SAO−黒の旋律、白銀の戦乱− 第零話 プロローグ |
第零話 プロローグ
「ッシ!」
―――ゴアアアアァァァァッッ!!
キリトが放った一閃が目の前のモンスター〈リザードマンロード〉のHPバーを1ドットもなく削り切った。
〈リザードマンロード〉は不自然な格好でぴたりと静止し―――。
微細なポリゴンの欠片となって爆散した。
時計を見たら、すでに午後3時を回っていた。
「今日はこれぐらいにするか・・・」
キリトは呟くと立ち上がって、もと来た道へと歩いていく。
しばらく歩いていると、幾度か見た、しかし見慣れないモンスターが木の上にいた。
「〈ラグー・ラビット〉じゃないか・・・」
〈ラグー・ラビット〉。超がつくほどのレアモンスターだ。
また、既知の中では最高位のスピードを持ち、エンカウントしてもすぐに逃げられてしまう。
しかし、このモンスターがドロップする《ラグー・ラビットの肉》は10万コルで引き取りされている。
キリトは腰にあるピックを引き抜くと静かに狙いを定めた。
この世界で唯一の遠距離攻撃、投擲スキル[シングルシュート]を放つ。
―――ドスッ!!
ピックが〈ラグー・ラビット〉をとらえ、HPバーをゼロにした。
キリトはすぐにアイテム欄を確認し、一番新しい左上に《ラグー・ラビットの肉》があった。
「これは運がいいな」
そう呟き、キリトは今帰るべき場所へと歩き始めた・・・。
ここは『アインクラッド』……。
1万人限定で発売された、世界で初めてのVRMMORPG『ソード・アート・オンライン』
通称SAOの中……。
この世界では死ぬことは許されない……。
この世界での死は現実でも死を意味する。
プレイヤーたちにはこの世界の意味を知らない。
たとえ知っていたとしても、口にはしない。
そんな世界を今、生き抜いていく物語。