とある after エンデュミオン
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とある after エンデュミオン

 

 

本文を読むのに特に知らなくてもあまり困らない映画版キャラクター紹介

 

鳴護アリサ:

奇跡の歌姫。ふわふわ髪で柔らかい顔つきの少女で歌うと奇跡が起きる特殊能力の持ち主。

健気で優しくて一生懸命で“暴力的ではない”という理由から当麻からの好感度が高い。

アリサもまた当麻を好いており本人曰く片想い中。将来は夫婦になりたいと思っている。

エンデュミオンの1件の後はとある芸能事務所からプロ歌手としてデビューしている。

 

 

シャットアウラ=セクウェンツィア:

アリサの魂の双子。長い黒髪の美人で容姿はアリサと似ていない。

生粋の苦労人でパイロットの父を事故で亡くした後、見た目幼女に騙され続ける人生を送ってきた。

エンデュミオンの1件でオービット・ポータル社が倒産してしまい無一文で無職に。現在はアリサのマネージャーとして職を得ている。

 

 

レディリー=タングルロード:

外見10歳ほどのゴスロリ金髪ツインテールロリBBA。実年齢は千歳以上。まったく、永遠の小学生は最高だぜ。

死にたくても死ねないのでカーズさまのように考えるのを止めたかったが、そこまで悟りきれてもいない。

エンデュミオンの1件の後、世間さまに顔見世できない立場になってアリサの部屋の押し入れに棲み着いている。

 

 

上条さん:

奇跡のラッキースケベ使い。美少女の裸を本能で察知してその空間に足を無意識に踏み入れられる超超能力を有している。

当然の如くしてアリサの裸も拝見している。

ちなみにこの時の1件が元でアリサは当麻の所にお嫁入りをしようと決意を固めた。

 

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1 奇跡を信じない少女

 

「アリサ。レコーディングご苦労さまです」

 鳴護アリサは新曲CDの収録を終えてスタジオから出てきた。すると、長い黒髪に黒いスーツ姿の精悍な顔立ちをした少女が出迎えてくれているのが見えた。

「シャッちゃん。お出迎えありがとう♪」

 アリサは少女を見ながら柔らかく微笑む。マネージャーを務めてくれている彼女は常に的確なタイミングで現れてくれるので心の清涼剤となっている。

「シャッちゃんは止めろと何度も言っているはずですが?」

 一方でマネージャー少女の眉はピクピクと小刻みに震えている。

「シャットアウラちゃんって長くて言いにくいんだもん。それにニックネームの方が親しみが篭っている気がするし」

「シャットアウラと呼び捨てにしてくれれば結構です」

「じゃあ……シャアちゃん?」

 アリサはシャットアウラの話をスルーして首を傾げた。

「私のイメージカラーは黒です。赤い彗星とは相入れません。強いて言うなら黒い三連星の方が良いです」

「赤い彗星と黒い三連星って何?」

「それは…………いえ、何でもありません」

 シャットアウラはアリサから気まずそうに顔を逸らした。その顔はこれ以上この話題について触れるなと雄弁に物語っていた。

 

「じゃあ……今日のこの後のスケジュールはどうなっているのか教えて」

 アリサはシャットアウラの深い深い暗部には触れずに話題を換えた。

「少々お待ちください」

 シャットアウラはスーツのポケットから手帳を取り出して予定を確かめる。

「本日の予定はこのレコーディングが最後ですね。次は明日午前10時からのラジオの収録となります」

「それじゃあ今日はもうオフなんだね♪」

 アリサは笑顔に花を咲かせた。

「はい。収録も予定より早く終わりましたので空き時間はご自由にお使いください」

 アリサは時計を見て現在の時刻を確かめる。

「午後3時……これから当麻くんの所に行けばいっぱい遊べるよね♪」

 アリサの頬が緩む。

「上条当麻と……デート、ですか?」

 シャットアウラの表情が歪んでムッとしたものになる。

「でっ、デートじゃないよぉ」

 アリサの顔は真っ赤に染まっている。可愛く照れている。

「だってあたしが一方的に当麻くんのこと好きなだけなんだから。片想いなんだからデートとは言えないよぉ」

「つまり、アリサと上条当麻が両想いであればデートと呼ぶような時間の過ごし方をしたい。アリサはそう言いたいのだな?」

 シャットアウラのマネージャーモードの敬語口調がなくなって乱暴な喋り方に変わる。不機嫌丸出し。

「ま、まあ……平たく言えば……当麻くんと……デートしたいなぁ」

 アリサは真っ赤になったまま小さく頷いた。

 

「私には分からない。何故、あの男にそれほどまでに入れ込む? アイドル歌手として大成できるか否か。今が大事な時期なのはアリサとて分かっているのだろう?」

「…………好きになっちゃったんだもん。仕方ないよ」

 真っ赤になって照れているものの、アリサに自分の考えを変えるつもりはない。

「上条当麻の実直さ、不屈の闘志は私も買っている。実際に私も彼に救われた。だが、アリサが己の芸能人生を危うくしてまで惚れ込むような男とも思えんのだが?」

「う〜ん」

 アリサは首を捻りながら唸った。

「私が当麻くんを最初に男の子として意識するようになったのはそんなロマンチックなことじゃないよ」

「というと?」

「偶然当麻くんにあたしの裸を見られちゃったから。あれから……当麻くんを男の子として強く意識するようになって……どんどん好きになっていって……いつか当麻くんの所にお嫁にいけたらいいなって強く願うようになったの」

 アリサは照れ顔を見せた。

 当麻の部屋でインデックスと2人で裸でいた所を当麻に見られてしまった。その時のことを思い出すと今でも全身が茹で上がってしまいそうなぐらいに恥ずかしい。

 その際当麻に対してはインデックスが即座に盛大な噛み付きお仕置きを実行した。だからアリサ自身は曖昧にその件を流した。けれど、大きな分岐点には違いなかった。

「鳴護家の家訓には初めて肌を晒した男性の元へ嫁げってあるの。だからあたし当麻くんの所に……」

「鳴護アリサという名前は、記憶を無くした貴方が施設で付けられた名前だったと記憶しているが?」

「だから鳴護家の家訓はあたしが当麻くんに裸を見られた際に作ったんだよ♪ だから……いつか当麻くんの所にお嫁に行けたら良いなあって」

 アリサは微笑しながら照れている。対するシャットアウラの不機嫌ぶりは急上昇中。

「当麻くんは奇跡のラッキースケベ使いであたしの運命の王子さまだから……」

「私は奇跡を信じないっ!」

 当麻への熱を上げていくアリサの声をシャットアウラは怒声で打ち消した。

 

「シャッちゃん? どうしたの?」

 驚きの声を上げるアリサ。そんな彼女にシャットアウラの険しい視線が飛ばされてきた。

「偶然の結果がたまたまその方向に向いただけだ。あるのは量子力学的な偶然の偏差と都合の良い結果を求める人の歪な欲望だけだ。人は怠惰で愚かだ。都合の良い見えざる手なぞ存在しないっ!」

 シャットアウラは父親を亡くし自身も障害を負った事件以降強く抱くようになった信念を口にする。

「でも、シャッちゃんはあたしや当麻くんと和解した際に奇跡を信じてくれたんじゃ?」

「それはそれ。これはこれだっ!」

 シャットアウラはジャイアニズムな理屈を展開した。

「大体、奇跡のラッキースケベ使いだと? そんな奇跡が存在するものか!」

「そう言えば当麻くんに初めて会った時も……偶然とはいえ、押し倒されて胸を揉まれちゃったなあ。今思い出してもは、恥ずかしいよぉ」

 初めて出会った時のことを思い出してアリサの全身がまた茹で上がる。思えば当麻とは出会った時から恥ずかしい体験ばかりしている。

「そらみろっ! それは偶然でも奇跡でもない!」

「偶然でないって?」

 アリサは首を傾げた。

「押し倒されたのも、裸を覗かれたのも全ては上条当麻の策略だっ! 全ては仕組まれたことだったのだ」

 シャットアウラはアリサを指差ししながらキッパリと言い切った。

「えええっ?」

 目を丸くして驚くアリサ。

「上条当麻は可憐なアリサを初めて見た瞬間から邪な感情を抱いていた。そして偶然を装いながらその邪悪な欲望をアリサにぶつけたのだ!」

「じゃあ、シャッちゃんの考えだと当麻くんは……」

「上条当麻は偶然を装ってわざとアリサを押し倒し、その裸身を覗き見たのだっ!」

 シャットアウラの強い口調にアリサの体が震える。

「当麻くんがそんな人には見えないけどなあ……」

 けれどアリサはシャットアウラの考えには同意できない。

「紳士のフリをしていても男はみんなオオカミなのだっ! ……パパ以外」

 シャットアウラは小声で付け加えた。

「そんなこと言って……シャッちゃんって男の人と付き合ったことあるの?」

 アリサはちょっと面白くないものを感じながら目を細めて尋ねた。

「ないっ」

 シャットアウラは躊躇なく言い切った。

「手を繋いだこともないの?」

「負傷した上条当麻を運ぶ際に肩を貸したことならある。あれは腕を組んで歩くことの亜種と呼べるかもしれんな……」

 言いながらシャットアウラの頬に微かに赤みが刺していく。

「ふ〜ん。シャッちゃんって、当麻くんと仲がいいんだねぇ。腕を組んで歩くなんてあたしもあんまりしたことないのに。いいなぁ〜」

 今度はアリサの不機嫌指数が上昇していく。

「私と上条当麻は別に仲良くなどないっ! 単に戦場で命を預けて共闘したり助けられたりしたことがあるだけで……」

 反対にシャットアウラの声は段々と小さくなっていく。頬の赤みが増していく。

「当麻くんに命を預ける……シャッちゃんはあたしよりも深いレベルで当麻くんと繋がってるんだね。へぇ〜」

 アリサの頬が膨れた。

 

「じゃあさあ……当麻くんがあたしの裸を見たのがわざとだって言うシャッちゃんの話。信じてもいいよ」

 アリサはムスっとした表情のままシャットアウラの先ほどの説に同意してみせた。

「おお。分かってくれたか」

 シャットアウラの表情が一変して上機嫌なものとなる。

「ならば、アリサに不埒なことを企むあの男のことは一刻も早く忘れて歌手活動に専念を……」

「当麻くんがあたしにわざとエッチなことをしたのなら……その責任を男の人としてちゃんと取ってもらわなくっちゃね♪」

 今度はアリサがシャットアウラの話を途中で打ち切る番だった。

「アリ、サ……?」

「当麻くんには裸見られちゃったんだもん。鳴護家の家訓のこともあるし……男らしく責任を取ってもらって当麻くんのお嫁さんにしてもらうんだから♪」

 アリサは照れ笑いを浮かべながら全身を赤く染めた。

「なあっ!?」

 シャットアウラは言葉に詰まっている。

「当麻くんがわざと悪いことをしたのなら……罪は償ってもらわなくちゃだよね♪」

 アリサはとても嬉しそう。

「ならば私は奇跡を信じるっ!」

 シャットアウラは大声で叫びながら自分の意見を180度転換した。

「上条当麻がアリサの裸を覗いたことは偶然が幾つも折り重なった産物。故に男として責任を取らなければならないような過失は存在しないっ! よってアリサの嫁入りは却下だ」

 アリサはしばらくの間呆気に取られながらシャットアウラを見ていた。しかし、やがて笑顔を作ってみせた。

「なら、あたしと当麻くんの出会いは奇跡の巡り合わせだったということで。だからあたしたちは結ばれる運命にある……」

「私は奇跡を信じないっ!」

「じゃあ、当麻くんには男らしく責任を取ってもらってあたしをお嫁さんに……」

「私は奇跡を信じるっ!」

「なら、奇跡という名の運命に導かれてあたしと当麻くんは永遠に結ばれ……」

「私は奇跡を信じないっ!」

 

 2人のやり取りはうるさいからとスタジオを追い出されるまで続いた。

 

 

 了

 

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2 姉と妹

 

「そう言えばシャッちゃんってどうして日本で働いてるの?」

 上条当麻が通う学校へとタクシーで移動中、アリサはふと思い付いた疑問を尋ねた。

「どうして、とは?」

 シャットアウラは首を傾げた。

「シャッちゃんって、名前から判断すると外国人さんなんだよね? だから、日本で働くのって大変じゃないかと思って」

「ああ。そういうことですか」

 シャットアウラは小さく頷いてみせた。

「確かに私はシャットアウラ=セクウェンツィアという名で通しています。ですが、日本国籍を持っていますよ」

「そうなの?」

「ええ。母が日本人ですので。この髪も瞳の色も母譲りのものです」

「そうだったんだ。全然知らなかったよ」

 アリサは目を丸くした。

「私のフルネームはシャットアウラ=田中=セクウェンツィア=花子となります」

「花子ちゃんなんだ……」

 アリサは表情を微妙に引き攣らせた。

「はい。ですが、あのロリBBA社長がイメージが狂うからとシャットアウラ=セクウェンツィアで行くことになりました。アリサも私のことはシャットアウラとお呼びください」

「じゃあ、今まで通りにシャッちゃんって呼ぶね♪」

「だからシャッちゃんは止めてください」

「うん。分かったよ。シャッちゃん♪」

 アリサはシャットアウラの話を聞かない。天然という名のゴーイング・マイ・ウェイ。だけど天使だから許されるのは仕方ない。だって天使だから。

 

「じゃあ、シャッちゃんのお母さんってどんな人?」

 シャットアウラの家族について興味が出たアリサがキラキラした瞳で質問を続ける。

「どんな人と言われましても……普通のパートタイマー主婦ですが」

 説明に困ったシャットアウラは苦慮しながら答えた。

「シャッちゃんの口から普通って言葉が出ると何かとっても新鮮だね♪」

 アリサは小さく微笑んでみせた。

「それは遠回しに私が普通ではないと? 異常だと?」

「シャッちゃんって、戦場にいるのがいつも当たり前みたいな雰囲気があるから。お母さんも案外、伝説の凄腕スナイパーだったりするんじゃないの?」

「…………スーパーでレジ打ちしてます」

 シャットアウラは脱力しながら黄昏た。

「私はアリサにそんな危険人物として認識されているのですね……」

 シャットアウラの目が死んでいる。

「違うよぉ。格好いいって思ってるんだから」

「所詮私は暴力以外で何かを解決できない女です。逆恨みも酷いですし……」

 シャットアウラの憂鬱は簡単に取り除けそうにない。

 

「えっと、じゃあじゃあ……シャッちゃんって兄弟や姉妹はいるの?」

 アリサは話題を変えることにした。

「兄弟っ!?」

 シャットアウラの体が大きく跳ね上がった。

 アリサは内心でまた地雷を踏んだかも知れないと冷や汗を流す。けれど、1度振った話題を急に取り下げるのも変な話だと思った。何より好奇心が勝った。

「シャッちゃんってお兄さんがいるの?」

 シャットアウラの反応から予測できる人物を挙げてみる。

「何故それをっ!?」

 シャットアウラは飛び上がって反応してみせた。図星に違いなかった。

「……お兄さんがいるなんて羨ましいなあ」

 天涯孤独の身として施設で過ごしてきたアリサ。彼女にとって血を分けた家族がいるのは羨ましいことだった。

「アリ、サ……?」

 二昔前のロボットのようにぎこちない仕草で首を回してシャットアウラがアリサの瞳を覗き込んでくる。天涯孤独の身であるアリサ。父を事故で亡くし悲しい想いをしたシャットアウラとでは家族に対する捉え方が大きく異なっている。

「シャッちゃんのお兄さんって、どんな人?」

「なぁああああああああぁっ!?」

 シャットアウラは今日一番大きく飛び上がった。

「大学生? それとも社会人なのかな?」

「そ、それは…………」

 シャットアウラの体がシート深くに沈んだ。顔が俯き真っ黒なオーラが全身から放たれている。しばらく沈黙した後、沈痛な声で呟いた。

「…………Not in Education, Employment or Training」

 何故か英語で長たらしく答えた。

「えっ? それって、ニー……」

「略すのは禁止ですッ!」

 シャットアウラは叫んだ。

「う、うん。分かったよ」

 コクコクと機械的に頷いてみせるアリサ。今のシャットアウラには逆らえない重みを感じてしまう。

「私が義務教育課程の年齢から黒鴉部隊に入隊して働いていた理由。それは……兄という反面教師がいたからです。兄のようになりたくはなかったからですっ!」

 シャットアウラは開き直るようにして背を起こした。

「そう……なんだ……」

 アリサには同意すべきなのか笑うべき箇所なのかも分からない。ただ、シャットアウラの放つ負の雰囲気に圧倒されるのみ。

 

「兄が更正して職に就く……そんな奇跡はあり得ません。絶対にです。だから私は奇跡を否定しますっ!」

「それは確かに奇跡で解決する問題じゃないよね」

 アリサは冷や汗が流れっ放しで止まらない。

「シャッちゃんがお兄さんとよく話し合ってみるのはどうかな? 兄妹なんだし」

 現実的と思われる対応策を提示してみる。

「兄は引き篭もりのヘビーオタで部屋から出てきません。故に私とまともに話し合うこともありません」

 シャットアウラは静かに首を横に振る。

「じゃ、じゃあ、そういう人に対しては、一応アイドルに分類されるはずの私が働くように説得してみるのはどうかな? もしかすると働いてくれるかも」

「アレは二次元専門です。三次元のアリサが面会に行った所で説得はおろか部屋の扉を開くこともしないでしょう」

 シャットアウラは再び首を静かに横に振った。

「そ、それは困ったねぇ……」

 アリサは必死になって笑顔を作る。他にどうしたら良いのか分からない。

「しかも兄は恐ろしい精神汚染を放ってくるのです……」

「えっ? お兄さんって能力者だったんだね」

「いいえ、違います」

 シャットアウラが3度首を横に振る。

「ですが、兄に対して無防備に接触を試みた結果……私も重度のアニオタに……いえ、何でもありません」

 シャットアウラは目を固く瞑ってソファーに深く埋まる。

「……奇跡などあり得ない。それは父と兄が証明してくれたのです」

 そして疲れたように口から息を吐き出した。

 

「シャッちゃんのご家庭も色々大変なんだね」

 アリサは居た堪れなくなって車外を見る。第七学区、当麻の通う学校の近くまでタクシーは来ていた。当麻と何度か寄ったことがある公園の前を車が走り抜けていく。

「あっ」

 常盤台の制服を少女が2人、園内にいるのが見えた。茶の入った短髪の少女にアリサは見覚えがあった。

「運転手さん。ここで降ろしてください」

 アリサは声を張り上げて降車を訴えた。

 タクシーが減速して公園を少し通り過ぎた所で止まる。

 アリサは代金を支払うと急いでタクシーを降りていった。

 

「一体どうしたのですか? 高校まではまだ少しありますが」

 小走りするアリサの後ろに付いていくシャットアウラが周囲を警戒しながら尋ねた。

「美琴ちゃんと美琴ちゃんに瓜二つにそっくりな子がいたの」

「美琴ちゃん?」

 シャットアウラが目を瞑りながら考える。

「ああ。学園都市レベル5序列第3位の御坂美琴のことですね」

「そうそう。その美琴ちゃん」

 アリサは公園のゲートを潜って中へと入っていく。

「そしてあのそっくりな子は姉妹……双子じゃないかなって思うの」

 アリサは良いとは言えない運動神経を駆使しながら美琴たちへと近づいて行く。

「美琴ちゃんに姉妹がいるって話を聞いたことがないから。面白そうだなあって思って」

「そういう興味本位で他人様の家の事情を嗅ぎ回るのは感心できませんよ」

 シャットアウラの口からため息が漏れ出る。

「あたしと美琴ちゃんはお友達同士だからいいの♪」

 アリサは速度を上げて美琴へと近付いていく。そして手近な植え込みの中へと隠れた。

「何故隠れるのです?」

 アリサと同じように植え込みの奥へと移動してきたシャットアウラが首を傾げた。

「その方が面白いから♪」

「アリサはもっとプロの歌手としての自覚を持ってください」

 シャットアウラの口からため息がまた漏れ出た。彼女の気苦労が絶えることはない。

「まあまあまあ。学園都市のスーパーアイドル美琴ちゃんの秘密のトークを覗いちゃおう♪」

「普通なら貴方の方がスクープされる立場であるというのに……」

 結局今更出て行くわけにもいかず、シャットアウラも聞き耳を立てることにした。

 

『アンタさ、最近調子はどうなの?』

『どう、と言われてもそれだけでは返答しかねます。と、ミサカはお姉さまの質問が抽象的過ぎて首を傾げます』

『いや、体の調子とか居住環境とかそういうの』

『そういうことでしたらすこぶる順調です。と、ミサカは平穏な人生を送っていることを明らかにします』

 

「やっぱり、2人は何か特別な事情で離れ離れになっている双子の姉妹なんだね」

「そうですね。何故妹の方も常盤台の制服姿なのかは謎ですが」

 笑顔を見せるアリサと違和感が拭い去れない表情を見せるシャットアウラ。

 

『お姉さまの方こそ体調は大丈夫ですか?』

『実はあんまり良くないのよねぇ。力が沸かないっていうか、気怠い感じに包まれているっていうかさあ。そのせいで休日もあんまり寮から出ないのよねえ』

『ストレスが溜まっているのでしょうか? と、ミサカは真摯な妹を演じながら尋ねます』

『ストレスってことなら、当麻に会えない現状の方がイライラするから……とにかく、気だるさにストレス感じてるわよ。せっかく、妹達から栄養ドリンクまでもらってるのにさ』

『だるさで上条当麻さんに会えていない。それは辛いですね。と、ミサカは内心で計画通りとほくそ笑みながら表面上は姉を気遣うフリをします』

 

「姉妹っていいよねぇ。本当に仲良さそうで羨ましいなあ♪」

「そうですか? 私には妹の黒さが全開に見える痛々しい場面に見えますが?」

 アリサとシャットアウラでは美琴とその妹の姉妹仲に対する感想が違っている。家族への憧れが強いアリサと兄への幻滅を抱いているシャットアウラの違いでもある。

「あたしも姉妹欲しいなあ」

 アリサはシャットアウラの顔をジッと眺める。

「そう言えばあたしとシャッちゃんって、姉妹ってことになるのかなあ?」

 アリサは首を傾げた。

「まあ、そういうことになるんじゃないでしょうか? 元は同じなんですし」

 シャットアウラは自信なさ気に同意してみせた。

「そっかぁ。あたしとシャッちゃんって姉妹なんだね。うん♪」

 何度も首を縦に振るアリサはとても嬉しそう。

「…………でも」

 アリサの表情が急に曇る。

「あたしとシャッちゃんって全然似てないよね。姉妹なのにどうしてだろう?」

「それは確かに変ですよね」

 シャットアウラはアリサを改めて眺める。赤毛の混じったふわふわな髪。柔らかい印象を与える可愛い系の顔。鋭利で大人っぽい印象のシャットアウラとはまるで異なる印象。

「あたしって一体誰に似たんだろう?」

 首を捻るアリサ。その時シャットアウラの脳裏に過去の光景が蘇る。

「そう言えば、私……父の生前に貴方とそっくりな人物を目撃したことがあります」

「ほんと? どこで?」

 アリサは表情を輝かせる。

「直接に出会ったのではなく、パソコンのモニターの中で……あっ」

 途中まで喋った所でシャットアウラの表情が驚愕のモノへと変わる。

「誰なの? シャッちゃんの親戚? それとも有名人?」

「有名人……ですね。ヒロインとでも申しましょうか……」

 シャットアウラの歯切れは悪い。

「へぇ〜。で、具体的に誰なの?」

 好奇心を抑えられないアリサ。そんなアリサが眩しすぎて黙っていることもできない。

「それは、当時兄が愛好していたエロゲーのヒロイ……ではなく、具体的には思い出せません。何せ5年ほど昔のまだ幼い頃のことですので」

 シャットアウラは真相は死ぬまで自分の胸の内だけに閉まっておこうと決意する。そして同時に兄とアリサを絶対に会わせていけないとも。何を口走られるか分からない。

「そっかぁ〜残念だなあ」

 唇を尖らせるアリサ。

「でも、アタシのこの身体のオリジナルと言える人がいるのなら……いつか会ってお話してみたいなあ」

「それは、難しいと思います」

 シャットアウラは冷や汗を垂らしながら答える。

「だよねえ。具体的には誰なのか分からないんだもんね」

「はい………………それに、次元が違うので会話は難しいと思います」

 シャットアウラは目を逸らした。

「でも、あたしにはシャッちゃんっていう素敵な姉妹がいるから寂しくないよ♪」

 アリサはシャットアウラに抱きついた。

「アリサ……」

 シャットアウラの中に温かいものが広がっていく。同時に嘘をついている心苦しさも広がっていく。けれど、アリサの優しい笑みを見ていると決意が新たに湧き上がる。

「……私は貴方の笑顔を守りますよ」

「えっ? 今なんて?」

 シャットアウラは答えを返さなかった。

 

『ちょっと悪いんだけど、飲み物とお菓子買ってきてくれない? だるくってさ』

『何故私が? と、ミサカは面倒臭いという本音を隠しながら聞き返します』

『いや、アンタ妹じゃない。妹ってのは姉の言うことを何でも従って聞く存在でしょ』

『この元一人っ子は歪んだ姉妹観を持ちまくってますね。と、ミサカはお姉さまを白い目で見ます』

 

「ねえ……」

 アリサの表情が引き締まる。

「何でしょう?」

「あたしとシャッちゃんって、どっちがお姉ちゃんなのかな?」

「はあ?」

 シャットアウラは脱力するしかなかった。

「だって魂の姉妹ってことは、お姉ちゃんと妹がいるわけじゃない」

「別に、そんな深く考えなくても……」

「ダメ! 大事なことなの」

 アリサは鼻息を荒くしてシャットアウラに詰め寄る。

「あたし……シャッちゃんを妹にしていっぱいいっぱい可愛がりたいっ!」

 アリサは小さくガッツポーズを作って意気込みを表現した。

「…………そういうのは私のキャラではないのでお断りします」

 シャットアウラはアリサの瞳の輝きに危険なものを感じる。

着せ替え人形として原色派手派手でふりふりな服を着せられたり、愛玩犬や猫のようにベタベタ可愛がられる自分が想像できた。

「それに、順番から言えば私が元でアリサは派生になります。故に姉は私の方です」

「えぇええええぇっ!?」

 アリサは不満の声を上げる。

「そして姉の言うことは絶対らしいので、妹のアリサにはこれからは脇目もふらずにプロ歌手活動に専念していただきます。上条当麻に会うのも控えてください」

「横暴横暴だよぉ」

「姉の言うことは絶対です」

 シャットアウラはアリサの不満を無視する。

 

『では、渋々パシリに行きますのでお金をください。姉とは妹のために無条件で財布を開く者にのみ与えられる称号です』

『分かったわよ。好きなだけ持って行きなさいっての。ついでにアンタの好きなものも買ってきていいわ』

『ごっつあんです』

 

 美琴は財布を開いて10万円金貨を何枚も妹に渡した。

「シャッちゃんって、お金持っているっけ?」

 アリサの質問にシャットアウラが顔を背ける。

「オービット・ポータル社倒産の際に色々ありましたから……」

 会社が倒産した際に、シャットアウラもエンデュミオンの1件での独断行動の責任を問われて財産没収。無一文の状態で放り出された。

 路頭に迷っている所をアリサに拾われて現在のマネージャー職に落ち着いた。

とはいえ、正規職として就職しているわけでもなく、給料は雀の涙ほど。最低限の衣食住を保っているのがやっとの状態だった。だから彼女は述べた。

「アリサお姉さま」

 妹のために開ける財布などシャットアウラの懐事情では存在しなかった。

「お姉さまよりもお姉ちゃんって呼んで欲しいな♪」

 こうしてアリサはシャットアウラという妹を得ることになったのだった。

 

 了

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3 アイドルとスキャンダル

 

 シャットアウラはアリサを連れて上条当麻の通う学校の前へと到着した。

「いいですか、アリサ」

 路地から今にも全力で飛び出していきそうなアリサの右肩を捕まえて訴え掛ける。

「上条当麻に会えるのが嬉しいのという気持ちは分かります。しかし、貴方は世界が注目するトップアーティストだということを忘れないでください」

「うん。プロらしく当麻くんに全心全力でぶつかるね」

 シャットアウラの顔も見ずに頷いてみせるアリサ。

「全然分かってません」

 シャットアウラはアリサの両肩を抑えて体を抑え込む。

「アリサが羽目を外してスキャンダルに発展したらどうするのですか? 最悪、芸能界を引退に追い込まれますよ」

 アリサに脅しを掛けて自制を求める。しかし──

「歌手を引退することになったら、当麻くんのお嫁さんにしてもらえるようにもっともっと頑張らないとね♪」

 恋する乙女モードになってしまっているアリサにはまるで効果がない。

「…………マスメディアは私が影からできる限り排除します。ですがアリサは自分がトップアイドルなのだという自覚を忘れないようにしてください」

 シャットアウラはアリサを説得することを諦めた。代わりに特殊部隊で培ったスキルでアリサをスキャンダルの魔の手から守ることを選ぶ。

「うん。大丈夫だよ♪ あたしが当麻くんのことを一方的に好きなだけだもん。だからスキャンダルにはならないよ」

 嬉しそうに自らの安全性を訴えるアリサ。

「分かりました。上条当麻と過ごす時間が歌手ARISAをより輝かせるものとなるのなら……どうぞ楽しんできてください」

 シャットアウラはアリサの肩から手を退けた。

「じゃあ、行ってきま〜す♪」

 アリサは勢いよく飛び出していった。

 

「アリサにも困ったものですね」

 シャットアウラは駆けていくアリサの背中を見ながら大きく息を吐き出した。

「そう言えば……アリサと上条当麻がどんな関係なのか私はよく知りませんね」

 アリサからは片想いであるということ以外、2人がどんな風に接しているのか聞かされたことがない。

「ただの友達なのか。それとも友達以上恋人未満の関係なのか。少し、気になりますね」

 シャットアウラは同世代の少女たちに比べて自分が恋愛に興味が薄いことを自覚している。けれど、全く興味がないわけでもない。ましてや対象がアリサならなおさらのことだった。

「さて、アリサが妙な行動を起こさないためにもここで見張らせてもらいますか」

 シャットアウラは影からアリサを見守り始める。

 

『当麻く〜〜ん♪』

 アリサは大声を上げて大きく右手を振りながら学校の正門へと駆けていく。その先には上条当麻と金髪、青髪の男子高校生の姿があった。周囲には他の生徒の姿はない。

『かみや〜ん。愛しの奥さんが迎えに来たんだにゃ〜』

 一番早くアリサの存在に気付いたのは金髪のガタイの良い生徒だった。

「えっ? 愛しの奥さん?」

 シャットアウラは聞き間違いかと思った。そう思いたかった。何しろ、その言葉はアリサから聞かされている情報と全くの不一致なのだから。

『こんなに綺麗で優しくて健気で、おまけに世界的歌姫がラブラブ奥さんだなんて上やんがホンマ羨ましいですわ』

 青髪の男が金髪の少年の話に続く。

「ラブラブ奥さん?」

 シャットアウラの表情が引き攣る。アリサの片想い発言と少年たちの口から飛び出す単語が違いすぎる。どうなっているのか分からない。

『もぉ〜。土御門くんも青髪くんもからかわないでよぉ』

 アリサが2人の少年の言葉に反論した。

「やはり、アリサと上条当麻は友達以上恋人未満の仲なのですね」

 世界的アイドルの自制を効かした一言にホッとする。

『当麻くんとはまだ籍を入れてないんだもん。奥さんって呼ばれるのは当麻くんの正式なお嫁さんになってからでいいよぉ』

 アリサは両手を頬に付けながら照れてみせた。

「何ですか、それ? 片想いじゃなかったんですか? どうなっているんですか、上条当麻っ!?」

 シャットアウラは怒りの矛先をアリサではなく当麻へと向けた。

『俺はまだ16歳だから……後2年、アリサを嫁にもらうことはできないさ』

 当麻は優しくも精悍な表情でアリサに告げる。

『うん。だから後2年、いい子にして待ってるから。当麻くんが結婚できる年齢になったらお嫁にもらってね』

 アリサも普段は見せない大人っぽい表情で当麻を見つめ返す。

 やがて2人の顔の間の距離が縮まり──2人の唇が重なった。

「なっ!? キスっ!?」

 シャットアウラは生まれて初めて生キスの現場を目撃してしまい言葉を失った。

 しかもそのカップルがアリサと当麻だったのだから。

『はぁ〜今日もまた人目もはばからずにチュッチュチュッチュと。この夫婦には少し自重して欲しいんだにゃ〜』

『独りもんのボクには毎度目に毒な光景でっせぇ』

 金髪と青髪の少年は呆れながら2人のキスを見ている。しかもその言葉の内容から、アリサと当麻が何度も、しかも人目のある所でキスする仲であることが見て取れる。

「…………片想いは? スキャンダルは?」

 恋愛経験0のシャットアウラにとって目の前の光景、そして金青髪の少年の語る言葉は刺激が強すぎた。

目の前がグルグル回って見える。戦闘中にどんなに激しい動きをしてもこんな風に三半規管が乱れたことはない。

 

 アリサと当麻はタップリ30秒はキスをした後にゆっくりと顔を離した。

『当麻くん……大好き……っ』

 PVの撮影中でさえも見せたことがないアリサの艶っぽい表情。シャットアウラの恋愛に関する少ないボキャブラリーに従えばそれは“女の貌”だった。

『俺も愛してるよ、アリサ』

 当麻もまた普段のジミメンに美化補正300%が掛かったイケメンを発揮しながらアリサに愛を誓っている。

「疑う余地がなく……両想いではないかぁっ!!」

 シャットアウラの敬語が崩れた。

「何が片想いだ。アリサよ、私に嘘をついていたと言うのか?」

 シャットアウラの内面は腹立たしい気持ちでいっぱいになる。アリサに騙されたという想いは彼女を深く傷つけている。

『そう言えば当麻くん……昨日メールくれなかったよね?』

 アリサの喋り方の風向きが変わる。急に冷たい声になった。

『あっ、いやっ。それは。だって……シャットアウラにバレたらマズいからメールも頻繁にしちゃダメだってアリサが言ってるだろ』

 当麻はイケメン美化を解いて焦りまくっている。

『そうだけど……昨日、当麻くんから連絡がもらえなくて。あたし、昨夜は寂しくてずっと泣いちゃったんだよ』

 アリサが今にも泣き出してしまいそうな瞳で当麻を上目遣いに見る。

『当麻くんは本当はあたしのことが好きなんかじゃなくて……あたしの片想いに過ぎないんじゃないかって』

 アリサの双眸からポロポロと光る雫が零れ落ちていく。

『そんなことはないっ! 俺は世界で一番アリサのことが大好きだ。愛しているっ!』

 当麻は涙を流すアリサを正面から抱きしめた。

『当麻くんが……キスしてくれたら信じられるよ……あたしは世界で一番幸せな女の子だって』

『なら、何度だってキスするさっ! アリサが俺の愛を疑わなくなるまで!』

 当麻はアリサの顔を手で持ち上げるとやや強引にその唇を奪った。先ほどよりも更に激しいキスが交わされている。

「片想い……つまりは惚気のことかぁあああああああああああぁっ!!」

 アリサが今まで何度も使ってきた片想いの言葉の正体を知ってシャットアウラはプチ切れた。

 何のことはない。恋人に構ってもらえないことへの寂しさを片想いと表現していただけのこと。完璧にバカップルの思考だった。

「あのバカップルどもめぇ〜〜っ!」

 愛し合う2人を見ていると怒りが湧き出て止まない。トップアイドルの自覚が足りないアリサが腹立たしい。アリサを骨抜きにしてしまった当麻が腹立たしい。

 そして、当麻がキスをしている相手が自分ではなくアリサだというのが腹立たしくて仕方ない。

「うん? 今私は一体何を考えた?」

 自分が何に対して腹を立てているのか分からなくなって戸惑う。

 その時だった。

 

「敵襲かっ!?」

 シャットアウラは敵の接近を気配で感じ取った。特殊部隊に配属され長年最前線での戦いを経験してきた彼女は五感に頼らずとも悪意を持つ対象の接近を察知できる。

「こんな時に厄介なっ!」

 舌打ちを奏でながらも瞬時にして戦闘モードに移行する。スーツを脱ぎ捨て黒いボディースーツ姿を披露する。

 無一文にされたシャットアウラが唯一会社からこっそりと持ち出した支給品。それが駆動鎧の技術を応用して作られた特注のボディースーツだった。

 ボディースーツの身体強化機能を利用し、常人では出しえない高速で移動しながら敵の正体の把握に努める。

「この近くでスクープの匂いがするんだなあ」

 大きなカメラを手に持った小太りの男が当麻の学校のすぐ近くまで来ているのが見えた。

「あれは西スポの芸能記者。今のアリサを絶対に見られるわけにはいかないっ!」

 シャットアウラは走りながら地面に放置されている空き缶を拾う。大きく弧を描きながら新聞記者の斜め後方へと位置取り持っていた空き缶をカメラに向かってぶん投げた。

 身体強化された身体から放たれた空き缶はプロ野球の投手の球よりも速い剛速球と化してカメラに直撃する。カメラのレンズを粉々に破壊して学校の敷地内へと飛んでいった。

「なっ!? 突然カメラが壊れたぁああああああぁっ!?」

 男の悲鳴を聞きながらシャットアウラは路地裏へと姿を隠す。

「か、会社に連絡……いや、カメラ屋に行くのが先なのか?」

 男は混乱する頭で学校から遠ざかっていった。

「よしっ。アリサの警護に成功」

 シャットアウラは小さく息を吐く。

 彼女の本来の能力は希少金属(レア・アース)を自在に操り爆発させるレベル4の希土拡張(アースパレット)。

 だが、経済的に貧しい彼女が希少金属を入手できるはずもなく能力の使用は現在不可能。己の身体能力を活かして戦うしか術がない。

「チッ! またか……」

 シャットアウラは新たな敵の接近を感じ取る。路地に落ちている小石を拾い上げてスクープという名の敵に対して戦いに赴く。

 

『あー。かみやんはともかく、有名人のアリサはもうちっと気を付けた方がいいんじゃないのかにゃ〜』

『そやでぇ。世の中には人の惚れたはれたで飯を食ってる人もおるんやさかい』

 2人きりの世界に入っているアリサと当麻に金髪と青髪の少年が苦言を呈す。

『大丈夫だよ。当麻と一緒なら、どんな奇跡も起こせるから。スクープ記者なんて怖くないよ』

『アリサが歌ってくれるなら……どんな奇跡でも起こせるさ』

 アリサに力強く頷いてみせる当麻。

『あたしたちの幸せがいつまでも続くように……あたし、心を篭めて歌うね』

『ああ。そうしてくれ』

 アリサは両手を胸の前で合わせる。そして天使の歌声が何の変哲もない高校の敷地に響き渡る。

『Welcom to this crazy Time〜 このイカレた時代へようこそ 君はTough boy tough boy tough boy まともな奴ほどfeel so bad 正気でいられるなんて運がイイぜ you tough boy 時は〜まさに世紀末〜 澱んだ街角で僕らは出会った〜』

『『何で北斗の拳の主題歌っ!?』』

『今日もアリサの歌は感動的だなぁ〜』

 2人の少年のツッコミも気にせずに当麻はアリサの歌に心奪われている。

『このアリサの歌が、俺たちの幸せに奇跡を起こしてくれるんだろうなあ』

 しみじみと語る当麻。だが、アリサの恋人の少年は知らない。具体的にどのような奇跡が発現されているのかを。

 

「この学校の周りから消えうせろっ!」

 柄の悪い他校の男子生徒を拳で追い返す。

「これで6人。アリサ……いつまでも目立つ所にいないでくれっ!」

 シャットアウラは獅子奮迅の活躍を見せている。彼女の戦闘によってアリサたちの存在は他人の目に触れていない。

 だが、アリサが校門のすぐ内側で当麻とイチャついているためにいつ良からぬことを企む連中に発見されるか分からない。

 

『keep you burning 駆け抜けて〜 この腐敗と自由と暴力の真っ只中〜 No boy no cry 悲しみは〜絶望じゃなくて明日のマニフェスト〜』

 

「アリサの歌声っ!? 何か奇跡を起こさないといけない事態に陥っているのか!? だが、今歌うのはまずいっ!」

 学校内から透き通った歌声が聞こえてきた。圧倒的な歌唱力を持つそれはアリサの声に違いなかった。アリサの声はシャットアウラの荒れた心を癒してくれる。

 だが、アリサの身を世間から守らなければならない彼女にとって、この歌声は厄介以外の何物でもなかった。

 

『これ……ARISAの歌声じゃねえ?』

『それっぽいよな』

 

 アリサの歌声を聴いた一般人たちが学校付近に集まり始めた。

「まずいっ! これだけの数の一般人をどう捌く?」

 このままでは10名を越える一般人たちが校門へと辿り着くのは時間の問題だった。

 特殊部隊にいた頃の装備であれば一般人を散らすことなどわけはなかった。学園都市認可の部隊ということで公権力を振りかざすこともできた。

 だが、それらの力は今のシャットアウラには存在しない。

「アレは、上条当麻さんと鳴護アリサ。最大の宿敵が私の将来の旦那さまと浮気している現場を目撃してしまうなんて。と、ミサカは茫然自失しつつ鞄から手榴弾を取り出します」

 先ほど公園で覗き見していた御坂美琴の妹が遂にアリサの姿を発見してしまった。御坂妹は呆然としながら鞄を漁っている。

「まずいっ!」

 シャットアウラは最初に対処すべき対象を定める。

「この手榴弾で鳴護アリサを亡き者にしてその罪をお姉さまにかぶせ、私は上条さんの後妻に座る。完璧です。と、ミサカは頭を真っ白にしながら上条さん救出作戦を提案します」

 御坂妹は焦点の合わない瞳のまま手榴弾の安全ピンを外す。

「これだっ!」

 シャットアウラは背後から御坂妹に近づき背後から手刀を首筋に打ち込む。

「うっ!?」

 崩れ落ちていく御坂妹の手から手榴弾を受け取り、ビルに囲まれた路地裏の中に向かってそれを投げ入れる。

 その直後、大きな爆発音が鳴り響いた。

 

『何だ何だ?』

『爆発か?』

 

 人々の注目が一瞬にして爆音へと集中する。そして野次馬が爆発地点へと集まっていく。

 シャットアウラは気絶した御坂妹を壁に寝かし付けると大きく息を吐き出した。

「任務完了」

 そして見つからないようにこっそりと他の路地裏へと消えていった。

 

『爆発っ!? 敵襲か?』

『…………奇跡が起きたんだと思うよ。今日は裏門から出て行った方が良さそうだね』

 

 

 

 午後7時。

 シャットアウラはようやく暗くなりぽつりぽつりと現われ始めた星々を先ほどの公園のブランコの上から手持ち無沙汰に眺めていた。

「シャッちゃん。ただいま♪」

 声を掛けられて視線を正面へと戻す。アリサが満面の笑みを浮かべながらシャットアウラの前に立っていた。

「デートは楽しかったですか?」

「うん♪」

 元気いっぱいに頷いてみせるアリサ。

「シャッちゃんのおかげでね♪」

 アリサはシャットアウラが知る最上級の笑顔を見せた。

「そういう言い方をするのはずるいですよ。怒れなくなってしまいます」

「だって私が毎日を楽しく過ごせるのはシャッちゃんのおかげだから♪」

「…………そう思うのなら、次のデートはもっとお忍びでお願いします」

 大きなため息が漏れ出る。この笑顔を前にしてシャットアウラはこれ以上何も言えない。

「じゃあ次はシャッちゃんも含めて3人でデートしようか♪」

「私が上条当麻を寝取ってしまって良いのなら考えておきます」

「それは絶対ダメだよぉ〜〜っ」

 当惑するアリサを見ながら、シャットアウラはこの少女の笑顔を守り切れて本当に良かったと心の中で噛み締めていた。

 

 了

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4 アリサと押し入れの居候

 

「それではアリサ。明日は午前9時に出迎えに上がります」

 午後8時。アリサは自宅の玄関の扉前で明日のスケジュールについて再度の説明を受けていた。

「それでは今夜はこれで失礼いたします」

「うん。また明日よろしくね♪」

 シャットアウラは一礼するとアリサの前から去っていった。

 

「さて……家に入ろっかなあ」

 事務所名義で借りているマンションの一室へと入る。

 アリサの部屋は1LDK。寝室とリビングは分かれているものの、世界的歌姫が住むにしては質素な作りと広さになっている。

 エンデュミオンの1件でアリサは策謀に飲み込まれた被害者だった。けれど、事態を危険な方向に導いてしまったシャットアウラと自分の関係を考えた場合、被害者という立場を行使するのも変だと考えた。

 だから彼女は再度デビューするに当たり、とても慎ましやかに生きていくことを選んだ。

 事務所提供の住居を質素なものにするのはもちろんのこと、彼女の報酬のほとんどはエンデュミオンの事件で被害に遭った人への支援金に回したり、チャイルドエラーたちの福祉施設の運用金に回している。

 だから実際にアリサが手元に収入として得ている金銭はシャットアウラとあまり差がない。シャットアウラにそのことを述べたことはないが。

 そしてアリサはもう1つ大きな秘密を抱えていた。

 

「ただいま」

 一人暮らしをしているはずの家でただいまの声を掛ける。

 そのまま廊下を歩いてリビングへと入る。

「ああ。帰ったのね」

 リビングには電気が点いていた。その中央には金髪ツインテールの幼女がクッションに座っておりテレビアニメを見ている。

「ただいま。レディリーちゃん」

 アリサは背中を向けたままの幼女に向かってもう1度ただいまを繰り返した。

 

 見た目10歳ほどの幼い少女の名前はレディリー=タングルロード。元オービット・ポータル社の社長であり、エンデュミオン事件の黒幕。

 死ねない不死の体となって既に千年以上の時を過ごしており、自らの死をもとめてエンデュミオン事件を起こした。

 アリサや当麻たちの活躍で幸いにして死者は出なかったものの、計画が成功していれば人類のほとんどを死滅させていたはずの重犯罪人。

 学園都市は事件をほとんど隠蔽し、一部の過激派がエンデュミオン占拠を企てたテロとして大筋を処理した。そのために彼女は公的には罪を問われなかった。

 しかし事後処理のために一部の事情が明るみになったことでオービット社は倒産。その社長であるレディリーは雲隠れしてしまったと世間では認識されている。

 しかし実際には学園都市に拘束され色々な裏取引の後にこっそりと釈放となっていた。

 

「はぁ〜今日もいっぱいお仕事したよぉ〜」

 アリサは後ろからレディリーに抱きついてみせる。

「何で抱きつくのよ? 暑いでしょ」

 レディリーはテレビから顔を離さないまま面倒くさそうな声を出す。

「レディリーちゃんの可愛さは仕事に疲れたあたしの癒しだから。ぬいぐるみに抱きついているのと同じ感覚かな?」

 アリサはレディリーをギュッと抱き寄せる。

「私はぬいぐるみなどではないわ。それに暑いのだからさっさと離れて頂戴」

「そんなに暑いのならクーラーつければいいだけだもん」

 右手でレディリーを抱きしめながら左でエアコンのリモコンを探す。アリサの手がリモコンに後少しで届くというタイミングのことだった。

「こんなことでエアコンを入れたら電気がもったいないでしょ。エコを考えなさい」

 レディリーの小さな手がアリサの左手を叩いた。

「地球を滅ぼしかけた人にエコを唱えれるのは……ちょっと微妙かも」

 叩かれた手を摩りながらアリサが不服を述べる。

「それはそれ。これはこれよ」

 先ほどのシャットアウラそっくりだと思った。けれどアリサはそれを口にしなかった。

「大体、貴方も貴方よ」

 レディリーが首を回して白い目でアリサを見る。

「どうして世界を救った歌姫がこんな人類を滅ぼそうとした極悪人を家に囲うのかしら?」

「だってレディリーちゃん、行くとこないって……」

 アリサの脳裏に数ヶ月前の光景が蘇る。

 

 あの日、レディリーは雨の降りしきる公園で傘も差さずにぼんやりと夜空を見上げて立っていた。

 とても哀しい瞳をしていたのが特徴的だった。全てに絶望して、もう何も残っていない人間の瞳。

 その瞳を見たアリサは見て見ぬふりをして立ち去ることができなかった。

 

「別に、貴方の所に厄介にならなくても、適当な人間をたぶらかして住処ぐらい見つけることはできたわ。今だってすぐにそうできるわよ」

「そんなの絶対ダメっ!」

 アリサは強く強くレディリーを抱きしめる。

「そんなことしたら、変な人に騙されてレディリーちゃんは大変なことになっちゃうんだからね!」

「大変なことって何かしら?」

「幼い女の子が好きな危ない人の家に連れて行かれて……無理矢理ギュッて抱きしめられちゃったりするんだから」

「つまり貴方は危ない人なのね」

 アリサに固く抱きつかれて逃れられないレディリーがアリサに白い瞳を向ける。

「それだけじゃないの。一緒にお風呂に入ろうとか言われて、体の隅々までエッチな手つきで洗われちゃうんだから」

「昨夜の貴方の行動まんまね」

「それで、夜寝る時も無理矢理お休みのキッスとかさせられて、抱き枕代わりにされちゃったりするんだよ」

「だから全部貴方のことよね?」

 レディリーは呆れている。

「それからね……」

 アリサの口調が穏やかなものになった。

「レディリーちゃんのしたことは決して許されることじゃないと思う。あたしはレディリーちゃんをシャッちゃんに会わせることはできないし、ここに住んでいることも教えられない」

 シャットアウラの父はレディリーの仕組んだ事故によって命を落とした。シャットアウラにとってレディリーは文字通りの親の仇に他ならない。

「まあ、確かに長年よく尽くしてくれた彼女に対して私のしたことは非道だったわね。彼女への詫びで切腹して果てられるのならそれも悪くはないわ」

 レディリーはサバサバした口調で答えた。

「でもあたしはレディリーちゃんがいたからこそ生まれることができた。あの事故があったから私が生じた。だから……あたしは……あたしの存在は……」

 アリサは強く強くレディリーを抱きしめた。レディリーの頭に涙の雫がポタポタと注がれる。

「アリサは何も悪くないわ。悪いのは全部この私」

 レディリーは静かに告げる。

「でもあたしは……今でもシャッちゃんを騙している」

「私はこの家の押し入れに勝手に棲み着いているだけ。妖怪ぬらりひょんの亜種みたいなものよ。妖怪が人間の家に勝手に棲み着くのに人間に罪はないわよ」

 かつて魔女と恐れられたレディリーは自らを妖怪に例えた。

「うわぁああああああああぁん」

 アリサは声を上げて泣き始めてしまった。

「まったく……私より大きな体をしているというのに……困った子ね」

 レディリーはアリサが泣き止むまで抱きつかれたままでいた。

 

 

「さっきはごめんね。大泣きしちゃって」

「まったくよ。貴方も16歳なのだから、もう少し大人になって欲しいわね」

 泣き止んだアリサはレディリーと一緒に入浴中。

「貴方のようなお子ちゃまに嫁の貰い手がいるのか心配だわ」

 アリサに髪を洗ってもらいながらレディリーがため息を吐く。まるでアリサの母親のような態度。

「お、お嫁だったら当麻くんが貰ってくれるもんっ!」

 アリサが母親にからかわれた娘のようにしてムキになって反論する。普段の彼女に比べて言動が幼くなっている。

「上条当麻……アリサと一緒に私の計画を潰してくれた張本人ね」

「地球を救ったヒーローであたしの運命の王子さまなんだよ♪」

 当麻のことを語るアリサは自信に満ちた表情をしている。そんなアリサを鏡越しに見ながらレディリーは意地悪な笑みを浮かべた。

「でもあの少年。複数の女とフラグ立ててるんじゃないかしら。実際に私の所に攻めてきた時は少女シスターを従えていたし。あの2人、怪しい仲よね」

「当麻くんはあたしのことを愛してるって言ってくれるもん!」

 再びアリサの態度が子どもっぽいものに変わる。

「それにあの少年。絶対お金と縁がないわよ。夫婦になったら苦労するのが目に見えているわよ」

「あたしも当麻くんもお金にはこだわりがあんまりないからいいの!」

「そうかしら? お金はあった方がいいわよ。お金があると私みたいな見た目10歳児でも世界を裏から牛耳れるわよ」

「あたしも当麻くんも世界を牛耳ったりしないからいいの!」

 アリサの口調は完全に子どものものに変わってしまっている。

「まあ、アリサがあの少年を好きだというのを居候の妖怪である私は反対したりはしないわ。…………けど」

 レディリーが体の向きを180度変えてアリサと正面から向き合う。そして顔を近付けてアリサの胸や首元の匂いを嗅ぎ始める。

「レディリーちゃん? 一体何を?」

 レディリーはアリサの驚きを無視して尚も鼻をクンクンさせ続ける。そして、首を捻りながら述べた。

「貴方とあの少年は本当に付き合っているのかしら?」

「えっ?」

 アリサが固まる。レディリーの質問の意味が瞬時には理解できない。

「あたしと当麻くんは正真正銘彼氏彼女の仲で今日だって2回もキスしてもらったし……」

「アリサの体からあんまりあの少年の匂いがしないのよねぇ」

 レディリーは更に顔をアリサへと近寄らせる。そして舌を出して首筋をペロッと舐めた。

「ひぃいいいいぃっ!?」

 体験したことのない感触にアリサの体がビクッと震える。

「この味……やっぱりだわ」

 レディリーは頷いてみせる。

「やっぱりって何が?」

 恐る恐る尋ねる。そしてアリサは質問をしなければ良かったと後悔する羽目に陥った。

「アリサ……貴方まだ処女でしょ」

 レディリーはアリサを指差しながら指摘した。

「なぁあああぁっ!?」

 息を吸う姿勢のまま硬直してしまう。

「貴方、上条当麻と夫婦になるのでしょう? なのにどうしてまだ肉体関係を持っていないのよ? 変だわ」

「!?!?」

 レディリーの発言が過激すぎてアリサは一切ついていけない。

「あの少年はもしかして男性器の機能に障害があるのかしら? それとも今流行りだという女に手を出す勇気のない草食系男子なのかしらね?」

「…………っ」

 アリサは一切喋れず動けない。

「まあ、何にせよ。私の基準から言わせてもらえば貴方たちが付き合っているなんてとても言えないわ。私が生きてきた過去の時代では12、3歳で嫁入りするのも普通だった。それに比べて貴方は16歳になってもまだ処女だなんて」

「…………っ」

 アリサの両手がプルプルと震える。けれど、それ以上何も言えない。何もできない。

「まあ、あの少年が草食系を気取ってアリサに手を出す勇気がないと言うのなら。私がこの体を使って女の身体の良さを教えてあげても……」

「それは絶対にダメぇええええええええええええええぇっ!!」

 アリサは涙目になりながら大声でレディリーに反対した。

「当麻くんは紳士なの。それにそういう関係になるのは……2人の気持ちが高まって自然とそういうことになるんだと思うし……」

 アリサは真っ赤になっている。

「そんな悠長なことを言っていると他の女に寝取られて泣きを見るわよ。例えばシャット……」

 レディリーは途中で口を噤んだ。

「とにかく、夫婦になるなんて騒いでいるのに身体の関係もないなんて、私に言わせればまだ2人は付き合っているなんて言えないわ」

 アリサにとってグサッとくる言葉が続く。

「アリサは性的な魅力で少年を捕まえられていない。精々片想いと言った所ね」

 そしてとどめが刺された。

「当麻くんがその気になってくれるまで……片想いでいいもん」

 拗ねたように告げるアリサ。

 

 こうしてレディリーのダメ出しにより、アリサと当麻の関係は再び片想いと語られるようになったのだった。

 

 了

 

 

 

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鳴護アリサさんとシャットアウラさんの愉快な日常
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シャットアウラ 鳴護アリサ とある魔術の禁書目録 

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