伊織「さあ、麻雀を打つわよ!」P「おうっ!」 第2話後編 |
対局後:会議室
律子「さて。悪いわね、わざわざ残ってもらって」
雪歩「大丈夫です……どうしても聞きたかったんですよね?その気持ち、私にもわかりますから」
律子「半荘ずっと、混乱させられっぱなしだった。こんな麻雀を打ったのは初めてよ。いや、打たされたのは、かな」
雪歩「律子さんは考え過ぎちゃっただけですよ。楽に打てていたら、きっと、私なんて相手じゃなかったのに」
律子「私も最初は気にしていなかった。でもあの9ソウの振り込みから」
雪歩「あれは……ただ、最初にソウズが788とあったから、先に8ソウを切っただけです」
律子「それだけなら私もなんとも思わない。でも、その後に7ソウを手出ししたじゃない。あれは?」
雪歩「……ちゃんと見ているんですね。流石は律子さんだ」
律子「ふざけないでっ!」
雪歩「待ってください。ダメです、怒っちゃ。私はこれから自分の打ち方を説明するんですよ?だから」
律子「ええ……わかってる。私はこの場に残ってくれたことを感謝しているの。本当よ」
雪歩「まずは落ち着いてください。私も……そうですね。どう話すかを考えたいから。お茶、淹れてきますね」
律子『あの後も、効率を重視する私には絶対に理解できないような打ち筋ばかりだった』
律子『私は見破ろうと必死だった。だけど、雪歩はそれをあざ笑うかのようにすり抜けていった』
律子『メンホンに見せかけた別色無筋のリーチ七対子ドラドラ。伊織が打ってくれなければ危なかった』
律子『捨て牌が3〜7の処理、端牌の処理、字牌の順で構成されたピンフ。受け入れを減らす打ち方をしたっていうの?』
律子『逆にごく普通の捨て牌で作られた、あまりにも読みやすいリーチ。それまで変則手ばかりだったから振ってしまった』
律子『考えれば考えるほどに術中にハマってしまう。かといって、考えなければ最初の満貫のように打ってしまう』
律子『私の麻雀は状況に応じて仮説を組み上げて、状況変化で修正を加えていくというもの』
律子『対戦相手の思考をおおよその範囲で見抜いてこそ、安定した打牌ができる』
律子『その可能性の範囲を最大限に広げても飛び出されてしまうなら、私の麻雀では太刀打ちできない……』
律子『このままだと、私は雪歩に完敗し続ける』
律子『……そんなの認められない』
雪歩「お待たせしました。あ、律子さんはハーブティとか平気ですか?」
律子「ものにもよるけれど。ああ、なんだかいい香りがするわね」
雪歩「カモミールティにしてみたんです。気持ちが落ち着くから」
律子「気を使わせちゃったわね……うん、スッキリしていて私好みの味。ありがと」
雪歩「よかったあ。ハーブティが苦手な人もいるから、事務所ではたまにしか淹れられなくて」
律子「私もローズヒップなんかは苦手なのよ。ジャスミンやミント系は好きなんだけどね」
雪歩「やっぱり好みがありますよね。癖の強い味や香りは、どうしても嫌う人が出てしまう」
律子「……うん。そうね。私もそう思う」
雪歩「だから、私の麻雀があまり好かれるものではないことはわかっているんです。普通じゃ、ないですから」
律子「……」
雪歩「上手く説明できるかどうかもわかりません。話せないことも話しにくいこともたくさんあります」
律子「うん」
雪歩「それでもよければ、一番初めから話していきたいと思います」
律子「うん。全部、任せるわ」
雪歩「わかりました。じゃあ、まず最初。私の麻雀の原点は、接待をしてくるお弟子さんたちとの戦いです」
律子「それだけじゃよくわからないけど、ずいぶんと変な始まりに思えるわね」
雪歩「そうですね。私もそう思います」
律子「あ、ごめん。話の腰を折っちゃったわね。続けてくれる?」
雪歩「……麻雀を、教えられて。一人で打てるくらいになるとすぐに気付きました。私、ずっと負けていなかったんです」
律子「負けない、ねえ。まあ打ち初めの頃には、相手が気を使うってのもよく聞く話だけど」
雪歩「おかしいな、と思って。一度、試しに全くあがらなかったことがあるんです。全部ダマにして、全部見逃し続けました」
律子「そりゃさすがにボロボロでしょう」
雪歩「ふふ……そう思うでしょう?でも、その半荘も負けなかったんです。一度もあがらなかったのに」
律子「は?」
雪歩「東場に2回。流局時にテンパイで点棒をもらいました。それだけなのに、トップでした」
律子「あからさますぎるわね。もうちょっと、やりようがあるでしょうに」
雪歩「私、勝たされていたんだなって気づいて……なんだかとても悔しくなっちゃって。一人ぼっちになった気がして……」
律子「悪気はないんでしょうけど、やられてる方の身にもなれって言いたくなるわ」
雪歩「その頃にはもう麻雀が好きになっていたから、ちゃんと打たないお弟子さんたちにひどく怒ったりもしました」
律子「雪歩が急に怒りだしたら、家の人がびっくりしちゃうんじゃない?」
雪歩「実際に驚いたみたいでした。それで、なにか家の方で色々あったみたいで……」
律子「色々って?」
雪歩「私にもわかりません。知らないところで何かがあって、でも、それからも大まかには変わらなかったんです」
律子「変わらないって、何が?」
雪歩「やり方が慎重で巧妙になっただけで、勝たされ続けました。負かして欲しいって言ってもダメなんです」
律子「上手くやれって指示でも出たのかしら。もうなんと言うか、残念極まりない話ね」
雪歩「そんな麻雀を続けていたら、以前のように楽しめなくなっていきました」
律子「というか、そんな麻雀でも打っていたかったの?」
雪歩「いつかわかってくれるかもしれない、って。そんな淡い期待に縋っては、勝たされて悔しい思いをする日々でした」
律子「勝って悔しいとか、ちょっと想像し難い世界かも」
雪歩「私は、勝つことが苦痛になっていきました。勝とうという意思がないから、手順もおかくなっていきました」
律子「目標を失ったら、道に迷う。目指すところのない麻雀には、手順なんて存在しない。そんなものよ」
雪歩「存在しないものは見つけられません。迷子になった私は、それでも狂った手順で勝ち続けました」
律子「勝つ気のない相手には、何をやっても同じだもんねえ」
雪歩「何十、何百という苦痛の半荘を経て。ある日私は、ふと気付きました」
律子「気付いた?そんな麻雀で何を得られるというの」
雪歩「普通にやって楽しめないなら、別のやり方で楽しめばいいって」
律子「えっ?」
雪歩「ずっと思ってはいたんですけど、そのやり方がわかったんです。寝ないで考えて、次の日に試してみました」
律子「どうなったの、っていうか……どうやったの?」
雪歩「今の打ち方の元になるものを始めたのがその時です。そして、お弟子さんたちはやっと私を相手にしてくれました」
律子「どういうこと?」
雪歩「私を”思ったように”勝たせることができなかったんです。演出もなにもない、私の大勝利でした」
律子「競ることすらできなかったのね」
雪歩「途中からは本気だったと思います。私が荒れてからは、強引にでも競った半荘を演出し続けていましたから」
律子「やっと、戦いになったんだ」
雪歩「意図しない形で圧勝する私を抑えるために、みんな頑張ってくれました。楽しかった……本当に」
律子「お弟子さんたち、今日の私みたいになったんでしょうね」
雪歩「読めない、ですよね。それまで理論的に、普通に打とうとしていたのが余計に効いたみたいで」
律子「読めないわよ。手順と手牌がまるで噛み合っていないんだから、読み筋がことごとく外される」
雪歩「あの日からしばらくの間、私にとっての麻雀が合理的な手順を崩して読みを外しにいくものになりました」
律子「でも雪歩はそれでよかったの?ちゃんと打ちたいって、麻雀を楽しみたいって思わなかったの?」
雪歩「ふふふ。やっぱり律子さんは優しいですね」
律子「優しくなんてないわよ。今だって、自分のために雪歩を質問攻めにしてる」
雪歩「聞きたいことを聞かないで、私の話したいように話させてくれているのにですか?」
律子「……聞きたいことにも関わりがあるって判断しただけよ。それで?」
雪歩「じゃあそういうことにしておきますね」
律子「もうっ。別にいいでしょ。それよりも、話の先をお願い」
雪歩「うん。もうちょっとだけ、ね。私も最初は苦しかったんです。困るお弟子さんたちを見たかったわけじゃないから」
律子「雪歩はただ、麻雀を楽しみたかっただけなんでしょう?」
雪歩「うん。ちゃんと勝負をしてくれるなら、勝ち負けなんてどうでもよかった……」
律子「なんとなくだけど、わかるわ」
雪歩「でも、その頃の私がやっていたのは、相手の手抜きを前提にした偽情報のばら撒きでした」
律子「うーん、例えばどんなことかしら?」
雪歩「一色手を狙う時には、最低一枚はその色を序盤に捨てておくとか」
律子「うわあ。ミスが多くなりそうねえ」
雪歩「国士無双は必ず頭を捨てて、老頭牌をばら撒きながら作るとか」
律子「場況によってはダマのカウンター確実ってところかしら。だから手抜き前提、ってわけね」
雪歩「私に先手を取らせると、守備が効かないから点数調整がきつい。そう思ってもらいたかったんです」
律子「先手を取って、後から点数調整ってのはダメなの?」
雪歩「そうするなら、私はその半荘の間はずっとあがりにいきません。負けたいんですから」
律子「でも、それもやむなしよ。私がお弟子さんなら、雪歩が大物手らしき時は流しにいくわ」
雪歩「そう考えて欲しかったのですが、私から勝つのは本当にタブーとされているみたいで……ダメでした」
律子「そこまでやるのねえ……あ、ちょっとゴメン。ちなみにお弟子さんたちって、けっこう強かったりするの?」
雪歩「まちまちですけど、そこらの雀荘で噂になるくらいの人もいます。あとは本職の人に教え込まれた人とかも」
律子「本職って、麻雀プロってこと?」
雪歩「麻雀プロと言うか……うん。麻雀を職業にしている人、かなあ」
律子「あー、うん。まあその話はいいや。聞かない方がよさそう。要するに、かなりレベルが高いって認識でいい?」
雪歩「大丈夫だと思います。逆にあんまり上手じゃない人は、私の邪魔をしないように気をつけて打っていました」
律子「完全に見抜かれちゃ何の意味ないでしょうにねえ」
雪歩「見抜いても追及はできないですから……相手の手を確認できれば、問い詰めることも出来たんですけど」
律子「だから楽しくもない手順で打ち続けます、ってのもずいぶん穿った考え方じゃない?」
雪歩「うん。私もあれを続けていたら、麻雀が嫌いになっていたんじゃないかなって思います」
律子「ってことは、また転換期があったってこと?」
雪歩「転換期ってほどではありませんが、その読み外しの無茶な手順を研究していたら、また、気付いたんです」
律子「また?なんでそんなに新しい発想ができるの?私、そんな経験ないわよ」
雪歩「ちゃんと打てていたら、私もそうなっていたと思います。私は、無理矢理考えさせられていたようなものですから……」
律子「そんなものなのかしら?これ、ちょっと気になるわね。まあ今は置いておくとして、気付いたことって?」
雪歩「えっと、完成形をちゃんと想定できる時は、それ以外の牌をどの順番で切ってもいいんじゃないかなって」
律子「はあ?」
雪歩「相手の手抜き前提でなくてもいいんです。手順を入れ替えるだけならロスは限りなく減らせるはずなんです」
律子「効率的な手順でない限りは、必ずロスは発生するものでしょう?」
雪歩「いえ、そういうんじゃなくて……決め打ち、ってわけじゃあないんですけど……どう言ったらいいのかな?」
律子「ここは是非聞いておきたいわね」
雪歩「うーん、想定した完成形から理に反している手順で打つといった感じで」
律子「ごめん。よくわからない」
雪歩「どう説明したらいいのかなあ……うぅ」
律子「手作りの基本的なところから教えてくれると助かるかも」
雪歩「そ、そうですね……えっと、今の私の麻雀って、配牌から見える可能性の濃いところへ向かっているんです」
律子「手順を無視して?でも、きちんとした手順を踏まないであのテンパイ率っておかしいでしょ」
雪歩「でも、基本的には必要牌以外の牌を非合理的に切っているだけでですから」
律子「いやいやいやいや。そんなことをしたらロスが大きすぎてテンパイが遅れるわ」
雪歩「律子さんは、序盤でペンチャンを先打ちしたりはしないんですか?」
律子「え?そりゃ形を整えるために、中ごろの牌を数牌浮かせて先打ちすることもあるけれど」
雪歩「意味合いはそれとあまりかわりません。それに、この打ち方は防御重視でもあるんですよ」
律子「えーっと……ああ、そうか。合理に反すると端の牌や字牌が残りやすいのか」
雪歩「律子さんの言う通り、想定を外すと大ミスになっちゃいます。ロスは確かにあります。でも」
律子「でも、何よ」
雪歩「私、できると判断した時にだけ、この打ち方をしているんですよ?」
律子「……は?」
雪歩「律子さんはそこを勘違いしちゃってるんじゃないかなあ、ってずっと思ってて」
律子「え……え?ちょっと待って」
雪歩「律子さん、私の普通の手に振り込みましたよね?あれが私の素直な手順です」
律子「え、あれってフェイクじゃなかったの?私が疑心暗鬼になったところで、逆に素直にって」
雪歩「配牌がいい時は、誰が打ってもほとんと同じです。特に今日は、ちゃんと打つって約束したから」
律子「……私、あれで完全に心を折られたんだけど」
雪歩「今日の律子さんはタイミングが最悪っていうか……あの時、あの日最高の好配牌が私に入ってましたから」
律子「ほんとに?」
雪歩「確かに第一打の8ソウと、後の7ソウは素直な手順ではないかもしれませんね」
律子「手順がおかしくはあったのね」
雪歩「ロスが少ないと思ったら、手順を入れ替えてしまう癖が染みついているので……」
律子「それは良くないわねえ。麻雀で一番大事なのは手順よ」
雪歩「でも……私、思うんです。ちょっとくらいの効率の良さって、読まれ難さとどっちが大事なのかなって」
律子「なにそれ。そんなこと、私」
律子『考えたことがなかった。いえ。考えたけど、結論が出ないから捨てた。ただ自分の効率だけを追求してきた』
雪歩「だから今、ずっと試しているんです。非効率が許される範囲と、捨て牌順序の非合理性が許される範囲を」
律子「でも、そんなのわかるわけないじゃない。意味がないわ」
雪歩「律子さん。私の麻雀は、勝ちを否定することから始まっているんですよ?」
律子「相手がお弟子さんじゃなくても、そうなの?」
雪歩「これはもう”麻雀をどうとらえるか”という問題ですから」
律子「麻雀は勝ちにいくゲームでしょう?」
雪歩「私にとって、ごく当たり前に勝てる打ち方は、相手に勝たされてしまう屈辱的な打ち方なんです」
律子「ああそうか。効率的に打つと勝たされてしまうから……ってそれ、ほとんどトラウマじゃない!」
雪歩「……私、心のどこかで、勝たされるくらいなら一生勝てなくてもいいって、思っているような気がします」
律子「だったら!……だったら、麻雀なんて、やめればいいのに」
雪歩「でもやっぱり麻雀って楽しくて……今はみんなで……大好きなみんなと、楽しく麻雀が打てたらなって思ってて」
律子「そう……」
雪歩「今日は特に、プロデューサーと伊織ちゃんと律子さんと一緒に打てて、とっても楽しかったから」
律子「うん」
雪歩「やっぱりこれからも、私なりに打っていきたいなあって。麻雀、頑張りたいなあって」
律子「うん……」
雪歩「私の麻雀は普通じゃなくてダメダメだけど。それでも好きだから、続けていこうって思ってて」
律子「うーーーーーーーーんんんんんっ!」
雪歩「うえっ?!り、律子さん?急にどうしちゃったんですか!なんかそれ怖いよお……」
律子「うんっ、うん!わかったわ。雪歩の事情と打ち方の一端くらいは理解した。だから、雪歩っ!」
雪歩「は、はいぃっ!!」
律子「もうお弟子さんと打つのはやめなさい。これからは私たちが相手になるわ」
雪歩「え……で、でもみんな忙しいし、麻雀が打てる人ってそんなにいないから」
律子「大丈夫。春香が麻雀にハマりつつある。小鳥さんがゲームを持ってくれば、たぶん双子もハマる。いえ、ハメてみせる」
雪歩「ええーっ?!」
律子「そうやってワイワイやっていたら、美希や真あたりは絶対に興味を持つ。輪は必ず広がっていくわ」
雪歩「で、でも。みんなに迷惑じゃあ」
律子「みんなも楽しめれば問題なし!私も協力するし、小鳥さんも多分だけど引きこめる」
雪歩「でも私たちアイドルだから……変な噂とか、そういうのって気をつけなきゃいけないから」
律子「そのあたりも大丈夫ね。なにしろあのプロデューサーが一番の味方だから、きっともう外への対策も始めているわよ」
雪歩「えっと、でも……あれ?もう何も思いつかない」
律子「雪歩がこんなにも麻雀好きだとは思わなかったわ。麻雀の話が出来る人が増えて、私も嬉しい」
雪歩「律子さん……」
律子「これからどんどん打って行きましょう。そうね。まずは打倒プロデューサーでも目指しましょうか」
雪歩「でも律子さんに負担をかけちゃうから」
律子「私は麻雀が好き。だから麻雀で苦しんでいる人なんて見たくないの。だから、これは私の我儘よ」
雪歩「そんな……」
律子「雪歩も、事務所のみんなとちゃんと打った方が楽しめるわよ。どうこの案、けっこうイケてると思わない?」
雪歩「……うん。うん!」
律子「麻雀はね、勝とうとすればもっと面白いのよ。結果じゃなくて、その過程がとても大事なものに思えてくるから」
雪歩「私、今からでも、変われるのかな?」
律子「ダメダメな私を変えるためにアイドルになったんでしょう?ならきっと、麻雀でもできるわ」
雪歩「今日みたいな麻雀が、また打てるようになるのかな?」
律子「今日以上の麻雀を目指しましょう。私も、頑張って良い麻雀が打てる環境を作っていく」
雪歩「なんだか律子さんが、麻雀のプロデューサーに見えてきたかも」
律子「あら、嬉しいわね。じゃあ765の麻雀は私が主導しましょうか?プロデューサーとも相談しつつだけど」
雪歩「うん。すごく頼もしい。私も、もっといい麻雀を打っていきたい」
律子「じゃあ、雪歩も目標を持った方がいいわ。ちなみに私は打倒プロデューサーね。あ、でも雪歩は」
雪歩「ううん。もう勝たなくていい、なんて言わないよ。だってみんな、本気で打ってくれるんでしょう?」
律子「当たり前よ。特に私は一度負けてるんだから。次はちゃんと、対策を練って打たせてもらうわよ!」
雪歩「うふふ。じゃあ、楽しみにしておきますね」
律子「いい度胸ね。覚悟してなさい!ああ、これからが楽しみになってきたわ」
雪歩「楽しみにしているうちに、私が先にプロデューサーを倒しちゃうかもしれませんよ?」
律子「雪歩……ははっ。うん、その調子よ。ちゃんと戦える場は作ってあげるからね」
雪歩「はい。律子さん、ありがとうございます」
律子「ちゃんと私も成長するから、雪歩も私に追い越されないように頑張りなさい」
雪歩「そのつもりです。じゃあ私も目標にしちゃおうかな。打倒プロデューサー」
律子「いいわね。あ!どうせなら、みんなで狙ってみるのも面白いかも?それをダシに企画を……」
雪歩「次は誰と打てるんだろう。私よりずっと強い人がたくさんいたらいいなあ」
律子「うん、イケるかも。これでみんなを本気にさせて……よし。雪歩、これから楽しくなるわよ!」
雪歩「はい!すっごく、楽しみにしていますねっ!!」
律子「あ、そうそう。これだけは確認しとかないと。雪歩は、打ち方自体を変える気はないのよね?」
雪歩「はい。染み付いちゃったおかしな意識は変えたいんですけど、この打ち方だけは絶対に譲れないんです」
律子「よかった。じゃあ、非効率理論の話。経験談を交えて、もうちょーっと深く聞きたいんだけど、時間はあるかしら?」
雪歩「ええっ?!あ、ありますけど」
律子「ああー、話しすぎてのどが渇いちゃったから、お茶をもう一杯頂ける?今日はじっくりと、語り合いましょうね」
雪歩「あうぅ……律子さんが、律子さんが私の麻雀理論を盗む気満々だよぅ」
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伊織は満足して帰宅したようです。 注:『一』は一マン、『1』は一ソウ、『(1)』は一ピンです |
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