武器の御遣い 第弐章
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現在、織田軍は味方に組み込むべき反乱軍と殲滅するべき敵と成る遠呂智軍を探しながら行軍して居た。が………

 

 

秀吉「あれ?ここ一回来たことがあるような……」

 

 

行軍している織田軍の戦闘を歩く秀吉が唐突に歩みを止めて呟く

 

 

愛莉「ついでになんだか騒がしくなってきてるような」

勝家「戦か?」

 

 

歩を進めるにつれて前方の丘の向こうから微かに聞こえていた騒音が徐々にはっきりとしてくる。

長い間戦場で同じような音を聞いたことが多数ある

彼女らにとってはそれが何かを予想するのは容易かった。

 

 

織田兵1「伝令!!この先遠呂智軍と反乱軍と思しき軍が戦闘中!!」

 

 

本隊より少し先行して周りを偵察させていた兵士が駆け足で報告を届けてきた。皆の予想は的中し、同時に緊張で空気が張り詰めた

 

 

信長「戦況は?」

織田兵1「それが、混戦の極みでして」

勝家「むう、それでは援護するにも」

秀吉「そうだ!ここ前に島津さんと戦った・・・!!」

勝家「何?」

秀吉「っていうことは………あった!!信長様!向うの丘に登れば戦場が一望できますよ!!」

信長「ほう、では行くとするか。」

 

 

信長の一言で織田軍は秀吉の指さして居る方向に反転して丘を登った

 

 

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孫市「おお、すっげー。丸見えじゃん」

 

 

秀吉が言ったとおりそこは戦場一帯が一望できる場所であった。ここは秀吉が島津と戦った地。そう、九州である。鶴賀城を中心にして、いくつかの砦を支点になかなか大規模な戦が展開されていた。

 

 

紫苑「随分ゴタゴタしているようですけど」

秀吉「各個判断に任せる的なやつじゃないですか?」

 

 

そう考えるのも無理はないほど戦場は混乱していた。

作戦など何もないかのようでどこの部隊も好き勝手に動いているように見える。ある部隊は鶴賀城を背に遠呂智軍と真っ向からぶつかり合い。

ある部隊はわざとらしく退却する敵を勢いのまま追いかけている。

自軍より大きい軍を相手にそれは如何なものかと問いたくなる。

 

 

勝家「まったく、指揮をしてるのはどこのどいつだ?」

愛海「………紫苑、あれ」

紫苑「え?」

 

 

何かに気付いた愛海が紫苑に声を掛ける。紫苑も愛莉も、愛海が指差した方向――鶴賀城――に目を細める。かなり距離があるため個人を断定することはできないが、辛うじて牙旗だけを認識することができた。

 

 

『 公 孫 』

『 荀 』

『 荀 』

 

 

と描かれた旗はもう幾度も戦場で目にした。

それは遠くからでも見間違えようがなかった。

 

 

紫苑「白蓮ちゃんに桂花ちゃんに銀花ちゃん!!」

愛海「……よかった。白蓮達、生きてた」

秀吉「ぱいれんにけいふぁにぎんか?」

愛莉「蜀の武将と魏の軍師だよ。名前は白蓮が公孫賛、桂花が荀ケ、銀花が荀攸」

秀吉「公孫賛って、幽州の太守だった?それに荀ケ、荀攸って王佐の才の?」

信長「ほお」

紫苑「見て、愛莉ちゃん!愛海ちゃん!あの中央の城の牙門旗!!」

 

 

今度は紫苑が指さした方向をが振り向く

 

 

『 夏 侯 』

『 曹 』

 

 

と描かれた旗が風に靡いている。蜀のものではなかったがその旗は他国にも広く知れ渡る武人のもの。

 

 

愛莉「おお!あれって確か夏蘭と琳璃のだったけ?それにあの東南のは……えっと」

 

東南の砦にも幾つか旗が見える

 

 

『 郭 』

『 諸 葛 』

『 袁 』

『 張 』

『 厳 』

 

 

と、それぞれの旗に書いてある

 

 

紫苑「花咲里ちゃんに海里ちゃんに美羽ちゃんに七乃さんに桔梗も居るわね」

秀吉「お、始めて聞く名前」

愛海「………夏蘭は夏候覇、琳璃は曹洪、花咲里は郭淮、海里は諸葛誕、美羽は袁術、七乃は張勲、桔梗は厳顔」

秀吉「え、袁術!?この軍大丈夫なの?」

愛莉「又しても認識に食い違いが有るみたいですね。そちらの世界ではどうか知りませんが、こちらの世界の美羽――袁術は貴女が思うような愚者ではありませんよ?腐った部下を排除するために愚者を演じていた時期が有ったらしいですが」

秀吉「へぇ〜、そうなんだ。あれ?でも何でそんな有名処が集まってこの戦況?」

 

 

秀吉の疑問は尤もだった。美羽は置いとくとして。夏蘭、琳璃、桔梗は一騎当千の武将。花咲里、桂花、銀花は知に秀でる優秀な軍師。七乃、海里は本職は軍師だが、一騎当百位の武働きが出来る。白蓮は文武どちらも平均的に優秀だ。それだけの人材が有りながらこれほどに混戦しているのか

 

 

紫苑「………皆さん我が強いのです」

 

 

そう、我が強すぎるのだ。桔梗は酒と喧嘩を何よりも好み、じっとして居る事が苦手な女傑。琳璃は自由気侭。夏蘭と七乃は能天気。花咲里は病弱で風邪を良く引くが『死ぬ気で頑張ります』と言って咳込みながら仕事をしては途中で力尽きて医務室に運ばれる。桂花は華琳に罵られても快感を感じる程心酔している。銀花は優秀なのだが、唯と同じく面倒くさがり屋。海里は生真面目・頑固・視野狭しと三拍子揃った優秀だがちょっと面倒くさい性格。白蓮は平均的に優秀だが、それ故に何かと貧乏くじを引きがち。

 

 

 

 

さて、こんだけ我が強い連中が一つの軍に入ったらどうなるか。思考時間は有りません。即答でお願いします

 

 

正解者以前に答えてくれる人や呼んでくれてる方が居るか分かりませんが、オバケ忍者の大好きな状況、つまり混沌の出来上がりです。はい

 

 

 

 

紫苑は現在戦っている者達の事を戦国勢に説明する。普段は手綱を握る者が居る故、余り暴走しないが、ひとたび首輪が外れれば何するか分からない将が大半だと

 

 

しかし、同じ反乱軍としてこのまま見物するのは忍びない

 

 

信長「秀吉、愛莉、愛海。お主らは東南砦から突出した郭淮と諸葛誕を救援せよ」

秀吉「合点です!」

愛莉「承知!」

愛海「………(コク)」

信長「孫、勝家、紫苑。お主らは夏候覇と曹洪を救援せよ」

勝家「承知!」

紫苑「分かりました」

孫市「おう!」

信長「光秀は予と共に残りを率いて東南砦に残って居る厳顔達を救援する」

光秀「御意!」

信長「全軍、速やかに行動せよ」

 

 

信長の号令と共に各自準備を整え、分担された場所への救援に向かった

 

 

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鶴賀城の城壁で、白蓮、桂花、銀花は頭を抱えていた

 

 

3人の考えは現在一致していた。

 

 

彼女等は頭の中で『どうしてこうなった………』と思いつつ、こんな混戦に成った理由を思い返していた

 

 

しっかりと軍略を練り、戦前の準備は完璧だった。

相手は数で勝るが、将の質・兵の練度・軍師の数等、勝てる要素は十分にあった。

彼女等の指揮に従っていれば。

 

 

しかし………

 

 

遠呂智兵1「どうした!!びびって前に出られないってか!?」

遠呂智兵2「かかって来いよチビ!!その長い髪の毛叩き斬ってやるぜ!!」

琳璃「だってさ、夏蘭」

夏蘭「何だとぉ!?……もう怒ったぞ!思い知らせてやる!!全軍続け!!」

 

 

 

 

桔梗「敵が来たぞ。皆、岩を用意せよ!!」

公孫賛軍兵1「え゛!?し、しかし、まだ指示が」

桔梗「敵はすぐそこに居る!!やってしまえ!!」

七乃「あ!ちょっと桔梗さん!勝手な行動は控えてください!って、もう岩落としちゃった」

 

 

とか

 

 

海里「おのれ邪悪なる者共め!先ほどまでの威勢はどうした!!」

遠呂智兵3「これは勝てぬ。皆下がるぞ!」

海里「逃がすか!!追撃するぞ!!」

花咲里「ああ、海里殿。お待ちを!げっほげほ」

 

 

何て感じに桂花達軍師が考えた策通りに動かない将が続出しているのだ

 

 

桂花「どうしてよりによって脳筋しか集まってないのよ、この軍はー!!!!!」

 

 

ヒステリックな叫び声を上げるのは魏が誇る天才軍師、荀ケ。先ほどから言うことを聞かない幼稚園児のような武将たちのせいで本陣には彼女の悲鳴にも似た声が反響している

 

 

今現在、反乱軍を指揮しているのは白蓮である。

当初、桔梗・七乃・美羽の蜀軍の4人で行動を共にしていたが、後に夏蘭を初めとする武将や軍師と出会い、比較的大規模な反乱軍を形成するに至った。因みに、白蓮が軍を指揮している理由は軍師達が揃って『暴走とかし無さそうだから』と言う理由と、『真面そうだから』と言う理由と、大規模な軍の指揮をした事のある者が白蓮しか居なかったからと言う理由で白蓮が指揮をしている

 

 

だが軍の中心となる夏蘭、海里、桔梗にはある共通点があった。

 

 

戦や喧嘩に成ると幼稚くなるのだ

 

 

いざ戦となれば命令違反の嵐が本陣を襲う。

もとからの気質に加え彼女達の遠呂智軍に対する怒りがそれを後押しした。

更に付け加えるならば今、公孫賛軍には秋蘭・紫苑・唯と言った幼稚くなった者達のストッパー的存在がいないのだ。

 

 

公孫賛軍兵2「伝令!!夏候覇将軍が曹洪将軍と共に敵軍に対し突出!!」

桂花「あいつが前出ちゃったら伏兵の意味なくなるじゃないの!!すぐに―――」

公孫賛軍兵3「伝令!!厳顔将軍が勝手に投石を開始!!」

桂花「七乃達は何してるのよ!」

公孫賛軍兵3「それが、止める間もなく勝手に」

桂花「こっちの指示を待てって言っといたのに・・・!!(ふるふる)」

公孫賛軍兵4「伝令!!諸葛誕将軍が勝手に追撃を開始!!郭淮将軍が止める為に後を追っております!」

桂花「ああぁぁああ、もう!!」

 

 

その頃、戦場では

 

 

夏蘭「うにゃーー!私はチビじゃなーーい!」

琳璃「夏蘭の奴、突出し過ぎじゃないかな?」

海里「邪悪なる存在は私自ら成敗してくれる!」

花咲里「お、お待ちを〜。海里殿。ごっほごほ」

桔梗「む、殆ど当たらなかったな」

七乃「あぁ〜、だから駄目だって言ったじゃないですか〜」

桔梗「まあ、良いではないか。このまま打って出てぶち当たればよかろう」

 

 

こんな感じに好き勝手振る舞う夏蘭・海里・桔梗。しかし、3つの隊が有る程度進軍した所で

 

 

飛頭蛮「今だ!岩を落として奴等を分断しろ!」

 

 

公孫賛軍と戦っている遠呂智軍の大将の飛頭蛮の命令で岩を落とし、3つの隊と本陣を分断する遠呂智軍

 

 

夏蘭「んな!?本陣と分断された!?」

琳璃「あ〜あ、無理してでも止めるべきだったか」

海里「なに!?本陣と切り離されてしまったか!」

花咲里「ごっふごふ、だからお待ちをと言ったのに」

桔梗「しまった!罠だったか!」

七乃「あーー!もう!だから言ったじゃないですか!」

美羽「七乃!海里達とも分断されてしまったのじゃ!」

 

 

と言う具合に見事に3つに分断されていた

 

 

 

 

桂花「もう嫌……この軍………orz」

銀花「ああ!もう!何でこんなメンドクサイ事に!そうだ、寝よう」

白蓮「まあ、受け入れなきゃなー(棒読み)」

 

 

次から次へと押し寄せてくる悪い知らせに既に戦意喪失気味の桂花。現実逃避に寝ようとする銀花。虚ろな目で棒読みで2人を慰める白蓮。最早3人の精神力のライフゲージは0どころかマイナス値を軽く叩き出していた

 

 

公孫賛軍兵5「伝令!!」

桂花「今度は何よ!!」

 

 

半分涙目で声を荒げる桂花。

最早ヤケクソになった鬼の表情である。

 

 

公孫賛軍兵5「南西より別の軍が接近中!同じ反乱軍だと思われます!!」

桂花「え、味方?」

 

 

この報告で白蓮、桂花、銀花の顔に少し、本っ当に少しだけ生気が戻った

 

 

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夏蘭「琳璃さん!何で止めてくれなかったんですか!?」

琳璃「アホか!頭に血ぃ昇ってるお前を止められるのは華琳か秋蘭位だ!」

 

 

口喧嘩をしながらも寄って来る遠呂智兵を斬り倒していると

 

 

紫苑「あらあら、琳璃ちゃんも夏蘭ちゃんも、喧嘩は後でお願いできませんか?」

琳璃「!」

夏蘭「あ!紫苑!」

 

 

2人の元に遠呂智兵を射殺しながら紫苑が孫市、勝家と共に近付いてくる

 

 

孫市「紫苑!そいつらが夏候覇と曹洪か!?」

紫苑「ええ、そうよ」

琳璃「紫苑、真名を許してるの?」

紫苑「ええ。危ない所を助けて頂いた恩人です。愛莉ちゃんと愛海ちゃんも同じく助けて貰って、行動を共にしています」

 

 

と、話して居ると

 

 

遠呂智兵4「こ、こいつ等!舐め腐りやがって!!女が3人増えただけだ!構う事はねぇ!やっちまえ!」

 

 

と、雄叫びを上げて突進してくる遠呂智兵達。しかし

 

 

勝家「ふん!ぬるいわ!!」

 

 

勝家が先頭を走って来た遠呂智兵3人程を右手に持った大斧で両断する

 

 

勝家「これでは仲間内での話しも出来んからな。まずは周りを片付けてからだ」

紫苑「そうですわね」

夏蘭「よっしゃー!行っくぞー!」

 

 

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海里「済まない、花咲里殿。私の所為で貴女まで危険に晒して」

花咲里「なに、旅は道連れと言います。お気になさらず。ごっほごほ」

海里「………済まない」

 

 

海里は背中越しに花咲里に謝罪する。幸運か不運か、2人だけで突出した為に部下は殆ど失っていない。まあ、だからと言って2人で部下を失わなかった事を喜んでも居られない

 

 

方や、本職の武将と比べると可也劣る武力しか持たない(それでも可也強いのだが)軍師と風邪気味の軍師が1人ずつ。方や、1000人強の遠呂智軍。誰が見ても結果は一目瞭然である

 

 

花咲里「まあ、欲を言えば、最後に北郷様に会いたかったです」

海里「……それは私もです」

 

 

2人で想い人に想いを馳せようとした、その時であった。

 

 

遠呂智兵4「ほ、報告します!!西より敵援軍と思しき部隊が!」

遠呂智兵5「ぐわあ!?」

 

 

ドサッ

 

 

その悲鳴は遠呂智軍の後方から聞こえた。

そして、まず彼らを襲ったのは注意の向いていない背後からの急襲であった。

死角からいきなり斬り付けられた事に混乱し出す遠呂智軍。

一方、2人は援軍の事等聞いていないので、少し呆然とした面持ちをしていた。

 

 

暫くすると

 

 

愛莉「海里さん!花咲里さん!ご無事ですか!?」

 

 

遠呂智兵を斬り倒しながら愛莉と愛海が飛び出して来る

 

 

海里「! 愛莉さん!?」

花咲里「おお、愛莉殿に愛海殿。ご無事で何よりです。ごっほごほ」

愛莉「いや、花咲里さん。それはこちらの台詞です」

 

 

と、話し込もうとした時

 

 

秀吉「愛海に愛莉!話し込まないでくれるかな!?私達大変なんだけど!?」

愛莉「ああ、申し訳ありません秀吉殿!愛海、海里さん、花咲里さん。取敢えずここいらの敵を片付けましょう」

海里「分かりました。そうしなければ気の休まる暇も無いですからね。花咲里殿も休ませなくては」

花咲里「いえ、戦果は何時も以下。されど体調はいつも通り。死ぬ気で頑張りますよ!ごっふごっふ」

秀吉「…………本当に大丈夫かなぁ」

 

 

最後まで締まらない突出組であった

 

 

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桔梗「ふむ、囲まれてしまうとは。どうしたもんかのぉ」

七乃「どうしたもんかのぉ。じゃあありませんよ!どうするんですか!?兵達皆砦に居るんですよ!?」

美羽「ど、どうするのじゃ桔梗よ!流石に七乃と桔梗の2人が居ってもこの数はちと大変ではないかの!?」

 

 

美羽のこの言葉を聞いて『そうそう』と言いたげな表情をする遠呂智兵達

 

 

はっきり言おう、((遠呂智兵達|こいつ等))がニヤ着いているのはお門違いという物だ。別に、美羽は桔梗と七乃に2人居ても倒せないとは言っていない。美羽は『大変ではないか?』と言った。つまり『数は多いが2人なら頑張れば何とか出来る』と遠まわしに言っているのだ。勝手に遠呂智兵達が『お前等じゃ勝てんぜ』と取っただけなのだが、だれ1人としてその事に気付かない辺り、見てくれ通り、頭は蛇並らしい。現に、七乃も美羽も上辺は慌てている様に見えるが、微かに笑いを堪えている

 

 

と、その時

 

 

遠呂智兵6「ぐわあ!?」

遠呂智兵7「ぎゃわあ!?」

遠呂智兵8「ひでぶ!?」

 

 

3人を取り囲んでいた遠呂智軍の後方から悲鳴が聞こえた。理由は簡単。3つに分けた織田軍の内、1つが突っ込んで来たからである

しかし、美羽・七乃・桔梗の3人は援軍の事など聞いていないので何事かと困惑し、様子を見る事に徹した

 

 

しばらくすると一人の女性が3人の目に留まった。混乱する遠呂智軍の中を突き進み自ら敵を切り捨てて道を作っている。その女性が近づいてくるにつれて3人は警戒心を強めた。その体から発せられてる尋常ならざる気が可視化されている。否、紫の炎が揺らめくようなその様子は妖気という方が正しいかもしれない。とても普通の人間が発せられる類のものには見えない。そして、その威圧感には遠呂智兵すら恐れ戦いている。そうしている間にその女性――織田信長は目の前の敵を全て斬り倒し、3人の目の前まで近づいてきた

 

 

桔梗「………お主、何者じゃ?」

信長「………うぬ等、厳顔、張勲、袁術で違いないか?」

桔梗「そうじゃ。それより、お主は誰だ?」

信長「………敵ではない」

桔梗「ふむ。まあ、よいか。此処まで来たのなら手伝え」

信長「そのつもりで来た」

光秀「信長様〜!お願いしますから1人で突出しないで下さいよ〜!」

 

 

そう叫んで走って来た光秀に毒気を抜かれた3人は既に信長達への警戒を薄め、遠呂智軍に向けていた

 

 

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遠呂智軍本陣砦後方

 

 

??「さて、そろそろ頃合いですかねぇ」

??「ねーねー!??さーん!まだ突撃しないのー?」

??「そーよそーよ!??退屈なんだけど!」

??「もう少し待ってもらえますか?」

??「姉さん達、ちょっとは静かにして。??さんも確りと考えてるんだから。多分」

??「でもさ、??。??っていつも何も考えて無さそうだしだるそうにしてるんだよ?」

??「?、??ちゃん。ダメだよ思ってても口に出しちゃあ」

??「……………私、泣いても良いですよね?」

??「フフッ、??はんはこれでも高名でとても優秀な軍師どす」

??「??さん達のトコにも居ない?面倒くさがりだけど優秀な人」

??「まあ、確かに居ましたけど」

??「私達の知り合いは??程だらけてないし」

??「…………ふん!こうなったら私がどれだけやれるか見せてやろうじゃありませんか!」

??「クスクス、拗ねてはるの?かぁいらしいわぁ、??はん。持ち帰ってもええどすかぁ?」

??「そろそろ頃合いですしね!じゃあ進軍しますよ!!ええ進軍してやりますとも!私の実力を思い知りなさい!!そして??さん!持ち帰りはダメです!」

??「あん、??はんのいけずぅ」

 

 

遠呂智軍と、遠呂智軍と戦っている反乱軍に気付かれない内に遠呂智軍本陣の後方に回り込んだとある軍の重要人物達がこんな会話をした後、遠呂智軍に築かれないように進軍した

 

 

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遠呂智兵9「鉄鼠様!!敵軍がこの本陣に向かって突撃してきます!!」

鉄鼠「砦を閉めよ!!防御に徹し耐えるのだ!!この戦、ただでは引き下がらぬ!!」

 

 

戦場の最南端にある南砦が御大将の命によりゆっくりと閉じられた

 

 

勝家「む、敵は守りの姿勢に入ったようだな」

 

 

愛莉「今更耐えたところでどうにかなるものではない気がしますが」

 

 

信長「無価値……こじ開けて全て滅すのみ」

 

 

反乱軍による猛攻が開始された。

遠呂智軍は弓などを用いてそれをなんとか凌ぐことしかできない。

もはや完全に戦況は逆転した。

遠呂智軍は圧倒的不利の中、唯々守りを固めるのみであった

 

 

そして、本陣の3人は遠呂智軍のこの行動に不信感を抱いていた

 

 

桂花「(この兵力差で守りを固めるだけだなんて、ただの悪あがき?それとも………)」

銀花「(おかしい、この戦力差。圧倒的不利な状況で守るだけ。何か引っかかる)」

白蓮「(この状況で守るだけ、か。私ならどうするか………)」

 

 

 

3人の心には疑念が幾つか生まれる。

敵が何かを狙っているように思えてならなかった。

圧倒的有利の中の小さな疑惑が桂花達を悩ませていた。

そんなことはいざ知らず信長たちの猛攻は続いた

 

 

琳璃「くっそ〜!!こいつらどんだけ粘るつもりなんだよ!!」

秀吉「もう負けは確定なんだから降参しろー!!」

夏蘭「そうだそうだー!!」

勝家「やはり破城槌でも用意した方が良いか?」

夏蘭「なら私に任せてよ!直ぐに近くの木を切り取って来るよ?」

勝家「よし、じゃあ頼む」

紫苑「なかなかしぶといですね。砦の上の弓兵が特に厄介です」

信長「・・・・・」

七乃「何か変ですね〜」

美羽「七乃〜、どうしたのじゃ〜?」

 

 

 

 

仙狸「そろそろ時間だな。もう少し耐えるんだ!!」

 

 

遠呂智軍の総大将はその時を待っていた。

このまま戦っても自分たちの負けは確定している。

 

 

だからせめて

 

 

遠呂智兵10「報告します!!道を塞いでいた岩の撤去、完了しました!!」

仙狸「よし!!伏兵に合図を送れ!!俺達も行くぞ!!!」

 

 

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織田兵2「伝令!!我が軍の後方に遠呂智軍の伏兵が出現!!さらに敵砦に籠って居た部隊が合流した模様!!」

琳璃「何だと!?」

秀吉「それが狙いだったのー!?」

織田兵2「北方に向けて進軍を開始したようです!!」

琳璃「え?北?」

夏蘭「でも、あそこはこの前が下崩れが有って塞がってるはずだが」

織田兵2「いえ………遠呂智軍が既に瓦礫を撤去しておりますが…………」

夏蘭「にゃんだってー!!!!!」

秀吉「うっそ!?いつの間に!?」

信長「秀吉。西砦に兵は?」

秀吉「い、いえ!一人も・・・!」

琳璃「まずい・・・桂花達が危ない!!」

信長「皆!援軍に向かうぞ!!」

孫市「わかった!」

光秀「承知!!」

光秀「了解しました!!」

紫苑・愛莉「「分かりました!!」」

 

 

 

 

 

 

戦には勝てない。ならばせめて、反乱軍大将の命だけでも………

それが遠呂智軍の狙いであった

 

 

 

 

 

 

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公孫賛軍兵6「申し上げます!!敵伏兵が西砦より本陣に向かっております!!」

桂花「まったく。今日は悪いこと想定すると本当に悪いことが起きるわね」

白蓮「厄日かな」

銀花「寝ちゃダメかな」

 

 

絶体絶命のピンチにも桂花達は何処かだるさを感じていた。

 

 

公孫賛軍兵7「ぐはっ!」

 

 

ドサッ

 

 

桂花「!?」

遠呂智兵11「反乱軍総大将は貴様等だな!!その首貰い受けるぞ!!」

 

 

入り口の前にいた兵士が血を流す。

それを横切って遠呂智軍の兵100人ほどが本陣になだれ込んできた。

 

 

桂花「くっ・・・呑気に構えてる場合じゃなかったわね・・・!」

公孫賛軍兵8「公孫賛様、荀ケ様、荀攸様。お逃げください!!」

公孫賛軍兵9「ここは我々が!!」

公孫賛軍兵10「さあ、こちらへ!!」

桂花「わ、わかったわ・・・」

遠呂智兵11「逃がすか!!」

 

 

ドス!

 

 

桂花「きゃああ!?」

白蓮「桂花!?」

銀花「姉上!?」

 

 

遠呂智兵の1人が放った矢が桂花の足に突き刺さる

今まで経験したことのない激痛に顔を歪め、何とか立ち上がろうとするも傷を負った足が命令通りに動いてくれない。

白蓮と銀花が桂花を担いで逃げようとし、兵士達は必死に彼女達を守ろうとするも、遠呂智兵はそんな兵達を無視して桂花達に近づいていき、3人を取り囲む

 

 

遠呂智11「死ねー!!!」

 

 

ついに目の前にまで迫った遠呂智兵達が剣を振り上げて飛び掛かる。

3人は死を覚悟し、眼を閉じる

 

 

 

 

 

ズシャッ!!

 

 

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一閃の斬撃音。

しかし、自分達に痛みはない。

いつまで経っても刃は自分達に刺さらなかった

3人は少しずつ目を開ける。すると、自分を斬りつけようとしていた遠呂智兵達の足が見えた。

3人はそのまま目線を上へと移動させる。しかし、3人が全体を見る前に遠呂智兵は力なく前のめりに倒れた。

いきなりのことに3人は目を丸くし、動かなくなった遠呂智兵を見る。遠呂智兵には様々な致命傷が有った。

心の臓を貫かれた者、背中に深い傷を負っている者、縦に真っ二つに斬られている者、上半身と下半身が分かれている者、頭と体が分かれている者、喉を切り裂かれている者、幾つもの交差する傷を体中に負った者、首や腰などを圧し折られた者、頭を叩き潰された者、矢が体中に刺さってハリネズミにされた者等

3人は再び顔を上げる

 

 

??「女の子に手を上げるのは如何なモノかと思いますが」

??「仕方ないでしょう、見てくれと同じく頭も蛇並なのでしょうから」

 

 

想定外の事態に困惑する遠呂智軍。

見れば自分を斬りつけようとしていた遠呂智兵は逆に地面に倒れ血を流している。

 

 

遠呂智兵12「な、何者だ!!?」

 

 

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((菖蒲|しゃうほ))「馬謖軍、馬季常」

楓「同じく馬謖軍、凌公積」

玲「同じく等しく、徐元直」

秋桜「同じく高元才」

左近「石田家家臣・島左近!!公孫賛さん、荀ケさん、荀攸さん。お味方しますよ?」

桂花「あ、ありがと。というか、あなた達今どこから?」

左近「砦の壁によじ登って格好良く飛び降りてみました」

4人「「「「同じく」」」」

遠呂智兵12「ええい!女が5人増えたぐらいで何だ!?貴様等も一緒に殺してやる!!」

左近「さっきまで女中心の軍に苦戦してた奴に言われたくないわね。それに無理にあんたらを倒す必要はない」

遠呂智兵12「何!?」

左近「多分もう少しすれば」

 

 

ズシャッ

 

 

遠呂智兵13「ぐわっ!!」

 

 

ザシュッ

 

 

遠呂智兵14「うわぁっ!?」

遠呂智兵12「な、何だ!!?」

愛莉「何が『何だ!!?』だ!!」

夏蘭「お前等!唯で済むと思うなよ!!」

 

 

怒りに肩を震わせる愛莉と夏蘭、そして左近の率いる反乱軍が入り口付近に立っていた遠呂智兵を切り捨てながら登場した。

 

 

左近「ほぉ〜、予想よりも早いですね?」

 

 

ニヤリと笑みを浮かべる左近。

その後遠呂智兵がどうなったかは言うまでもない。

伏兵は殲滅、本陣もついには制圧され、此度の戦は戦中に5倍以上に数を増やした反乱軍の鮮やかな逆転劇で幕を閉じた

 

 

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秀吉「いや〜、それよりも左近!あんた本当に良い時に登場するよね〜!」

左近「ま、ここら辺の地図でも書こうかと彷徨ってたら阿国さんと五右衛門さんに反乱軍の指揮を頼まれましてね。それよりも秀吉さん、殿と一緒じゃないんですか?」

秀吉「え、三成?一緒じゃないよ?てっきり左近と一緒にいるのかと思ったけど」

左近「ハァ、まったくどこにいるのやら」

秀吉「まあ、三成だったら今頃どこかでの目頭抑えてるって」

左近「だと良いんですけどね」

 

 

愛莉「皆さん!ご無事で何よりです!!」

地和「ふん!あたし達を嘗めないでよね!!」

天和「ふっふ〜ん。私達、しぶとさには自信有るからね〜♪」

人和「姉さん、自慢げに言う事じゃないと思うわ」

檸檬「天和達に着いて行ったのよ!」

柚子「しょ、小喬ちゃん。自慢するとこじゃないよ……」

 

 

桂花「あなたが織田信長ね?私は荀ケ。今回の援軍、感謝するわ」

信長「フッ。猪武者どもに随分振り回されておったな? なかなか見てて面白かったぞ?」

桂花「な、何よそれ!?そもそもあいつらが私の指示に従ってれば、あなたの援軍なんか!!………ハァ。ま、もう終わったことだからいいけどね」

白蓮「もうこんな事は御免だ」

銀花「スゥー……スゥー……」

 

 

遠呂智軍分隊との戦闘が終わった後、怪我人の手当てを終えた三国の諸将達は各地で再開を喜んだり、荒事に疲れて気が抜けた体制に成ったりしている

 

 

愛莉「あ!そうだ! 白蓮さん!ご主人様は!?」

白蓮「え? さぁ、私等は成都から逃げて来て集まったから……」

夏蘭「ん?北郷の事か?それなら多分」

愛莉「知ってるんですか!?」

夏蘭「お、おう。まあ、皆と会う前に遠呂智軍の護送部隊をチラッと見ただけなんだが、多分乗ってたのがそうだと思う」

愛莉「な!何で助けなかったんですか!?」

夏蘭「北郷を傷付けずに奪還するのなんて無理に決まってんだろ!?唯でさえ陳留から追っかけて来る部隊を撒くのに必死だったんだから!」

愛莉「そ、そんな。ご主人様……」

 

 

夏蘭の言葉ですっかり暗くなる((数人除く|・・・・))三国の将達。と、その時

 

 

菖蒲「…………って、見事に空気に成ってました馬謖軍隠密の4人ですが」

隠密4人以外「「「「「「「「「「…………え?」」」」」」」」」」

楓「うわ、全員で『え?』って言いましたよ?しかもさっき一緒に砦の壁登って飛び降りた島左近さんまで」

左近「あ、あれ?そうでしたっけ?」

玲「え、酷くないですか?私達初見の島左近さんに忘れられるならまだしも、さっき助けたばっかりの白蓮さん達にまで忘れられるとか。どんだけ私達影薄いんですか?白蓮さんじゃあるまいし」

 

 

今の玲の言葉で白蓮が落ち込んだが、それはさて置き

 

 

玲「私達の主、ひいては迦楼羅様が何もせずに只日和見を決め込んでいるとでも?」

桂花「じゃ、じゃあ何してるって言うのよ!?あんた達馬謖一党とその部下達は超が5個は付く位の戦嫌いなのよ!?」

玲「ハァ、いくら我等が戦嫌いと言えども三国の主要な将兵が行方不明。敵か味方かも分からない正体不明の軍――各地に点在していますが、それが軽く2000万近くの軍勢の出現。そして人成らざる者達の軍勢の襲撃。これだけの戦乱の世に逆戻りする可能性が一度に出現したのです。日和見を決め込む訳が無いでしょう」

桂花「だったら何してるって言うのよ!?」

楓「桂花さん、貴女は我等が隠密集団と言う事を忘れていませんか?いくら迦楼羅様が強すぎて武官顔負けの戦果を残したとしても、迦楼羅様を筆頭に我等は漏れなく隠密です。今一度問います、我等が何もしていないと?」

桂花「……………悪かったわね、あんた達が隠密だって事を失念してたわ」

秋桜「思い出して貰ったなら結構」

秀吉「あの〜、一寸いいかな?」

 

 

三国陣営の者達皆が納得行った様な表情に理解が追い付かない戦国勢を代表して秀吉が声を上げる

 

 

菖蒲「貴女は?」

秀吉「あ、豊臣秀吉って言います」

菖蒲「豊臣殿ですか。私は馬良、字を季常と言います」

楓「私は凌統、字は公積です」

玲「私は徐元直と申します」

秋桜「高順。字は元才」

 

 

秀吉と隠密の4人の自己紹介を聞き、更に先程の桂花の言葉を思い出して、少なくともその場に居る戦国の将達(阿国は除く)は驚愕の表情を浮かべる。何せ桂花の発言を信じるならば、戦国将の中では馬謖とは、才能有るだけの口先ヤローと言う認識(正史の馬謖は強ちその評価は間違いでは無い)であった。

しかし、彼女等はこの世界は自分達の常識とは悉くが異なる世界だと言う事を思い出し、その評価を取り消して話を聞いた

 

 

秀吉「その〜。まず、貴女達4人の主は馬謖で合ってる?」

菖蒲「うん」

秀吉「じゃあ、さっきから出てる名前が馬謖の真名って事で良い?」

菖蒲「是だよ」

秀吉「貴女達の軍?は隠密の軍?」

菖蒲「うん。但し、隠密だけじゃなく、必要に応じて白兵戦も知略戦も攻城戦他、何でもやれるよ」

秀吉「…………なんか、ばk「「「「「「「「「「「「「「「「「「一寸待った!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」ムグッ!?」

 

 

突如として紫苑を筆頭とする三国の将達(隠密4人除く)が秀吉を取り押さえて口を塞ぐ。驚いた光秀や勝家が問い詰めようとしたが、三国の将達の鬼気迫る表情に押し黙る

 

 

紫苑「菖蒲ちゃん達、一寸私達だけで話す事が有るから少しいいかしら?」

菖蒲「構わないよ。ボク達は偶然居合わせただけだけど、急いでる訳じゃ無いから」

紫苑「ありがとうね」

 

 

紫苑はそう言って微笑むと、戦国の将達を集め、小さい声で馬謖軍に対する『禁句』と、その『禁句』を言った者達の末路を伝える。『禁句』は軍内の1人1人に寄るが、『共通禁句』は『化け物』と言う事。その『禁句』を言った数万の軍勢を揃えていた賊が馬謖軍の1人に四半刻で壊滅させられた、と言ったもの。勿論、織田軍の諸将は真か如何か疑ったが、紫苑達の雰囲気が嘘を言っていないと感じ取り、その『禁句』を言い掛けた秀吉は『禁句』を言った後の事を想像したのか、顔を青くして自身の体を抱きしめてガタガタと震えていた。

そのやり取りを終える頃、反乱軍兵の1人が状況報告に来た。どうやら秀吉は勝家が連れて行き、紫苑達は再び菖蒲達に向き直る

 

 

光秀「申し訳ありません、秀吉殿と勝家殿が所用で居なくなってしまったので、僭越ながら自分が質問をさせていただきます」

菖蒲「構わないよ〜。どうせ聞く事なんてそう無いと思うけど」

光秀「では遠慮なく。先の荀ケ殿の発言からするに、馬謖殿の率いる方達は可也の武をお持ちの様ですが、どれ程なのですか?」

菖蒲「う〜ん、それは桂花達の方がよく知ってるんじゃないかな?ボク達って、他の隊と合同訓練何てした事無いし」

光秀「…………そうなんですか?荀ケ殿」

桂花「……まあ、私達の方が詳しいっちゃあ詳しいんだけど………」

光秀「? どうしたんですか?」

夏蘭「迦楼羅の隊……と言うか、軍は1人1人が一騎当千の実力を持つ兵ばかりだぞ?迦楼羅自身も私や愛紗、紫苑、愛莉、愛海、恋、霞、戦姫他三国きっての実力――具体的には一般武将の3倍位の実力――を持つ将50人弱で挑んでも勝てないからな。まあ、私達普通の兵達も迦楼羅の鍛錬の御蔭で可也実力を上げたからな。まあ、行き成り襲撃して来た遠呂智軍には数の差で負けたがな」

 

 

そう言って『はっはっは!』と笑う夏蘭。春蘭みたく笑っている夏蘭を他所に、戦国の諸将は愕然とした表情に成っている。恋とは誰か、戦姫とは誰か。そんな疑問も一瞬浮かんだが、其れよりも関羽の真名が上がり、更に紫苑や愛莉の名前も挙がり、更にそれと同等の実力、及ばずとも遠からずな実力の将が50人弱も集まっても勝てないと言う程の実力を有しているという事実に対する驚きが疑問など一瞬で吹き飛んだ

 

 

光秀「………正に三国最強じゃないですかやだー。何でそんな人が隠密やってるんですかー」

 

 

実力を聞いて少々どころか可也引き気味な光秀が何故隠密をやっているかを質問する

 

 

桂花「あら、迦楼羅は名目上は隠密頭だけど、戦に成れば暗殺白兵戦攻城戦も出来る。弓の腕も三国内上位だし、一対一の近接戦闘なら三国内に勝てる人物はまず居ないわ」

白蓮「それに加えて字の読み書きは出来ないけど、偶に軍師達や一刀との軍議に交じってるしな。こうして考えると、迦楼羅の弱点って字の読み書き以外に無いよな〜」

海里「迦楼羅殿は導術や仙術にも明るいですし、忍術成る物を使って居たりしますからね」

花咲里「迦楼羅殿は五斗米道? (??)『五斗米道では無い!ゴッドヴェイドォォだぁぁl!!』 ああ、そうでしたね。その医術も扱う事が出来ますしね。ごっほごほ」

 

 

戦国諸将は何処からともなく突如響いた訂正の声に驚くが、三国諸将にしてみればこの訂正の為だけに何処からともなく響く大声は何時もの事と成りつつあり、この声の人物――――華佗、真名は((水虎|シェイフー))の無事が確認――同時に戦力増強及び医者の確保が出来る事を――出来たので特に誰も何も言わずに会話を続けようとした

 

 

光秀「あ、あの。先程の声は……」

桂花「ああ、放って置いて良いわよ。神医の生存確認が出来る唯一の方法を無意識の内に実行しただけだから」

光秀「は、はあ。そうなのですか」

桂花「で、話しを戻すけど、迦楼羅達は何してたの?情報収集だけ?」

楓「そうです。敵の数は色んな所に点在していますが、総合して6000万に届く数。本城の場所は未だ分らず。捕えられている人物は先日までで総大将、桃香殿、鈴々、朱里、蒲公英、向日葵、麗羽、斗詩、猪々子、雪蓮殿、蓮華、祭、冥琳、亞莎、小蓮、穏、凪、真桜、沙和、稟、琳華、由真、唯、香菜。後は、聞いた事の無い名前ばかりですが、徳川家康、服部半蔵、稲姫、織田市、浅井長政、尼子晴久、佐竹義重、宇都宮広綱、南部晴政、前田利家、毛利元就、小早川秀秋、北条氏康、風魔小太郎、福島正則、加藤清正、片倉小十郎、大谷吉継、朝倉義景、姉小路頼綱、濃姫と言う人物達が捕えられて居るらしいです。更に、孫呉が身内を人質に取られて遠呂智の属国に成り、先ほど挙げた徳川と言う人物が率いる軍や、伊達政宗と言う人物が率いる軍。石田三成と言う人物や朱里が人質の所為で逆らう事が出来ず、属軍にさせられて反乱軍と対立して居るとか」

桂花「ちょ、ちょっと!それ本当なの!?」

秋桜「此処で、嘘を言ったとしても、得をするのは遠呂智軍」

銀花「そうだぞ姉貴!秋桜達がこんな大事な時に嘘言う訳無いだろ!『隠密やってる一般人の皮を被った一騎当千の猛将』とか言われてるけど一応隠密なんだぞ!情報の重要さ位分かってるっての!」

菖蒲「………どんだけ銀花に労働させたんだよ。ここまで口調が荒くなるとか。まあいいや。銀花、寝て良いよ」

銀花「ホントか!?ならお言葉に甘えて」

 

 

そう言って立ったまま寝ようとする銀花。それを見かねた白蓮がその場に座り、膝を枕の代わりにして寝かせる

 

 

楓「さて、可也お喋りが過ぎましたね。そろそろ私達は失礼させて頂きます」

桂花「待ちなさい。迦楼羅は何時動くの?」

菖蒲「まだ機じゃないから動かないよ。少なくとも、捕虜や属軍にさせられて居る人達を助け出すまでは」

桂花「そう、一刀を初めとする捕虜を全員救出したら動くのね」

菖蒲「うん。あ、月様や詠なら大丈夫だよ。うっかりこの2人を人質に取られて馬謖軍が遠呂智軍の言いなりとか悪夢にも程が有るからねぇ。黄龍・青竜・紅龍・黒龍・緑龍・桜龍が傍に着いてるよ。あの6匹なら並の将位蹴り殺せるし、いざと成ったら2人とねねを6匹が牽引する荷台に放り込んで逃がすから」

桂花「そう、あの6頭が居るなら安心ね」

夏蘭「あの6頭って下手したら惇姉や愛紗より強いからね」

七乃「そうですね。それに、今菖蒲さん達に会えたのは幸運ですね」

美羽「そうじゃな。蓮華達が遠呂智とやらに恐れをなして降伏した訳では無いとわかったしのぅ」

 

 

と、三国の諸将が話して居ると

 

 

左近「あ、あの!」

菖蒲「ん?どうした?」

左近「殿は、石田三成様はご無事でしょうか!?」

菖蒲「あぁ、あんたは石田三成の部下なんだっけ?大丈夫大丈夫。武器は取り上げられてるけど、縛られては無いし、食事はちゃんとした物を出されてるみたいだし、捕えられて居る場所はバラバラみたいだけどね」

左近「そ、そうですか。よかった」

 

 

自身の主の無事が確認出来て安堵する左近。否、左近だけでなく、光秀や何時の間にか戻ってきていた勝家や秀吉も安堵して居た

 

 

桂花「あ、そうだ。菖蒲、反乱軍は今の所どれ位なの?」

菖蒲「反乱軍がどれ位か? 規模?数?位置?」

桂花「全部よ。織田信長は反乱軍を吸収して戦力増強を図ってるみたいだし」

菖蒲「………本音は?」

桂花「華琳様の安否が心配なのよ!………はっ!」

菖蒲「ハァ。まあ別に構わないけど。玲、あれ見せて」

玲「はい。破らないでよ?」

菖蒲「分かってるって。え〜っと。まずは此処、織田信長率いる織田軍。次に同じく此処、島左近率いる島軍。愛紗率いる関羽軍。華琳率いる魏軍。翠率いる馬超軍。上杉謙信率いる上杉軍。武田信玄率いる武田軍。美以率いる南蛮軍。以上がそこそこ大きな規模の反乱軍。次に、宮本武蔵と言う人物が率いる剣豪衆。豊臣吉子と言う人物が率いる隠密集団。本田忠勝と言う人物が率いる10人ばかりの極々少数の隊。後は、軍じゃあないけど、今川義元って人が戦場に現れては遠呂智軍を壊滅に追い込んでいるらしいよ。五胡は師匠に言われて戦支度を整えてる」

桂花「そう。此処から一番近くに居る反乱軍は?」

菖蒲「え=っと。馬超軍と関羽軍がそこそこ近いよ。馬超軍が此処から西に((20里|約80q))位。関羽軍が此処から東に((18里|約62q))位」

桂花「そう。ありがとう。だ、そうよ、信長。愛紗――関羽の率いる軍を吸収しに行くか、翠――馬超が率いる軍を吸収しに行くか」

信長「……馬超軍の方に行こう、ぞ」

桂花「……理由は?」

信長「……愛紗は既に我等と邂逅している。馬超とやらと邂逅するのも一興、ぞ」

桂花「そう」

菖蒲「話しは終わり?」

桂花「ええ。色々と有益な情報も聞けたしね」

菖蒲「そっか!ならボク達もう行くから!そろそろ戻らなきゃいけないし!じゃあね!」

 

 

菖蒲がそう言うと隠密の4人はフッと消えた。その後、島左近は情報収集の為に独自に行動すると言って走り去り、左近が去った島左近軍・織田軍・公孫賛軍が合併した

 

 

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後書き

 

 

可也の長文(16678文字)に成った。ホントは先月末までに投稿したかった

 

 

 

説明
第伍話 鶴賀城の戦い
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続き待ってます。(ボルックス)
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