太守一刀と猫耳軍師 2週目 第4話 |
華?の客将になってからというもの、戦えるようになったので兵士の調練を手伝い、日が落ちた頃から政務を始め、
黄巾党が現れたとの報を聞けば星や天泣と共にすっ飛んでいっては討伐をする。
仕事が終われば疲れて寝るだけ。
と、前にも増して忙しい日々が始まっていた。
まぁコレを望んだのは俺なんだけど。一心不乱に仕事をしていれば余計なことを考えなくていいし。
華?はそんなにがんばらないでもいい、といってくれてたんだけど。
暇な時間があるとまた余計なことを考えて落ち込みそうで、なるべく仕事に没頭するようにしていた
「えーい!」
「ふっ!」
金属を打ち合わせる激しい音が城内に響く。ここにきてから日課になった朝一の鍛錬。相手はだいたい天泣。
取り敢えず朝食前に起き出して天泣を起こす所からはじまり、それから1時間ほど繰り返し勝負をするのが日課になっている。
実力はだいたい五分って所。時々星も加わるが、だいたい2人揃ってコテンパンにのされる事になる。
とはいえ、全く勝負にならないということはなく、何度かうちあう事はできる。
以前はかすりもしないどころかうちあう事すらできなかったけど。服に武器がかするぐらいにはなった。
天泣と俺VS星、だとたまに勝てるし。
「そろそろ朝ごはんかな」
「そうですねー、いい頃合いだと思いますー」
やっぱりどう控え目に見たところで武官には見えないよなぁ、天泣……。
『頭お花畑のどっかのいいとこのお嬢様』っていうのが第一印象。盗賊だったら迷わずかっさらいにいくレベル。
油断して浚ったりしにいこうものなら、あっと言う間に首と胴体がおさらばするわけだけど、この子コレで結構容赦無いし。
でもこんな様子だけど、一番勘が鋭い気がする。劉備の事を聞いた時の俺の狼狽を察したのも天泣だけだったし。
それに、気分を晴らすには体を動かすのが一番、とかいって斬りかかられた時はびっくりしたけど、
後で考えればあれのお陰で確かに気分は変わったわけだし、今は天泣に感謝している。
まぁそれもあって、朝が弱い天泣を起こしにいくって買ってでたんだけど……。
毎朝起こすのが結構大変。
天泣はものすごく寝起きが悪い。一発で起こせる天梁が凄いとおもう。
あと、桂花が「一刀様に起こしてもらえる天泣が羨ましい」なんて言ってるのを聞いてしまったので今度起こしに行ってみようかなどと計画している。
───────────────────────
そんな感じで今日も一日が始まり、今日もいつもと変わらない日かとおもいきや、朝っぱらから黄巾党が出たとの報告があり、星と俺とで討伐に向かった。
相手の数が少なかった事もあり、討伐は滞り無く終わり、現在その帰り道。馬に揺られながら街へと帰る、多分帰る頃には夕刻か。
「北郷殿」
「ん? どうしたの? 趙雲」
「それですそれ、前々から気にはなっていたのですが、その呼び方。気をつけたほうがよろしいかと」
「ん、ん? どういうこと?」
「ふむ、天ではそういう風習はありませんでしたか。姓、名、字、真名と、名には4通りあるのは知っての通り。
姓は家や一族の名、なのはご存知ですな?」
「うん、知ってる」
「次に名。これは個人の名ということになるわけですが、コレを呼ぶことはあまり無い。
これで呼ぶのは基本的に親や兄、姉、主君等、自分より上の者、というのはご存知か?」
「ええ!? そうだったの!?」
初耳だ。正直めちゃめちゃ驚いた。でも読んだ本だと普通に、曹操とか劉備とか、姓名で呼んでる事が多かったような……。
「左様、古くは真名と同じように名とは『その人そのもの』であり、軽々しく呼んではならない物で、無礼に当たる。
なので名に変わるものとして『字』がある。私であれば子龍。私が北郷殿を島津殿と呼ばず、字で呼ぶのはこのためですな。
今は『真名』に取って代わられたためにそう思わない者も多いですが、失礼な奴だと思う人間も少なくない
先日も子魚殿の事を『華?』と呼んでいたので叩きだされるかと思いヒヤヒヤしておりました。
子魚どのが気にしない人間で助かりましたな?」
「詳しいなぁ……」
……ああそうか、前は俺が「主君」で一番上の立場だったから普通に姓名で呼んでて問題なかったのか。
「なに、旅の途中で会った学者の話しの受け売りです。
私も『名』がそこまでの意味を持つというのはその学者に会うまで存じませんでした」
そういえば、星にかぎらず、だいたい名乗りを上げる時とか、なんか大抵名は言わず「関雲長」「趙子龍」「曹孟徳」なんて名乗ってたきがする。
霞も「張文遠」っていってたっけ? あれ? ちょっとまてよ?
「でも、字が無い人って居なかったっけ?」
華雄とか字を聞いたこと無いし……。
「そも、字というのは社会に出る時に作る物。字を必要としないと考えれば作らない物。
例えば非常に小さい村落の出であるとか。もしくは社会に出る必要が無い者は作られないとも言っておりました」
なるほど。そういうことになるのか。
「てことは俺が趙雲、って呼んでたのは実は凄い失礼だったのか」
「いえ? 北郷殿は名目上とはいえ私の上司なので問題無いかと。
ただ、知らないようでしたので。
事初対面の相手に対しては気をつけたほうが良いかと。
首が飛ぶことはなくとも、相手が気にする相手なら、いい印象は無いでしょうからな」
「気をつけるよ。そういえば、一緒に行動してしばらくたつけど、俺は子龍に認めてもらえそうかな?」
「ふむ……」
何かを考えるように目を伏せて。
「用兵術はまだまだ稚拙とはいえ、見る物はある。それに、多数の相手に怯むこと無く立ち向かう心意気も好ましい……」
ぶつぶつと何か言いながら顔を上げて。
「北郷殿は私をどうお思いで?」
「ん、俺は子龍の事をもう認めてるよ。俺より数段強いのはよくしってるし、
旅をしていろんなことを知ってるのも凄いと思うし」
「ならば、これからはお互い真名を呼び合うとしましょうか。私の真名は、ご存知でしたな? 一刀殿」
「うん、よろしく、星」
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軍の調練も終わり、これから政務が待っている。
桂花や天梁も頑張ってくれてるし、華?も俺の出した案を積極的に採用してくれるおかげで、街に活気がでてきた。
治安がよくなっているとの評判もたち始め、人も集まりはじめた。領土がうまくまわりはじめればやる気も出る。
休憩がてら庭を歩いていると窓からじーっとコチラを見ている女の子と目があった。
誰だろう? 軽く手を振ると、笑って手を振り返してくれる。
年の頃は10歳前後? 璃々ちゃんより年上には見えるけど……。
灰色の髪ってことは、見るのは初めてだけどひょっとして華?の娘の……? そういえばあの時みた肖像画に似てるきがする。
てことは華?っていったいいくつなんだろう。この時代はこんな子でも嫁に出せたぐらいだし、華?自身も若くで結婚したんだろうか。
見た目の年齢はだいたい紫苑とトントンだけどなぁ……。
「麗−レイ−も北郷殿を気に入ったみたいね」
やってきたのは華?。
俺の横に立って窓を見ながら、ため息をつく。
「あれが子魚の娘さん?」
「そうよ、今日は調子がいいみたいだけど、重い病でもう長くないって言われてるわ。何か知恵は無いかしら?」
「んー、病気とかは分からないからなぁ。まだ桂花や天梁のほうが詳しいとおもう」
といっても、この時代の医療ってそうとうアレなはずだしなぁ……。
「良ければ会って話してみてくれない? 病は気からっていうし、あの子も話してみたいって言ってたからきばらしにね」
それなら、と、俺は華?に案内されて娘さんの部屋に向かう。
部屋に入れば、そこにはさっきの女の子。
「この人が天の御遣いさん……?」
女の子の問いかけに軽く頷く。俺は最初は黙ってたんだけど、天泣が暴露しちゃったんだよなぁ……。
何で黙ってたかって言うと、前の時は袁紹や華琳にさんざん馬鹿にされたので、言わない方がいいかと思ったため。
「姓は島、名は津、字は北郷だよ。君は?」
「姓は華、名は表、字は偉容、です」
字? 確か星は社会にでる頃に字を作るって言ってなかったっけ。10歳ぐらいだとどうなんだろ?
あ、先が短いって話しを聞いたから早めにつけたっていうのも考えられるかな?
近くで見ると体は細く、血色も悪いように見える。
「偉容ちゃんね」
「御使い様、私の病気、よくなりますか?」
「きっと良くなるよ」
そういうのがやっと。俺は医者じゃないから、何の病気なのか、どの程度悪いのか、見当もつかない。
ただ、前は確か、これから1年経つか経たないかぐらいで死んでしまっている、ということを知るのみ。
ふっと、墓にすがりつくように泣いていた華?を思い出し、表情に出そうになるのを必死に押しとどめる。
「御使い様?」
「ん、なんでもないよ。天に居た医者に、偉容ちゃんを見せられないのが悔しいなぁ。
もしそうできたら、きっと治るのに……」
「天の御使い様でも、分からないんですね」
「手を出してくれる?」
俺が言うままに、差し出される小さな手を両手で包むように握る。
「俺は天から遣わされたんだ、俺の言葉は天の言葉だよ、天が治るっていってるんだから絶対治る」
せめて、少しでも気が楽になれば、そう思ってついた嘘。この子がそれを見抜いているかどうかは分からない。
でも、にこりと笑ってくれて、気が楽になった。
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「やはり、わからないのね」
「俺は医者じゃないからなぁ」
「医者、ね……。また遠方から医者を呼ばないといけないのね……。う……」
華?が急に腹を抑えて壁に手をつく、額には脂汗。ひょっとしてストレス性の胃痛?
まぁ、このご時世、ストレスの種には事欠かないだろうけどさ……。
前の時はこんな素振り見せなかったと思うけど。
「大丈夫?」
「え、ええ、しばらく経てば収まるから。いたたた……」
「うーん、医者かぁ……」
近くにいい医者に心当たりがないわけではないんだけど。
史実か演義だったか忘れたけど、華陀、という人物が確か曹操の下に居たハズなんだよな。
問題は、そんな人物を貸してくれるかどうか、と言うところ。
「体調が悪いなら早めに休んだほうがよくない?
俺達が来る前は連日遅くまで仕事してたって聞くしさ」
「北郷殿がそれを言う? 客将に仕事をさせて休んでいるわけには、うぅ……」
「そんな様子を兵に見られたら士気にも関わってくるし、それに子魚が倒れたら偉容ちゃんはどうするのさ。
仕事は俺が代わりにやっとくから」
「……そうね、あなたはどうも大国で政をやったこともあるようだし、間違いは無いでしょう、任せるわ」
「!」
「驚くほどのことじゃないわ、みてれば分かるわよ。きっと、子仲ちゃんと文若ちゃんもしってるわよ。
今日は休むわ……」
お見通しかぁ。まいったな。
その日、華?の残りの仕事を引き受けたために寝たのは深夜となり、翌朝寝坊して珍しく天泣にたたき起こされる事になった。
あとがき
どうも黒天です。
今回は星と華?のお話でした。
何か華?の特徴が無いかと考えて、浮かんできたのがストレス性胃炎でした。
私の作品ではこの人何かと苦労人ですし。
さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。
また次回にお会いしましょう。
説明 | ||
今回は星と華?がメインのお話……のつもり | ||
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コメント | ||
黒天さん、ありがとうござます。(いた) >>陸奥守さん 確かに、そんな感じになりそうではありますねぇ……。華?さんの胃が大変なことになりそう……(黒天) >>いたさん 諱とおそらく同じかな? 避諱(諱を避ける)という考え方もあったらしいですし(黒天) >>雪風さん ですね、原作でも普通に姓名で呼んでいた事があるので、ここではそこまででは無い感じです。(黒天) >>禁玉⇒金球さん そういう人もいるんですね。30台キャラですかー、まぁ年齢は明言してませんし妄想次第?(黒天) >>naoさん 捕まえられますかねぇ、華陀……(黒天) >>南無さん ですねぇ、何でこんなに苦労人になっちゃったんだろうw(黒天) >>kyouさん なかなか楽しい事になってますねw(黒天) >>青山修史さん なんという医者王……(黒天) 後々の華?さんの最大の頭痛の種とストレスの原因はたぶん一刀達をよこしなさいとか言ってくる某覇王(笑)と一刀ハーレムの規模でしょう。(陸奥守) ↓戦国時代の諱とかと同じなんですかね?(いた) 華子魚・・苦労性から早く倒れそうな予感が・・、名は確か忌みの意味を持つので名で呼ぶ・名で呼ばれるのは屈辱的な意味があったような・・・(雪風) 戦国のBJこと「おじちゃん」が来るのか…今のうち唾付けときなさい。熟女万歳せめて三十代キャラが欲しいな、女の三十代はそりゃもう堪らないねぇ。(禁玉⇒金球) 医者王がなんとかしてくれるさ!華琳の元にいるの珍しい気がw旅してばっかなイメージw(nao) 華?さんは本当に苦労する御方(泣)(南無さん) 医者王様の出番ですね〜。 月「へぅ!?皆さん、不潔ですぅ!」某軍師「もげりょ。……あわわ、噛んじゃっら……」璃々・麗「もげ…(モゴモゴモゴ)」華?・黄忠「子どもがそんな事言っちゃ駄目よ〜。」黄忠「そう言えば……この作品のご主人様ちょっと失礼な事考えていましたわね?射抜いてあげましょうか?うふふふ……」(kyou) 某WEBゲームの華佗の真名を医者王にしてた人いたなぁ〜 医者王 ○○ ・・・・・(真山 修史) >>nakuさん たっつーさん ゴッドヴェイドー、五斗米道 ですか。なんか真の華陀は檜山ボイスの医者王だとかなんとか。 というかここでも妄想がダダ漏れになってる人が!?(黒天) >>たっつーさん −火さん アルヤさん 風見海斗さん ここの読者さんは仲良しなのである種安心できますw(黒天) 幻想郷の某裁判官「な、な、なんて破廉恥な!?↓のものは全員有罪(ギルティ)です!!」(風見海斗) 病とまとめて体も食っちまうわけですね(ゲス顔(アルヤ) 抱けば直るんじゃね?(ゲス顔)(一火) |
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