恋姫婆娑羅
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「黄巾の乱の終結」

 

 

 

 

 

 

 

 

「秋蘭、本隊が到着したようだ」

 

小十郎、秋蘭そして季衣は先遣隊として偵察を終える頃、伝令よりそのような報告が来ていた

 

「そうか・・・各隊の報告は纏まったか?」

 

はいはいと秋蘭の言葉に真桜が反応する。真桜の報告によれば、敵の総数は約二十万だが、実際に戦闘が出来るのは三万程度らしい、さらに敗残兵らしき者たちが合流しており、装備も食料もまるで足りてないように見てたらしい。

 

「なるほど・・・さっきの大兵力は、その非戦力を含めての数と言うことか」

 

「せやな、あちこちで内輪揉めも起きとったし、一枚岩ですらないわ。あれじゃあ指揮系統もバラバラちゃうんかな?」

 

凪の言葉に真桜が頷きつつ答える。さらに、報告を聞いた小十郎も反応する

 

「無駄にデカくなり過ぎたって事だな・・・」

 

「その通りだな、本拠地が無い連中は陣内に取り込む他に方法が無い。まぁ、結果は見ての通りだな」

 

「神出鬼没の大熊も太り過ぎれば、ただの的と言う事ですね」

 

「そうだ。ここまで組織が肥大化すれば、おのずと動きが鈍くなる上、指揮系統も作らねばならん。そうなればこの程度、そこ等の野盗と何ら変わりはないだろう」

 

「指揮が無いとこうも違うとはなぁ・・・」

 

少しばかりの呆れを含ませ小十郎が言い、元親も続く。しかし、事の運びが順調すぎる事に凪が不安を漏らす

 

「しかし・・・当初の予定通りの作戦で大丈夫でしょうか?」

 

「何言ってんだ。大丈夫に決まってんだろ? 奪える勝ち星は奪っとくモンだぜ」

 

「長曾我部の言う通りだ。華琳様の本隊に伝令を出せ、皆は予定通りの配置で、各個攪乱を開始しろ」

 

秋蘭の言葉に小十郎が続ける

 

「攻撃の機は各々の判断に任せるが、張三姉妹には手を出すなよ。」

 

「「「「「はっ」」」」」

 

こうして、黄巾党との最終決戦の火蓋が切られようとしていた

 

 

 

 

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黄巾党の陣内は現在、阿鼻叫喚の緊急事態に陥っていた。曹操軍の奇襲によって各所から火の手が上がるが、指揮系統が働いていない彼らはどうして良いか分からず、とりあえず、張角達の指示を仰ぎたいと天幕に集まって来ている。そんな混乱した兵士たちの対応に手を焼く張三姉妹であったが、もはやここが潮時であることを悟った。人和が天幕の奥から荷物を取り出し二人の姉に手渡す。

 

「「何?この荷物?」」

 

渡された荷物の意味がいまいち分かっていない二人に人和が説明する

 

「逃げる支度よ・・・三人分あるから、もう一度、一からやり直しましょう」

 

人和の言葉に二人は頷く

 

「・・・仕方ないわね。でも二人がいるなら」

 

「そだねー、ちーちゃんとれんほーちゃんがいれば、何度だってやり直せるよね♪」

 

「そうね・・・それに、これがあれば・・・」

 

「太平なんとか・・・だったっけ?」

 

「そんなのいいから〜! 二人がいれば何もいらないから、早く逃げようよー!」

 

「あっ!ちょっ・・・姉さん・・・!」

 

こうして張三姉妹は陣を足早に去っていった。太平要術の書を天幕に残して

 

 

 

 

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「華琳様、先遣隊が行動を開始したようです。敵陣の各所から火の手が上がっております」

 

「片倉から伝令が届きました。敵の状況は完全に予想通り、当初の作戦通りに奇襲を掛けると。こちらも作戦通りに動いてほしいとの事です」

 

二人の報告に微笑みながら頷く華琳、ここまで思い通りに進むとは、流石に思わなかった

 

「了解・・・桂花、決めていた通りに動きなさい」

 

「御意」

 

華琳の号令に桂花が動きだした。それを横目で眺めつつ春蘭が黄巾党のあまりの不甲斐無さに声を漏らす

 

「しかし、先日はあれほど苦戦したのに・・・今日の容易さはなんだ?」

 

「まぁ、使ってる頭の違いだろうな・・・」

 

「・・・? どう言うことだ?」

 

政宗の皮肉が理解出来なかった春蘭は華琳に助けを求める。

 

「少数の兵で春蘭程度を扱える器はいても、あれだけの規模の大部隊を扱える器はいなかった。ただそれだけの事よ」

 

「なるほど・・・って華琳様! それは酷うございます!」

 

「ふふ、冗談よ」

 

戦場なのに和やかな雰囲気になっていた所に部隊の編制を完了した桂花がやって来る

 

「華琳様、こちらの準備は完了しました。号令をいただけますか?」

 

桂花の言葉に意外そうな声を出す華琳

 

「あら、もう? もう少し、春蘭で遊んでいたかったのだけど・・・皆、張り切り過ぎじゃないの?」

 

「あちらの混乱が輪を掛けて酷いのでしょう。ともかく準備は出来ています。」

 

「そうだな・・・急がねぇと件の三姉妹が身内に殺されかねないからな」

 

旅芸人でしかない張三姉妹が負け戦に付き合う事はないだろうし、この劣勢で、指揮のまともに出来ない彼女らに憤った兵士が殺してしまうことも考えられる。張三姉妹の生け捕りも今回の目的の一つなのである。最悪の事態を避けるためにも、華琳は号令を掛ける。

 

「皆の者、聞け! 汲めない霧は葉の上に集い、既にただの雫と成り果てた。山を歩き、情報を求めて霧の中を彷徨う時期はもう終わりよ。今度はこちらが呑み干してやる番! ならず者共が寄り集まっただけの烏合の衆と、我等の決定的な力の差・・・この私に、しっかりと見せなさい! 総員、攻撃を開始せよッ!!」

 

華琳の激の兵が呼応し大地が揺れ動く、そして、雄叫びを上げながら本隊が黄巾党への攻撃を開始するのだった。

 

 

 

 

 

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「おっと・・・本隊様のご到着か・・・これで詰みだな」

 

「流石、華琳様。予定通りですね」

 

大地を揺らし、曹旗を掲げた本隊が黄巾党に突撃して行くのが見える。一矢乱れぬ統制は黄巾党とは、雲泥の差である。

 

「さてと、俺らも合流するか。秋蘭と右目の兄さんの隊が右翼だったな・・・沙和、真桜、季衣と合流してさっさと左翼に向かうぜ!」

 

「はい、後はあの三人が来るのを・・・」

 

そんな事を話していると丁度良く、三人がやって来た

 

「チカ兄ちゃーん!」

 

「アニキーお待たせー!」

 

「お待たせなのー!」

 

「お、来たな・・三人とも怪我はねぇか?」

 

心配する元親に三人は元気な様子を見せる。どうやら何も心配はないらしい。安堵する元親に凪が号令を求める。

 

「おっしゃ! 良いかテメェら! 俺らはこれから本隊に合流、本隊左翼として攻撃を続けるぞ! だが、張三姉妹は生け捕りだ、殺すんじゃねぇぞ? これまでの借りを存分に返してやろうじゃねぇか!!」

 

元親の号令に皆が力強い声で答える。やる気十分だ。元親は満足気に頷くと最後に激を飛ばす

 

「活きが良いじゃねぇか! だったら全軍、俺に続きやがれぇ!」

 

先頭を駆け出す元親に凪、真桜、沙和、季衣が続き、さらに兵も続いていくのだった

 

 

 

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「この辺りまでくれば、大丈夫かな?」

 

「もう声も大分小さくなっちゃってるしね〜、でも皆には悪い事しちゃったかな〜?」

 

「難しい所だけど・・・正直、潮時だったのよ。仕方ないわ・・」

 

黄巾党の陣地から逃げ出した張三姉妹は現在、戦場から大分離れたところまで来ていた。しかし、応援してくれていた者たちを置き去りにして戦わせていることに罪悪感があるのか、時折、振り返って戦場を眺める。

 

「けど、これで、私たちも自由の身よ!ご飯も、お風呂も入り放題よ!」

 

「・・・お金は無いけどね・・・」

 

人和の言葉にウッと顔を顰める地和であった

 

「お金はまた稼げばいいんだよ。ねー?」

 

しかし、天和の一言に気を取り直す

 

「そ、そうよ! また三人で旅をして、楽しく歌って過ごしましょうよ!」

 

「そして、大陸で一番の・・・」

 

気持ちも新たに盛り上がる三姉妹に向かって、何かが接近してくる。槍のような物にガラの良くない男とその背にもう一人、女の子が乗っている。どう言う原理かは知らないが相当早い、あっと言う間に追いつかれると三人の前に立ちはだかる。

 

「盛り上がってる所で申し訳ねぇが・・・嬢ちゃんたち、張三姉妹で間違いねぇよな?」

 

「この、驚き様・・・恐らく間違い無いかと・・」

 

元親、凪の宣告に三姉妹は二人を睨みつける

 

「く、こんな所まで追手が・・・」

 

「どうしよう・・・護衛の人もいないよぅ・・・」

 

「くぅぅ、まだ色んなことしてないのに・・・!」

 

見るからに焦っている三人に凪が告げる

 

「大人しくついてくれば悪いようにはしない・・」

 

「言う事を聞かなかった場合は・・・?」

 

唯一冷静な人和が二人に聞くが元親が笑いながら答える

 

「俺も凪も、お前らを無傷で捕まえる技を持ってるからな、安心して良いぜ?」

 

この言葉に三人は戦慄する。あの固そうな手甲と馬鹿でかい槍で無傷など想像できない。ブルブルと震えだすがそこに黄巾党の生き残りが駆けつけて来た

 

「張角様!!」

 

「俺たちの張角ちゃんに何しやがる!?」

 

三人を庇うように数人が立ちふさがるが凪も元親も焦る様子は微塵もない

 

「ハッ! 逃げた主を庇うたぁねぇ・・・泣かせてくれるぜ・・・」

 

「賊ながら、その心意気は認めよう・・・だが!」

 

元親は槍を、凪は拳を振るうと一瞬にして彼らは吹き飛んだ。しかし、命までは奪っていない、気絶させただけだ。

 

「な、何よあれ・・・なんか人知を超越してるんだけどー!?」

 

「・・・諦めましょう姉さん。あんなの喰らったら、ただじゃ済まないわ」

 

怯える二人の前に出た人和が訊ねる

 

「いきなり殺したりはしないのでしょ?」

 

足の震える人和、気丈な態度を取ってはいるが、彼女だって怖いのだ。そんな彼女を安心させるように元親は優しく答える

 

「安心しな・・・曹操は嘘をつかねぇよ。きっと悪いようにはならねぇさ」

 

「・・・なら、良いわ。投降しましょう・・」

 

人和は振り向き、姉たちを見る。不安に揺れる瞳を見つつも、きっと大丈夫と励まし、元親らの手により捕縛されたのであった。

 

 

 

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「で・・・あなたたちが張三姉妹?」

 

「そうよ。悪い?」

 

「季衣・・間違いない?」

 

「はい、ボクが見た人と同じ人たちです」

 

季衣の言葉に天和が喜びの声を上げる

 

「あ〜!私たちの歌聞いてくれたんだ! どうだったー?」

 

「すっごく、上手だったよ!」

 

「本当? ありがとー!」

 

キャイキャイとなにやら盛り上がりを見せる二人であったが、これでは埒が明かないと政宗が口を開く

 

「で、旅芸人がなんでこんな大それた真似をしやがったんだ?」

 

「・・・色々あったのよ・・・」

 

「色々ねぇ・・・。何があったか知らねぇが、お前らのおかげで、多くの人間が死んでんだぜ? 分かってんだろうな・・・?」

 

射殺すような眼光を三人に向ける政宗に先ほどの雰囲気は消し飛び、なんとも冷ややかな空気が場を支配する

 

「やめなさいよ、政宗・・・。彼女らの処分は話しを来てからでも遅くは無い筈よ?」

 

怯える三人を庇うように政宗を諌める華琳だったが、地和が震えつつも声を出す

 

「は、話したら斬る気でしょ! 私達に討伐命令が下っているのは知っているんだから!」

 

「それは話を聞いてから決める事よ。それから1つ、誤解しているようだけど・・・」

 

含みを持たせた言い方に地和が首を傾げる

 

「貴方達の正体を知っているのは、恐らく私達だけよ」

 

「「「・・・へっ・・・?」」」

 

間の抜けた三人の声に華琳によって命じられた桂花が説明していく、まず、三人はここ最近、曹操の領以外に立ち入っていない事、黄巾党の誰一人として、正体に関し口を割らなかった事、さらに、便乗した盗賊などはそもそも彼女らの正体を知らない事、またそいつらの証言がでたらめだったために混乱に拍車が掛かった事。

 

「確か、張角の想像図は・・・。小十郎」

 

「・・・ほらよ」

 

小十郎が出した絵図には身長は三メートルはあろう髭もじゃの男で、腕は八本、足は五本、頭には三本の角が生えている。大よそ人間には見えない外見であった。

 

「えー、お姉ちゃんこんな怪物じゃないよー!」

 

「いや、いくら名前に角があるからって、頭に角は無いでしょ、角は・・・」

 

「まぁ、この程度の認識なのよ」

 

いまいち、華琳の言うことが理解できない人和が聞く

 

「何が言いたいの?」

 

華琳は意地の悪そうな顔で答える

 

「黙ってあげても良いと言っているのよ」

 

「・・・どう言う事?」

 

「「貴方達の人を集める才覚は相当な物よ。それを私の為に使うと言うのなら・・・その命、生かしておいてあげても良いわ」

 

三人に取ってはこれ以上上手い話も無いが、しかし、目的が見えないと人和が華琳に問う

 

「「私が大陸に覇を唱える為には、今の勢力では到底足りない。だから貴方達の力を使い、兵を集めさせてもらうわ」

 

「・・・そのために働けと?」

 

「ええ。活動に必要な資金は出してあげましょう。活動地域は・・・そうね、私の領内なら自由に動いて構わないわ。通行証も出しましょう」

 

「ちょっと! それじゃ私たちの好きな所に行けないって事じゃない!?」

 

「待って・・ちぃ姉さん」

 

華琳の提案に地和は不満なようだが、人和がそれを押さえて訊ねる

 

「曹操。これから貴方は自分の領土を広げていく気なのよね?」

 

「それがどうかした?」

 

「そこは私達でも旅が出来る、安全な場所になるの?」

 

「当たり前でしょう。平和にならないのなら、わざわざ領土を広げたりしないわ」

 

度重なる質問にも自信に満ち溢れた態度に人和は、考え込むそぶりを見せて、何かを決意したように顔を上げて華琳に提案する

 

「・・・分かったわ、その条件、飲みましょう。その代わり、私達3人の命を助けてくれる事が前提」

 

「問題ないわ・・・決まりね」

 

交渉成立かと思われたが、地和が不満の声を上げる

 

「ちょっと人和っ! 何勝手に決めてるのよ! 私は嫌よ!」

 

文句を言う地和に政宗が刀を引き抜き突きつける。周りの皆が急な行動に唖然とし、当の地和は突きつけられた刀と政宗を交互に見つつ、震える声を出す

 

「な、な、何のつもりよ・・・?」

 

「ここまでの好条件で生かしてもらえんだぜ? 本来なら問答無用で斬られても文句は言えねェのにだ・・・。お前が選べる道は二つだ・・・条件飲んで生き残るか、ここで斬られるか。どっちにする?」

 

まるで容赦の無い物言いに見かねた春蘭が止めようとする。

 

「お、おい、伊達よ・・・その辺で良いではない・・」

 

「テメェは黙ってろッ!!」

 

政宗の怒声が上がり、春蘭は口を噤む。

 

「これは、けじめだ・・・。例え本人たちにその気は無くても、人の上に立った者が取らなくちゃならねぇモンなんだ。こいつらを信じて死んでいった奴らもいるだろ? こいつらの起こした騒ぎで泣いた奴もいるだろ? なんの筋も通さねぇまま、こいつらを仲間にするなんざ、この独眼竜が許さねぇ・・・」

 

華琳、小十郎、元親は黙ってこのやり取りを見ている。張姉妹の二人は今にも飛出しそうな勢いだが、秋蘭に止められていた。

 

「い、生きたいです・・・」

 

「・・・何・・・?」

 

「私は、まだ、死にたくないッ! 姉さんとも人和とも別れたくない! 私は・・・私は、まだ生きていたいの!」 

 

泣きながら声を振り絞る地和を、なお鋭い目で見ていた政宗だったが、刀を納めると一言、彼女に言う

 

「だったら、三姉妹で生きて償いな・・・」

 

それだけ言うと、彼女に背を向けてどこかに行ってしまう。秋蘭から解放された天和と人和はすぐに地和に駆け寄り彼女を抱きしめるのであった。

 

あれから、一刻ほど経ったであろうか。落ち着いた三人と最終的な結果に関して話をする中で彼女たちの下に太平要術の書があったことが分かったが、どうやら、あの陣地に置いてきてしまったらしい。今頃は灰になっていることだろう。しかし、華琳は特に未練も無く、もし、残っていたら困るとさらに黄巾党の陣に火を着けることを伝えた。本当に良かったのかと尋ねる元親に華琳は言う

 

「良いのよ・・・。それがあの本の天命だったのでしょう・・・」

 

そう言われては、もはや返す言葉も無い。こうして、張三姉妹の引き起こした黄巾の乱は幕を下ろした。さらに新たな仲間を加えつつ・・・

 

 

 

 

 

 

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城に帰還し、戦の疲れを癒す間も無く、曹操軍の主要な面々は玉座の間に集められた。皆も明らかに不満な顔をしているが、それ以上に華琳は不満げだ

 

「おい、一体何のようだ・・・会議なんか明日の回せよ」

 

政宗が苛立たしげに言うと、華琳が不機嫌そうに答える

 

「私だって、する気はなかったわよ・・・これから、春蘭や秋蘭と愉しむつもりだったのに」

 

華琳の答えに別の意味で顔を引きつらせる政宗であったが、そこに聞いた事の無い声が割り込んでくる

 

「すまんな。みんな疲れとるのに集めたりして。すぐ済ますから堪忍してな」

 

真桜と同じく関西弁を操る彼女は張遼と言い、官軍として黄巾党と戦っていた将の一人である。

 

「貴方が何進将軍の名代なの?」

 

「や、ウチやない。ウチは名代の副官や」

 

何進とは、官軍の将軍として悪い意味で有名である。将としての才覚は無いに等しく、また仁徳も無い。しかし、地位だけは無駄に高いので華琳ですらも従わざるを得ない。

 

「何だ。将軍が直々にと言う訳ではないのか」

 

「あいつが外に出る訳ないやろ。クソ十常侍共の牽制で忙しいんやから」

 

「ははっ!テメェの上司に対する言葉とは思えねぇな? 中々、良い性格してんじゃねぇか!」

 

張遼の性格を気に入る元親であったが、広間の扉が開いた事によって場が静まる

 

「呂布様のおなりですぞ〜!!」

 

何やら、ちんちくりんな少女に続き、赤い髪と瞳が印象的な少女が入ってきた。政宗、小十郎、元親は息を呑む、あれが三国一の武を誇る呂布・奉先かと。彼女の纏う気配に彼らは覚えがあった、戦国最強と言われた本多忠勝の纏う気配に良く似ている。

 

「曹操殿、こちらへ」

 

「はっ」

 

華琳は言われるまま、畏まって呂布の前に跪くが、いつまで経っても呂布が何も言わない

 

「・・・・・・・・・」

 

「え〜と、呂布殿は此度の黄巾党の討伐、大義であった! と仰せなのです」

 

「はっ」

 

代わりに先ほどのちんちくりんな少女が代弁していくスタイルで話が進んでいく。その間、呂布は一言も話さない。三人はますます、戦国最強に似ていると、かの鉄壁主従に思いを馳せる。しかし、未だ続く話に飽きてきた政宗が、近くにいた秋蘭に聞く

 

「なぁ、秋蘭、何進ってのは、どれくらいの地位なんだ?」

 

「軍部の頂点に居る御方だ。朝廷での地位で言えば、我々はおろか華琳様すら足下に及ばん」

 

「ついでに言えば、皇后の兄で肉屋のせがれよ」

 

秋蘭に加え桂花も説明してくれる。その説明に政宗は頷く、肉屋のせがれでも皇后の兄貴なら頷ける。

 

(しかし、肉屋のせがれが大将とは、官軍が弱ぇわけだ・・・)

 

最後に呂布は、華琳に西園八校尉の位を授けて去って行った。広間には重苦しい空気が漂っている。原因は言わずもがなである。

 

「・・・・・・・」

 

無駄を嫌う華琳が、ここまで無駄な時間を取られる事を良しとする訳が無い。沸々と湧き上がる怒りを必死に抑えているのが誰の目からも分かる。

 

「それじゃ、話は終わったな・・・俺は寝るぜ・・・」

 

「では、この小十郎も畑の様子でも見に行きましょう」

 

「おい、凪、真桜、沙和、季衣よ。宴会でも開いてやる付いてきな」

 

「「「「「・・・・ッ!!」」」」」」

 

驚く面々を尻目に政宗は自室へ、小十郎は畑へ、元親は部下と季衣を連れて、さっさとその場から離れていく。彼らが広間から出たところで中から怒声が聞こえてきた。

 

「やれやれ、触らぬ神に祟りなしってな・・・」

 

そう一人ごちて、部屋に戻る政宗であった。

 

 

 

 

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終わった!!黄巾党編完!!

 

大分、雑な感じだったかもですが・・・それに関してはすいませんということで・・・

 

 

それでは、ここまで読んでくださった方には最大級の感謝を!

 

 

 

 

説明
黄巾党はこれで終わりです。長かったなぁ・・・

色々と雑ですがそれでもよければどうか見てやってください
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コメント
禁玉⇒金球 さん コメントありがとうございます そう言って頂けると作者も励みになります。張三姉妹の所は命の価値というか重さというか、そういった描写があまりに無かったので、書いてみました喜んで貰えると嬉しいです(KG)
意図は別でも動乱の先導者の責を知るのは必要ですね、朝敵なのに匿って貰うのは望外の高待遇で事実上の免罪、反論したり何も考えない上の二人は我儘放題の原作でも情けないなと思ってたので政宗ひいては作者様の描写は素晴らしいです。(禁玉⇒金球)
M.N.F. さん コメントありがとうございます そう言って頂けると助かります! 政宗は頭の責任を分かっていると私は考えているので、今回、入れてみました。お気に召されたのなら嬉しいです(KG)
ひっとーさん コメントありがとうございます 話の展開で絡み方は千差万別なので一概には言えませんが、自分はひっとーさんの作品の絡みも好きでしたよww(KG)
自分はこれで良いと思いますよ。 人の上に立つものとしてのけじめ・・・いまの政治家にも聞かせてやりたい言葉ですなこれは。(M.N.F.)
ひっとー さん コメントありがとうございます あの辺りは原作であまりにもあっさり仲間になってしまっている張角らに、少し違和感が有りまして入れさせてもらいました。賛否はあろうと思いますがねw(KG)
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