太守一刀と猫耳軍師 第40話
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「うーん……」

 

紫青、桂花、詠、朱里、の4人について最近の戦で功績を立ててるので、褒賞を与えようと思ってたのだが、これがなかなか決まらない。

 

紫青については、呉の本隊との戦いのおり、釣り野伏の段取りや合図を完璧にこなしてくれたし、

 

桂花はあわや全滅という危機から翠と鈴々の隊を救った。

 

詠はその後の周喩との戦いで、奇襲を成功させてくれた。華琳の話しでは詠の指示による所が大きいとのこと。

 

朱里は愛紗の反乱において、内部の情報を詳細に知らせてくれた。

 

で、決まらないので本人達に何が欲しい? って聞いた所声を揃えて。

 

「俺を一日独占する権利」

 

といったのだ。

 

詠は月のために、といってたけど。

 

そんなもんでいいのか、と、俺はOKした。

 

これ、皆が皆これがいいって言い出したらどうしよう、なんて思ったり。

 

華琳達、魏の関係者の功績については、魏を任せる、という形で褒賞を出してるし、

 

霞の功績は「月ちゃんにあげて、ウチは今まで通りでええし」というので月の功績になっている。

 

こっちも何かしなきゃなぁ。

 

与えた権利をいつ行使するかは、それぞれの任意になってるのでこっちから働きかける事は特に無い。

 

「でも、いつ言ってくるんだろ」

 

普通に考えて朝議の直後かなぁ……。

 

ぼんやりとそんなことを考えていると、とんとんとドアがノックされる。

 

開いてる、といえば入ってきたのは朱里。

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「どうしたのそのカッコ?」

 

いつもと違うのはその服装、デザインからして詠のメイド服か?

 

「い、いえ……その、深い意味は……」

 

何か言いよどむのがアヤシイなぁ、などと思いつつ。

 

「んーまぁいいけど、どうしたの?」

 

「ええと、ご主人様に報告したいことが二三ありまして……」

 

朱里から報告書を受け取って目を通す。

 

まぁ、中身は最近現れるという盗賊の事がほとんど。愛紗達が能動的に動いて退治して回ってるってことだけど。

 

「んー、やっぱり追い払うばっかりじゃ他の街に被害が移るばっかりか」

 

「ですね……。仕事を斡旋するなりして盗賊行為をしなくてもいいようになればいなくなるとは思うんですけど……」

 

と、報告書を読みながらなんで朱里がメイド服なのかを考えてみる。

 

この前の皆がメイド服を着てた話しを誰かから聞いたのか?

 

情報源は華琳ってのはありえないだろうし、多分、紫青か月かかなぁ……。

 

「この前華琳や桂花がその服着てたって誰かから聞いたの?」

 

「はうあっ!? い、いえその、ご主人様はこういった服が好みだと聞きまして……」

 

「んーまぁ、嫌いじゃないけど。よく詠が貸してくれたなぁ」

 

「詠ちゃんとはそこそこ仲がいいですし。あ、あの、どうですか?」

 

「ん、可愛いと思うよ」

 

服は詠のだけど、パンストは借りなかったのかいつもどおり白のニーソか。

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「良かった、似合わないっていわれたらどうしようかと思ってました」

 

「よく似あってるとおもうよ。同じ服でもやっぱり着る人によって印象変わるなぁ」

 

軽く頷きつつ、謎が解けた? 所で考える事を報告書の事に戻す。

 

「仕事の斡旋っていってもな。給料をこっちから出す形で農地開拓か塩田に回すぐらい?」

 

「そうですね、肉体労働系のお仕事を回せればそれがいいのですけど」

 

「戦時中なら私掠させる手もあったんだけどね」

 

「私掠、ですか?」

 

あー、そうか。私掠船があったのはかなり後だっけ。

 

「んーっと、簡単にいえば略奪を公に認めちゃうって方法だよ。

 

敵国の商人や輸送隊を襲って荷を略奪させる。

 

その収益を、盗賊の頭、部下、国、に一定の割合で分配する感じかな。

 

ただこれも色々問題があって、自国の輸送隊を襲ったり、なんて事もあったそうだよ。

 

まぁ今は戦時下じゃないし、使えない方法だけど」

 

ふむふむ、と、興味深そうに頷く朱里。

 

「確かにそうですねー……。色々と問題が発生しそうな所ではあります」

 

「農地開拓はいくら人手があっても足りないし、そちらへ仕事を斡旋するのも手だとおもう。

 

これから軍の数も減らして行かないとだし。軍隊って金食い虫だしさ」

 

「確かにそうですが、軍の数を減らすのは時期尚早かと。

 

まだ安定してませんからねー……」

 

「まぁそのうちかな。それに、白装束の男を見つけて倒さなきゃいけないから、まだ数を減らすわけにはいかないし」

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「……はい。ごめんなさい、愛紗さんを止められなくて。

 

あの時止められるとしたら私だけだったのに……」

 

しょんぼりとうなだれる朱里の頭に手を乗せて撫でる。

 

どうにも愛紗の事を気負ってるのか、白装束の男の話しが出るとしょんぼりとうなだれてしまう。

 

「別に朱里が悪いわけじゃない。損害は出ちゃったけどどうにか説得はできたしね」

 

「はい……。でも、です。最近時々ご主人様が怖いんです」

 

朱里の言葉に首を傾げる。自分に思い当たる節はなかった。

 

「すごく怖い顔をしてる事があります。殺気立ってるような……。

 

桂花ちゃんも紫青ちゃんも言わないですけど、気づいてます。華琳さんも」

 

「自分では特に意識してなかったけど……。

 

顔に出ちゃってたか。どうしても、于吉……白装束の奴らのことが許せなくてさ」

 

「ほら、また怖い顔になっちゃってます」

 

朱里の手が俺の頬に触れる。

 

「笑ってください、いつもみたいに。私達も手を尽くします。

 

だから一人で抱え込まないでください。ご主人様がそんな顔してると、辛いです」

 

「ごめん、皆に心配かけてたみたいだな」

 

「それで、紫青ちゃんの話しを聞いて、この格好でここにきたら、ご主人様が元気になるかとおもって……」

 

「ありがと、心配してくれて」

 

もう一度朱里の頭を軽く撫でて。

 

「い、いえ。あの、私もご主人様の事を、お、お慕いしてますし」

 

「あ、うん、それは知ってるけど」

 

一日独占する権利が欲しいとか言うぐらいだし。

 

というか、軍師の内々で絶対談合みたいなのがあったんだろうなぁ、なんて思ったり。

 

「な、なら、ですね。その」

 

「ん?」

 

「あの、桂花ちゃんや紫青ちゃんみたいに……」

 

顔を真っ赤にして落ち着かない様子を見ればいくら俺でも求めてる事は分かった。

 

「なら、夜にもう一回きてくれる?」

 

「は、はい! で、ではまた後で!」

 

逃げるように去っていく朱里を見て微笑ましいなぁなんて思いつつ……。

 

夜までに仕事を片付けるべく机に向かうのだった。

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「んーっと……」

 

現在軍事演習中。実戦形式での戦闘訓練の準備をやってるところだ。

 

たまには参加して欲しいってことで演習にくっついてきていた。

 

「ん、ご主人様、何か意見あるん?」

 

「相手は星と紫苑だっけ?」

 

「そやで、こっちはウチと華雄とご主人様やな」

 

「んー……」

 

この辺りの地形を思い出し、どう攻めるか、相手ならどうしてくるかを考える。

 

俺だって今までただ軍師達の傍にいただけってわけじゃない。

 

一応、暇をみて兵法の勉強したりもしたし、その状況による判断のしかたもなるべく多く吸収しようとしてきたつもりだ。

 

「あのへんとか、伏兵かくしてそうだよな」

 

「そうだな、星あたりならやりそうだ」

 

華雄も頷く。華雄も桂花達に頼んで相当勉強したらしいしなぁ。

 

「ふーん、ほんなら、ご主人様やったらどう攻める?」

 

「んー、そうだな」

 

基本的に遮蔽物があんまりない荒野だから伏兵を隠すのは難しいけど……。

 

ようは敵の虚を突けばいいわけだ。

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「あえて下策を使うのはどうだろ?」

 

「ほう?」

 

「突出すれば伏兵と本隊に挟撃を受けちゃう事になるけど、

 

霞の隊が突出して伏兵をおびき出して、遅れて行く華雄の隊と霞の隊が反転して敵本隊と接触する前に伏兵を殲滅

 

その後合流して一点突破で相手の本隊を襲う」

 

「なかなか分の悪い事考えるなぁ。確かに突出するのも相手に背を向けるんも下策っちゅうか、普通はまずせんことや

 

そこらは考えとらへんかもしれんな。ほんでも、星の隊が一気にきたら伏兵の殲滅は多分間に合わへんで?」

 

「伏兵が来るのを予測して早めに行動すればなんとかなるんじゃないかな」

 

「殲滅しきれたら勝ちは見えるんだがな」

 

「んー、なら……副将の人に隊を一つ任せてその人の隊に華雄や霞の隊の旗を持たせて数を偽装する。

 

陣形も数を偽装したいから鋒矢の陣でいってもらって、敵から挟撃を受けてもらう

 

で、その隊が全滅するまでの間に霞と華雄が相手の左右に移動し、挟撃を仕掛け、これを殲滅する」

 

「……、それ実戦やったらえっらい酷な策やなぁ。決死隊やん。

 

でもそれ、釣り野伏みたいな感じやな」

 

「そ、釣り野伏だよ。同じ方法じゃ看破されるから、いくつかやり方があってさ。

 

これは本来は意図を知らせずに全滅するまで戦わせてから挟撃をかけるっていうやり方だね。

 

実戦ならまずやりたくないやりかただよ」

 

「釣り野伏を使うなら、合図はどうする? 誰かが挟撃の合図を出さなければいけないぞ?」

 

「やっていいなら俺がやるよ」

 

「よっしゃ、ほんならご主人様のやり方に乗ろか。もうちょいしたら開始やし、張り切っていくで!」

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そんな感じで演習が始まり、だいたい事は狙い通りに動いた。

 

予測していた所に相手の伏兵がおり、伏兵が現れると共に敵の本隊が攻めてくる。

 

数を多く見せるための偽装に引っかかった形、と言えるか。

 

囮の隊が全滅する寸前で俺が合図を出せば華雄と霞の隊が動き、相手に挟撃を仕掛け、敵を殲滅していく。

 

数の偽装は黄巾党との戦いで見ていた星が看破するかとおもったが、どうにか看破されずに済んだらしい。

 

ここらのさじ加減は難しい、あまり露骨すぎれば看破されるし多くすると挟撃にさける人員が減る。

 

結果は霞と華雄の隊の勝ちで、どうにか俺のせいで負けた、何て言われずにすんだ。

 

あと、囮の隊には、俺の判断が遅れてしまったために全滅させてしまった、といって謝った。

 

実戦でこういうことするって思われたらヤだし。霞と華雄もフォローしてくれたから多分大丈夫だとおもうけど。

 

「……主の入れ知恵ですな?」

 

「あ、バレた?」

 

演習が終わって星の開口一発目がこれである。

 

「普段と霞と華雄のやりかたと随分違ったのでそうではないかと思っておりましたが。

 

それに主らしからぬ策のたてようだったので対応が遅れたのもありますな」

 

確かに、隊の全滅前提ではまず組まないからなぁ。

 

「まぁ負けは負けです、それでは我らは後片付けがあるのでこれで失礼します」

 

罰則ってわけではないが、たいてい負けた方が後の片付けをやることになってるらしい。

 

星と紫苑の後ろ姿を見送ってから、俺達は帰路についた。

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その帰り道、特に急ぐでもなくのんびり馬に揺られている。

 

「やれやれ、星と紫苑が組やと分が悪いから助かったわぁ」

 

「そうなの?」

 

「そうだな、だいたいこの4人だと、私が入った組が負ける。私はまだまだ戦の進め方が甘いというわけだ」

 

そういって華雄がため息をつく。華雄も頑張ってると思うんだけどなぁ。

 

「大分良くなったと思うけどなぁ」

 

「良くなったとはいっても負けては意味がないのは主もよく知ってるだろう?」

 

「んまぁ、そうだけど」

 

「さて、まぁ勝ち戦で時間もあることやし、飯でも食い行こうや」

 

霞の提案に華雄と2人で乗り、街でラーメン屋に寄る、時間は夕刻。

 

演習で動きまわったから確かに腹が減っている。

 

「んー、ご主人様もあれやなぁ。

 

桂花やら朱里には流石に負けるけど、軍師としてもやってけるんちゃうの?」

 

「無い無い……、見よう見まねみたいなもんだから」

 

「しかし、主が主なりに学んだ結果なのだろう? それであの2人に勝てたのだからそれは誇っていいだろう」

 

「そういうもんかなぁ」

 

何だか照れくさくて後頭部を軽くひっかく。

 

「これで武術ができたら曹操みたいやな」

 

「いやそれは流石に買いかぶりすぎ」

 

苦笑しながら、ラーメンを啜る。

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「それより、軍師で思い出したけど、桂花らの褒賞の噂、ほんまなん?」

 

「ん? 一日俺を独占するってやつ? それなら本当だけど」

 

「そうそう、ソレ。えー、マジかいな……。そやったらウチもそないしたらよかったなー」

 

がっかりしたような表情を見せる霞、華雄はそれを見て笑っている。

 

「機会はいつでもあるだろうに、警邏あたりにかこつけて連れ出せばいいじゃないか」

 

「まぁそやけど。ご主人様の休みんときって競争率高いんやで?

 

最近曹操もねろとるし、だいたい軍師3人か詠ちゃんか月ちゃんがべったりやん。白蓮もアヤシイしなぁ……。

 

あと華雄が地味にねろてるんもしってんねんで?」

 

「いやまぁ、買い物とか街をぶらぶらするとかなら言ってくれれば付き合うけどさ。

 

時間があるときなら」

 

「まぁまた今度誘うわ」

 

「私もそうしよう。私の真名の件も話しておきたいしな」

 

そういえば、華雄の真名っていまだに聞いてないなぁ。そして華雄のその言葉を聞いて霞がひどく驚いた顔。

 

「……マジ?」

 

「ああ、本気だ」

 

どういうことなのか? と問いかけても2人はこたえてはくれなかった。

 

……その日はそのことが頭から離れなくてなんだか眠れなかった。

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あとがき

 

どうも黒天です。

 

折角なので朱里にもメイド服を着せて見ることにしました。

 

これで一刀と関係を持ったのは3軍師となりますが、

 

この他はあとは華琳ぐらいかな? などと思っております。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。

 

説明
今回も拠点な感じ。朱里の話と、華雄、霞の話です。
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コメント
>>M.N.Fさん んー、愛紗は不憫なまま終わりそうな予感です(黒天)
>>陸奥守 ふむー……。実は後半が本音では・・・w(黒天)
>>風見海斗さん ふむふむ。確かに華琳さんのイメージにピッタリな名前です(黒天)
>>いたさん 誤字修正しました!(黒天)
>>naoさん うちの朱里は割りといい子系の子ですw(黒天)
>>牛乳魔人さん 見させていただきました! ありがとうございます。華琳さんが可愛い・・・(黒天)
>>nakuさん 今のところその手のイベントは用意してないですねー、残念ながら。気が向いたらやるかもしれませんが(黒天)
>>たっつーさん ふむふむ、そういう事情があったのですね(黒天)
>>禁玉⇒金球さん 確かに嘗ては二枚看板でしたねw 最近すっかり影が薄くなっちゃいましたが。朱里は健気に頑張ってます(黒天)
>>Jack Tlamさん 確かに、実戦でも進んで命を捨てにいく兵もいそうな……。賢王ですか、一刀も最初とくらべて随分成長しました(黒天)
>>いたさん ふむ、教科書通りが多い感じなのですね。上杉謙信もそういうのをやってたんですな。(黒天)
はよ愛紗とも関係もっとけ・・・と、言ってみた(汗) うん、最古参なのに先こされてばっかりで不憫なんですよ(;^-^)(M.N.F.)
俺を一日独占する権利なんて褒賞になるわけない。なったとしても公的な何かを渡さなければ、秩序が乱れると思う。決してリア充がうらやましいわけではない。ないったらない。(陸奥守)
因みに、華琳の「琳」には、光り輝く美しい玉、また玉が触れ合って鳴る澄んだ音という意味があるらしい。(風見海斗)
恋姫の真名でよく目にする「華」という漢字には、功名・誉れや美女という意味があるそうです。・・・ぴったりだね!!!(風見海斗)
メイド朱里か〜ありですな!朱里って軍師ゆえに腹黒に書かれる事もおおいが、ここの朱里はいい朱里ですw(nao)
ついでに、誤字報告?です。野党→夜盗?か盗賊の間違えではないかと。野党だと政治に参加する与党野党の意味になるそうですが…。 ↓↓詳細ありがとうございます。(いた)
「萌.jp」って所の恋姫無双スレにメイド華琳の画像貼ってみました 朱里・星・愛紗のメイド姿もあるでよ(牛乳魔人)
前話の侍女服四天王と詠「二番いや五,六番煎じ?」、朱里「嘗ては二枚看板だったorz」(禁玉⇒金球)
捨て身のパターンか…意気軒昂な兵ならではの戦法ですね。そして色々な人間から慕われ「すぎる」一刀の軍となれば…。それと、私掠というある種汚い手を提案するあたり、清濁併せ呑むことをわかっている一刀はやはり賢王ですね。(Jack Tlam)
後、 私掠と同じ事だと思いますが、聖将上杉謙信も他国の民達より略奪を奨励したという話を読んだことがあります。本当かどうかは、わかりませんが…。(いた)
採用、ありがとうございます! 釣り野伏せを使う小説は、幾つかみたのですが同パターンばかりで…。読んでて『おぉっ』と思いました!(いた)
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恋姫†無双 一刀 北郷一刀 朱里 華雄  

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