セカンド・ライフ |
俺の目が覚めたのは、十時近く。リカも静香も、既にそれぞれの勤め先に向かって、ここにいるのは俺だけだ。起き上がってリビングに向かうと、ラップに包まれた冷蔵庫の残り物がテーブルに並べてあった。ちなみに俺が作った物である。
『後始末ヨロシク? S&R』
「こいつら・・・」
このマンションに住む一人として、俺も家賃の一部を納める為にそれなりにハードなバイトをしている。だが、それ以外は別に大した職務に就いている訳じゃないから、基本はマンションでの炊事・洗濯をやっている。並べてある料理を全て電子レンジで温めると、直ぐにそれを平らげた。
未だに寝ぼけたままの体を目覚めさせる為に、浴室に向かった。シャワーの蛇口を捻り、冷水が頭から首筋、そして更に下へと広がって行く。実に心地良い気分だ。冷たいシャワーはサラリーマンが飲むコーヒーに相当する物で、朝はこれが無ければ始まらない。
次に俺は大画面プラズマテレビ(親父に強請って買って貰った)の隣にある四人用のロッカーを解錠し、中に入っている物を全て取り出した。大量の弾薬、双眼鏡の他には、バーネットワイルドキャットC-5と言うイギリス製のクロスボウ。その隣の区画はイサカM-37ライオット・ショットガン、銃剣付きのスプリングフィールドM1A1スーパーマッチ、そしてナイツSR25風に改造されたバイポッド付きのAR-10。どれも日本では違法の銃ばかりだ。
最後に俺のロッカー二つ。リカと同じ様に一つのロッカーは大量の弾薬、もう一つには銃が入っている。俺のお気に入りが。正直言うと、日本では銃の規制が厳し過ぎるし、使っている銃も最適とは言えない。銃が入ったケースを引っ張りだし、それを開いた。
「何時見ても、飽きないな。」
俺のお気に入りが、姿を現した。まずはシグザウエルP226X6 LW、各所にシェルホルダーを付けたモスバーグ590A1、八連発のS&W M327リボルバー、そしてナイフ数種類。このロッカーを他人が見たら、戦争でもしに行くのではないだろうかと思ってしまうだろう。定期的な点検とメンテナンスを一通り終えてそれらを全てロッカーに戻し、厳重に鍵をかけると、洋服箪笥の一番下の引き出しを開けた。あの不思議な銃を保管しているあの引き出しだ。
俺は一度これを撃った事がある。反動は殆ど無く、排莢する事も無かったが、試射した壁に親指が楽に通る位の穴が開通していたのだ。これには流石に驚いた。幸い回りに人はいなかったが、あれ以来俺は初めて自分が持っている武器が怖くなった。傭兵の初仕事に入った日の事を思い出す。あの時は手が震えて碌に弾が当たらなかったな。そんな時、俺の携帯が鳴った。リカからだ。
「どうした?勤務中に電話かけて来るなんて珍しい。」
『冗談言ってる場合じゃないわ。圭吾、今すぐ藤見学園に行って頂戴。静香が危ないわ。何でか分からないけど、今外がゾンビ映画みたいになってるから。』
リカの声は何時に無く重く、切羽詰まっていた。最初は何かの冗談だと思っていたが、俺は直ぐに窓を開け放ってベランダに出た。都市ゲリラ戦の真っ最中宛らの光景が俺の目の前に広がっている。街の所々から煙が上がっていたのだ。微かだが生前から聞き慣れている断末魔らしき声も耳に届いた。
「どう言う事だ?何が原因でそうなった?」
『こっちが聞きたいわよ。いざとなったらロッカーの物、使っても構わないわ。兎に角、静香を助けに行って。私は床主洋上空港で暫く持ち堪えなきゃいけないの。連絡も出来る限り取るから。』
理由も分からないまま、B級映画並のベタな黙示録が始まった。だが、そう簡単にくたばるつもりは無い。
「リカ、分かってると思うが、死ぬなよ?SATも、弾が無限にある訳じゃない。手持ちが切れたら死人からでもふんだくってヤバくなったらすぐ逃げろ。お前に死なれたら静香を慰めるのが面倒になる。」
『分かった。その台詞、そっくり返すわ。アンタこそ死ぬんじゃないわよ?』
「俺を誰だと思ってる?また後で連絡する。」
生前はプロの傭兵だぞ。電話を切ると、早速準備を始めた。不謹慎かもしれないが、俺は知らず知らずの内に鼻歌混じりで着替え始めていた。やはり、心のどこかで俺は闘争を求めていたのかもしれない。傭兵としての人生に味を占め過ぎたからだろう。
ミリタリーショップや最近嵌っていたサバイバルゲームで使う物も引っ張りだした。ポケットが多いカモフラージュグリーンのカーゴパンツ、そしてタンクトップの上に膝辺りまである革ジャンを身につけた。弾を籠めたシグ、M327、ナイフ、予備のマガジンにスピードローダー数個、そしてあのメカメカしいマシンピストルをそれぞれホルスターや、収納に適した場所に納めて行く。本当ならば威力が高いライフルやショットガンを使う方が望ましいが、今は持ち運びに困らない、尚且つ目立たない物が良い。万一警察に止められたりでもしたら洒落にならない。
ガレージのホンダ『ファイヤーストーム』のエンジンをスタートさせて、俺は藤見学園を目指した。丁度昨日燃料を入れ直した所だから、ガス欠は無いだろう。
「さてと。行くか。」
説明 | ||
とある民間軍事会社に勤めていた傭兵は、僅か二十六でその生涯に幕を閉じたが、次に目を開けた時には、赤ん坊として生まれ変わっていた! チートな特撮の武器も『神の介入』と言う事で出します。 |
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