第二十四話

　　　「魏と呉の戦の結末」

　晋と蜀の戦が終わろうとしていた頃、魏と呉の戦では膠着状態が続いていた。

「気張れ！　何としても進軍する道を作るんや！」

　魏は陸遜の防衛力を中々破る事が出来ず、そこからの進軍が困難になっていた為だ。そしてそれをどうにかしようと、張遼が強引に

道を作ろうとしていた。

（急がなあかんねん！　うちの目の黒いうちはぁ！）

　彼女の殺気を放つその表情に兵達は悪鬼の幻影を見る。

「ひっ！？」

「こ、此処から通すなぁ！」

　恐怖を感じながらも呉の兵達は必死に張遼を止めようとする。だが、相手は無く児（こ）も黙る猛将。恐怖で腰が引け気味になって

いる兵では十分な足止めにもならない。結果、張遼は無茶をしたためある程度は損害を出しはしたが、道を作ることには成功する。そ

してそれを見逃す曹操では無い。

「全軍、張遼隊に続けぇ！　この好機を逃すな！」

　此処に来てようやく魏軍は進軍することが出来たのだった。

「まだまだぁ！」

　張遼隊は勢いづいて突撃を再開する。

「これ以上は通しません！」

　その彼女に周泰が立ちはだかる。

「退かんかい！」

　張遼は周泰に素早い攻撃を仕掛ける。すぐに目の前に敵を退けるために。しかし彼女の思惑どうりには行かず周泰は何度も攻撃を防

ぐ。

「言ったはずです！　これ以上は通さないと！」

「上等やぁ！」

　そして張遼隊と周泰隊の激闘が始まる。曹操に道を作る為に、孫権を守る為に。

　しばらく彼女達の攻防は続いたが、その均衡はついに崩れる。

「あ！？」

　周泰が声を上げる。剣が折れてしまったのだ。

「残念やったなぁ！　うちの武器はなぁ！　妹分の一人が作った特注品なんやぁ！」

　張遼は偃月刀を振るう。武器を失った周泰に成す術は無かった。周泰の身体に刃が直撃する。

（蓮華様……申し訳ございません……）

　周泰は絶命し、張遼は勝利を収め、更なる進軍を開始しようとする。

「うぐ！……がはっ！」

　だがそれは叶わなかった。勝利した直後、張遼は口から吐血した。

　実は彼女、数日前から身体の調子が優れなかったのだ。それは日に日に悪化し、ついには彼女は死を予感した。だから無茶をしてで

も曹操の為に道を作ろうとしていた……命が尽きる前に。

（済まんなぁ……華琳……詠……どうやらうちはこれまでや……）

　そして張遼もこの世から去った。