超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ルウィー編 |
「……ゲイム」
「キャラ……?」
真面目な表情をした空の口から出たそのキーワードに俺達は思わず頭を傾げた。
「えっと……なにそれ?」
うんうんと空を除いた全員がネプテューヌの言葉に同意して頷く。
ゲイムキャラなんて俺達は一度も聞いたことがないからだ。
「あー、そうだった。私語もなく、分からない物も言われても混乱するだけだったね。うん、ちゃんとこれから説明するよ」
コホンと空は小さく席をして、話し始めた。
ゲイムキャラとは、ゲイムギョウ界の秩序と循環を司る存在。
太古の時代に造られた女神の不在時に大陸を守護する為に作られたもので、有事の際には長い時間で体内に貯めていた((信仰力|シェアエナジー))を使い、悪を滅ぼすだけの力を秘めているという者だ。
「まぁ、保険と考えていいよ」
「それが破壊されたのか……不味くないか?」
「女神は健在だから、((今は|・・))問題ないね。だけどあれは、緊急時に女神専用の強化アイテムとなるから……」
そこで空は口を閉じた。その先は言わなくても理解できた。
ことの重大さにコンパとアイエフと視線を合う。ネプテューヌは良く分かっていないように頭を傾げているが、俺は挙手して空に質問を飛ばす。
「何故、それを俺達に?」
「今回の謎の誘拐事件に関係している確率が非常に高いこと……後は、言わなくても分かるでしょ?」
思わず吸い込まれそうな銀色の双眸が俺達を見つめる。
|守護《ハード》戦争、女神と女神が神界と呼ばれる所で真の女神になるために他の女神を倒す遥か昔から続いている戦い。
その戦っている四女神の内、記憶喪失ではあるがネプテューヌ、ベール、ノワール、ブランと全員が確認できていること、そして今の状況から推測するに休戦状態と考えた方がいい。
ということは、逆にいつまた戦争が起きても可笑しくないことだ。最悪なことにルウィー以外の国は、ハッキリ言ってガタガタと言ってもいい。
プラネテューヌでは、女神不在で経済状況の悪化、モンスターの大量発生。
リーンボックスでは、腐敗している教会組織を一度解体して再結成を女神の指示の元で行われ始めたばっかだ。
ラステイションでは、あれから時間がそれなりに立ったが、大企業アヴニールによる暴走で街に被害が及び国政院側と教会側の蟠りも解消されるのもまだ時間が必要だ。
正直な話、他の三国と比べてルウィーは安全だと言ってもいい。プラネテューヌを除いて、リーンボックスとラステイションのシェアは落ちて、その代わりにルウィーは優勢になっている筈だ。
そして、今までの事件の中で関わっている組織が合った。
「もしかして……今回の事件もギルドが関連しているの?」
「過激派が何かをしていることは調べた。ラステイションから武器の横流しもあったようだしね」
「!なら、過激派のギルドさんの目的なんですか?それに行方が分からなくなったのは子供から老人で、男の人も女の人もバラバラと聞いたです」
「過激派ギルドのすることは大体想像できるわ……けど、やっぱり誘拐に合ったメンバーがあまりに違いがあり過ぎる……一体何のために?」
そうだ子供から成人、老人と多くの人が消失している。
ホワイトハート様からの話だと比率的に女性がちょっと多めらしいが、ギルドそして教会に一体どんな関連が……
『なるほどねぇ黒い黒い。内容は大体わかったけど……破壊神。そんな話は、こんな可愛い少女達にはちとハード過ぎない?』
「僕は別に協力しろと言っているんじゃない。入り込み過ぎるなーーーそう言いたいんだ」
『…………』
空は腕を組み、俺達を威圧するような低い声で空は俺達を見ながら口を開く。
「いままで君たちがしたことは立派な善行だ。困っている人に放っておくことが出来ないそんな性格をしている信じ合う心で繋がっているメンバーで構成されているパーティーだからね。だからこそ強い、だからこそーーー脆い」
「……脆くなんてないよ!私達はどんなことでも色んな人の力とか借りて四人で頑張ってきたもん!それは、これからもこれから先も変わらないよ!」
ネプテューヌは、デーブルを強く叩いた。俺達は大陸を巡って酷い目に合ったが、なんとかやってきた。辛いことや悲しいことを乗り越えてきた。だからーーー
「紅夜が一度殺された時、君は何をしてた?」
空の氷のような冷たい声にネプテューヌの表情は固まった。
「紅夜は君たちの為に何を捨てた?」
「ーーーーぁ」
「繋がっている心?……君達って結局の所って紅夜に助けられてばかりだよね。逆に君たちが((紅夜を助けたことがあった|・・・・・・・・・・・・))?聞かせてよ一方的に助けられた君達にーーー自分達がお荷物だと思ったことない?」
「ッーーーお前ぇぇ!!!」
感情のまま、俺は隣にいる空のコートを掴んで持ち上げていた。
「ーーー撤回しろ!俺は、ラステイションでこいつらがいなければ鬼のようなモンスターに間違いなく殺されていた!こいつらがいたおかげで討伐出来た!決してお荷物なんかじゃない!!!」
それだけじゃない。辛いことや苦しいこと悲しいことが合った時、俺はこいつらのお蔭で前に進める勇気を持てた!もし、俺はこいつらと会ってなかったなら、自分を見つけることが出来なかった。空の発言は、ネプテューヌ達を侮辱していることだ!
「紅夜、やめなさい!ここは公共の場よ!」
「ッ………!」
アイエフの言葉に頭に昇った血が落ちていく。ここはランドームシティの宿屋にある食堂だ。
俺達だけじゃなくて、他のお客さんも従業員も怖がるように俺達を見つめていた。
「なるほど精神面で支えてもらっていると解釈していいだね。……だけど、はっきり言わせてもらう」
空が俺の腕を掴んだ瞬間、視界が回って俺は床に叩きつけられていた。
「紅夜!大丈夫!?」
捻り伸ばされて固定された腕は有無を答えることが出来ず、背中を踏まれ動きが完全に封じられた状態で空はまた冷たい声で俺を見下ろす。
「パーティーは選んだ方がいい。今のこの娘達と一緒にいれば、君はまた力を渇望して
ーーーーーーーー|邪神の皇《アザトース》を呼ぶことになる」
◇
『手加減してやれよ破壊神。キャプテンなら挫くことはないけどさ、自我を持った紅夜は、まだ生まれたばかりの雛のような奴だぜ?それに紫ッ娘達も、もうちょっとオブラートに包んで言った方がいい、彼女たちの気にしている所をストレートに言いすぎだ』
「この程度で崩れるような絆なら、その程度だった……そうでしょ?」
あの後、頭を下げているネプテューヌ達とこっちを睨んでいる紅夜を背に街に出た。
イオンの様々な光を放ち街灯と、この大陸特有のキノコのような形の家と粉雪は絵本で描かれる街のようだ。先ほどからデペアが念話を飛ばしてくるのでそれに答えながら、僕は行くあてもなく一人道路を歩いている。
『……紅夜達のパーティーを崩壊させるつもりだったのかい?』
「もしそうなったら、鍵の欠片をパープルハートのポケットにでも入れるつもりだよ。ま、どうだいそっちは?」
『紅夜が必死に紫ッ娘たちを励ましているけど、君の言葉の槍はかなり深く突き刺さったみたいだよ』
「その程度じゃ、やっぱり誘拐事件については任せられないね。紅夜もだけどあの子たちは色々と純粋すぎるからね」
『…………』
簡単なことだ。
男の子供から老人は労働人員として、
女の子供から老人は性的処理か『売る』為に、そんな単純なことだ。まぁ老人辺りは混乱させる為に誘拐したんだろう。ぶっちゃけ老人たちは使えないなら、ムーン=ビースト辺りの玩具になっているかな?あいつ等、弱い連中を囲い込んで虐め殺すのが大好きな集団だしね。
『人身売買されているのか……アホらしい』
「一応、数人は確保した。記憶を消去した上で戻したよ」
ま、全員じゃないけどね。これはポチにも連絡を入れてルウィー以外の大陸に掛け合ってもらっている。
発見次第、僕かポチが確保に向かう抵抗するなら出来るだけ穏便に……だけどね。
『……やっぱりナイアーラトホテップが動いているの?』
「当然だよ。逆に僕の監視を抜け出してこれだけのことをするのはゲイムギョウ界には存在しない」
『はぁ、今までけた違いに話しがハード過ぎる』
「相手が人間&邪神だからね。これ以上に厄介な組み合わせはないよ。ホワイトハートにも期待できない」
過激派ギルドは資金を集めるためにナイアーラトホテップが不味いことをしているのを容認しているか分からないけど、このままじゃ本当にルウィーが滅ぼされる。
保険は潰されているし、あのコミ障のホワイトハートは今頃妹の相手をしているか、本を読んでいるか、で事態の重さに全く気づいていないだろうね。まぁ、この世界に邪神が介入したことなんてないし、させなかったから、こんな事態は常識外れ過ぎて対処に遅れるのは予想内だ。
『……ゲイムキャラという保険を誰にも悟られないように潰して、後はじっくりこの世界を壊していくつもりか』
「させないけどね」
いざとなれば、『旧神の鍵・儀典』を使えばいい。
『……一人で片付ける気?』
「彼女には彼女の見る物語がある。それを持ち上げるために裏でコソコソするのさ」
別の((道筋|ルート))なら、このまま鍵の欠片を全部集めてイストワールを解放してマジェコンヌを他の女神と協力して倒したり、他にはギョウカイ墓場に囚われて妹たちに救われた犯罪神を滅ぼしたり、別の次元に渡って女神を否定する女神を倒したりする。ネプテューヌという存在は、主人公として常に輝かしい未来が待っているんだ。
『汚いことはお前がするのか』
「誰かがしないといけないこと、それをするのが僕だった……簡単な話でしょ?」
『…………』
「今日は色々と聞いてくるね?」
君は僕のことを憎んでいるといってもいいのに、君の主である紅夜を傷付けた張本人だ。怨まれても、嫌われても仕方がないことを僕はしたんだ。……出来るなら、謝りたいけど、その相手は|まだ《・・》いない。
「……ま、とにかく誘拐事件について僕がなんとかするそれを女神か紅夜が解決したことするっと、鍵の欠片は時期を見てゼクスに渡して倒させよう」
別の次元ならプラネテューヌの女神がゲイムキャラを分散してルウィーに提供したこともあるが、あれは正気を疑う様な行動だ。敵対するべき女神同士なのに態々自分の国の保険を削って見返りを要求せず困っているだけのルウィーに渡した。善なる行動は時に理解できないね。
「………ん?」
散歩しているとパープルハート達がこちらに走ってきた。
「ハァ……ハァ…こ、こにいたんだ」
「……どうしたの?」
よっぽど急いでいたのか息切れを起こして暫くその場で荒々しく呼吸するパープルハート達。
一番余裕ありそうな紅夜に疑問の眼差しを向けると苦笑して頬を掻いた。
「あのね色々考えたんだけど、簡単に言えばーーー」
「私たちが紅夜の足手まといなのは事実だわ。ならーーー」
「私たちが今より、ずっっと強くなればいいです!!」
三人がそう力強くその瞳に決意を灯して僕を見上げた。
「……それは、僕に鍛練をお願いしたいの?」
頬を掻きながら尋ねるとシンクロ率100%で頷くパープルハート達。
『これが彼女たちの選択だよ』
「…………はぁ」
念話ではない今度は紅夜の手から聞こえるデペアの声に頭を掻く。
こうなることは正直な所、予想外で今頃紅夜とイチャイチャし始めるかなと思ったのに……
「十分後、街はずれで集合……厳しくするからね」
一瞬、断ろうとも思ったがあのナイアーラトホテップがどういう手順でゲイムギョウ界を貶めるか分からない。僕と言う存在は一つで流石に処理能力にも限界があるなら、少しでも使える人材を作っておいて悪くはないはずだ。
「紅夜」
「なんだ?言っとくが俺はまだ怒っているぞ」
「はいはい」
半眼で僕を見てくる紅夜をスルーしつつ先に行くためにパープルハート達を横切って、紅夜の肩を叩き耳元でそっと呟いた。
「君は、本当に幸せ者だ」
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