鬼月 過去話
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割り振られた自室にまで大広間から仲間たちの笑い声が届く。鶯花が紫煙が苦手なせいで自室でしか煙草を吸えないため話している内容までは分からないが、何やら楽しそうだ。

いつの間にやら俺の周りは人の罵声や怒声より人の笑い声の方が多くなった。

いや、もしかしたらこれが普通で俺が異常だったのかもしれない。煙草を吸うたびに何故か過去の事を思い出す。

 

 

俺はそこそこ大きい大店の一人息子だった。

優しい父さんと母さんが居て、優しい奉公人も居て、ああ、あと真っ白いもふもふの犬も飼っていた。

かなり恵まれた環境だったという事は自覚していたし、幸せだとも思っていた。

父さんも母さんも人に優しくしなさいといつも俺に言っていた、だから俺も人に出来る限り優しくしていた。

でも、俺が人に優しくしたせいで……俺が7歳の時家の裏で倒れている人を見つけた。

そいつは見るからにボロボロで死にそうな感じだったから家の中に入れて寝かせてやった。もちろん俺の付きっきりの看病付きだ。

しばらくするとそいつは目を覚ました。

 

「私を看病してくれたのは君ですか?」

「うん、僕だよ。お兄さん大丈夫?」

「あなたが助けてくれたおかげで大事には至りませんでした。ありがとうございます」

「どうしてあんなところで倒れていたの?」

「実は山賊に襲われてしまいましてね……あ……」

「どうかしたのお兄さん?」

「ああ…大事なお金が…山賊に盗られてしまった…あのお金がないと私は…」

「お金が要るの…?」

「ええ、私がお金を持っていかないと娘が死んでしまう…ああ…」

 

そんなに悲しむ人を見て、止めておけばいいのに常日頃から人に優しくしていなさいと言われた俺が何もしないはずが無かった。

 

「僕がお金貸してあげる」

「…え…?」

「ここ僕のお家なんだけどね、僕のお家お金いっぱいあるの。お兄さん困ってるみたいだから貸してあげる」

「なんとお礼を言っていいのか…」

「待っていて、あそこに蔵が見えるでしょ、そこにお金たくさんあるから持ってきてあげるよ」

「私も一緒に行かせてもらえませんか?」

「うん、良いよ」

 

蔵の扉を開けた時から、俺の人生は一転した。

その日幼い俺はそいつに金を渡してしまった、それと同時に見るからに悪そうな男たちがぞろぞろと蔵に入ってきた。

 

「おじさんたち誰っ?!」

「おーおー、さすが大店…金がたくさんあらぁな」

「へへへ、これならしばらく楽出来るぜ…」

「騒ぐんじゃねぇガキ、俺たちは悪ーいお兄さんたちだ」

 

ゲラゲラ笑う男たちが持つ蝋燭の明かりに反射する刀に恐怖を覚え、慌てて外に飛び出し屋敷にいる父さんと母さんの元へ走った。

二人と犬の居るはずの部屋の襖を開けると、血の海だった…体がバラバラになった二人と犬を前に俺は吐いた。

俺の嗚咽を聞きつけた奉公人が走ってきて俺に何かを叫んでいたが、すぐに何も言わなくなった。奉公人の腹に突如出現した刀の先には、俺が助けてやった奴が居た。

 

「お、おにい…さん…?」

「どうかいたしましたか?少年?ああ、これですか?あまりにも耳障りだったので殺しただけですよ。」

 

笑顔で死体を捨てた奴を見て俺は確信した、こいつは助けてはいけなかった。俺がこいつを助けたせいで、両親も奉公人も犬も皆殺されたんだと。

それから数日間の記憶は曖昧だ。覚えていることは俺が助けてしまった下種野郎は偽人で、強盗団を率いていた事と、相手の懐に入るときに子供の方が入りやすいと言う理由だけで俺だけ生かされたという事。

俺が強盗団に誘拐されて数日が経ったある日、俺が川へ水汲みに行かされ帰ってくると強盗団の奴らが折り重なり、その上に俺よりも3つほど上の子どもが一人いた。

俺も子どもも全く動かないでしばらくの沈黙の後、口を開いたのは子どもの方だった。

 

「…何見てんスか?」

「あ、ごめ…君…誰…?」

「人の名前聞くんなら、まず自分から言うもんじゃないんスか?」

「あ…ぼ、僕、蒼海鬼月です…」

「俺は紅宙猿猴っス」

 

紅宙猿猴と名乗った少年は、この時の俺には輝いて見えた。

俺が全く敵わなかった強盗団を子ども一人でやっつけたこともあるかもしれない、猿猴がとても自信に溢れてたからかもしれない、俺を強盗団から助けてくれたからかもしれない、それとも自然現象でちょうど太陽が雲の切れ目に現れたからかもしれない

とにかく、この時の俺には猿猴が輝いているように見えた。

 

「で、アンタ、なんでこんな奴らの言いなりなんスか?」

「だって、逃げたら殺すって…それに僕は君みたいに強くないし…」

「はぁ?俺は強くないっスよ?」

「え、でも、この人たち君がやっつけたんでしょ?」

「俺は騙しただけッス、大体俺みたいなガキが大人に腕っぷしで敵うワケないじゃないッスか」

「騙す…?」

「そ、騙すんスよ。なんせ俺は偽人っすから!」

「君は偽人なの?こ、ここの人も偽人だった…」

「そんな奴と一緒にしないで欲しいッス!そいつらは奪うために騙してるけど、俺は生きるために騙してるんスから!」

「何が違うの…?」

「奪うために騙すのは悪いことっス、でも、生きるためなら騙して良いんスよ」

 

屈託のない笑顔でそう言い切る子供は、同い年ぐらいとは思えないくらいにかっこよかった。

俺は猿猴のその言葉で、偽人になる決意をした。

そしてその日から14年の間俺たちは生きるために人を騙し続けた。人から奪ったり盗んだり…安定した生活じゃなかったし罪悪感が酷かったが猿猴と二人なら不安定な生活も、人を騙す罪悪感にも耐えられた。

猿猴は俺の命の恩人であり、相棒であり、親友であり、憧れになった。わがままで自分勝手で、自分が楽しければそれで良い快楽主義者だったがが、一緒に居る時は楽しかったのは確かだ。

ああ、本当に楽しかった。両親や奉公人たちを殺してしまった罪悪感は消えなかった、でも、それでも楽しくって、幸せ、だった…ああそうさ、幸せだったんだよ。

だから…だから、俺は猿猴が憎いんだ…

ある日猿猴が俺に泣きついてきた、人を殺してしまったと。

 

「人を殺したっ?!な、なんで!俺たち約束しただろ!人は殺さねぇってよ!!」

「約束はちゃんと覚えてるッス、でも、正当防衛だったんスよ…」

「え…?」

「山賊だったんス…だから、俺、自分の身を守るために……わざとじゃなかったんスよ!俺…もう終わりだ…」

 

嘆き悲しむ猿猴からは初めて会った時の自信に満ち溢れた姿は到底連想できなかった。

大好きな親友を、命の恩人を助けたい。その一心で俺は身代わりになる事を決意した。

 

「とりあえずこっから逃げよう、今なら急げば関所だって抜けられるはずだ。それでも捕まった場合、俺が身代わりになるからテメェは逃げろ」

「…でも…」

「俺は15年前猿猴に助けてもらった、今度は俺がテメェを助ける番だ!」

「鬼月…ありがとう…ありがとう……」

「あー、もう、泣くなって汚ねぇな…ほら、顔洗って来いよ」

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結果的に、俺は猿猴に裏切られた。

アイツが顔洗いに行ったすぐ後に同心が来て、俺の必死の抵抗も虚しく取り押さえられた。「蒼海鬼月」としてではなく、「紅宙猿猴」として…

罪状は強盗と殺人、殺されたのは山賊ではなく大店の店主だったし、猿猴が殺人を犯すのはこれが初めてではなかった、あいつは過去に何人も殺していた。騙されたと分かり取り乱す俺に下された罰は流刑。

恐らく精神異常者だと思われたのだろう、「俺は騙された」「猿猴はどこだ」「俺は猿猴じゃない」と繰り返し叫んでいたし、猿猴に裏切られたことで精神を病んでいた。

とにかくそんな状況下だったから流刑島での生活も、流刑島に居た時の俺も思い出したくないくらいに荒んでいた。

いつからか流刑島の一派閥の頭領と呼ばれ崖の上にアジトを構えるようになっていた頃、一人のガキが転機を運んでくれた。

 

「お頭っ!なんか変なガキがお頭に合わせろって…グフゥっ!!!」

「紅宙猿猴がいるのはここかああああああっ!!奴はどこだ!すぐに出せっ!!」

 

武器を持ち出す罪人たちを後ろに控えさせ前に出てやると、驚いたことに先ほど飛び込んできた罪人を蹴っ飛ばしたのは12,3歳のガキだった。

 

「おいおい…これから島で一緒に過ごすっていう仲間に暴力は感心しねぇなぁ」

「俺は海月!紅宙猿猴に復讐するためにこの島に来た!」

「……俺と似た名前だな…」

「あ?なんか言ったか?とにかく!早く紅宙猿猴を出しやがれ!!!」

「俺が紅宙猿猴だが。」

「はぁ?お前が?ふ…ふざけんなっ!!!お前はあの殺人鬼じゃねぇだろうが!本物出せ!!!」

「このガキ!猿猴さんを偽物だっていうのか?!」

「表出ろぃ!叩きのめしてやる!!!」

 

痛いほどの殺気で俺を睨むガキは俺と同じ目をしていた。

こいつも猿猴が憎いのか…

興奮するガキを落ち着かせて話を聞こうとした時だった。

 

「そそ、目の前にいるあの白髪のは偽物っスよ。俺が本物の猿猴っスからねぇ〜」

 

俺たちが寝床にしている家の屋根から降ってきた聞き覚えのある声に俺とガキはハッとして上を見上げた。

見間違えるはずもない。屋根の上でニヤニヤと笑っていたのは紅宙猿猴だった。

呆然とする俺を余所にガキは腰に差していた脇差を手に猿猴に斬りかかった。

 

「うおわっ!いきなり危ないじゃないっスか!何するんすか!」

「お前は絶対に殺す!!黙って俺に殺されろ!!」

「ちょ、危ない!危ないって!!」

 

必死に避けている口調ではあるが、実際は口だけで猿猴はひょいひょい身軽にガキの攻撃を避けていた。あと数歩で猿猴は屋根の端に付くと言う所でにやりと笑った。

気が付くと俺は猿猴に攻撃を仕掛けていた。もちろん避けられたが。

 

「え、おま…偽物には関係ねぇだろ!どけ!俺がアイツを殺すんだ!!」

「黙ってろくそガキ!この猿の手口は俺が一番分かってるんだよ!!」

「さ…猿って酷くないっスか?!」

「黙れ猿、テメェここに何しに来やがった?俺がお前の事を恨んでないとでも思ってんのか?」

「二回も猿って…そりゃあ鬼月が俺の事怒ってんの分かってるッスよー…」

「やっぱりお前偽物じゃねぇか!こんな猿の身代わりになって…お前仲間かよ!」

「なんでさっきの会話聞いてて俺とこの猿が仲間になるんだよテメェ馬鹿か!!」

「馬鹿ってなんだよ!お前も殺すぞ!」

「あの…俺喋っても良いっスか…?」

「「黙ってろ猿!!!」」

「は…はい………じゃないっスよ!いいっスか?!メタ的な発言だけど俺の見せ場っスよここ!!」

「ッチ…うるせぇなぁ…要件さっさと言えよクソ猿…」

「鬼月怖いっスよ………俺はアンタらを殺しに来たんスよ」

 

ニコリと笑いサラッと言うが目は笑っていない、さっきまでのアホ面が嘘のように消えていた。

途端爆発音と共に俺たちが足場にしていた家が炎上し、ガキの襲撃から何処から湧いたのかも分からない猿猴の奇襲と続き、全く状況が理解できていなかった罪人たちが急に消えた。恐らく海に落ちたか、それとも…

煙に巻かれ視界が悪くなり足元も炎で熱い。消えた罪人共や同じく煙に巻かれてるであろうガキも気になるが、やはり一番は猿猴だ。

煙が目に染みるため一寸先もぼんやりとしか見えなくなった時、猿猴に肩を斬りつけられる。

斬られたところは普通に痛いし、煙もしみこんで更に痛い。

 

「猿猴…テメェ…!!」

「暴れないで、鬼月は俺の身代わりになってくれたんスからちゃんと苦しまないように殺してあげるっスから」

「なんで…俺を騙したんだよ…なんで騙したんだよ!!!」

「……そんなの鬼月が嫌いだからに決まってるじゃないっスか…」

 

見上げた猿猴は今にも泣きだしそうだった。

 

「ムカつくんだよお前のその偽善者面が!なんでお前は真っ直ぐなんだよ!なんでお前は俺と同じなのに違うんだよ!!俺は!鬼月なんか大っ嫌いだ!!!」

「え、猿猴…?」

「俺だって!家襲われたのに!なんで俺は不幸なんだよ!なんで鬼月は輝いてんだよ!!どうしてお前は何やらせても俺と同じにならないんだよ!!」

 

首をさすりながら喚く猿猴をただ呆然と見ているしかなかった。

猿猴は俺と同じで商家の子どもで偽り人達に襲われ、自分も偽り人になり生きるためと言い聞かせ、俺と出会う前から既に人を殺し人を騙して孤独に生きてきたらしい。

同じような状況の俺を見つけた時友達になれると思い、偽り人共を殺して俺を純粋に友達になりたいという気持ちで助けたが、俺が生きるためにしぶしぶ嘘を吐き人を殺さず人から奪わずにいて、猿猴と俺との違いが恥ずかしくなり自分が嫌いになっていったらしい。

自分だけが汚れている、俺と鬼月は違う、なら、鬼月を自分の所まで堕とせばいい。

そう思い様々な事を俺にやらせたが、相変わらず俺が輝いて見えたらしい。ますます自分が嫌いになった猿猴が考え付いたのが殺人の濡れ衣だった。

感情のままに叫ぶ猿猴の後ろに黒い人影がぼうっと浮かび上がった、おそらく、ガキだ。

 

「濡れ衣着せられてまで…なんでまだ俺と同じ目じゃないんだ!!!!」

「猿猴…俺は…」

「最初は、俺鬼月を迎えに来たんスよ。俺には鬼月しかいないから。でもよく分かったッス、お前は俺と同じ所には堕ちない」

 

今までまくし立てて俺に叫んでいた猿猴はフッと落ち着き、ニコリと静かに笑うと背後から脇差を振り上げたガキの攻撃を避けてガキの首に手持ちの小刀を当てた。

 

「だから、俺は鬼月も皆、殺すことにしたんスよ」

「なに…する気だ…」

「俺人殺す時楽しくなっちゃったんスよ…ほら、コイツの目を抉るのにも何の抵抗も無いんス」

「やめろ!」

 

俺の制止の叫びは虚しく響いただけで、ガキの叫び声が俺の叫び声をかき消す。

猿猴は無表情に見ているだけだった。

 

「…やっぱり、たとえ鬼月が堕ちてくれても俺の所まで一緒には堕ちてくれない。憧れて自分の汚さだけ浮彫ってのは流石に辛いんスよ。鬼月…助けて……」

「俺は確かにテメェの所まではいけない、でも、テメェ自身が俺のところまで登ってくれば良いだけだ。テメェの汚さも無くなるだろ。だから、そのガキを離せ」

「俺が…鬼月に………そうっスよね……」

 

納得したように頷く猿猴に狂気を感じる。長年一緒に居たがこんな猿猴俺は知らない。

いいや、見ようともしなかっただけかもしれない。俺が、目を当てようともしなかっただけかもしれない。

 

「俺が鬼月になればいいんだ、俺が鬼月になって生きれば俺はもっと楽になれる……俺が鬼月を殺して、それで…」

「俺はテメェが思ってるほど綺麗じゃないんだよ猿猴!俺だって汚いんだ!それに俺は俺、テメェはテメェで絶対に変われないんだよ!!!」

「やってみないと、分からないじゃないっスか」

 

猿猴がガキの首に当てた小刀を滑らせようとした時だった。ぐらりと大きな振動の後、俺たちの足場が崩れ落ちた。きっと炎のせいで家が限界にまで達したのだろう。

 

「なっ!!!」

「あーあ…限界っスか…ねぇ、鬼月、俺を追ってきてよ、それでどっちが鬼月になれるか決めようよ」

 

俺待ってるッスよと言う言葉を残して猿猴は暗闇の海に消えていった。呆然としていたが背後から聞こえたガキの唸る声にハッとする。

ガキ含めた怪我人の手当てや消えた罪人たちの捜索、その日の夜は異常に長かった……

 

 

「つまりお前の本名は蒼海鬼月で、猿猴の元相棒っていうわけ?」

「そうだ。猿猴を野放しにしちまったのは俺だ。テメェたちには関係が無いのに巻き込んだし、何より騙してた。すまない…」

 

目の前に横たわるガキの顔を半分も覆うほどの包帯が巻かれ、眼孔の部分は赤黒く染まっている。もう二度と、その包帯の下のものは光を灯さないだろう。

結局見つけられた罪人共も十数人で重傷人の方が多く、奇跡的に軽傷だった者たちがガキを含めた重症者の面倒を見ている状況だ。

 

「あんた、どうするつもりなの」

「…俺は巻き込んじまったこいつ等の面倒を見るつもりだ。まだ見つかってない奴らの方が多いんだ、そいつらも探さねぇと…」

「なんであんたやる事わかってねぇんだよ!そうじゃねぇだろ!あんたは猿猴止めることが最重要事項だろうがよ!こいつ等なんかどうでも良いだろ!昨日分かっただろうが!あの殺人鬼止めるのはあんたしか居ないんだよ!!こんな奴ら放っとけ!!」

「なっ、てめぇにこいつらの事こんな奴らなんて言われる筋合いはねぇ!大体俺に止められるわけねぇだろ!どうやって止めろってんだ!」

「あいつはあんたに助けて欲しいんだ!あいつ言っただろうが、鬼月助けてって!なんだか知らねぇけど…あんたに助けて欲しいんだよ!あんたしか止められる奴いねぇんだよ!俺みたいにあの猿猴のせいで不幸になる奴増やす気か?!」

 

確かに昨日猿猴は俺に助けてと言っていた、だけど、俺は何をすればいい…?俺に何かできるのか?こんな俺に?

 

「お、おれ…は…俺は…こいつらの…面倒見なくちゃ…」

「お頭!俺らは大丈夫ですぜ!」

「大体あんたはお頭じゃないじゃんか!俺らの頭は紅宙猿猴ただ一人だろ!」

「そうだそうだ!あんたは紅宙猿猴じゃなくて蒼海鬼月だろ!」

「頭…じゃなかった、鬼月さん!俺らの本物の頭ここにぶち込んでくださいよ!」

「怪我人の面倒見るのが頭の仕事っすからね、こき使ってやるぜ!」

「鬼月頼む。俺の片目はもう見えない、多分…しばらくはここを離れられない。だから、俺の代わりに行ってきてくれよ…頼むよ…」

 

そして、俺はあいつらに背中を押されるがままに流刑島を去った。脱出の手引きは海月の仲間の鴉とかいう奴が手伝ってくれ、更に小型船と海月の家族の形見だと言う鬼神のお守りまで貰った。しばらくして小型船の方は嵐に遭遇して壊れたが…

本州についてからお礼目当てで人助けしまくっていたら、いつしかここのつ者と呼ばれるような存在になっていた。猿猴を助けるためにこの地に戻ってきた俺にはある意味ふさわしい呼び名かもしれない。

 

昔の事を思い出して紫煙をくゆらせていると急に襖が開き誰かが俺の元に倒れこんできた。

 

「おっ、鶯花っ?!テメェなんでこんなところに!」

「雨合さんが良いお酒……持ってきて……」

「なんで気遣って部屋で吸ったのに来るんだよテメェは!!」

「す、すみませ…」

「喋んな!息止めろ!今すぐ換気するから!!」

 

あたふたしながら窓の障子を開け、そこから煙管を投げ捨てる。あとで拾いに行けばいいとか思って投げたが、飛んできたカラスが煙管を空中で捉えどこかへ去ってしまった。

しばらくは煙草のせいで昔の事を思い出すという事が出来なさそうだ。

説明
良いタイトルが思いつきませんでした。半分以下ないくらいで俺が疲れて飽きたせいで後半gdgdもいいところです。

ひざしさん鶯花さんお借りいたしました!!
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