第九章 黒き雷帝、降臨 |
ミノルとアキラの前に15人の将達が立ちふさがった。
「紅き戦人、蒼き戦人!貴公等は何故悪逆董卓の下に戦う!?」
春蘭が声高らかに2人に叫んだ。
「簡単だ、お前らが間違っていて俺達が正しい…それだけだ」
「何ッ!?悪逆董卓の方が正しいと申すのか!」
ミノルの冷静な返答に愛紗が吼えた。
「だってお前らおかしいと思わなかったかぁ?洛陽が…「兄さん」ん?」
アキラがミノルの会話の途中に割って入った。
「何も知らずにあの金ピカババアの下についたあの子達に何言っても無駄だよ…」
「ほほぅ〜それはどういう意味なのかな?」
アキラの意味があるような言葉に星がくいついた。
「簡単に言えば…『理解できるわけない』・『洛陽で悪逆非道な行いをした董卓を打ち倒して洛陽が平和になった』しかそういう事でしか言い付けを守ってるただの…袁紹という主人に飼われている人の姿をした『犬』同然という意味です」
『『『!!??』』』
「わ〜」
アキラの痛烈な言葉に武将達は驚き、ミノルは他人事の様だった。
「貴様ぁぁぁ!我々はおろか華琳様まで袁紹の犬と言いたいのかぁ!!」
春蘭が今にでも襲ってきそうな勢いで言い返した。
「理解したんですか?意外…理解出来ないと思ってました」
『ブチィ!』
アキラの一言についに春蘭の何かが切れたような音がした。
「蒼き戦人ぉぉぉ!!ここで貴様を殺す!!」
春蘭は七星餓狼を強く握り締めアキラに単独で向かって行った。
「・・・・・」
アキラは無言で春蘭に向かって走った。雷帝剣を抜かずに…
「はぁぁぁ!!」
春蘭の縦一閃をする前にアキラは先読みして彼女の手首を片手で掴んで動きを止めた。春蘭は振り落とそうとしたり、引き離そうとするが全く動かない。
「兵法で教わらなかったですか?『我を忘れた兵は死す道進む』と…」
アキラは春蘭の顎に軽い平手を当て、一旦春蘭から離れた。
「クッ!おのれ・・・」
春蘭が再び前に出ようとした途端、急に地面に膝と手を置いてしまった春蘭。
「ど・・・どうゆう事だ・・・体が勝手に・・・」
「顎に衝撃を加えると脳が振動して足に機能障害が起きる…」
そう言ってアキラは雷帝剣を強く握り締め、鞘から離そうとしたその時…
「!?」
一本の矢が飛んできたがアキラ目掛けて飛んできたが、アキラは顔を横にして軽く避けた。そして春蘭を守るように季衣・流琉の二人が前に出た。
「春蘭様!一旦下がりましょう」
「う・・・」
凪が春蘭を担いで後退して、アキラは季衣と流琉を見る。しかし…
「よそ見してもらっては…」
「困るのだ!!」
アキラの左右に愛紗と鈴々が挟むように攻撃しようとしたが、アキラはバックステップで回避した。
「アキラ!本命は後ろだ!!」
「ッ!!」
ミノルの言葉にアキラは後ろを瞬時に振り向くと星が直刀槍『龍牙(りゅうが)』を構えていた。
「貰った!」
だが星の一突きをアキラは瞬時に鞘から剣を出し、突きを防いだ。
「俺も戦わないと!」
そう言ってミノルがアキラの援護に向かおうとした瞬間。
『チリン…』
「!!」
自分の後ろから鈴の音が聞こえ瞬時に後ろを見た。そこには不意を突こうとしている思春と明命がそこにいた。
「クソッ!」
ミノルは二人の剣を炎帝剣で弾いて、前に出ようとしたが。
「貰ったぞ!」
祭がミノルの横に矢を放った。ミノルは剣で矢を弾いた。
「はぁぁ!」
蓮華がミノル目掛けて襲ってきた。
「遅い!」
蓮華の動きを先読みしたミノルの一振りが蓮華の剣を弾いて蓮華が少し足元をたじろぐ。
「孫呉の将一同が俺の相手をするなんてな…」
「うるさい!悪逆董卓に仕えて心が腐ったか!」
蓮華の一言に少しミノルの心が怒りに変わった。ミノルは蓮華に向かって早い斬撃で蓮華を翻弄し、蓮華も剣で防ぐ防戦一方だった。
「どうした…お前はよく吼えるワン公かぁ!!」
そして蓮華はミノルの横薙ぎの一閃で剣を弾き飛ばされ、ミノルは蓮華の顔に剣をつきつける。
「どうだ…心が腐った奴に命を取られそうになる気分は?」
「く…」
「待ちなさい」
ミノルの一言に冷や汗をかく蓮華だったが、蓮華の背後から雪蓮がやって来た。
「呉軍の大将が何のようだ?」
「いえ…ただあなたと戦って見たいだけ、それ以上の理由がいるかしら?」
「フッ…そうだな」
雪連の一言にミノルは少し微笑んだ。
一方アキラは劉備軍の将と曹操軍の将と戦っていた。
「おりゃーーー!!」
季衣の鉄球をアキラは弾いて防ぐが反動で腕が若干震えた。
「隙あり!」
流琉の巨大ヨーヨー?をアキラ目掛けて飛ばすもアキラは回避するも今度は鈴々が攻撃してきた。
「くらえなのだぁ!!」
「チッ!!」
アキラは鈴々の攻撃を弾いて態勢を立て直そうとするも、次は愛紗が向かってきた。
「何故民のために戦う貴方が董卓軍につく!」
愛紗の青龍偃月刀をアキラは雷帝剣で防いで鍔迫り合いになる。
「私も無意味にここにやって来て董卓の首を狙うあなた達の方が疑問に思いますがぁ?」
「我々は洛陽の民を救うために・・・」
「袁紹の嘘について来て戦うあなた達に説得力はない!」
愛紗に蹴りを入れて離れるアキラ。すると…春蘭が愛紗に割って入ってアキラに向かってきた。
「もらったぁ!!」
春蘭の一振りをギリギリで回避したアキラ。だが彼はある事に気づいた。
首にかけていたはずの董卓…月から貰ったあのお守りが無いのだ。
「むっ!何だこれは」
春蘭が拾ったのはアキラが首にかけていたお守りだった。アキラは春蘭が持っていた物に気づいた。
「それを返せ!それは大事な人から貰った…」
「ふん!ならばこうしてくれる!」
春蘭はアキラのお守りをズタズタに切り裂いて落とし、足で踏みつけた。アキラは無言で下を見た。月から貰った…月が自分のために作ったお守りを…
「しかしこれで終わったと思うな!ここからは本気で戦う!覚悟しろ!」
春蘭の一言にアキラはただ黙っていた。
だが…彼女は言ってはいけない言葉と行動をとってしまった…
『ここから本気で戦う』
するとアキラの周りに黒い霧が立ち始めた。アキラの青白い光が黒く変わりはじめ、そのアキラの姿に雪蓮と交戦しているミノルは動きを止め、アキラを見て顔を青ざめた。
「まさか…」
「どうしたの?」
ミノルの異変に雪蓮が疑問に思い、問いかけた。
「アキラ止めろ!!ここでそれは止めろ!!」
ミノルは声を荒げて叫んだ。だがミノルの言葉は既にアキラの耳には入らなかった。いや、アキラ自身が拒絶した。
『SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
アキラの口からとてつもない奇声が発声し、アキラの身に着けている白い鎧が黒くなり、雷帝剣も黒く変色した。
そしてアキラは劉備・曹操軍の将達を見た。
「キサマラノ…スベテノクビヲ…カッテヤロウカァァァァァ!!」
「なっちまった…とうとう…」
ミノルはアキラの姿に絶句してしまった。魔王のミノルすら恐れるアキラのもう一つの姿、黒き雷帝に…