恋姫婆娑羅
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「極道男と生意気娘」

 

 

 

 

畑で野良着の男が一人、鍬を振り土を耕す。その男の頬には大きな傷跡が刻み込まれとても農民には見えない。それもそのはずである。彼の名は片倉小十郎、竜の右目と誉れ高き生粋の武人である。そんな人物がなぜ、畑で鍬を振っているのか?答えは簡単、彼の趣味である。元々、奥州に居たころから野菜や畑には並々ならない情熱を注いできた。小十郎の野菜の噂の日ノ本各地を巡り、かの戦国美食会にも認められるほどだった。特に人参は絶品である。

 

今でも華琳に頼んで土地を貰い受け、そこを畑として暇さえあればここで農作業に励んでいる。もっとも最初に華琳らに頼んだ時には、その顔で野菜?と妙なものを見る目をされたが・・・

 

「良し!、こんなもんで良いか・・・少し時間をかけ過ぎたか?」

 

畑の整備を終えて急ぎ自室に戻る。なぜこんなに急いでいるかといえば、これから、ここら一帯に蔓延る盗賊たちを一掃するため軍を動かす。小十郎もまたそれに参加するのだ。

 

「おっと・・・確か華琳に糧食の帳簿を頼まれていたな・・」

 

思い出した小十郎は近くの兵に監督官の居場所を聞き出しそこへ向かう。

 

「この辺りにいるはずだが・・・」

 

監督官がいるという馬具置き場にやってきた。出陣前だからだろう、多くの将兵が慌ただしく動いている。ここで小十郎は自分のミスに気付く、そういえば監督官の特徴を聞いていなかった・・・仕方なく周りの奴に聞こうと思った時、丁度良くリーゼントの兵士が通りかかった。

 

「おい、少し聞きたいことがあるんだが?」

 

「アァン?うるせぇ!!俺は忙し・・・・こ、小十郎様ぁぁ!?」

 

「忙しいところ悪いが、監督官を探している。知っているか?」

 

「も、もちろんです!!あそこにいる嬢ちゃんがそうです。でも気を付けてください、小十郎様、あの嬢ちゃんめちゃくちゃ感じ悪いんすよ・・・」

 

「・・・?・・分かった。忠告感謝するぜ。仕事頑張んな!」

 

リーゼントはペコペコと頭を下げながら去って行った。その背中を見送りつつ、教えられた少女に近づき声を掛ける。

 

「おい、あんたが監督官か?糧食の帳簿を貰いたいんだが・・・?」

 

「・・・・・・」

 

小十郎の呼びかけに、少女は答えなかった。不審には思ったが、周りの怒声やらで聞こえなかったのかもしれないともう一度、先ほどよりも大きな声で呼びかける。

 

「おい、あんたが監督官か?糧食の帳簿を貰いたいのだが?」

 

「・・・・・・・・・」

 

またも答えない、それどころかわざと聞こえないふりをしているようだ。なるほど、こういう事かとリーゼントの言葉を思い出す。仕方がない時間も無いからな、ここは強硬策といくしかないと小十郎は考えた。

 

「おいッ!!いい加減にしておけよ?てめぇが監督官であるなら今すぐ答えな?」

 

「ひぃっ!な、なによ!!さっきから何の用よ!!」

 

小十郎は極殺モードのちょっとした応用でドスを利かせた声を出す。すると怯えたように体を震わせつつもやっとこちらに答えた。

 

「さっきから言っているだろう?糧食の帳簿を貰いたい」

 

「なんであんたみたいなヤクザ者にそれを渡さなければいけないの?」

 

つんとそっぽを向きながら答える。なんとも面倒なガキだと思いつつも小十郎は続ける。

 

「華琳から頼まれたんだ。あまり時間がないんだが・・・早く渡しちゃくれねぇか?」

 

「なんで!?あんたが曹操様の真名を!?って曹操様が持って来いって?・・・なんでもっと早く言わないのよ!!」

 

「普通はそこまで言わなくても渡して貰えるものだと思うんだが?」

 

「ぐっ・・・帳簿ならその辺にあるわ、草色の表紙が当ててあるから勝手に持っていきなさい」

 

やれやれと呆れながら小十郎は帳簿を見つける。出来ればこのガキにはもう会いたくねぇな、と思いつつその場を後にするのだった。

 

 

 

 

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「すまない、これがご所望の帳簿だ」

 

「ずいぶんと遅かったじゃない?なにかあったの?」

 

「・・・少しばかり厄介なガキに絡まれてな・・・」

 

「Ah? 小十郎なんか急に老け込んだか?」

 

「政宗様・・・戯れはおよし下さい・・・」

 

「・・・?・・、まぁ良いわ早く見せてちょうだい」

 

城壁の通路に集まっていた政宗と華琳たちを見つけ、帳簿を渡す。渡された帳簿を真剣な表情で確認していく華琳だが、その顔はどんどん険しくなっていく。

 

「・・・秋蘭」

 

確認を終えた華琳は秋蘭に声を掛ける

 

「はっ」

 

「この監督官というのは一体何者なのかしら?」

 

「はい、先日、志願してきた新人です。仕事の手際が良かったので、今回の食糧調達を任せてみたのですが・・・何か問題でも?」

 

その答えに華琳の顔に怒りが浮かぶ

 

「ここに呼びなさい・・大至急よ!」

 

「は、はっ!」

 

そう言われた秋蘭は急いで駆け出した。華琳がここまで怒っているのをみたのは新兵調練の事件以来である。あのガキがなにやら大きな失敗でもしたのかと思索に更ける小十郎と華琳の怒りもどこ吹く風で鼻歌なんかを歌っている政宗に対し、春蘭は華琳のピリピリした雰囲気に居心地の悪そうな顔をしていた。

 

 

「華琳様、連れてまいりました」

 

あれからどれくらいたっただろうか、やっと秋蘭が件の人物を連れてきた。ついて早々に華琳が口を開く。

 

「おまえが食料の調達を?」

 

「はい、必要十分な量は確保したつもりでしたが、問題でもありましたでしょうか?」

 

「これで必要十分と?私が指定した半分があなたの十分とでも言いたいの?」

 

「へっ!?」

 

「むっ?」

 

「♪〜〜」

 

華琳の言葉に春蘭と小十郎の疑問の声が重なる。秋蘭の黙ってはいるものの怪訝な様子だ。約一名は口笛を吹いて茶化しているが・・・

 

「このまま出撃したら糧食不足で行き倒れになるところだったわ。そうなったら、あなたどう責任をとるつもりかしら?」

 

「いえ、そうはならないはずです・・」

 

華琳の言葉を即座に否定する。これには華琳も疑念を抱く。

 

「何?・・・・どういう事?」

 

「理由は三つあります・・・お聞きくださいますか?」

 

華琳の疑問に三つの根拠を示すことで答えるという、華琳も納得する答えならば彼女を許すことを誓う。

 

「ご納得頂けなければ、それは私の不能の致すところ、この場で我が首、刎ねて頂いても結構にございます」

 

「・・・二言はないぞ?」

 

さっき会った時はこまっしゃくれた小娘と思っていたが、なんとも肝が据わったことか。小十郎は彼女に対する評価を改める。

 

 

彼女の言う三つの根拠一つは、慎重な曹操は糧食の最終確認を必ず自ら行い、問題があれば責任者を呼ぶであろうから行き倒れにはならない。 

 

二つ目は糧食が少なければ輸送部隊の行軍速度が上がり、討伐行全体に掛かる時間が大幅に短縮される。

 

最後に自らの提案する策を採用すれば、戦闘時間は大幅に短縮される。だから糧食はこの量で十分だと。

 

 

彼女の説明中に切れた華琳を政宗が宥めたり、理解できない春蘭に小十郎と秋蘭で説明したりと色々あったがとりあえず話は終わった。すると、その途端、少女が頭を垂れる。

 

「曹操様、どうかこの荀ケめを、曹操様を勝利に導く軍師として、配下にお加え下さいませ!!」

 

「「「なっ!!」」」

 

「♪〜〜なるほど、こいつが・・・」

 

春蘭と秋蘭は華琳への突然の嘆願に驚く、小十郎と政宗はこの娘があの荀文ケとは思い至らず、まず、そこに驚いていた。

 

「荀ケ・・・あなたの真名は?」

 

「桂花にございます。」

 

真名を聞かれ素直に答える。それを聞いた華琳は今までの般若顔から一変し面白いものを見たという表情になる。

 

「桂花。あなた・・・この曹操を試したわね?」

 

「はい」

 

「な・・・っ!貴様、何をいけしゃあしゃあと・・・華琳様、このような無礼な輩、即刻、首を刎ねてしまいましょう!」

 

「貴方は、黙っていなさい!私の運命を決めて良いのは、曹操様だけよ!」

 

「ぐ・・・っ!貴様ぁ・・」

 

激高する春蘭を秋蘭と小十郎で宥める。

 

「桂花、軍師としての経験は?」

 

「はっ。ここに来るまでは、南皮で軍師をしておりました」

 

「そう・・・あの女のところでね・・」

 

曹操の言葉に政宗と小十郎は疑問を抱く。

 

「・・・・秋蘭、あの女とは一体誰を指しているんだ?

 

「ん・・? あぁ袁紹のことさ、華琳様と袁紹は昔からの腐れ縁でな・・」

 

「Ah~なるほど、あの顔を見るに良い縁じゃなさそうだな」

 

二人の疑問解決を尻目に華琳と荀ケの話は続いていた。すると突然、華琳は春蘭に命じて自らの大鎌を受け取り、荀ケの首元に突きつける。どうやら、聞いてない間に大分話が進んだらしい。

 

「か、華琳様・・・!」

 

双竜の疑問解決に付き合っていた秋蘭は話が読めず、主の突然の行動に思わず声を上げてしまう。しかし、そんな秋蘭を無視して華琳は話を続ける。

 

「桂花。私がこの世で尤も腹立たしく思う事・・・それは他人に試されると言う事よ。分かっているかしら?」

 

「はっ。そこをあえて、試させて頂きました」

 

「そう……ならば、こうする事も貴方の掌の上と言う事よね・・・・」

 

そう言うと華琳は荀ケ目掛けて鎌を振り下ろす。・・・が荀ケは立ったまま血の一滴すらも飛んでいない。

 

「「・・・・」」

 

「やれやれ・・・」

 

「全く無茶をするものだ」

 

呆然とする春蘭、秋蘭とこうなる事を知っていたと言わんばかりに苦笑する双竜に華琳は答える。

 

「当然でしょう。でも、これくらいなら罰は当たらないはずよ?・・・けれど桂花。もし私が本当にこの刃を振り下ろしていたら、どうするつもりだったの?」

 

「それが天命と受け入れておりました。天を取る器に看取られるなら、誇りこそすれ、恨む事はございませぬ」

 

荀ケの言葉に華琳は目を細める

 

「・・・嘘は嫌いよ。本当の事を言いなさい」

 

「・・・はっ。曹操様の御気性からして、試されたなら、必ず試し返すに違いないと思いましたので。避ける気など毛頭にありませんでした。・・・・それに私は軍師であって、武官ではありませぬ。あの状態から曹操様の一撃を防ぐ術は、そもそもありませんでした」

 

「そう・・・・」

 

短く呟き華琳は鎌を下ろす。それから弾けるように笑いだした、一しきり笑うと幾分か落ち着いたのだろう。荀ケに言葉を掛ける

 

「ふふ・・・最高よ、桂花。私を2度も試す度胸とその知謀、気に入ったわ」

 

華琳の言葉を聞いた、荀ケの表情は、まるでそこに花が咲いたかのような笑顔が浮かんだ。

 

「で、ではっ!」

 

「貴方の才、私が天下を取る為に存分に使わせてもらう事にする。良いわね?」

 

「はっ! 必ずやお役に立ってご覧にいれます!」

 

こうして今回の賊討伐の成功と軍師としての働きを約束させ荀ケが配下になった。なんとも騒がしい出陣前の一幕であった。

 

 

 

 

 

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はい、桂花ちゃん登場の一幕でした・・・ここは中々アレンジしずらくて大変ですね・・・セリフも長いし。ほぼ、後半は原典丸写し感が否めないなぁと・・・

 

でもなんとなくまとまった気はしています。

 

では、ここまでご覧になってくださった方には最大級の感謝を!!

 

 

 

 

説明
どうも皆さん、今回はあの娘が登場です。

徐々に話が進んできたような気がしています。どうか楽しんで閲覧していただけたらと思います。
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コメント
劉邦柾棟 さん  コメントありがとうございます。 アドバイス感謝です! セリフなんかは特に原作そのままで行こうかなと思います。(KG)
下手に変えまくると余計に違和感がある場合があるので、原作をそのまま使用した方が良いですね。 その方が、修正が効きますからね。(劉邦柾棟)
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クロスオーバー 戦国BASARA 恋姫†無双 

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