恋姫婆娑羅
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黄巾党も楽じゃない」

 

 

 

 

 

 

現在、曹操軍の主要な武将が玉座の間にて、春蘭の報告を聞いていた。内容は先日、起こった黄巾党との戦についてである。春蘭、季衣、凪は数日前に出撃し黄巾党と戦っていた、官軍の援軍として駆け付けた。しかし、黄巾党は曹操軍の旗を見るや否や即座に撤退してしまう。

 

黄巾党の殲滅が任務の春蘭は当然、後を追うがそれこそ、奴らの罠であったのだ。黄巾党の逃げ込んだ場所は、袁術が支配する領土、勝手に他国へ侵入したとなれば、外交問題は必至である。春蘭たちはすぐさま引き返そうとするが、運悪く、袁術傘下の食客である孫策に見つかってしまう。もし、孫策にこの事を咎められれば、戦争になる事も有り得るだろう。仕方なく、春蘭はここに来た目的を説明する。すると、孫策は意外にも笑って許してくれた。曰く、袁術の領土に誰が侵入しようと知った事では無いらしい。

 

結局、春蘭は孫策と協力して黄巾党を打ち破り、無事に城に帰還する事が出来たのである。そして、現在、皆に報告をしていると言うわけだ。

 

「と、まぁ、こう言うわけです」

 

春蘭の長い話に皆がため息を付く

 

「呆れた。それで孫策に借りを作ったまま帰って来たと言うの?」

 

「やれやれ、華琳、お前、どんな教育してきたんだよ・・・?」

 

「春蘭、お前はもう一度、武人の作法を学ぶべきかもな・・・」

 

「猪だとは思っていたが・・・ここまでとはな・・・呆れてものも言えねぇぜ」

 

華琳、政宗、小十郎、元親はそれぞれ思った事を口に出す。一軍の将としてあまりにも迂闊な行動に呆れ返る。

 

「え、えぇと・・・連中の領に逃げ込んだ盗賊を退治したのですから、差し引きで帳尻は・・・・」

 

周りの視線にオドオドしながら春蘭は自分の意見を述べる

 

「合ってないわよ・・」

 

「そもそも、さっさと連中を始末しちまえば良かったじゃねぇか?」

 

「もう少し頭を使うべきだな、特にお前は・・・」

 

「まぁ、今回は運が良かったな」

 

またも口々にダメだしされ春蘭は完全に意気消沈してしまっている。

 

「しかし、厄介な事になりましたね・・・奴らはある程度の策略を駆使出来る様になっているようです」

 

「そうね。春蘭や季衣相手だったとは言え、黄巾党はそれだけの作戦を展開出来る指揮官を得た事になる。その将を討てただけでも、今回の戦は幸いだったと言うべきね」

 

桂花の言葉に華琳が頷く。ここ最近は動きの小さくなっていた黄巾党だが、また動きが活発になってきている。糧食の焼き討ちの効果もあるにはあったが、やはり、一時的なものだったようだ。今日の軍議では焼き討ち以前の勢力を取り戻してきているとの報告もある。

 

「まぁ、想定内のことね・・・だけどこれからは苦戦することは確実よ、皆、気を引き締めるように。春蘭、季衣、分かったわね?」

 

「「はいっ!」」

 

二人の大きな返事に満足した華琳は、春蘭に視線を写し、一つ問いを投げかける

 

「ところで、春蘭? あなたが会った孫策と言う人物・・・どんな人物だった?確か、江東の虎、孫堅の娘よね」

 

華琳の急な質問に暫し考えるそぶりを見せた後、思いつく限りの言葉で孫策を説明する

 

「はい・・・風格と言い、雰囲気と言い、気配と言い、とても食客には見えませんでした」

 

「殆ど意味、同じじゃねぇか? 無理すんなって・・・」

 

「う、うるさいっ!!」

 

春蘭の説明に政宗が鋭く突っ込む、それに対し顔を赤くして怒鳴る春蘭であったが、華琳に宥められ、武人として見た孫策はと言う質問に答える

 

「檻に閉じ込められた獣のような眼付きをしておりました。袁術とやらの人柄は知りませんが、あれはただの食客で収まる人間ではないでしょう」

 

真剣に話しを聞いていた華琳は一つ大きく頷く

 

「春蘭、その情報に免じて、今回の件についての処分は無しにするわ。孫策への借りについては、何れ返す機会もあるでしょう」

 

「あ、ありがとうごさいます!・・・あ、それと・・・」

 

「何?」

 

孫策の情報で今回はお咎め無しになった春蘭であったが、何やら、まだ情報があるようだ。華琳が話すように促す。

 

「実は・・・黄巾党を共に殲滅する際、孫策の部隊に何やらとんでも無い男たちがおりまして・・・」

 

「とんでもない男・・・? 何がどうとんでもないの?」

 

「はい、その男たちは馬の上に立って乗っておりました。壮年の男に至っては二頭の馬に仁王立ちして乗っていて、暑苦しい若い男とさらに暑苦しいやり取りを・・・」

 

「は? 馬二頭に仁王立ち?」

 

「ええ、私も目を疑いましたが・・・あの化け物じみた強さは、伊達や片倉、長曾我部に通じるものがあるかと・・」

 

意味不明な春蘭の説明に思わず政宗たちを見る華琳だったが、彼らもまた頭を抱えている。

 

「小十郎・・・今の話、どう思う・・・」

 

「はっ、馬二頭に仁王立ち・・・間違いなくあの方かと・・・」

 

「暑苦しいねぇ・・・こりゃあいつらしかいないだろ・・・」

 

何か知っているような三人を皆が怪訝な様子で見ている。一通り話が纏まったのか政宗が春蘭に訊ねる

 

「春蘭、もしかしてそいつら、風林火山と書かれた旗を挿してなかったか?」

 

「おお! よく分かったな。それ以外にも銭が六つ書かれた旗と、菱形が書かれた旗もあったぞ?」

 

春蘭の答えに確信を得る三人、もはや、疑う余地はない

 

「江東の虎の娘の所に甲斐の虎がいるか・・・なんとも虎に縁のある連中だ・・・」

 

「虎穴に大虎と翼虎が住み着くとは・・・だとしたら、恐らくあの猿も・・・」

 

「しかし、甲斐の虎は病に倒れた筈だろ? 話を聞くに元気そうじゃねぇか?」

 

「あの、おっさんならあり得るだろ・・・?」

 

「・・・そうだな。気合でなんとかしそうだな・・・」

 

勝手に納得し話を進める三人に華琳が遂に声を掛ける

 

「あなたたち、もしかして知っているの?」

 

「まぁな・・・俺ら以外にも天から来てる奴がいるようだぜ」

 

政宗の言葉に皆が息をのみ、華琳は説明を求めてくる。政宗は面倒臭いのか小十郎に丸投げし、小十郎はため息を吐きつつ説明していく

 

「まぁ、簡単に言っちまえば、暑苦しい事この上ない奴らだな。だが、その実力は折り紙つきだ。まず、甲斐の虎と恐れられる武田信玄という男、俺らの世界じゃ知らねぇ奴はいない程に有名な将だ。さらにその一番弟子にして、日ノ本一の兵とも言われた虎の若子、真田幸村、政宗様の最大の宿敵だ。昔はただの戦バカだったが、今では一軍を任される程に成長しているな・・・。さらにもう一人、下手すりゃ一番厄介な男だが、今は姿が確認出来てないようだしな・・・説明は省かせてもらう」

 

「なるほどね・・・中々、厄介な者たちのようね・・・」

 

「ううむ・・だが、華琳様に掛かれば虎などすぐに退治されよう!」

 

小十郎の説明に華琳は真剣に考え込んだが、すぐに気を取り直して宣言する

 

「まぁ、良いわ。今は目の前の敵に全力を尽くしましょう。皆、黄巾党はこちらの予想以上の成長を続けているわ。官軍は頼りにならないけど、私達の民を連中の好き勝手にさせる事は許さない。良いわね!」

 

「分かっています! 全部、守るんですよね!」

 

季衣の言葉に頷きさらに続ける

 

「そうよ。それにもうすぐ、私達が今まで積み重ねてきた事が実を結ぶ筈。それが奴等の最後になるでしょう。それまでは今まで以上の情報収集と、連中への対策が必要になる。民達の米も血も1粒も渡さない事! 以上よ!!」

 

こうして、今日の軍議は解散となった。

 

 

 

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軍議の次の日には情報収集のために各地に部隊が派遣された。

 

「やれやれ、色々と厄介な事が山積みだな・・・」

 

「そうですね・・・しかし、我々が力を合わせれば越えられない物など、きっと無いですよ」

 

この部隊は元親と凪が指揮を執っている。元親は昨日の軍議を思い出しながら行軍していた。

 

「良い事言うじゃねぇか・・・凪。ていうか、お前大丈夫か?昨日、南の偵察から帰ってきたばかりだろ?」

 

「大丈夫です・・・鍛えてますからね」

 

ここ最近、情報収集で何度も出撃している凪を心配する元親に凪は心配無用と答える。

 

「そうかぁ? 沙和や真桜、それに俺もいるんだからな。無理はするんじゃねぇぞ?」

 

「本当に大丈夫です。それに私はこれくらいしか出来ませんから・・・」

 

凪がそう言うと元親は何か嫌な顔をしたかと思うと凪の頭に手を乗せワシワシと撫でながら言った

 

「バカな事言ってんじゃねぇ。俺らの働きが戦いを有利にする事になるんだ。立派な事だぜ?それには、お前は俺にとっちゃ可愛い部下なんだ、そんなに卑下するような言い方をするもんじゃねぇぜ?」

 

「た、隊長・・・申し訳ありません・・」

 

照れながら謝罪する彼女に満足しつつも行軍を続けるが、ここで、急に全軍を止めさせて武器を構える

 

「・・・凪よう・・。分かってんな?」

 

「流石、隊長もお気づきでしたか・・・」

 

声を掛けられた凪も同じく武器を構え臨戦態勢を取る。周りの兵士も二人に倣い武器を構える。その時であった

 

「「「「ウオオオオオオオッ!!」」」」

 

左右の林から黄巾党の一団が襲い掛かって来た。

 

「ははっ!バカ正直にきやがったな!」

 

「はああああああッ!!」

 

元親に凪、それに曹操軍の兵も慌てることなく迎撃していく。凪の気弾がさく裂し、元親の穂先が敵を叩き潰す。あっと言う間に黄巾党は全滅し、凪は周りを警戒しつつも元親に駆け寄る。

 

「隊長!お怪我は?」

 

「おう、無事だぜ・・・しかし、数が少ないな」

 

「偵察でしょうか・・・ん? なんだこれは?」

 

凪は気絶している黄巾党の懐から巻物のようなものが飛び出している。中身を検める凪は目を見開く。

 

「隊長!! これは・・・」

 

「お手柄じゃねぇか、凪! こいつら連絡兵だったのか」

 

巻物の中身は黄巾党の集合場所と拠点の位置だった。

 

「おめぇら! 急いで城に戻るぞ! 魚と情報は鮮度が命だからな!」

 

「はいっ!」

 

軍を転回させて城に向けて走る元親たち、千載一遇の情報をその手に握って

 

 

 

 

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玉座の間にて軍議が開かれている

 

「大手柄よ、凪、元親」

 

ご機嫌な様子で二人を褒める華琳、二人のもたらした情報はそれだけ価値の有るものだったと言うことだ

 

「先程戻った偵察部隊から報告がありました。連中の物資の輸送経路と照らし合わせて検証もしてみましたが、敵の本隊で間違いないようです。張三姉妹の姿も確認されています」

 

秋蘭の報告に華琳が頷く、

 

「間違いないのね?」

 

「はい、ですが・・・・何やら、3人の歌を全員が取り囲んで聞いていて、異様な雰囲気を漂わせていたとか・・・」

 

この言葉には、華琳も首を傾げる

 

「・・・何かの儀式かしら?」

 

「詳細は不明です。士気高揚の為の儀式だと言うのが、偵察に行った兵の見解ですが・・・」

 

(Ah~ いつきの所みたいなもんか?)

 

(ああ、鶴の字の所みたいなもんか・・・)

 

政宗と元親は秋蘭の言葉に思い付いた光景に思いを馳せていると、華琳が声を上げる

 

「ともかく元親と凪の御陰で、この件は一気にカタが付きそうだわ。動きの激しい連中だから、これは千載一遇の好機と思いなさい。皆、決戦よ!!」

 

玉座の間に力強い宣言が木霊した

 

 

 

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「れんほーちゃーん! おーなーかーすーいーたーっ!」

 

黄巾党の陣地の大天幕に大きな声が響く

 

「人和。私もう嫌よ。ご飯も少ないし、お風呂もロクに入れないし・・・それに何より、ずっと天幕の中で息が詰まりそうよ〜!」

 

さらにまた、不満の声が上がった。

 

「それは分かっているわよっ! でも仕方が無いでしょ。曹操って奴に、糧食が丸ごと焼かれちゃったんだから・・・」

 

それらの声に反論する声、そう、ここにいるのは件の張三姉妹である。長女の天和と次女の地和の不満に末っ子の人和がため息まじりに答えている。

 

「仕方なくないわよ! 別の所に行けば良いでしょ。今までだって、煩くなったら他の所に移動してたじゃない?」

 

無知な姉の言葉に頭が痛くなる人和

 

「私達の活動が朝廷に眼を付けられたらしくてね。大陸中に黄巾党の討伐命令が下っているのよ・・」

 

人和の発言の地和が仰天して聞く

 

「何よそれぇ!私達、何もしてないじゃない!」

 

「周りの連中がね・・・」

 

「え〜、じゃあ今までみたいに色んな国を回れないの〜?」

 

「連中が付いてくれば、どうしても大きな動きになってしまうのよ。彼らを連れて県境は越えられない」

 

「だったら、置いて行けば良いじゃない!」

 

「出来るならやってるわよ・・・何度か試したけど、その度に誰かが寄ってきて・・・」

 

姉たちの質問に何度もため息を付きつつも答える人和であった。そんな妹の苦労も知らず姉二人は責任の擦り付け合いをしている。もっとも、原因は擦り付け合っている二人にあるのだが、歌で天下をとるとか、歌で大陸の皆に愛されたいとか、本来の趣旨が間違って伝わり今に至っているのだ。姉たちの醜い争いにまたも人和がため息を付いた時であった。

 

「張角様ッ! 張宝様ッ! 張梁様ッ!」

 

外から兵士に呼びかけられる。三人は慌てて冷静を装って兵に声を掛ける

 

「どうぞ、お入りなさい」

 

許可を貰った兵士が天幕に入ると用件を告げる。どうやら西方で出来た新たな会員が合流したいそうだ。三人は躊躇いも無く彼らを受け入れる。それを聞いた兵はすぐに食料と装備を支給する旨を伝えると天幕を出て行った。残された三人は己たちの愚行を嘆く

 

「何・・・? 食料も装備も持たずに合流したいって・・・たかりに来てるだけじゃない」

 

「バカーーー!!何だって姉さん、あんな事を言うかなぁ!」

 

「え〜! だってちーちゃんだって、応援してくれる子は大切にしようって・・・」

 

「だって、あの場でああ振られたら、ああ答えるしかないでしょう!」

 

またも姉妹喧嘩に発展する二人を尻目に人和は何度目になるか分からないため息をつく。さらにこの後、彼女たちは同じ過ちを繰り返す事になるのだが、今はまだ、その事を知る由もないのであった。

 

 

 

 

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今回で外史に来ている新たな勢力がわかりましたね、これからどうなるか私自身も分かりませんがwww

 

次回で恐らく黄巾党は終わりだと思います。いや〜長かった。

 

それでは、ここまで読んで下さった方には最大級の感謝をでは!

 

 

 

 

 

説明
今回、保存するの忘れて大変な目に合いました・・・書き直しはつらいのよ・・・

まぁそんなことは良いとして、今回は少しサプライズがある! かもしれない・・・
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コメント
劉邦柾棟さん コメントありがとうございます ああ、なるほど・・・そういう事でしたか気が付きませんでした教えてくださってありがとうございます!(KG)
↓「隻眼で『眼帯』を付けている」という意味ですよ。 まあ、「眼帯」なら『政宗』とも被りますけど・・・・・。(劉邦柾棟)
naku さん コメントありがとうございます 真桜や霞とアニキの恰好は似ていると思いますねw性格も似てますし・・・春蘭はちょって分かりませんが(KG)
達 さん コメントありがとうございます 呉には武田軍とこの作品を作る前から考えておりました。同じ考えの方がおられて嬉しい限りです!(KG)
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