真・恋姫無双 異聞  〜俺が、張角だっ!!〜 第4話
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第4話 師弟 Training days

 

朝焼けが眩しい早朝の時間帯。黄金に輝く日の光が辺りを照らし出し始めているなかで、未だに光の届いていない森林の中。

 

そこでは何かが空を切る音が連続して響いていた。

 

ヒュッヒュッボヒュッ!

 

止むことの無いその音の発生源に眼を向けてみると、大きな影と小さな影が拳の応酬をしている。互いに高速で拳を出し合っているが、掠めることはあってもクリーンヒットするような様子はない。至近距離で殴り合っているにもかかわらず、互いに完全に相手の攻撃を回避していた。

 

その影の内の片方は未だ薄暗い中でも鮮明に浮かび上がる黄金の髪を持っている。大きさは大体9〜10歳の子供くらいだろうか?とにかくこんな闘いをするようには見えない容姿だ。

 

その相手をしているのは黒白の髪を持っている。既に成人しているのは明らかな男だ。

 

子供が右拳を相手の顔面に向けて突き出す。身長さのせいか上段突きの様相を呈していたその攻撃は相手の男に容易に受け止められた。

 

しかしそこで子供の攻撃は終わらなかった。さらに相手の懐へと潜り込みながら、右腕を曲げて肘撃ちを相手の腹に決めようとする。

 

ズンッ!と激しい震脚の音を轟かしながら放たれたその肘撃ちは、空振りに終わった。

 

子供の視界から男が消える。子供はそのことに驚愕しながらも冷静に男の居場所を捜そうとした。

 

(後ろかっ!?)

 

こういう時のセオリーに従って後ろへと回り込んだと判断する子供。後ろへと振り返ろうとして、しかし視界が真っ逆さまになった。

 

「残念。下だ」

 

子供の脚を持ち、片手で相手を持ち上げながらも男が言った。その細腕からは考えられない膂力であった。

 

プランプランとぶら下げられて、子供は自らの判断ミスとそれが招いた敗北を喫したことを察したのだった。

 

「組み手は終了だ。雷華」

 

「りょーかい。玖若師父」

 

子供――雷華――は相手の言葉にまた勝てなかったな、と嘆息しつつも地面に降り立った。

 

玖若の弟子になってから約半年。その間体を鍛えることと内気功を教わってきたが、未だに玖若に勝つことは出来ないでいる。この医者はアグレッシブにもほどがあるのであった。

 

「内気功はほぼ形になったな。後は自分で磨き上げていくしかない段階だ」

 

「そうなの?」

 

「あぁ。体の均衡を保つこともほとんど出来るようになっているだろう。あとはそれが意識的にではなく無意識の段階で出来るようになれば内気功でやることは終わりだ」

 

その言葉に雷華は複雑な顔をする。

 

ここまで出来るようになったのは嬉しいが、逆に言うとそれが出来るようになったら玖若は再び旅立つのだ。元々治療目的の師弟関係なのでそれが自然なのである。

 

この日々を結構楽しいと思っている雷華は複雑な心境にならざるを得なかった。

 

「まぁ、それはひたすら反復練習するしか習得する方法が無い。だから外気功の鍛練に入ろうと思う」

 

「本当か!」

 

先ほどまでの憂鬱はどこに行ったのか。玖若の言葉に雷華は色めき立った。その顔には「期待しています」と書いてある。

 

その反応に苦笑いを溢しつつ玖若は次の鍛練の名前を宣言した。

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「講義の4「敬意を払えっ!!」だ」

 

「え」

 

何か聞いたことのあるようなレッスン名だなぁ、と雷華は思ったが、まさかねとその思考を打ち切った。

 

しかし、雷華のその予感はズバリ的中していたのだった。

 

「まず最初に言っておく、雷華。お前はこれから「できるわけがない」というセリフを、4回だけ言っていい」

 

(って、オイイイイィィィィィッッ!!完全にジョジョネタじゃねぇかあああぁぁぁ!!)

 

どう見てもツェペリ家の掟です。本当にありがとうございました。

 

「いいな、「4回」だ。俺も修行中老師からそう言われた」

 

「その老師ってもしかして・・・・・・」と雷華は思ったが、その真相を知るすべはない。全ては((神|作者))のみぞ知る、だ。

 

「結論から言うと「気功」の秘密とは「生命の限界」への追求だ。それが俺の一門「((五斗米道|ゴットヴェイドー))」の目指したもの」

 

雷華は激しくツッコミたくなっていたがもう放置することにした。流れに身を任せていたほうが疲れないことも世の中にはあるのだ。

 

外気功を学べるというワクワク感にのみ集中する。そうしてツッコミたいという気持ちを雷華は無視することに成功するのだった。

 

「「生命の限界」という概念を俺達の先達は「気功」という技術で到達しようとしたんだ。「医療」のために」

 

玖若が地面にしゃがんで枝を取る。そうするとおもむろに地面に文字を書き出した。無言で枝を滑らせていく。

 

暫く経つと書き終わったのか枝を地面から離した。地面に達筆な文字で書かれていたのは、雷華には「風水」と読み取れるように見えた。

 

「「風水」という考え方がある。聞いた事があるか?」

 

それはある。現代に生きているものとして、あるいはこの時代に生きるものとしても「風水」とは耳にする機会が多いものであった。よって詳しいことは知らなくても表面的なことならば知っているつもりだ。

 

「それは山や川などの地形、あるいは建物の位置や家具の配置などによって吉兆を図ったり操ったりする分野の事を言う」

 

雷華もこのくらいのことは知っていた。ただこれ以上の、具体的にどういう地形が「良い」だとか、どういう位置に建物が建つと「悪い」だとか。さらには家具の配置や置物をどの方角に置くか、など掘り下げていくと全然わからない。

 

「この「風水」は古代からこの中華では重要な「考え方」とされている。過去の為政者はこの「風水」の結果を受けて都を移したものまでいるという・・・・・・」

 

「玖若師父、待ってくれ・・・・・・。師父がこんな時にいったい何を!!何を言い始めたのか?・・・・・・・・・・・・俺にはさっぱり理解できないが・・・・・・・・・・・・」

 

本当に何を言いたいのか理解できなかったので、玖若に便乗する形で疑問を表す雷華。それにしてもこの幼児、ノリノリである。

 

「俺も「風水」を読み取れるように老師から訓練された」

 

ゴ ゴ ゴ ゴ

 

「・・・・・・・・・・・。え!?」

 

「「風水」には次の概念がある・・・。この大地にも氣が流れている・・・。この流れが泉のように地表に噴出しているところもまた・・・・・・ある。この氣が泉のように湧き出てくるところに都を作ると、長く栄えるという。これが「龍穴」だ」

 

龍脈と龍穴。この概念も結構有名だろう。ファンタジーものの小説や漫画を結構読んでる人なら知っている人も多いのでは無かろうか?

 

そして前世において漫画とゲームが趣味だった雷華も当然知っていた。

 

「ま・・・・・・まさか!?」

 

「お前は氣を自分だけで完結させている・・・だから限界を感じている・・・」

そこで一呼吸間を作ると、玖若はこの講義における課題を発表した。

 

「『氣」を体外に放出せよ!そこには「生命の限界へ続く力」があるはずだ・・・・・・我ら((五斗米道|ゴットヴェイドー))はそれを追求して来た・・・・・・・・・・・・」

 

ド ド ド ド ド

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「できるわけがないッ!」

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・今言ったか?「できるわけがない」・・・と?」

 

(いや、本当にできるわけがねぇだろおおおぉぉぉ!?)

 

ノリで言っているように見えたが本当に困っているようだった。完全に課題と先ほどまで話していたことがかけ離れすぎていた。

 

あのミシシッピの川岸でジョニィもこんな気分だったのかなー、と玖若にイラッとしながら雷華は思った。

 

「そんなのすぐにできるわけがないッ!何にも教えられてないのにできるわけがないだろッ!」

 

それでもジョニィの真似を続けているあたりこの幼児も本当にノリノリである。

 

「師父は気功の訓練を子供のころからさせられていたんだろう!?それをたった今!俺がやってみろと言われてもいきなり出来るわけがないッ!さあ、4回言ったぞッ!さっさとコツを教えてくれッ!!」

 

「今のは1回にしか勘定しないからな。あと2回だ。後2回言った時に教えてやろう。」

 

「何だとォ〜〜〜〜ッ。」

 

(くそ、読んでるときは面白かったけど、実際やられるとめちゃくちゃ腹立つなこれ)

 

雷華は眼を閉じて『氣』を操作し始めた。呼吸と脈拍を意識する。呼吸とともに腹の丹田から血液に乗って全身に回り、そしてまた丹田へと戻ってくるイメージだ。

 

ここまでは上手くいく。これは内気功の基本だからだ。だが、ここから自分の体外へと『氣』を出そうとしても、1ミリたりとも外へは出て行かないのだった。

 

何回も『氣』を体外に放出しようと試みてみるものの、やはり上手くいかず苛立ちが募る。その苛立ちで集中力が切れてさらに『氣』の操作が荒くなり・・・・・・。完全に悪循環だった。

 

「玖若『コツ』をすぐにおしえろーーーーーーーーッ」

 

上手くいかないことに苛立った雷華が玖若に詰め寄った。9歳児が大男を鬼気迫る表情で詰問している様は傍から見ているとさぞやシュールに映っただろう。

 

ガンン!

 

玖若がややアッパー気味に雷華の顎を殴りつける。口の中が切れたのか雷華の口から真っ赤な雫が零れ落ちた。

 

「だめだッ!「できない」と「4度」言うまでやれないッ!絶対にッ!それが五斗米道(ゴットヴェイドー)の「掟」だッ!「掟」を破ると俺達は限界に到達できないッ!お前に全ては説明したッ!講義の4だッ!「敬意を払え」ッ!」

 

「なんだとおおおおおおおーーーッ」

 

「くそっくそっ」と思いながらも雷華は再び眼を閉じて集中を高めようとするのだった。

 

 

 

 

 

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『氣』を体外に放出するという課題を受けてから((半刻|1時間))後。雷華は地面に大の字になって寝転んでいた。その眉間には見事に皺が刻まれており、不機嫌であることが容易に窺い知れる。

 

周囲には玖若の姿は無い。今から四半刻程前に「往診があるから村に帰っているぞ」と言って行ってしまったのだ。

 

「コツも何も教えられていない状態で『氣』を体外に放出するなんてできるわけがないだろ」

 

ブツブツと自らの師父に対する不平を呟く。自然に対する深い観察から黄金長方形でも見つければいいのか?と雷華は冗談交じりにそう思った。

 

「あーもうッ!いきなり実践しようとしてもできるわけがないッ!」

 

上半身を起こして誰もいない森の中なのをいいことに大声で叫ぶ。頭を両手でガリガリと掻き毟っているのが余程苛立ちが募っていることが察せられた。

 

と、そこで雷華は唐突に動きを止める。自分が「できるわけがない」と4回言ったことに気付いたのだ。

 

「つってもなぁ。玖若がいないんじゃコツは聞けないし・・・・・・。何だよゴットヴェイドーの「掟」って。そんなんやるんだったらきちんと傍にいろっての・・・・・・」

 

雷華が不満を独りごつ。はっきり言って玖若の意図していることがまるっきり理解できなかったのだ。「本当におふざけでやっているんじゃあないだろうな?」と雷華はちらりと思ったが、玖若がそんな人間ではないのを知っているのでその考えを捨てた。

 

「ふぅ〜〜。落ち着こう。玖若が言っていたことを思い出せばきっとヒントがあるはず・・・・・・」

 

雷華は深く息を吸ってそして吐き出した。そうすることで腹に溜まっていた不満を外に追い出していく。暫くそれを続けることで集中力を高めていった。

 

「思い出せ・・・・・・。玖若は「全て説明した」と言った。あいつは無意味な嘘を吐くような人間じゃあない。ということは本当にすでに全てを説明しているはずだ・・・・・・」

 

雷華は先ほどの玖若の言葉を思い出していく。いや、今日の言葉に限らず今まで言われてきたことも思い出そうと記憶の中に潜っていく。

 

その中で言われたことを雷華は整理していく。そうしていくなかで疑問に思ったことを雷華は口に出した。

 

「そうだ・・・・・・。「龍穴」・・・・・・。何故玖若はあんな話をしたんだ?大地を巡る『氣』が地上に噴き出る場所の説明なんかを・・・・・・」

 

顎に手を当てて考えこんでいく。ブツブツと呟きながらも深く集中していくと、雷華の中にある玖若の言葉たちが1本に繋がっていくような感覚がした。

 

「そもそも『氣』とは何だったんだ?・・・・・・そう、『氣』とは生命力から生まれる((力|エネルギー))だ・・・・・・。もしもそれが噴出する場所があるなら、人や都に限らず生き物なら皆繁栄するものなんじゃあ・・・・・・」

 

そう、例えば荒野が広がっているこの涼州の地において、ポツンと孤立するようにあるこの森のように。

 

「そもそも何で玖若はこの場所を修行するために選んだんだ・・・・・・?今までの修行ならもっと村に近いところでも良かったはずだ・・・・・・。意味が必ずある・・・・・・。玖若はここが((「龍穴」|・・))((だからこそ|・・・・・))ここを選んだんじゃ?」

 

玖若は言った。「敬意を払えっ!」と。さらにもう1つ「お前は自分だけで『氣』を完結させているから限界を感じている」とも。

 

『氣』とは生命が生み出す力であり、ここは森で生命に溢れている。更には恐らくここは「龍穴」と思われた。つまり、つまりっ!玖若の言いたいこととは・・・・・・!

 

「周囲に溢れる『氣』を感じ取らなければいけないんじゃあ?或いは他の動植物の『氣』を・・・・・・。それが出来なければ『氣』を体外に放出することは出来ないということなんじゃあ・・・・・・」

 

その考えに行き当たった雷華は瞳を閉じた。いつも『氣』を使う時は深く自己へと埋没していくように集中していくが、今回はむしろその逆。周囲へと意識を拡散していくように集中しようとした。

 

自然と雷華は座禅の格好になっていた。その状態で眼を閉じたまま更に周囲に意識を向けていく。自分で気付くことがあったからだろうか・・・・・・。雷華は今までにないほど意識を集中することが出来ていた。

 

その状態で何分ほどが経ったろうか・・・・・・。雷華の額に玉のような汗が幾つも噴出してきていたとき、雷華の脳裏にボゥと浮かび上がるものがあった。

 

「ハハ・・・・・・」

 

それを皮切りにしたかのように雷華の五感のどれとも違う感覚がまたたくまに埋め尽くされた。雷華は直感でそれが周囲の『氣』を感じ取っている感覚だと理解した。

 

雷華を歓喜が満たしていく。なるほど、確かにここは「龍穴」だったらしいと雷華は思った。こんなにも場が力に満ち満ちているのだから、と。

 

雷華が手の平を上に向ける。『氣』を外に出そうとした。しかし、先ほどまでとは違い、『氣』を無理やり外に排出するのではない。世界に広がっている『氣』と同調させるような感覚で雷華はやってみた。

 

瞬間、雷華の手からバチッと音がして紫電が迸った。

 

「え?」

 

雷華はその現象に呆然となる。そんな動かない雷華の傍に、玖若が近寄ってきて言葉を発した。

 

「ふむ・・・・・・。どうやらお前は『氣』を体外に放出すると自然と雷に変換される体質のようだな・・・・・・。非常に珍しい性質だ」

 

「く、玖若?往診に行ってたんじゃ?」

 

「何を言っている。現在している治療をほっぽりだして他の患者のところに行くなど俺がするわけがないだろう」

 

「そ、そうか・・・・・・」

 

何とか応答できているが雷華の思考は今1つのことに囚われていた。つまり、自身の『氣』の性質についてである。

 

『氣』を体外に放出するとそれが自然と雷になる。・・・・・・つまりは『氣』の「電気変換資質」。

 

(どう考えてもフェイト・テスタロッサです!本当にありがとうございましたっ!!)

 

・・・・・・どうやら自分の顔がフェイト・テスタロッサに似ていると感じていたのは間違いじゃなかったらしい、と雷華は思考の片隅で思うのだった。

 

 

説明
注!今回は大幅なジョジョパロディとなっております。

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