いつか疲れてしまっても |
突然の雨が通り過ぎていくころ
空を覆っていた厚い雲は
どんどんと薄くなって
綺麗な夕焼けが空を包んでた。
雨が降るちょっと前の天気のままに
窓を叩く雨音が聞こえなかったら
僕は雨が降っていた時間を知らないことになる。
こういうのもタイムスリップと言うんじゃないか
なんてくだらないことを考えて
くだらないことなのに
もやもやとした気分で
なんとなく怖くなった。
こうやって時間が勝手に流れていって
切り取られた時間が多くなっていく僕と
近くにいない誰かとの時間が遠くなって
そしたら
僕はとても過去を生きていることになる。
でもやっぱり現実として日はまた一日と過ぎていって
カレンダーは簡単にめくられる。
時計の針は二倍の速度かと思うほどに早くなっても
僕を待ってくれたりはしない。
のんびりの僕と
せっかちな君との距離はまた遠くなって
世界一周でもするならば同じところに戻ってくるかもしれないけれど
この距離はきっと平行線上にずっとまっすぐ伸びて
ただ見えなくなって。
あの風に押された雨雲みたいに
僕はきまぐれに君を追う。
遠過ぎて小さな粒とさえ見えないけれど
僕は君が遠い前にいることを確信してる。
道の途中に小さな花を見つけて話しかける。
「やあ、あの子をみかけたかい?とても綺麗に咲いてるね」
花は小さく笑って揺れる。
僕が立ち止まってしまった時
まだ君が傍に居た時
君は言った
「花の種を植えるよ、君が通るころには綺麗に咲く花の種を」
「何のために」
僕は返した
「君の前を歩いてる証拠に」
「自己満足?歩くことさえしないかもしれないのに」
「完全に立ち止まるのは無理さ、少なからず歩かなきゃならない。」
「枯れてるさ」
「いいや、確信があるよ」
その笑顔があんまりにも綺麗だったから
多分そうなる気はしてたんだ。
嘘はないんだ。
歩いてるよ。
君のはるか遠いうしろを
僕は少なからず歩いているよ。
いつか君が本当に立ち止まる日が来た時に
少しでも君の方によるために
少しだけ早く。
綺麗な花が咲くのを追って
君の言葉が嘘にならないように
歩くよ。
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もし、ちょっと疲れて時間を遠く感じて歩くのをやめてしまいそうになっても。前にはずっと友がいてくれる。 | ||
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