英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 外伝〜白隼(リベール)の決断〜後篇
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〜グランセル城〜

 

「”お詫び”……………?」

「一体何を御用意されたのですか………?」

二人の話を聞いたクローディア姫は不思議そうな表情をし、アリシア女王は真剣な表情で尋ねた。

「―――ファーミシルス。あの契約書を渡してくれ。」

「ハッ!どうぞ、こちらに書かれてある内容をお読みください。」

アリシア女王の疑問を聞いたシルヴァン皇帝に促されたファーミシルス大将軍は敬礼をした後カシウス准将に紙をわたし、カシウス准将はアリシア女王に受け取った紙を渡した。

「こ、これは………!?」

そして紙の内容を読んだアリシア女王は目を見開き、震える声で紙の内容を声を出して読んだ。その内容を要約すると”ヴォルフ砦、ハーケン門にメンフィル帝国軍を通せばメンフィル帝国は3箇所、クロスベル帝国は2箇所のそれぞれが制圧した領地をリベール王国に譲渡する事。さらにメンフィル帝国は”謝罪金”として今後クローディア姫が王位を継ぎ、次代に王位を譲るまでの間はメンフィル帝国の税金の約1%を毎月リベールに支払う事”であった。

「なっ………!?せ、制圧した地域の一部の統治権をリベールに譲渡する上……メンフィル帝国の税金の一部の贈与!?」

「ふ、普通に考えてもありえません!このような滅茶苦茶な条約は………!?」

「………………………」

「お、おい……今のを聞いたか!?」

「あ、ああ………でも本当にあっていいのか……!?そんなありえない事……!」

アリシア女王が紙の内容を声を出して読み終えた後、クローディア姫やユリア准佐は驚いて声を上げ、カシウス准将は目を細めて二人を見つめ、さらにアリシア女王達の背後に控えている数人の王室親衛隊員達は顔を見合わせて混乱していた。

「―――ちなみにこれが我らメンフィル帝国が貴国に毎月贈与する予定の税の額と詳細だ。拝見するといい。」

さらにシルヴァン皇帝は書類を出して、アリシア女王の目の前に置き

「――拝見いたします。………なっ!?」

書類の内容を確認し終えたアリシア女王は目を見開き

「そ、そんな………!?この額だけでもリベールの民達が王国に毎月納めている税の約10……い、いえ20倍は軽く超えていますよ………!?」

「そ、それでもメンフィルにとっては約1%だなんて……!」

「………道理で我が国を含めた他国に援助する余裕がある訳ですな………」

クローディア姫は信じられない表情で声を上げ、ユリア准佐は驚き、カシウス准将は疲れた表情で溜息を吐いた。

 

「――――国境に他国の軍隊……しかも同盟を結んでいる国の軍隊を通すだけで貴国の領地や民が増える上長期間メンフィルより多額のお金を受け取れ、国家予算に組み込めるのです。貴国にとってこんな素晴らしいお話、今後一切ないかと思われますが?」

クローディア姫達が驚いている中、ルイーネは微笑みながら尋ねてシルヴァン皇帝と共にアリシア女王を見つめた。

「…………………………………わかりました。すぐに手配致します。」

シルヴァン皇帝とルイーネに見つめられたアリシア女王はしばらくの間黙って考え込んだ後重々しい口調で答え

「お祖母様!?」

「陛下!?」

「……………」

アリシア女王の答えを聞いたクローディア姫とユリア准佐は声を上げ、カシウス准将は目を伏せて黙り込んでいた。

「――――感謝する。では近日中に正式な契約書を用意し、またこちらに参上する。」

「ご英断、お見事ですわ。さすがは”賢王”と名高いアリシア女王陛下ですわ。―――それでは私もこの後”クロスベル帝国を建国する為”に再び帰国しなければいけませんので失礼いたします。フフ、次は恐らくクロスベル皇帝ギュランドロス・ヴァスガンの妃として”もう一人のクロスベル皇帝”ヴァイスハイト・ツェリンダーの妃共々皆様の前に姿を現すと思いますわ。」

一方シルヴァン皇帝とルイーネはそれぞれアリシア女王達に言った後その場から去ろうとしたが

「―――ああそうだ。言い忘れていたが………既に遊撃士協会も今回の件は承知済みで、介入はしないという契約と後は暗君ディーターに従う将――――アリオス・マクレインのA級正遊撃士資格の剥奪も完了している。なので”百日戦役”のように彼らに仲裁してもらう考えは持たない方がいいと思うぞ。」

何かを思い出したシルヴァン皇帝は振り向いてアリシア女王達に言い

「!!」

「そ、そんな!?」

「既に遊撃士協会にまで手を回されていたのか………!」

「一体何故遊撃士協会がそのような事を承知されたのでしょうか………?」

シルヴァン皇帝の説明を聞いたアリシア女王は目を見開き、クローディア姫は信じられない表情で声を上げ、カシウス准将は厳しい表情で呟き、ユリア准佐は考え込んだ。

 

「――――”結社”によるエレボニアの帝都ヘイムダルを中心とした遊撃士協会支部襲撃事件。あの事件に関わった貴方なら、その後エレボニア帝国内の一部の地域を除いた各遊撃士協会支部はどうなったかご存知かと思われますが?”剣聖”カシウス・ブライト。」

「!!まさか………制圧したエレボニアの地域内に情報局の手によって次々と撤退させられた遊撃士協会の支部の復活の許可を引き換えにしたのか……!?」

不敵な笑みを浮かべたレーヴェに尋ねられたカシウス准将は目を見開いた後、厳しい表情で声を上げ

「フフ、さすがは”本物”の”剣聖”ね。クロスベルにいる”偽物”の”剣聖”とは大違いだわ。」

「ちなみにアリオス・マクレインがクロイス家に手を貸し、さらにかなり以前から遊撃士協会の目を誤魔化して影で動いていた事実に遊撃士協会は大層お冠のようでして………フフ、アリオス・マクレインのA級正遊撃士資格剥奪を依頼しましたところ、既に資格の剥奪は完了していると報告を受けましたわ。」

ファーミシルス大将軍は不敵な笑みを浮かべて感心し、ルイーネは微笑み

(……アリオス………あの馬鹿弟弟子が………………お前がいれば遊撃士協会は大丈夫と安心していたというのに……………まさかリシャールの二の舞になるとは……………)

カシウス准将は複雑そうな表情で黙り込んだ後両手の拳を強く握って怒りの表情で身体を震わせ

「それとカシウス・ブライト。貴方にとっては朗報よ。――――アリオス・マクレインのA級正遊撃士資格の剥奪に伴い、”ファラ・サウリン”卿―――いえ、エステル・ファラ・サウリン・ブライトがS級正遊撃士の最有力候補に、ミント・ルーハンス・ブライトがエステルに次ぐS級正遊撃士候補として挙がったみたいよ?―――さすがは”英雄”の家系と言った所かしらね?」

「エ、エステルさんとミントちゃんが!?」

「ふ、二人ともまだ成人もしていないというのに………!」

「………………………」

ファーミシルス大将軍の話を聞いたクローディア姫は声を上げて驚き、ユリア准佐は信じられない表情をし、カシウス准将は重々しい様子を纏って黙り込み

「……それどころか、エステル・ファラ・サウリン・ブライトについては将来的にはS級よりも上のランクに値する歴代初のランク――――”SS級”への昇格も考えているそうだ。」

「なっ!?」

「”SS級”………!?」

「………………………!」

「遊撃士協会がエステルさんの事をそこまで高く評価しているなんて………」

さらにレーヴェの話を聞いたカシウス准将は声を上げて驚き、ユリア准佐は驚きの表情で叫び、クローディア姫は目を見開いて絶句し、アリシア女王は信じられない表情で呟き

「……まあ、彼女の今までの功績やメンフィル(われわれ)から爵位を貰っている事やメンフィル皇家(われわれ)やリベール王家(あなたたち)からも絶大な信頼を寄せられている事も考えれば納得できる結果だと思うが?爵位を授けた側としても誇らしい話だ。―――それでは我々はこれで失礼する。」

シルヴァン皇帝は口元に笑みを浮かべて言った後、外套を翻してファーミシルス大将軍やルイーネ達と共にその場を去った。

「お祖母様っ!どうして先程の話を受けられたのですか!?あんな話を受けてしまえば、エレボニアとカルバードは………!」

シルヴァン皇帝達が去るとクローディア姫は声を上げた後悲痛そうな表情をし

「………クローディア。私達はリベールの民達が平和な暮らしを続けさせる事が義務。……”ハーメル”の件が明るみになれば、王国内でもようやく収まった混乱が再び起こる事はわかるでしょう?」

尋ねられたアリシア女王は重々しい様子を纏って尋ね

「………下手をすれば国民達のエレボニアへの復讐心がわきあがって、開戦を迫るかもしれませんしね………しかも今のリベールはあの頃と状況が違い、あのメンフィルと同盟を結んでいる形となっていますし………実際”異変”や”異変”後の復興の際も力を貸してくれましたから、万が一リベールの方から戦争を仕掛けた際、メンフィルも共に戦うと思っているでしょうし………」

「さらに国境に他国の軍隊を通すだけで領地が増える上、長期間メンフィル帝国から毎月途方もない金額が支払われ、国家予算に組み込める事………王国内の政府関係者や軍の上層部が知ったらほぼ全員、賛成するでしょうしな……」

アリシア女王に続くようにユリア准佐は複雑そうな表情で、カシウス准将は重々しい様子を纏ってそれぞれの推測を口にし

「あ……………」

アリシア女王達の話を聞いたクローディア姫は不安そうな表情で呟いた。

「……七耀教会の威光が役に立たず……遊撃士協会も動かないとなると………”百日戦役”の時のようにもはや戦争を止める事はできなくなってしまった………恐らく下手をすれば二大国が滅ぼされる可能性が出てきましたな…………」

「「……………………」」

重々しい様子を纏って呟いたカシウス准将の言葉を聞いたクローディア姫とユリア准佐はそれぞれ辛そう表情で黙り込み

「……結局、”百日戦役”のように、また話し合いでは解決できませんでしたか…………………―――空の女神(エイドス)よ………混迷に満ちたこのゼムリア大陸に生きる人々にどうか一人でも多くの者にお慈悲を………」

そしてアリシア女王は己の無力を感じた後重々しい様子を纏ってその場で強く祈った。

 

―――こうして、独立国の無効宣言とマクダエル議長の引退、クロスベル帝国の宣言と同時にメンフィル帝国の同盟の余波は徐々に国内外に広がっていった。結界に包まれた市内の動きは杏(よう)として知れなかったが………国防軍兵士達の動揺も少なくなく、タングラム門などでは指揮系統の乱れも表面化し始め、アリオス、ダグラスも立て直そうとしたが、二人の努力は虚しく、兵士達は混乱し続け、さらには脱走者やベルガード門に投降して”六銃士派”に鞍替えする者達まで現れ………もはやタングラム門の守りはダグラスとダグラスを慕う一部の部隊のみでタングラム門の守りはがら空き状態となった。………さらにアリオスは市民達の期待を大いに裏切った”クロスベル最悪の裏切者”として市民達全員から嫌われる形となると共に遊撃士の資格も剥奪された。……………そしてアリオスのかつての名声や活躍、そして地位が全て泡となって消えた事にミシェル達は複雑な気持ちになっていた……………そんな中―――ロイド達の乗艦するメルカバにある人物からの連絡が入って来た……………

 

 

 

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コメント
感想ありがとうございます 本郷 刃様 ある意味賄賂に近いですがリベールにとっても断れない条件ですものねww M.N.F様 確かに言われてみればww(sorano)
『二大国が滅ぼされる可能性』 いや"二大国を滅ぼす方向性"で話進んでる気がするんですが・・・(M.N.F.)
リベールの引き込み完了ww(本郷 刃)
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