太守一刀と猫耳軍師 第43話
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「たまには息抜きもしないとな」

 

なんて言い訳じみた事を独り言でいいながら、庭へとやってくる。

 

やっぱり天気のいい日は天日にあたらないとな。うんうん。

 

日時計に目をやると丁度二時半ごろ。

 

「休憩中?」

 

背伸びをしていると背後から声をかけられる、この声は桂花か。

 

「まぁそんなとこ、桂花も休憩中?」

 

「そんなとこよ」

 

「あら、あなた達も居たのね」

 

と、続いて現れたのは華琳。3時がだいたい休憩時間になってるせいか、その前後にここにくると大抵誰かと遭遇する気がする。

 

「出たわね変態」

 

「うぐっ……」

 

桂花がじとーっとした視線を華琳に向ける。

 

「あ、あの時は北郷にやってほしいって言われたから」

 

メイド服を着た時の、「ご主人様ぁ」ってやつか。

 

「俺、あそこまでやれとは言ってないけど……」

 

「やっぱりあなたが変態なんじゃない」

 

「そんな事ないわよ!」

 

「どうかしら? あれが本性なんじゃないの?」

 

どうも、桂花と華琳はちらほら対立する感があるなぁ。

 

やっぱりどこか似てるからなんだろうか。

 

やりすぎて首を落とされないだろうかとヒヤヒヤする。

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「桂花、ちょっと言い過ぎ。あと華琳も落ち着いてくれよ」

 

大きなため息を一つ。両者の間に立ってまぁまぁと。

 

「2人が喧嘩してたら気が休まらないし、2人ともつかれるだろ」

 

時々、桂花や紫青がゲームをやっているテーブルのところまで2人をつれていって、座らせる。

 

「2人には仲良くして欲しいしさ」

 

「一刀がそう言うなら……」

 

「ほんと、あなたには従順な猫なのね、この子は」

 

華琳の言葉に桂花が睨むような視線を向けるが、特にキツイ言葉は出てこない。

 

「やっぱりあなたも、魏の者が北郷の暗殺を企てた事がまだ気がかりなのかしら?

 

だからそうやって、私を北郷から遠ざけようとするんでしょう?」

 

「頭では納得してるわよ。戦時下じゃそれも策の内だってことも」

 

「そうでしょうね、あなたはいまだ私や秋蘭達に真名を許さないし、

 

それは多分、信頼できていない、もしくは感情として許せない、という事の現れでしょう?」

 

桂花が黙りこむ、おそらく華琳の言った通りなのだろう。

 

「そうね、信頼できるだけの材料になるかどうかはわからないけど、私と北郷は一つ、誓いを立てているわ。

 

お互いを友として、害成す者に罰を与え、事を成すなら共にあり、道を誤ればそれを正し、死すれば墓前で涙する。

 

そうよね?」

 

俺はゆっくりと頷いてみせる。

 

「だから、愛紗が反乱を起こした時、私は軍を率い、それを罰するために動いた。

 

これでも、あなたとは仲良くなれそうに無いかしら?」

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桂花に視線を向ければ、ゆっくりと首を横に振る。

 

「敵だとは思ってないわ。信じていないなんてことも無い、それでも……」

 

「人の心っていうのは、厄介なものよね。

 

気持ちは分からないでもないわ、時間がかかるならそれでもいい。

 

私だってここで居心地が悪いのはごめんだもの。

 

ゆっくりでいいわ、仲良くやってくれるかしら?

 

もしそう思ってくれるなら、私を真名で呼んでもいいわ」

 

頷いてから少し考えるように間をあけて。

 

「いいわよ、私の事も真名で呼んでも」

 

どうにか仲直りができたかと、ほっとする。

 

この2人はどっちもキツい所があるから、ギスギスしててほしくなかったし。

 

「北郷の事も、そろそろ名で呼ぼうかしら?」

 

「えっ?」

 

急に話しを振られて素で返してしまい、華琳に笑われる。

 

「あなたは名前で呼んでもいいといっていたしね。そうでしょ? 一刀」

 

そういって華琳が俺の名を呼べば、桂花がムっとした表情。

 

確か、今俺のことを名前で呼び捨てで呼ぶのって桂花しかいないしなぁ。

 

「さて、そろそろ仕事に戻るわ、こちらもやっておくことは色々あるし」

 

そういって華琳が立ち去っていく。

 

「俺もそろそろ仕事に戻るかなぁ……」

 

椅子から立ち上がって背伸びをして肩を回せばゴキゴキと関節が鳴る。

 

桂花も仕事に戻るということで解散し、それぞれに仕事に戻っていった。

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その夜、仕事を終え、食事が終わってくつろいでいた所、部屋のドアがノックされる。

 

開いている、といつものように答えれば入ってきたのは華琳。

 

夜にやってくるのは珍しい。

 

「どうしたの?」

 

「ちょっと折り入って話しがね」

 

「話し?」

 

一体何の話だろうと身構える俺がおかしかったのか、華琳が笑う。

 

「そんなかまえる程の話しじゃないわ。個人的な話しよ」

 

華琳が個人的な話し、というのも珍しい気もしたが、口を挟まずに話しを聞いてみる事にする

 

「……、昼にも桂花と話していたあの誓いだけれど、反故にすることになるかもしれないわ」

 

「え!?」

 

おそらく心底驚いた顔になっていたのではなかろうか、今度は小さくため息をつく。

 

「あなたはニブすぎるのよ。

 

はっきり言わないと分からないかしら。

 

この先、私はあなたを友として見ていられる自信がないわ。

 

つまり、あなたを男として見ている、ということよ」

 

「ああ、なるほど……ってええ!?」

 

もう一度驚いた、まさか華琳が俺のことをそんな風に見てたとは……。

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「本気で気づいてなかったのね」

 

呆れたように肩をすくめ、もう一度ため息をつく。

 

「私が今までに真名を許した男はあなた一人よ、最初はそういうつもりじゃなかったけど。

 

この先も真名を許していいと思える男が現れるとは思えないし」

 

「そう言われても実感無いけど……、本気なの?」

 

「ええ、本気よ。そうでなければわざわざ部屋にたずねて来たりしないわよ」

 

「でも、別にあの誓いは反故でなくていいんじゃない?

 

別にそういう仲になったら友達やめなきゃいけないって事は無いんだし」

 

「関係が進んで夫婦にでもなることになったらどうするのよ」

 

「頭に一言付け足せばいいじゃないか。友として、伴侶として、って」

 

「……まぁ、あなたがそれでいいならそれでいいわ。

 

それで、答えはどうなのかしら?」

 

「答え?」

 

「私を受け入れるか、否かに決まってるでしょ。

 

ここまで言わせたんだから答えを聞かせない」

 

「受け入れないでいようとおもってたら、誓いに一言付け加えろ、なんて言わないし」

 

「周りくどいいいかたをせず、ハッキリと言いなさいよ」

 

「受け入れるよ」

 

俺がそういえば、ふっと安堵したような気配、顔には出さないけど、なんとなくそんな気がした。

 

「あなたが軍師達特に大切にしているのは私も知ってるわ、それと同等になれるかしら?」

 

「俺としてはみんなの扱いに格付けはしてないつもりだけど、そう見える?」

 

「ええ、軍師の中でも桂花と紫青は特にそう見えるわ」

 

そう言われるとバツが悪く、まいったな、なんて言いながら後頭部に手を当てて。

 

「あの2人が俺にとって距離が一番近いからそうなのかもしれないなぁ……。

 

何があっても、俺の隣にいて、要らないといわれようがついていく、って言ってくれたし」

 

「それと、今日紫青に仕事を手伝ってもらってる時に聞いたのだけど、あなたが天に帰るかもしれないというのは本当かしら?」

 

「……、分からないけど、俺は帰りたく無い」

 

「それなら」

 

華琳がぐっと俺に近づいてきて、俺の唇を奪う、それから間近から俺の顔を覗きこんで。

 

「それが天の意志なら逆らうのは難しいでしょうけど、

 

そうなるかもしれないというなら、帰る前に種の一つぐらいは仕込んでいきなさい。

 

あなたの居た証を」

 

その後俺は華琳に襲われた。

 

……さすがにされるがままは悔しかったので途中からどうにか主導権を奪取したけど。

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「ケダモノ……」

 

事が終わった後の第一声がこれである。

 

「いや、襲ってきたのは華琳だし」

 

「まさかここまで激しくされるとは思ってなかったわ……」

 

ベッドにぐったりと体を預けた華琳が俺の方を見ながら不平を言う。満足そうな顔をしてるけど

 

「でも、紫青や桂花の気持ちがわかったわ。

 

思い切り抱きしめられて、こうして愛されると本当に幸せだもの。

 

あの子たちはあなたに抱かれた後、どんな顔をしてるのかしらね」

 

「こういう時に他の子の話しするのはどうかとおもうけど、

 

んー、今の華琳みたいな、満足そうな幸せそうな顔してるよ」

 

「でも、この後部屋に戻るのが億劫ね……」

 

「泊まってけば? 桂花たちもたいていそうだし」

 

華琳の体に手を回して軽く抱き寄せると、体を預けるようにしてきて。

 

「あなたの両隣はふさがってるかもしれないけれど、それなら私はあなたの背を守るわ、何があろうともね……」

 

その言葉に言葉は返さず、体を抱く力を少し強くして。

 

「あなたが天に帰ってしまったなら、それを追いかけてでも……」

 

俺を逃がすまいとするように、華琳の手が俺を抱きしめてくる。

 

「ありがとう……」

 

その後しばらくの間、そうして抱き合っていたが徐々にまぶたは重くなり……。

 

「きっと、私が本気で愛する男は、きっと生涯でも一刀だけでしょうね……」

 

独り言だろうか、華琳がそういうのを聞きながら、俺は眠りに落ちていった。

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あとがき

 

どうも黒天です。

 

今回は華琳さんの拠点な感じでいってみました。

 

コメントでも結構人気なのもありいつの間にやらメインヒロイン枠になってました。

 

もともと、霞さんがメイン枠だったはずなのにどうしてこうなった。

 

次回は詠と月の話しの予定でしたが、霞さんの話しに変わるか、そのまま泰山行きになるかもしれません。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。

 

説明
今回は華琳さんのお話です。華琳さんもデレさせてみました
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コメント
曹丕「俺の出番が来たようだな」(はこざき(仮))
やっぱり華琳は‘良い女‘だなぁ。こんなにも相手を思いやれる人間は早々いないからね(桂花と紫青も)。(風見海斗)
一刀は閨では天下一だもの、そうそう主導権は取れませんぜ華淋様(一火)
魏ルート好きとしてはやはり華琳には幸せになってもらいたいのでよかったです!(nao)
一刀の前では誰もが素直になってしまう。これぞ天の御使いの実力ですね〜(南無さん)
呉陣営も是非出番を。柱の影辺りで泣いてるでしょうから。(いた)
>>h:oさん やっぱりちょっと急過ぎましたか……。もうすぐ終了という感じでどうするか結構悩んでしまったのですよね、原作の都合もあって華琳さんは登場かなり遅いですし……。(黒天)
>>D8さん レヴィアタンさん さすがに全員は厳しいですよ! んー、まぁあとは董卓軍の面々ぐらいでしょうか?(黒天)
>>皆様 やっぱり一刀はもげるべきなのか……(黒天)
華琳との関係が急展開過ぎる!?一刀だけじゃなくて読者も置き去りな感じ… しかも一刀の返答が軽すぎて(自分が女で言われたら)とても信じられないーー; つまり、もげろ!!(h:o)
天はどう下すか、見ものね(雪風)
やった!やっと華琳書いてもらえた!ありがとう!!(あいりっしゅ)
もういいや。一刀よ、とっとと現代に帰れ。そして絶望せよ。リア充が幸せになってはいかんのじゃ。(陸奥守)
ついに華琳まで・・・!D8さんと同じくできれば全員拠点を!!(レヴィアタン)
もげろ!あるいは枯れろ!(Jack Tlam)
霞さんも含め全員やってから泰山でお願いします!つーか朱里はどうなった!(D8)
ははは・・・もげろ!(黄金拍車)
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恋姫†夢想 北郷一刀 一刀 桂花 華琳 

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