超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ルウィー編 |
目を覚ますと、そこは血と闇が支配した世界だった。
「……ここは」
生々しい匂いがする。足首まで浸かるほどの流血に気が滅入りそうになる。
前を見ても、上を見ても、後ろに振り向いても赤交じりの黒色だけがこの空間を埋め尽くしていた。
決して生物など生きていくことが出来ないここに俺は一度来たことがある。空に関わるなとデペアの姿を見せつけられ釘を刺された場所だ。
心理世界ーーー俺ではない、オリジナルの心の世界。
そういうものだろうと、ここに再度来て感じた。
不安が押し上げる。腕の中で苦しそうに呼吸していたホワイトハート様はどうなった?というか何でここに俺がいるんだ?疑問は疑問しか生まず、足を進めることが出来ずその場で俺は立ち尽くしていました。
そんな時、巨大な闇が蠢いた。
『やほー、久しぶり』
「さっきも話していただろうが、お前の姿を見るのは確かに久しぶりだけど」
面を上げると、巨大な化物が俺を見下ろしていた。
『((天壌の邪悪龍|デスペリア・ベーゼ・ドラゴン))』。下半身は蛇の様で、上半身は胸元に光を映さない真っ黒い宝玉があるのが特徴的だ。背中から生える触手で構成された翼からは気味の悪い液体がいつも落ちている。大木の様に太い四つの腕を地面に置いて、喉まで裂けている口と左に四つ、右に四つ、額に一つ合計九つの禍々しい目が俺を映した。血の臭いと合わさって死体のような腐った臭いが鼻孔を刺激して、鼻を抑える。
「相変わらず好かれる様な姿じゃないな」
『むぅ、ちょっと僕が気にしていること言わないでよ』
醜悪に満ちた姿こそ、こいつの本来の形。魔に墜ちた造形をした汚濁にまみれのデペアが体を上げた。
この世界の上空に対しての限界値は分からないが、こいつの大きさは間違いなく三十メートルは余裕でありそだ。
「外はどうなった?」
『今、君が必死で抑えている状態だね。この世界に時間なんて概念はないから、あっちの世界は止まっているよ』
「なるほどな……っで、どうして俺はここにいる?誰かが呼んだ気がしたが…」
誰かに俺は呼ばれた。というより誰かが呼んだ気がした。
何故ならハードブレイカーの一撃を片手で抑えたないといけない状態で、あの時と同じように力を渇望したら俺はこの世界に招かれた。あの時は一気に意識が無くなったが違う点だが。デペアは、巨体を動かして俺に背を向けて動き出したそれに黙って付いて行った。
そして、そいつはこの空間の中でも分かるほどの漆黒のコートを羽織っていた。
『キャプテン、連れて来たよ』
「お、来たか来たか」
そいつは振り向く、十代後半の子供らしい幼さと大人になろうとしている容姿が見える見栄えのいい顔つき。
その右目は、蒼穹を見るような蒼い色をした瞳だった。
その左目は、真紅を見るような紅い色をした瞳だった。
首元まで伸びた黒交じりの銀髪がそいつの動きに合わせるように動く。
俺と同じ顔で、俺と同じ声で、同じ姿で、『((零崎 紅夜|オリジナル))』はそこにいた。
「うぉ、正にドッペルゲンガーと言うべきか?俺に超そっくり、っていうか正に鏡に映した俺みたいだな!」
面白い物をみたように腹を抱えて爆笑するオリジナル。俺は呆然と口を開いていた。
……なんか、イメージと違う!あの邪神とも仲良さげで、あの空は親友と呼べる仲と聞いていた。だから、もうちょっと凶悪な感じを想像していたのだが、滅茶苦茶口調が軽い。暫くすると笑いすぎたのか息苦しそうにオリジナルを咳を何度かすると、呼吸を整えて真っ直ぐ俺を見た。
「初めてと言うべきかな。零崎 紅夜君?」
「……その名前は元々お前の名前だろ?」
「そんなこと言うなよ。お互いに名前がないと不便だから、とりあえず俺はお前のことを紅夜と呼ぶ。お前は俺のことをオリジナルとか、兄貴とか適当に呼べ」
「……兄貴?」
「なんで疑問形なんだよ。お前は俺を元にして生まれた、だから俺様は兄、貴様は弟だ!」
「……そういうのなら、親じゃないのか?」
「お前のようなデカい息子なんていらねぇ、なにより萌えねぇ」
「酷い!?」
目を細めて耳に指を突っ込んで掻っ穿るオリジナルに思わず泣きそうになった。
なにこの人、この人が俺の元になった人とか信じられないんですけど。さっきから話の流れを独占されているので、俺は頭を振るって真剣な眼差しでオリジナルを見た。それにオリジナルは獰猛な表情へと変わってオッドアイの眼光に思わず足が引く。
「言いたいことは分かるぞ。その目は、もう少しいさせてくださいって目だな」
「貴方が表に出れば、俺は消滅する。俺にはまだやり残したことがあるんだ……だから!」
頭を下げる。相手が狼狽えるのなら、土下座でもなんでもしていい。まだ俺はあいつ等と旅をしたい。一緒に居たいんだ!十年とかそんな長い時間は求めていない、せめてネプテューヌの記憶を取り戻してみんなにお世話になったことをお礼に回ることぐらいの時間が欲しいんだ!
「ん、いいぞ」
「軽!?」
オリジナルは頭を掻きながらため息交じりに答える。
「いやー、お前が外道な殺人鬼とかなら容赦なく入れ替わるけどさ、お前の旅はまだまだこれからだ。それをいきなりリセットどころかシャットダウンするのはあまりに失礼だろう?お前が消える時に悲しみ奴らがこの世界にはたくさんいるんだろう?」
「あぁ、その通りだ」
ーーーそして、あいつ等の笑顔を守るために今の俺には力が必要だ。
「頼む、なんでもいい。ただ今を掴めれる力を俺にくれ!」
「おk」
「」
最早ツッコミを入れるにも躊躇するほどの軽さだ。
「ちょうど((素材|・・))はたくさんあるんだしな」
徐にオリジナルは手を上げると世界に罅が入った。亀裂は轟音と共に大きくなっていき大地を埋め尽くした流血が、天空を染めていた暗黒が混ざり合って世界は白く染まって、オリジナルの手には一冊の本が握られていた。
「それが、((死界魔境法|ネクロノミコン・ディザスター))」
「あぁ、邪神ナイアーラトホテップが手掛けた史上最悪、最恐の魔導書だ。デペア!」
『分かった!』
デペアが口を開くと、そこには様々な光の球が飛び出した。それには、はっきりと女神の気配が感じられた。
紫にはネプテューヌが、黒にはノワールが、緑にはベールが、白にはブランが、白金には空が、暗紫には魔女が、合計六個の光玉がオリジナルの元に集まっていき、差し出された手の中で重なり合っていく。開かれた魔導書からページが飛び出して融合している光玉を覆い隠していく。
「……さて、お前には伝えることが二つ、頼みたいことがある」
先ほどまでのおちゃらけた雰囲気とは別に眼光を鋭く俺を突き刺す。ここで断りを入れた時点で、その手に握る力はもらえないと本能的に察知した俺には頷くしか選択肢はなかった。
「この世界についてとお前のこれからだ」
「この世界?」
「あぁ、この世界は空が色々と弄ったんだろうな。鍵を使った痕跡が幾つか見られる」
魔導書を懐に隠して、オリジナルは口を動かす。
「そもそもお前たちが戦ってきたモンスターと呼ばれる存在ーーーあれは、この世界には存在しなかったものなんだ」
「……ど、どういう意味だ?」
「この世界のモンスターが生まれる場所は、この世界の裏側でそこからこの世界に排出される。この世界の元々のメカリズムだと、モンスターなんて存在が自然発生することはない」
驚愕のあまり口を空けた。モンスターがそもそもこの世界では自然発生することがない?
更にゲイムギョウ界の裏側から、この世界に持ってこられた物とか、そんな女神でも無理そうなことを…
「可笑しいと思ったことは無いか?どれだけ女神が素晴らしい存在でも、それを奉り、崇め、信仰するのは人間だ。生きている以上はどうしても『負』が発生する。なら、その『負』は一体誰が背負うのか、そもそも『負』はどこに行くのか」
分からない。でも、オリジナルの言っている意味は、はっきりと分かる。この世界には光を連想させる神はいても、その対極は存在しないことに
「この世界の裏側で『負』を集めてモンスターを造り、この世界にばら撒く」
「…それに、一体どんな意味があるんだ!」
「女神の株を上げる為だろう」
一瞬、全ての思考が停止した。
「モンスターは人の『負』によって構成された邪悪の塊で、その役目は人間削減と人間に絶望を与え、希望を枯れさせ、希望に縋りつかせることだ。モンスターを圧倒的力で倒せる女神の勇姿と英雄伝を知れば、誰だって女神を神格化させ希望と評価して、人間は女神の存在に永久的な存在の価値を無意識ながら、抱くようになる」
ーーーそうつまり、それは…
「これは、((無限ループ|・・・・・))なんだよ。女神がモンスターを退治して、人間は感謝の代わりに女神を崇拝、信仰して、死んだ人間の負を持って新たなモンスターを生み出して人間に襲わせて新たなモンスターを創るための材料とする。これが、ゲイムギョウ界の円環だ」
オリジナルは寂しげに言った。もう何も俺には分かった。
この因果を作り出したのは、間違いなく空であることを。
「あのバカがしているのは、そのバランス調整……なんだろうな。あいつが裏の世界を管理して、人間が倒せない女神が倒せるモンスターを作り出し続けて、襲わせて倒させる。あいつは、この世界|だけ《・・》を守るために、この世界に住む全ての命を操っている」
ラステイションで空が言っていたことを思い出した。
ーーー僕は((ゲイムギョウ界の味方|・・・・・・・・・・))。
あれは、そういう意味だったのか。あいつにとってその場にある女神も、人間も、モンスターも、等しくこの世界を円滑に進ませるだけの道具でしかなかったのか。この世界の生き物は、あいつが生殺与奪の権利を手にしているんだ。
「世界を滅ぼすのは、いつだってその世界に住む生きる者だ。あいつは人間が嫌いだからな、こういう方法で裏から全てを支配している」
「……それを俺になんとかしろと?」
それにオリジナルはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「容赦なくぶっ飛ばしてやれ。この世界の在り方が間違っているとは俺も正直、はっきりと言える訳じゃない。だけど、あいつがしていることは結局の所、ただのやつあたりだ」
「分かった」
よしとオリジナルは頷く。そういえば、もう一つ伝えないことがあるはずだ。オリジナルは話を切りかえるために一つ咳をすると魔導書のページで覆い隠していた物を差し出した。
結論だけ書く。なにこれ、暗黒オーラしか感じないんですけど
「いやー俺って属性的に『魔』だから、生み出す者も『魔』になるんだよなー」
「罪遺物は?」
「今のお前が使ったら一瞬で精神崩壊するぞ?」
……そうだったな、あの邪神が興奮するほどの凄い代物なんだ。俺が使えるわけがない。実際にリーンボックスではさせるがまま暴走した前例があるんだし。
「俺は、お前の肉体を造るために旅に出かける。お前に上げる力は残念ながら、昔のお前が望んでいた物とは全くの対極だ。俺には、これしか生み出すことが限界だ」
「上等だ」
俺には、それを受け取らないという選択肢はない。
ページが屑となって消える。現れたのは、決して他の色に染めることが出来ないような血のような紅の光。
オリジナルの手から、俺の手に運ばれるそれを掴んだ時、体が崩れ落ちる。立てないほどの重圧が体に圧し掛かる。体が痛い。
「うっ…!?」
まるで体が壊れているようだった/再構築されているようだった。
意識が、思考が、全てがミキサーに入れられてように細かく砕かれて新しい形へと変化していく。
「俺はもう行くよ。デペア、こいつを頼む」
『了解、その本も一緒に持っていくの?』
「罪遺物は封印さえしておけば、暴走しないけど流石にこれは所有者の感情に過激に反応するからな。ま、愛銃のイォマグヌットとアフーム=ザーは置いておくよ。大事に使えよ?」
体中が痺れる。これが代償だ。
これを耐えなければ、この力を使う権利すらない。
千鳥足で、なんとか立ち上がる。オリジナルの背が遠く見えた。
「俺の代わりにーーーあの((バカ|空))を殴ってくれ」
そして、オリジナルは紙くずとなって消えた。
まっ白い世界に罅が入る。この世界の創造主がいなくなったのだから当然の事か。
「ぐ、ッ……」
体を駆け巡る激痛。あっさりと姿を消したバカ兄貴め、もう少しいてくれたら別れの言葉一言くらい言えたのに……!息を整える。体中の神経が痛みに叫んでいても、力が入る。
ガラスが砕けるように崩壊していく世界の中で、初めて会って初めてプレゼントしてもらったこの紅の力を両手で握りしめる。使い方は不思議と頭に思い浮かんだ。
同時にこの力が、どのような物であるのかを理解できた。
あぁ、くそ。本当に昔の俺なら発狂して放り投げたくなるような最悪な力だ。イヴォワール教院長の言葉通りの禍禍しい力だーーーそれでも、
「行ける」
力は在り方でしかない。
どんな邪悪な物であれ、どんな神聖な物であれ、それを使うのは俺の意思だ。
だから、この力は今を守るために、明日を造るために使う。
ーーー世に希望あれば、希望を疎い。
光があれば、きっと近くに闇がある。
ーーー世に絶望あれば、絶望を喰う。
その闇を喰らって、希望を更に輝かせる。
ーーー悪を背負い、負を纏い我は闇を掲げる柱となる。
そして、明日が少しでもいいものであるように願って、アイツらの為に俺は捧げよう。
《((冥獄神化|ブラッディハード))》
さぁ、世界よ。我が悪に糧を奉げろ。
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ヒノサン>空「確かにそうだね。世の中邪神の力使って邪神に立ち向かうおっさんがいるんだし」紅夜「お前が、同感するとは思わなかった」空「けど、ハッキリ言えるのは転じることは出来ない。希望は希望で、絶望は絶望…その本質を変えることは出来ない。だから、力の持ち主がどのように使っても、結局は同じってこと人は見かけで判断することは多いようにね」(燐) ユウザ(R)「そうさ…手にした力が何であれ、どう使うかは使い手次第…『それが絶望を象徴してるのだとしても、転じて希望と成せばいい。』…そんな感じだっけ?」デバッカ「人に聞くなよ!色々と台無しだよ!!」ユR「えーだって何となくで言ったんだもん…」デ「駄目だこりゃ…」(ヒノ) |
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