真・恋姫無双 〜乱世に吹く疾風 平和の切り札〜 拠点フェイズ・桃香 その1 |
【拠点フェイズ・桃香】
一刀たちが義勇軍の加入の為に公孫賛の治める街に来て、早くも3日が経過した。
最近まで街の辺りをうろついていたという盗賊の集団は、今は活動を控えてどこかに身を潜めているらしい。
恐らく公孫賛の義勇兵召集の話題が彼らの耳に挟まり、彼らも警戒を強めているのだろう。
ここで義勇兵を嘗めて派手に暴れまわったりしない辺り、それなりに頭の回る指揮官が統率している可能性も示唆されている。
しかし、たかが盗賊と言えども油断すれば痛い目をみるかもしれない。
街を預かる身として、できるだけ最小限の被害で事を済ませたいと思っていた公孫賛は、情報戦で相手より優位に立つためにと判断し、近くの森や山地に数人の斥候を放った。
現状は報告待ちである。
その間に愛紗や鈴々は兵たちの調練を、桃香は文官の仕事に慣れるなどして来たるべき時に備えている。
そして一刀もまた、探偵業を再開したわけだが……
「一刀おにいちゃ〜ん!次はおままごとしよ〜!」
「え〜!次はぼくのとっくんを見てくれるんだよー!」
「この間おしえてくれた、おにごっこ〜!あれやろ〜!」
街の広間にて、揚々と笑顔を振りまきながら元気に騒いでいる子供達。
その輪の中心には、太陽の光を跳ね返す純白の衣、もとい聖フランチェスカの学生服を着た青年――北郷一刀の姿が。
子供たちに四方八方を囲まれ、その表情はどこか疲れているように見える。
それもその筈だ、何故なら……
「た、頼む……少し休ませてくれ。ローテーション回して遊ばれると俺の体力が持たない…」
既に体力を消耗している状態だった。
「ろて…?それって天のおことばだよね?天のおことばで言われてもよくわかんなーい」
「ああ、そうだったな。あ〜……つまり他の子が遊んでる間に休んでる子がいて、遊んでた子が休んだらさっきまで休んでたその子が交代して遊ぶ。けど俺は代わりに皆と遊んでくれる人がいないからずっと遊ぶことになって全然休めない。だから俺もちょっと休憩したい、分かった?」
「「「「「……………はーい」」」」」
「おい待て。その微妙な間は絶対分かってないだろ、適当に返事しただけだろ」
その間、実に5秒。
ちゃんと理解してくれたとは到底思えない間であった。
「よ〜し!それじゃあみんなでおしばいしよー!あたしたくさんのお金をかりてる女の人〜!」
「じゃあぼく、いっぱいしゅぎょーしてるしょうぐんさま〜!」
「あたしオニさん!」
「ならおれ、せーぎのかいぞくやりたい!」
「わ、わたしは……公孫賛さま」
「一体どんな喜(奇)劇が始まるんだよこの配役!脈絡無さ過ぎてカオスすぎんだろ!」
「一刀おにいちゃんはお馬さんだよ!」
「ああ俺は家畜ですかそうですか、ちくせう」
せめて人間として活躍させてほしかったと切に思う。
配役からして、恐らく将軍様か公孫賛の足となって走り回らされるのだろう。
「じゃあお馬さん、あたしを乗せて!」
「将軍たちを差し置いてまさかの借金娘!?っていうか金だけじゃなくて馬まで借りてんのかよ!いや、最早これは盗んでるだろこれ!」
「だいじょーぶだよ!むかしはお金もちだったからお馬さんだけは持ってたの!」
「没落貴族っすか、それ」
子供の発想力は無限大と言ったところだろうか、子供たちの爛漫な行動に常時振り回されっぱなしの一刀であった。
公孫賛の収めるこの街に来て数日が経過したが、この街は元々治安の良い街だ。
多少の事件解決を楽しみにしていた一刀であったが、事件性のある依頼は一切来ず毎日こんな仕事(名目上)ばかりが届いてきている。
これ以外にも酔っ払いの取り押さえや探し物、ペット探しなども請け負っているが、どれも一刀の希望していた依頼ではない。
まぁここは平和な街なので仕方ないと言えば仕方ないのだが。
思わず、重いため息が口から零れだす。
「はぁ……」
「お兄ちゃんどうかしたの〜?」
「ああいや、なんでもない。…よし、それよりみんな、この次は何して遊ぶんだ?」
「次?う〜んとね…え〜っとね……」
折角の依頼だからしっかりこなそうじゃないかと、気を少し締め直した一刀が皆に次の遊びを問いかけた。時だった。
「はいはーい!私、この間一刀さんが教えてくれたサッカーっていうのやりたい!」
子供たちの集まりの中から周囲より一際高い背丈をした、一桁の歳に似つかわしくない体型の少女が腕をピシッと空へ向けて伸ばし、一刀に笑顔を向けてそう主張してきた。
「オッケー分かった。ならまずはそこの大きな子供を追い出さないとなあ」
その姿を見た瞬間、一刀はにこやかに笑みを浮かべてその大きな子供の襟元を引っ掴み、猫のようにぶらーんと垂れ提げた。
「あ〜ん!いきなり追い出そうとするなんて一刀さんひどいよー!」
「はぁ……今日は公孫賛の所で文官の仕事してるって聞いたんだが…なんでここに居るんだ?桃香」
ため息交じりに一刀は、自分の手元にぶら下げている桃色の髪を長く蓄えた少女――桃香へ呆れの込めた視線を浴びせる。
警邏をしていた兵に偶々聞いたのだが、新しく来た義勇将(桃香たちのこと)は今日は城で各自作業に務めているそうだ。
が、当の該当者である桃香が何故ここにいるのか、と疑問の芽生えた一刀。
「えへへ〜…心配しなくても、ちゃんとお仕事は一通り区切りをつけて終わらせてきたもん♪」
「りゅーびおねえちゃん、おしごとしてたの〜?」
「そうだよ〜?ちゃんとお仕事終らせてきたんだから」
「おねえちゃん、えら〜い!」
「えへへ♪そうでしょそうでしょ〜」
そう言って彼女は屈託のない笑顔を子供たちに振りまいて見せた。
桃香と子供たちが絡んでいる際、彼女のその言葉を聞いていた一刀は、そうか、と納得する。
これでもし抜け出して来たというのであったのならば、強制連行も厭わなかったのだがそれも杞憂のようだ。
「…ま、やることやってるなら別に何も文句は無いけど。けど良かったのか?文官の仕事なんてやったことないから、短時間で基礎から叩き込まれてるって聞いたからだいぶ疲れてるんじゃないか?」
気を遣って桃香の体調も考慮しそう聞いてみた一刀だが、桃香はそんなとこないと首を横に振る。
「ん〜ん、平気だよ。それに部屋でじっとしてるよりも、こうやって皆と遊んでる方が楽しいもん」
「…ま、桃香らしいっちゃらしいか。んじゃみんな、この大きな子供も仲間に入れてくれるか?」
「「「「いいよ〜!」」」」
「あれ?私って皆の中では子供として認識されちゃってるの?」
「何をいまさら」
それから小一時間くらい、一刀と桃香は子供たちと一緒に色々な遊びをして過ごしていった。
遊びの大半は一刀の世界で遊ばれていたものを占めており、子供たちは勿論、桃香も新鮮味を感じて楽しむことが出来た。
程よい所で遊びが終わったところで、子供たちの親が彼らを迎えに来てくれそのまま岐路へと着いて行った。
「一刀おにいちゃ〜ん!桃香おねえちゃ〜ん!またあそぼうね!」
「「「ばいば〜い!」」」
休憩なしでどっぷり遊んでいたのにもかかわらず、まだまだ元気だと言わんばかりに一刀たちに手を振りながら。
そんな子供たちの底抜けな体力に苦笑を隠しきれない一刀たちは、彼らに手を振り返しつつ大きく一息つく。
「ふぅ……子供ってなんであんな体力持て余してるんだろうな…」
「ほんとだよねー。でもその元気を使い切ったら、疲れて全然動かなくなっちゃうんだよね」
「…そんなもんだっけかな」
幼少期の頃をふと思い返す一刀だったが、自分自身にそんな印象を抱く気がしなかった。
よくよく思えば、子供の頃はアウトドアよりもインドア暮らしをしていたので仕方ないと言えば仕方ないのかもしれないが。
「まぁとにかく、俺も今日の依頼は終了だな」
「え?お仕事いつ終わったの?」
「…今さっきやってたろ」
「……もしかして、あの子たちの遊び相手?」
「ああそうだよどうせ俺は保父みたいなもんだよ、ちっとも全然探偵らしくねえよこんちくしょう!」
ちなみに本日の一刀の仕事内容はと言うと、現代時間で言う10時辺りでは隣州からやってきた商人の荷物の運搬手伝い、その後には向かいに住んでいる親子のペットである猫の捜索。
午後になってからは当たり屋をしていたチンピラの退治(仮面ライダージョーカーになって撃退した)、それを警邏の人に目撃され、公孫賛から警備の者達に話が届くまでの20分間、職務質問を受けた。
そして解放されてからは、先ほど済ませたが子供たちの遊び相手を務めることになった。
お前はただの便利屋か、と思わざるを得ない程の探偵らしさ皆無なスケジュールである。
「……うん、あの……負けないでね?」
「……おう」
気の毒そうな視線を向ける桃香から心に痛み入る励ましを受けたものの、更に空しさを感じる一刀であった。
しかし、今の一刀にはまだ知る由も無い事項がこの先の未来にある。
依頼が公孫賛の収めている街『以外』から、ようやく探偵らしい依頼が飛び込んでくることに…。
「…まぁとにかく、今日はもう依頼も片付けたし、後は公孫賛に出す報告書を纏めとかないとな」
「報告書?そんなものも書いてるの?」
「ああ、『一応営業許可は出したけど、こっちもちゃんと仕事してるか気になるから、仕事の成果を記した書類だけでも提出してくれ』って公孫賛に言われてな。まぁあまり詳しく書く必要も無いらしいからすぐ終わるけど」
「ふ〜ん……あ、それじゃあ見て行ってもいい?」
「…別にいいけど、見てて面白い作業とかじゃないからな?あと飯もおやつも出たりしないぞ」
「えっ………べ、別にご馳走してくれるとかやましい期待してないから大丈夫だよぅっ」
「いや期待しまくってただろ!?妙な間があったし酷い上ずり方だったぞ今の!」
「あ、あはははは……」
乾いた笑いを発して恥ずかしさを誤魔化そうとする桃香…実際は全然誤魔化せてなどいないが。
それに加えて視線を泳がせて一刀の方を見てなかったり、頬を指でポリポリ掻いたりと典型的な誤魔化し方をしているので、桃香が一刀に着いて行こうとした理由が手の取るように理解できる。
「はぁ…まぁ飯くらいならいっか。折角だし、どっかの店に寄って食ってくか?」
「え、良いの!?お金とかちゃんと持ってるの!?」
「なんで今更たかりの対象を一文無しみたいに馬鹿にしてんだ、お前。これでもちゃんと食っていける程の蓄えはあるんだぞ?」
「……も、もちろん知ってたヨ?」
「嘘つけ。…ほら、早く行こうぜ」
頬に小さな汗を一筋流して堅い笑顔を作っている桃香に短いツッコミを入れつつ、桃香に背を向けて街へ向けて歩き始めた。
「え、ちょ、一刀さ〜ん!置いて行かないでよ〜!」
その様子を見て、桃香は一刀に置いてけぼりにされない様にと小走りで彼の後を着いて行った。
その後は近くの食事処で、お互いの仕事や最近起きたトラブルの話を交えて夕食を済ませた二人。
事務所に戻って書類仕事をする一刀を少しだけ桃香が手伝ったりと、久しぶりに二人だけの時間を過ごすことが出来たようである。
そして書類仕事も済ませ、桃香も城に帰るために事務所を出たところで、今日の疲れがたまっていた一刀はあっという間に眠ってしまった。
明日も依頼が待っている。
『子供たちのお守り』という名の、保母さん辺りに依頼が届きそうな大事な依頼が。
【あとがき】
お久しぶりです、kishiriです。
今回は桃香の拠点フェイズという事で――
え?また遅いじゃねえかって?
いやぁ…またまたリアルが忙しくなりましてね…遅くなってしまいました、本当に申し訳――。
???「おい貴様。なにを下らん虚言で読者を欺こうとしている」
な、何を言うんだ!私は皆さんを騙そうとしてなんかいない!勝手な事を言うんじゃない!
???「ほう、ならこのニンテンドー3DSに心当たりはないか?」
そ、それは私の3DS…!
???「貴様がモンハン4にどっぷりとハマっているのは確認している。そのお陰で執筆に多大な遅延をもたらしている事も、な」
う、うぐ……でも学校とかバイトもかなり忙しかったぞ!別にモンハン4やってただけが原因じゃない筈だ!
???「確かに、最近は学校でもバイトでも忙しくなっていた。だが一切合切執筆に携わる時間が無かったとは言えまい?その気になればちゃんと執筆できたはずだ、だが貴様はその時間をモンハンに費やしていた」
おうふ
???「という事で、今週は土日にバイトが入ってないからそこで愛紗と鈴々の二人の拠点フェイズを完成させろ。11月4日に日付が変わるまでだ」
ダニィ!?
???「できなければこの3DSは破壊させてもらうぞ。無論、中にあるモンハン4もエターナル再起不能にしておいてやる」
ダニィ!?
???「…つく」
ダニィ!?(佃煮)
???「…それしか言えんのか貴様は」
ば、馬鹿な……一応二人の拠点フェイズの内容は大まかに決まってはいるが、詳細はまだあやふやなんだぞ…!
???「知らん。最近投稿が遅くなっているんだ、今回の休日を利用して少しくらいはやる気を見せろ」
に、逃げるんだぁ…出来るわけがな…ふおぉ!?
???「いつまでヘタれてんだ、貴様は」
ということで、次回は急ピッチで書き上げようと思います。
ちなみにマジで3DS破壊はしませんヨ?暫く封印くらいはしますが。
ちなみに余談ですが今回は没シーンが多めで、色々とカットしました。
もう少し時間が経ってからの方がしっくりくる話題とかが結構出てしまったので…
というか、今回も執筆の途中で息詰まるところが多くてオチとか微妙になってしまいましたorz
あくまで日常的な回にしたかったので面白おかしくする必要もないのですが…読者様はもっと面白い展開が好きかもしれませんし…むむむ
それでは、次回もお楽しみに!
説明 | ||
桃香の拠点フェイズが出来上がりました。 何ていう亀更新……酷過ぎる。 ということで、ちょっとした執筆ノルマをあとがきに記載してみました。 |
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コメント | ||
M.N.F.さんへ ( *M*)今は保父が微笑む時代なんだ!(大嘘)(kishiri) ( *M*)<逃げられんぞォ〜(子供のお守りから)(M.N.F.) XXXさんへ ありがとうございます!(kishiri) 一刀がすげぇ違和感ないわ…(XXX) |
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