を動かした。
「−−−ルウィーのゲイムキャラが昨日破壊された」
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