第十章 戦の無い世 |
「な…何やさっきの声…」
「奇声が聞こえたような…」
霞と華雄はアキラの奇声に気になっていた。すると、門の上にある櫓から悲鳴が聞こえた。
「な…何だあれ…」
「蒼き戦人が真っ黒になってる…」
『え!?』
董卓軍の将たちはその言葉に櫓に登ってその姿を見て驚愕した。
「すごい殺気…」
「恋より凄まじいものやな…」
一同はアキラのその姿に恐怖した。
「「!?」」
荷造りの途中だったシーナとコーウェンが動きを止めて驚いた様子を見せる。
「どうしたんですか?」
「い、いえ…大丈夫です」
「ささ…もう少しですから頑張りましょう」
「あ・・・うん」
月の言葉にシーナとコーウェンは何とか誤魔化して二人に悟られない様にした。
『この殺気は…まさか…』
コーウェンはアキラの変貌に気づいて冷や汗をかいた。
アキラの姿は白い鎧が真っ黒になり、青白い雷帝剣は黒い剣に変わり、アキラの全身から黒い稲光と黒い霧が出現した。
「貴様ァ…さっき俺に何て言ったぁ?」
アキラは腕を組んで春蘭に向けて言い放つ。
「さっき…だと?」
「貴様はこの俺に言った筈だ…ここから本気で戦うと…」
「だ…だから何」
「ここから本気で戦うだとォォォォォォォ!!」
『『『!?』』』
アキラの怒号にこの場にいる全員が驚いた。
「つまり貴様は戦場でこの俺と手を抜いて戦っていたのかぁ?曹操軍は本気で戦っていなかったのか?劉備軍も孫策軍もそして連合軍は手を抜いて我ら兄弟を倒して手を抜いたままこの虎牢関を突破して董卓を打ち倒そうとしたのかと聞いているんだ小娘共ォォ!!!」
アキラは目をカッと見開いて連合軍に叫んで言い放った。
「俺はな…どんな理由があろうと戦場に立って手を抜いて戦う奴が虫唾が走るほど嫌いなんだよ」
言い終わったアキラは腕を組むのを止めた。
「だからよ…」
すると、アキラの姿が一瞬で消えた。困惑する一同、そして…
「お前ら全員…無様に寝てろ…」
アキラは春蘭の背後に立って構えていた。
「クソッ!」
春蘭が振り向こうとするもアキラの一閃をくらって倒れた。しかもアキラの剣は鞘に入ったままだった。よく見れば剣は小さい鎖のような物で止められていた。
「何故剣を抜かない!本気で戦うのではないのか」
愛紗がアキラに言い放つとアキラがゆっくり愛紗を見た。そしてまた消えた。
「き…消えた」
「愛紗!上なのだ!」
鈴々の言葉に直ぐに上を見る愛紗。そこには蒼い眼光を光らせて攻撃態勢に入っていたアキラがいた。愛紗はアキラの攻撃を自身の武器で防いだが…アキラはニヤリと笑った。
「ま〜だだぜ…」
着地と同時に目が追いつけない程の神速の攻撃を繰り出すアキラ。本当に鞘から剣を出していないか疑問に思うくらいの攻撃に愛紗は苦戦する。
「愛紗から離れるのだぁー!」
鈴々がアキラの背後から槍を突き出した。だがアキラは左手を振ると、手のような形をした物体が出現して向かってきた鈴々をぶっ飛ばした。
「鈴々!?」
「よそ見するなよ?」
ぶっ飛ばされた鈴々を名を呼んだ愛紗にアキラは腹に蹴りをくらわし、愛紗が少し苦しんで悶えた所に追い討ちをかけようとした瞬間だった。
「我々を…」
「忘れるなよ!」
アキラの左右から同時に星と翠が攻撃しようとした時、アキラは鞘におさめてある剣を地面に突き刺した。そして鈴々をぶっ飛ばした時と同じ物体が両手に出現し、二人の槍を防いだ。
「う…嘘だろ…」
翠はアキラのその物体に恐怖を感じた。星も無言で冷や汗をかいた。
「忘れるわけないだろ?可愛く反抗している獲物をなぁ?」
不気味に笑みをしたアキラは回転してその物体を二人にぶつけ、二人をぶっ飛ばした。
「さて…劉備軍の大皿を食べるとするかぁ〜」
そう言って刺さった剣を抜いて桃香の元へ歩き出したアキラに愛紗達は驚いた。
「桃香様!、クッ…」
必死に体を起き上がらせ立ち上がる愛紗に気づいたアキラ。
「そういえば前菜がまだだったな…」
そう言ってまた手が黒い物体に変化して愛紗に見せ付けるアキラ。すると…
「今です!」
朱里の号令と同時にアキラの頭上に大きい網がアキラを捕らえた。
「対呂布戦に使う罠をここで使うのはやむを得ません」
「何とかうまくいったね!」
朱里と雛里は少し喜びに感じた。本来は呂布・恋を捕らえるために用意した特殊な網で網の四方に重りがある。
「どうやらあなたの弟、これまでのようね?」
雪蓮がミノルに言うとミノルは苦い顔をした。
「孫策さんよ〜あんたはいると思うかい?」
「何が?」
「勝利の女神様とか…」
「どうゆうこと?」
苦い顔で話すミノルに疑問を感じる雪蓮。
アキラは網にかかり、起き上がった愛紗達はアキラを囲んで自身達が持つ得物をアキラに突きつけた。
「さあ…観念するんだな」
愛紗がそう言い放つと、アキラは…
「フッ…フフフフ…」
笑っていた。
「何がおかしい!!」
声を荒げて言い放つ翠。アキラは桃香・朱里達がいるほうを見る。
「これで勝った気でいるとは…劉備はとんだ平和バカだ…」
「お姉ちゃんを侮辱するな!!」
鈴々がアキラの顔面を殴った。アキラの口から血が垂れた。そしてアキラはニヤリと笑った。
「『我を忘れた兵は死す道進む』お前もあの馬鹿女と同じだな?」
「はっ!鈴々下がれ!!」
愛紗はその言葉の意味と状況を察して鈴々に指示を出したが、遅かった。
アキラの黒い手が網を突き破って鈴々の首を掴んだ。
「俺がこんなちっぽけな網にかかって『はい降参します』と言うと思ったのか?劉備…じゃないな?こんな単純明快・無意味・無価値な案を出した軍師も軍師…なめられたものだなぁ?」
首を掴みながらアキラが可笑しく言い放った。それを聞いた朱里は悔しがり、スカートを強く握り締めた。
「何が起こるか分からない、負けると判断した奴が負けるといった予想をも裏切る、それが戦場だ…つまり…」
「う…うぐっ…」
そう言ってアキラは強く握り締めそれに苦しむ鈴々。
「平和のために戦うという名目で人を殺している劉備に仕える者を殺しても、文句はないよなぁ〜?」
「それは違う!!桃香様は民のために戦のない平和な世を…」
「どうやって?」
「何!?」
「どうやってこの戦乱の中で戦の無い世を手に入れると聞いているんだ?」
そう言って鈴々を愛紗に向けて放り投げ、アキラの問い掛けに愛紗は考えてしまった。
「俺が代わりに答えようか?貴様が持っている青龍偃月刀でその平和を脅かす者達を殺すだけだ」
「なっ!?」
アキラの答えに驚く愛紗。
「そうだろう?貴様達が持っているその武器はもしかして平和のためにある物なのか?違うだろ…人を殺すための物だろ?」
そう言って劉備に向けて歩き出すアキラ。
「今だってそうだろう?袁紹が貴様等に『董卓が洛陽で悪逆非道な事をして民が苦しんでいるから皆で倒しましょう』とかそういう尺牘が届いて董卓は『悪者』と認識してただ単に『平和にために』と称してここに来て戦っているだけだろ」
「だけど!私達は…」
桃香は何か言いかけたがアキラがそうする暇を与えない。
「それじゃあ村々を訪ねて、賊達を葬って回った俺達天の遣いも…『悪者』と認識するのか?」
「そ…それは…」
「蒼の戦人と紅き戦人は私達と同じ平和のために頑張っている。けど董卓軍に仕えている『悪者』だから倒さなきゃいけない?そう言いたいのだろう?」
「違います!私はただ自分の目で洛陽の事を…」
「自分の目?あ〜劉備、貴様洛陽を見ても無いのに董卓を悪者にしたのか?」
アキラの言葉に無言で首を縦に振る桃香を見たアキラはあっという間に桃香の前に立っていた。だがアキラは桃香を見てすぐに曹操達がいる方に向かって歩き出した。
「いい…貴様等は倒さん」
「な!どうゆう事だ!」
アキラの様子を見て愛紗が怒鳴った。
「周りが董卓が悪者と称しているから戦う貴様等のような獲物に価値は無い…眼中に無くなっただけだ…」
冷たい目で愛紗を見て言い放ったアキラに愛紗は青龍偃月刀を強く握った。
「逃げるな!口で言って逃げるのは我らに腰が抜けたのか!!」
愛紗の叫びに歩きを止めたアキラは人形のように振り向いた。
「逃げる?違う…貴様等はただのオマケだ…オマケとはゆっくり遊んでやるよ…その肉体を傷物にして歯向かわないように躾けて可愛がってやるからよ…」
妖しい笑みをこぼして愛紗達に言い放ったアキラは歩き出した。が、また立ち止まったアキラは振り向いた。
「それから劉備殿…この乱世の世に戦の無い世を作りたければ…もっと現実を知るんだな。現実を見ずに寝言言う程、この戦乱は甘くないんだよ…」
「えっ…」
「おっと…どうやら無駄な事を話したな…」
そう言って微笑むアキラだったが…その笑みは直ぐに消えた。
「次は…大皿の曹操軍だな…」
説明 | ||
かなりの駄文ですねはい… 今回はアキラの性格が大きく変わっています。 それではどうぞ〜 |
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コメント | ||
まぁ内情を知るのは容易ではありませんからね、でも決めつけは良くないですね。殺してから実は『悪い人』説は間違いで『良い人』だった、「よし、次は間違えないようにしよう」とか「貴方は『悪い人』じゃないから助けます」なんて言われてもね。飛躍の為と明言している方が好感持てます。(禁玉⇒金球) 春蘭の片目はここで潰されるのかな(親善大使ヒトヤ犬) ボッコボコだな。肉体的にも、精神的にも。(わく惑星) |
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