真・恋姫無双 異聞  〜俺が、張角だっ!!〜 第3話
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第3話 気功 The mysteries of life

 

 

雷華は現在、流れの医者である武羅 玖若と近くの森に来ていた。

 

荒野などが広がっている涼州ではこのような森は珍しく、近場の村からは狩猟の場所として珍重されている。

 

しかし、やはり危ないので猟師以外は近づくことはない。そんな場所で木に背中を預けながら話し合っていた。

 

「さて、まず『氣』の極意を教える前に、『氣』とはどういうものであるかを説明しておこう」

 

「わかった」

 

自らの治療のために玖若に『氣』を教わることになった雷華。そんな雷華は現在割りとワクワクしていた。

 

何せフィクションの存在であった『氣』を教わることが出来るのだ。男だったらこの現状でワクワクしないほうが珍しいと雷華は思う。雷華も前世の子供の頃はか○はめ波や波○拳の練習をしたことはあるのだ。結局昇○拳は何とか形に出来たもののそれらは当然覚えることが出来なかった。

 

そんな男の浪漫の塊を覚えることが出来る。雷華は「テンション上がって来たぜええぇぇ!!」と内心で歓喜の絶叫上げるのを抑えることが出来なかった。勿論表には出さなかったが。

 

「『氣』とは、動植物に宿っている生命力から生み出される力のことだ」

 

「生命力・・・・・・」

 

大体その辺りは予測できたことなので雷華は驚かなかった。

 

「どんなに小さな動物や植物でも、そこに命があれば生命力があり、当然『氣』も持っている」

 

だが、と玖若は続けた。

 

「今現在もそれら生命力や『氣』が発生する根本原理は実は解明されていない」

 

その説明を聞いて雷華はおぉっと小さな声を上げた。何だか面白い話になりそうな予感がしたのだ。

 

「『氣』の持つ特性やその操作方法。さらには効能などは古より先人たちが体系付けてきた。だが、「何故『氣』が発生するのか?」という疑問に人々はまだ答えを出せないでいる」

 

それは何だか「重力」と似ているな、と雷華は思った。

 

「重力」が働いた時に起こる現象。その角度や加速度などの特性はニュートンが発見したというのは有名な話だろう。リンゴが落ちるのを見て思いついた、というあのエピソードである。

 

しかし、「何故落ちるのか?」という疑問には人類は今現在も答えが出せないでいるのだ。

 

「死の淵から蘇り、心臓などが動いていても意識が回復しない、という症例がある。その場合は魂が既に離れてしまっているために蘇生しないと考えられているのだが、この症例の場合は患者の体から『氣』を感じ取れなかったらしい。その為に、『氣』は魂と肉体の結びつきと密接な関係があると考えられているが詳しいことは判明していない」

 

これもまた「重力」とよく似ていた。

 

陽子などのミクロな世界の実験によって、「重力」が働くのは「重力子」という粒子があるからではないか?というメドはついたのだが、まだそれが実証される段階までには至っていないのだ。

 

「まぁとにかく、『氣』とは魂の宿っている動植物の生命力から生まれると理解していればいい」

 

「りょーかい」

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「『氣』が生命力から生まれる以上、当然その量は生命力に比例する。小さな鼠よりも大きな虎のほうが『氣』の量が多いのは当たり前だということだ」

 

雷華はその説明には納得のいくものがあった。『氣』は生命力で出来ている。なるほど、ならば生命力が高いほうが『氣』が多くなるのは自明の理だ。

 

「一般的に男性よりも女性の方が『氣』が多いのはこのためだ」

 

「え?なんで?」

 

その説明に雷華は引っかかるものがあった。雷華的には女性よりも男性のほうが力強いと感じるものなのだが・・・・・・。

 

「女性は子供を生むだろう。だから女性の方が生命力が多いのが普通なんだ」

 

「あ、そっか」

 

「その点お前は幸運だ。男性の逞しさと女性の豊富な生命力の両方を備えていると言える。実際俺が診てみても今の段階でもかなりの量の『氣』を持っているのがわかったからな」

 

「才能があるって言われるのは嬉しいけど、その理由は何か複雑だ・・・・・・」

 

その言葉に玖若は苦笑する。理由がわからないでもなかったのだろう。

 

「『氣』の量は先天的なものでほぼ決定されるが、体を鍛えることでも自然と量は増えていく。ま、これも当たり前だな」

 

「確かに鍛えているほうが生命力は高いだろうしなぁ」

 

「さて、『氣』についての基本的な知識はこんなところだろう。次は実践的な用途について説明しようか」

 

「やっとか!」

 

雷華が木から背を離して身を乗り出した。鼻息荒く自らに迫ってくる雷華に玖若は微笑ましいものを感じ微笑を浮かべた。

 

「『氣』の用途には大きく分けて2種類ある。自身の体、つまり内界に働きかける『内気功』。それに自身の体の外、つまり外界に干渉する『外気功』だ」

 

「それはなんか聞いたことがあるな」

 

自身の知識と照合しながら雷華は頷いた。

 

「内気功は自らの身体能力を強化したり、内蔵機能を調節して体調を整えたりできる。お前に教えるのも主としてこちらになるだろう」

 

「なるほど。自分の氣で内蔵機能を調節して、体内の均衡を保つようにするわけか」

 

「その通りだ。俺が『氣』を用いてお前の体を調節したのを、自分自身の『氣』を用いて出来るようになってもらう」

 

その言葉に雷華は俄然やる気が沸いてきた。明確な目標が見えると人は幾らでも前に進んでいけるものなのである。

 

「これは完全に余談だが、一般兵は男性が多いのに対して、将軍に女性が多いのもこの内気功が理由だ」

 

「ほうほう」

 

「身体的、骨格的な能力はあくまで男性の方が高い。そのためある一定の強さまでの一般兵には男性が多くなる。しかしそれ以上の将軍となると『氣』を使わないと到達しえない強さになる」

 

「なるほど。だから『氣』の量が先天的に多くなる女性が将軍職に多くなるってことか」

 

「あぁ。意識的にしろ無意識的にしろ、女性の方が『氣』を操る能力は高くなりがちだ。内気功によって上がる身体能力も当然女性の方が上がり幅は大きくなるということだ」

 

ま、さっき言った通りこれは余談だがな。と玖若は話を締めくくった。

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「次は外気功だ。これには『氣』を放出する氣弾や俺がお前を治療したような技が含まれる」

 

こういうのだ、と玖若が言って腕を前方に伸ばした。

 

その手の平が光り輝いていく。まるで太陽のような山吹色(サンライトイエロー)だなと雷華はなんとなしに思った。

 

そうして暫くたつとその手の平から山吹色に輝く球体が発射された。それは前方の岩に当るとそれを木っ端微塵に粉砕させた。その威力に雷華はヒューと口笛を吹く。

 

「と、この通りだ。『氣』に物理的な破壊力を持たせたらこうなる」

 

もっとも、と玖若は続けた。

 

「お前に『氣』を教えるのはあくまで治療目的なんでな。外気功はほんの触りの基礎しか教えない。内気功が主になる」

 

「・・・・・・ま、残念だけどそれも仕方ねぇな」

 

雷華は多少の落胆とともに納得の言葉を口にした。

 

玖若は流れの医師である。それも凄腕のだ。そんな彼を求める人物は数多くいるだろうし、治療目的とはいえそんな彼に教えを受けれるだけでもラッキーと雷華は思うことにした。

 

玖若はそんな雷華の内心を正確に把握していたが、口は出さないことにした。あくまで彼は医者なのである。

 

「さて、では治療を開始しようか。講義の1「体を鍛える」だ」

 

「え?・・・・・・『氣』を教えてくれるんじゃねぇの?」

 

雷華はまるで楽しみにしていたゲームを買ったのにそれがあまり面白くなかったことがわかった時のゲーマーのような顔をした。ようはガクッときたのである。

 

「何事にも前準備というのがあるんだ。『氣』を扱うには自らの体の動きを把握することとより強い精神力を持つことが大切だ。「体を鍛える」というのはその両方を同時に満たしてくれてかつ、『氣』の量自体を増やしてくれるお得な講義なんだ」

 

そう言われると何だか体を鍛える気になってくるから困るなぁ、と雷華は心の中で独りごちた。この医者は人の心の機微を把握し誘導するのがとても上手いような気がする。

 

「文句はないな?・・・・・・なんだ?それともやっぱりやめたくなったのか?」

 

「カッチーン。・・・・・・上等。其処まで言うならやってやろうじゃねぇか。」

 

雷華は玖若の言葉が安い挑発だと理解していた。していたが、それでも元男としては乗らざるを得ない場面というのがある。

 

多分玖若の思い通りなんだなぁ、と頭の片隅で思いつつも雷華はやる気を高めていった。

 

そんな様子に玖若は内心で笑みを浮かべる。多くの患者を診てきたこの医者には雷華の考えていることなど簡単に洞察できるのだった。

 

「では行くぞ!まずはこの森から村までを往復5周だ!」

 

「あ、やっぱり遠慮したくなってきたかも」

 

玖若の無茶な要求に雷華は早速やる気が萎えてしまうのを避けられずにいたのだった。

 

説明
恋姫無双の世界に転生した農大生のお話。

彼はどう生きていくのだろうか?

姓は姜、名は維、字は伯約。そんな彼の物語。

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