外史を駆ける鬼・IS編 第012話
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外史を駆ける鬼・IS編 第012話「とある休日の料理対決」

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千雨【夏休みに入ってから一週間ちょっとぐらい。帰りたくはなかったけど、一時自宅に帰省してまた戻ってきた私。情報によると重昌さんが帰ってきているらしいので、ただいま私はそこに向かっている】

 

彼女は目的地の場所に着くと、扉を数回ノックする。

だが、出てきたのは私服姿の一夏である。

 

一夏「あぁ、結城さん。いらっしゃい」

 

千雨「え、織斑くん?どうして君が?それに、重昌さんは?」

 

一夏「あれ、聞いてなかった?夏休みから重昌さんと相部屋になるって」

 

千雨「あ、あいべ・・・や・・・」

 

そう聞き彼女の頬は赤くなる。

 

一夏「何を想像しているかは知りませんが、ソンナコトはないですから」

 

千雨「……そういうことは察する癖に、何故女の子の気持ちには鈍感なのかな?もしかしてソウイウ趣味があるの(小声)?」

 

一夏「どうした?結城さん――」

 

千雨「なんでもないよ。それより重昌さんは?」

 

一夏「あぁ、重昌さんなら街のスーパーに買い出しn「ありがとぅ」……あの、場所は聞かなくて――?」

 

彼女は風の如くの速さで街に向かったが、場所を聞くことを忘れて後悔した。

 

千雨「――しまった!何処のスーパーか聞くのを忘れた。私と重昌さんの運命の糸はあぁぁーー」

 

街中で頭を抱え込んでうなだれ、何かをぶつぶつつぶやいている少女を周りの人たちは不審な目で見る。

 

千雨【運命……か――。箒のお姉さん、綺麗だったなぁ。胸も大きかったし、重昌さんとも親しそうだったなぁ】

 

彼女は修学旅行から帰ってからずっと心がモヤモヤしていた。

自分の思い人と親しげな女性。

あの事件の後、何度か彼に尋ねてはみたが、有力な情報は得られず。

 

千雨【何かきっかけでもあればいいんだけど、まずは重昌さんを見つけないと――】

 

重昌「いいですか。これから作戦会議を始めます」

 

千雨「そうそう。こんな風に私の後ろにある開店前のスーパーから声が……え!?」

 

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彼女が後ろを振り向くと、スーパー『L’sモール』の前に、5、6人の主婦に囲まれた探し人がいた。

 

重昌「――まず、村井さんは始めに来る周りの敵を排除してください。芳野さんは奥のブツを確保。仲居さんは吉村さんと一緒に左翼のブツを確保。右翼は私が担当します。次に向井さんですが……」

 

千雨「あのぅ、重昌さん?」

 

重昌「ん?千雨か。悪いが今作戦会議中だ。話なら後に――」

 

仲居さん「あら、重昌ちゃん彼女?若いっていいわn「今は作戦会議中だ!余計なことを考えるな!……死ぬぞ?」!!」

 

千雨の出現により、おばちゃんの一人が少し重昌を((煽|あお))るが、彼に一喝される。

 

重昌「いいか。奴らのアタックは愛越学園アメフト部並みだ。”ブツ”を手に入れようと必死に喰らいついてくる。それをどう掻き分けるかが、今回の勝負の鍵となるんだ。余計なことを考えるな。”ブツ”は動きはしないが待ってはくれないのだぞ」

 

おばちゃんたち「………」

 

重昌「さて、作戦開始5分前だ。皆、配置につくぞ。千雨、30分でカタがつくから、話があるなら適当に待っていろ」

 

千雨「え?あ、はい――」

 

いつもとは違う厳格な顔な彼の言葉に、ただ返事をした。

 

………

 

重昌「ふぅ。今日も大量の収穫でしたね」

 

向井さん「ホントよ、重昌ちゃん」

 

仲居さん「重昌ちゃんの作る作戦のおかげで、こんなに安く食材が手に入るのだもの」

 

芳野さん「またよろしく頼むわよ」

 

重昌「いえいえ。私の学校がある間、食材の情報収集は頼みますよ」

 

パンパンに詰まったスーパー袋を両手に持った重昌と主婦様たちを見て、千雨はポカンとしていた。

今日はスーパーの週一特売日。

先ほどの作戦会議は、他の主婦を出し抜きどうやって食材を手に入れるかの話し合いである。

先ほどの”ブツ”とは安売りの食材のことである。

 

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重昌「それで千雨。今日はどうした?」

 

千雨「……!?え、いや、あの――」

 

状況が理解で出来ずにポカンとしていた彼女は、急に呼ばれて焦りだす。

 

重昌「まぁ、立ち話もなんだから、ご飯でも作りに行くか」

 

千雨「そ、そうですね!……【ん?作りに行く?】」

 

………

 

重昌「やぁ、一夏君。今日も大量だったぞ」

 

一夏「重昌さん、待ってました。どうぞ――」

 

箒「………」

 

セシリア「………」

 

鈴「………」

 

シャル「………」

 

ラウラ「………」

 

千雨「………え?」

 

千雨が彼に連れてこられたのは一夏の家。

玄関で男達二人は、ただいま立ち話状態だが、先に一夏家に来ていた専用機組は何故か固まっており、千雨も全く状況を理解出来ていなかった。

 

重昌「さて、一夏君始めるか」

 

一夏「えぇ、始めましょう」

 

二人は食材を持ってキッチンへと向かう。

 

千雨「あの、一夏君、重昌さん。一体なにが始まるのですか?」

 

その疑問を女子IS専用機組に変わって千雨が訪ねた。

 

重昌「それは――」

 

一夏「勿論――」

 

重昌は持っていた包みより、一夏は棚から各種取り揃えたマイ包丁を取り出す。

 

重・一「料理対決」

 

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二人の料理対決が始まってからは、キッチンからは香ばしい匂いと景気が良い音が聞こえてくる。

リビングのソファーには高級そうなお茶菓子と紅茶があるのだが、女子の皆はそんなものよりキッチンにいる二人の男のフライパンを振るい、包丁を扱う姿の方に目をやっていた。

そんな中でリビングに一人の人物がやってくる。

 

千冬「なんだ、このリビングの密集率は?」

 

この家の主である織斑千冬である。

 

箒「あ、千ふy……織斑先生」

 

千冬「今はプライベートだから『千冬さん』でも構わないぞ」

 

彼女の今日の服装は、学園で見るような黒いスーツではなく、白いワイシャツにジーンズ、服の下は黒いタンクトップで、豊満な胸を窮屈に押し込めており、彼女らしい私服と言った感じである。

家族である千冬と幼馴染で付き合いが長い箒と鈴は、何時もの一夏であるなら、姉の千冬が帰ってきた時ならば真っ先に駆け寄り彼女の肩にかけているカバンを持つなりの行動を起こしていると思ったのだが、今の一夏は千冬が帰ってきた事なども気づかずに料理に集中していた。

幼馴染の二人の中の一夏はかなりのシスコンであり、二人の知る限り何時も千冬にべったりでそれを見る度にいつも千冬に嫉妬したものだ。

その一夏がこれほど料理に集中しているのだから、二人は少し驚いており、千冬も右人差し指と親指を顎に当て、右肘を左手に乗せ「ほぅ…」と少し感心してしまっている。

千冬は携帯を取り出して、何処かに電話を掛ける。

やがて時間的に昼のティータイムは過ぎて夕方の日は完全に落ちかけている6時頃、遂に二人の料理が完成した。

 

一夏「あれ?千冬姉帰ってたの?それに山田先生も……」

 

リビングにはいつの間にやら千冬の他にも真耶が加わっており、足の低いテーブルには様々な勉強道具が広げられていた。

話によると真耶を呼んだのは千冬であり、「せっかくこの場に六人も生徒がいるのだから、全ての今までの教科、予習復習するのもありなのじゃないか?」との話になった。

少なき休日に呼び出された真耶も教師である。

人を教えることは好きな性分なので、喜んでここに来た。

彼女はこれでも元日本代表候補生。

その卓越したIS技術と攻めの性格は未だ健在であり、ここでは学校とまた違った押しの教えをしてくる。

顔は笑っており、言葉も優しのだが目は笑っていない。

それに加えラウラのドイツ時代、そしてIS学園の『鬼教官』も加わっているのだ。

はっきり言って普通に学校の授業を7限以上受けた方がまだ楽であろう。

皆肩に力も入っておらず、足が低いテーブルに顔がうつ伏せ状態になっているのである。

そんな女子組を起こしてキッチン隣のテーブルに向かわせると、女子組や真耶は目を輝かせ、千冬も感嘆の息を漏らす。

テーブルに広げられた料理の数々、一夏の方は『パプリカのマリネ』や『明太子冷製スパ』など夏をイメージした料理となっており、重昌側は『キャベツと厚揚げのみそ炒め』や『鶏もも肉のレモン塩だれ』など得意の和食料理を惜しげもなく出し尽くしている。

皆が席に着き仲良く合掌をすると、各自広げられた料理に手を出していく。

 

真耶「ふわぁ〜、このナスの酸っぱさがまたたまりません」

 

シャル「一夏、このパプリカ美味しいよ」

 

ラウラ「レイラァ、このじゃがいも?はどうやって作るのですか?」

 

この様な楽しい食事を終えると、女子組+教師の審査へとなった。

 

重昌「さて皆、普段の知人関係などは全てかなぐり捨てて、自分の舌だけで判断してくれよ。………特にそこの五人」

 

彼は思い人が共通である五人に釘を刺すと、皆慌てて「それはありません」と言う。

判定から言えば教師組は両方共重昌に投票し、女子組も千雨以外は重昌に投票していた。

大敗した一夏はと言うと、フローリングの床で悔しそうに項垂れていた。

対する重昌は当然とばかりに食後のお茶をすすっていた。

 

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重昌「さて一夏君に問題だ。何故君は負けたと思う?互の料理の主旨は全く違う。人には好みもあるし、ここにいる殆どが和食より一夏君が用意した料理のウケが良いはず、それなのに何故私が圧勝だったと思う?」

 

一夏「そんなの、重昌さんと俺との腕の差が決定的だったからじゃないですか?」

 

そう聞かれると一夏は当たり前のように答えた。

 

重昌「甘い!!そう思っているようでは、勝負を始める前から勝敗は決まっていたな。いいかい、これはあくまで料理対決。つまりいかにして審査員の舌に合わせるかが問題だ。私はこの勝負が始まる前から既に作る料理もシミュレートしていた。まず勝負をこの織斑家でやると判った時に、君のお姉さんも合流するともことも判っていた。なんせ今日は休日でここは織斑家なのだから。そして千冬先生は私達の行っている事を見れば面白がって山田先生を呼ぶ。そして時間潰しのために女子組の勉強を見ようと考え、女子組は教師二人に板挟みにされてクタクタになるのは間違いない。ならば皆にはコッテリした物より、あっさりとした料理の方がウケがいいに違いない。例えばこの『ツナの和風炊き込みご飯』。一口食べてみてくれ」

 

重昌に施されると、一夏は盛られた茶碗を受け取り箸で一口食べる。

 

一夏「…これは………酢ですか?」

 

重昌「その通り。疲れた時にはサッパリとした酢が効く。他の料理もコショウなどの調味料を、味を落とさずに少しづつ混ぜて作ってみた料理もある。教師組は普段の業務からの疲れ。千雨の票をもらえなかったのは、普段から私が付いて予習復習をやらせているから、彼女はそれ程疲れていないからであろう。そう考えると普通に考えて7票以上、最低でも5票は確実だ」

 

それを聞くと一夏は自分の中の全ての疑問が解決したかのように大きなため息を吐いた。

 

重昌「一夏君、よく料理において、最高の((調味料|スパイス))は『愛情』だと言われているが、次に日本人が持つ独自の調味料は何だと思う?」

 

そう聞かれ彼は少し考えると、素直に「判らない」と返した。

 

重昌「それは『おもてなし』だ」

 

一夏「おもてなし?」

 

重昌「そう。決して見返りは求めず、食べて貰う人に満足していただくと言う、日本独自の作法だ。君は料理勝負に集中し過ぎて、自分の姉の帰りにも気づかずに、リビングでの状況も理解出来ていなかった。例えばこのロールキャベツ。まさに完璧な味付けだ。だが完璧過ぎる故に、何処か食べる側も緊張してしまう。それではダメだ。集中するのは大変結構だが、時に周りの状況を確認して料理を作るのを忘れてはならない。そうすれば一夏君の料理の腕は何倍にも化ける筈だ。それに状況判断は料理に限った事ではない。あらゆることにおいて必要とされることだが………どうやら君はそれが苦手のようだね――」

 

そう女子組に視線を送って話していると、皆それに同意しているかのように「ウンウン」と頷いている。

 

重昌「さてと………料理も食べ終えたことだし――飲むか」

 

彼のこの発言に皆「え?」となっている。

そして日が完全に落ちて夜になったところ。

皆は重昌が買ってきた甘酒により完全に出来上がってしまっており、初めこそ重昌を止めていた真耶も千冬と重昌のペースに付いて行けずノックアウト状態である。

ちなみに止めていた理由は勿論「学生だから」とのこと。

だがそれの理由も上手いこと丸め込まれてしまった。

リビングのソファーにはくたばってしまった生徒組(重昌以外)+真耶。

テーブルには大量に開けられた日本酒の一升瓶やらビールの缶やらが転がっている。

 

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千冬「ふははは、お前は底無しだな。お前にとっては、日本酒も水みたいな者か?」

 

少し顔の頬が赤くなっている千冬は笑いながそう言うが、対する重昌は淡々と盃に日本酒を注いでその杯を空にしていく。

 

重昌「いえ、これでも少しは酔っていますよ。だが美味いものは止められませんので」

 

千冬「だがそれは大吟醸であろう。高かったのでは無いだろうか?」

※大吟醸 精米度が特に高いお酒のこと

 

重昌「先生、金とは使う為にあるものですよ」

 

千冬「ふっ、大馬鹿なのか肝が大きいのか」

 

彼女は飲んでいたビールの缶を空にして新しいビールを取り出す。

 

千冬「それで、お前は何者だ?」

 

重昌「はて?何者かと申されても、私はただの二十歳の高校生ですが?」

 

言われると、千冬はビールの持っていた缶をまた開ける。

 

千冬「………嘘だろう?顔は上手く二十歳を取り繕っているが、私には貴様が二十歳には見えない」

 

指摘を喰らうと、重昌は口に持ってこようとしていた盃を持つ手を止める。

だが少し止めただけで再びその杯の中の酒を飲み干した。

 

千冬「その物腰、態度、度胸。とても二十歳そこいらの若造が身に纏えるものではない。………いや、様々な戦場を掻い潜った兵士すら、その空気を纏えるのはごく限られたものであろう」

 

いつの間にやら千冬が重昌を見つめる視線は、明らかな殺気の視線へと変わっていた。

 

重昌「………」

 

千冬「貴様は何者だ?」

 

重昌「………」

 

千冬「何処から来た?」

 

重昌「………」

 

千冬「答えれないか?」

 

重昌「……私から言えることはただ一つだ。私のこの世界での恩人は束だ。彼女に聞け。そうすれば全て答えてやる」

 

今まで酒を味わうために、開いていたか瞑っていた判らない程細かった重昌の瞼が大きく開いて、その眼光による威圧で千冬を圧倒する。

彼女は少し押されるものの、彼は盃を彼女の前に出す。

 

重昌「どうです?一献。今は酒を楽しみましょう。それでいいじゃありませんか」

 

穏やかな笑みで返された千冬は素直に盃を取り、重昌が注ぐ酒を貰う。

代わりに彼女は自分の持っていたビールの缶を重昌の所に置いた。

 

千冬「ふっ、今はそれでいいかも知れんな」

 

それから二人はIS学園の寮が締まる時刻に間に合うギリギリまで飲み、織斑姉弟はそのまま自宅に。

麻耶は一日織斑家でお世話になり、残る女子組は重昌がタクシーを呼び、そのまま寮の各部屋まで連れて帰った。

 

説明
ISのアニメ面白いですね。
小説と比べてカットされている場面が多々あることが少し不満ですが、それは仕方が無い事。

今回はただの日常回となっておりまして、重昌VS一夏の料理対決もちゃんと書けた自信はありません。
文字の誤字脱字がありましたら修正も致しますので、皆様からのご指摘などもあれば嬉しく思います。

それではどうぞ。
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タグ
IS インフィニット・ストラトス 料理対決 学生の飲酒、ダメ、絶対!! 重昌と愉快な仲間 一夏と愉快な仲間達 一組教師s 

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