とある傭兵と戦闘機(SW編番外) 理由と覚悟 前編 |
一方、元の世界では
〜IS学園〜
IS学園の最深部の暗い格納庫で、その暗闇よりも濃い二人分の影があった
「・・・お前は何の為にこれを創った?」
そう質問するのは、この学園の教員である織斑千冬
「んー・・・わかんないや」
と、曖昧な質問を返すのは、
そこに鎮座するコンテナの持ち主である世界を変えた人間、篠ノ乃束
コンテナはそれぞれ青、白、黒という色に描かれるその名前
青のコンテナに 零式
白のコンテナに 始式
黒のコンテナに 絶式
と、描かれていた
そして、青のコンテナが開くと同時にパッケージが現れた
「打鉄零式の更新オートクチュール・・・”零姫”」
その追加パッケージは白と青の色調の、更新パッケージ
「EICを解放した零ちゃんの力を最大限に生かす為の機体軽量化、スラスター類の大幅マイナーチェンジ
クリスタリング・スラストセンサーの追加」
「唯でさえ扱え切れていない打鉄零式の高機動性能を更に上書きする程の出力を与えるのか?」
「扱えているんだよね・・・逆に、”扱う人の反応速度に追いついていない”んだもん」
と、データをモニターに表示させる束
そこには、零式のリミットパロメーターを、大幅に上回る赤いグラフがあった
それは通常ではありえない負荷が、搭乗者ではなくIS自体の処理にかかっている証拠だった
「・・・そんな事が、人間にできていいのか?」
「正直、これは人体の反応速度を大きく逸脱してるよ。例えるならば、”人外の領域”だね
それに、彼女は零ちゃんを”物”として見てない。
最終心理的に、どんな人でも結局は機械としてISを捉えてる。ちーちゃんも含めて、ね
だけど、本当に彼女は”人”として接していた・・・それはもう人間の領域を超えてるんだよね」
恐ろしい事この上ないと、千冬は思った
それは、世界最強の機動兵器であるISの性能自体を上回る戦闘力を保持しているという事なのだから
「それで、この二つのコンテナは何だ?」
「それは、もし彼女みたいな存在が現れた時の為の用心だよ
まあ、その存在が触れなきゃ絶対に開かない設計だけどね」
ヘラヘラと笑う束と深刻な顔をする千冬
二人はまだ知らない
それが、特異な資質を持つ者達が搭乗する事により
想定外の力が開放されようとは
〜執務室〜
「フィリアさん、そこに正座★」
駄目・・・もう私この人の笑顔直視できないかもしれない
執務室にて色々質問(尋問)を受ける私は正直に答えを吐いていった
「ですから・・・本当に知らなかったんですよ。
だってあのブリタニアの決戦から一年経過してるんですよ?」
こっちに来るまでの期間は一年。それでいて半年前に総司令に着任したお父さんの事なんか知る由もないし
「凄まじい家系だな・・・」
少佐が腕組しながら驚きの目をしている
「補給の方は問題ない。食料系統に至っては他の基地に分けてるくらい有り余ってる」
「新型兵装、交換部品・改良部品も山ほどあるし・・・オマケと言わんばかりに予備の機体が各員一機ずつ
新品が届いてるし、それに関する報告書類関係も積まれてるし・・・」
こっちに関しては他の部隊に供与できない為積まれるだけになる気がする
それと中佐が文句を言ってるのは主に書類の方だと思う
でも、その問題はもう解決済み
「書類に関しては簡略化を図る為に必要最低限のものしか届いてないです
しかも殆どがサインするだけになってます」
「本当に!?ありがたいわ〜♪」
おお、中佐すっごい喜んでる
それから少しその辺の説明をして、この場は解散した
「ええっ!?フィリアさんが連合軍総司令官の娘!?」
ロビーにて、私は皆に身の上の事について話していた
もちろん、驚くもなんのそのやばかった
それからいくつか聞かれて、私は言い放った
「でも、私は私。今までも、これからも」
そう、私は私なんだ
どんな場所でも
どんな空でも
「だから、これからもよろしくね」
今の私の心の中に影は存在せず
不思議と、自然な笑みを浮かべる事ができた
なんとなく、そんな気がした
「はいっ!!よろしくお願いします!!」
「これからもよろしくお願いします」
「よろしくお願いしますわ」
「よろしくなっ!!」
「よろしくっフィリア!!」
「よろしく」
「よろしく〜」
「よろしくナ〜」
「・・・よろしくお願いします」
「これからもよろしく、フィリア」
「フィリアさん。これからもよろしくね?」
「みんな・・・」
やっぱり・・・みんなは皆なんだね
私は・・・この世界に居て、この世界に来て、この世界に生きてーーー
ーーーこの世界を飛んで、理解した
こんなにも、人は優しくなれるんだと
こんなにも、人は仲良くできるんだと
そしてーーー
「よう相棒。さあ、行こうぜ」
ドアの傍の壁にもたれかかるようにして私を待っていたのは
唯一ーーー私と同じ、終焉の空を飛んだ
その事を教えてくれた、かけがえのない寮機だった
「久しぶりの模擬戦だ、手なんか抜いたらマジで落としにかかるからな”cipher”」
「そっちこそ、”pixy”」
そう、これから私は空に上がる
最初で、そして最後の自ら”鬼神”を演じに
「何が始まるんです?」
「第三次世界ーーー」
ボギィッ
「ぐあぁぁぁぁ指の骨があぁぁぁぁぁぁ!!」
「ふざけた事言うからそうなるんだハミ公」
また、ブレイズの撃墜記録にポイントが増えた
「よし、そんじゃ説明した通りだ。これより模擬戦闘訓練を始める」
空に浮いて、そして私は零式艦上戦闘脚を装備した状態で空中で停止した
あれから私の魔法力はどんどん弱くなっていて、今は空を飛ぶ事をストライカーに頼っている
背中にライフル、両手に銀色の刃を携えて
「ルールは簡単だ。シールドを使用すれば負けだ」
「了解。いつでもいいよ」
正面に向かい合ったまま刃を構える
「ふっ・・・了解だガルム2ーーー」
「ガルム1ーーー」
互いに深呼吸、インテークと肺に空気を吸い込む
「「エンゲージッ!!」」
急加速、一瞬の接触と共にそのまま互いにすれ違う
レシプロとジェットストライカーで競うのがおかしい話だけど
私の零式ーーー実は零式ではない
私の魔法力で全ての部品を保護強化してあり、魔法力後方噴射装置で余剰分の魔法力を放出
全て推進力に回す形にしてある
実質的な戦闘力はーーーラリーのイーグルに匹敵する
ドフッ
ショックコーンが視界を一瞬包む
零式から聞こえるエンジン音は、もうレシプロストライカーの魔道エンジンの音ではない
ヴォォォォォォォォォ!!
物理的な回転を上回る負荷に、零式の魔道エンジンが咆哮を上げる
「バケモノかよ・・・」
空力学的な機体の無理を、魔法力と呼ばれる非科学的な要素でカバーしている
通常状態の限界を超えたーーーー零式艦上戦闘脚という機体と私の
ーーー最後の、戦い
ギィンッ!!
剣同士で鍔迫り合いをして、互いに向き合う
「流石に一筋縄じゃいかねーな」
「勿論、まだ負ける訳にはいかない」
ギチッ
「さあ、決着を付けようぜ」
「そうだね」
剣を弾き、そして正面で向かい合う
次の一撃で、勝負は決まる
「うおぉぉぉぉぉぉッ!!」
「はあぁぁぁぁぁぁッ!!」
正面同士の急加速
互いに一撃づつ剣戟をぶつける
「戦闘終了・・・被弾ナシ」
「こっちも被弾なし。引き分けだね」
「だな」
結局の所、勝負は付かなかった
でも、それでいいと思う
それで、よかったと思う
「・・・フィリアさん」
と、廊下を歩いていると後ろから少し控えめな声を掛けられた
振り向いてみると、両手で何かのケースを抱えて俯くサーニャが居た
「どうかしたの?」
「・・・これ、フィリアさんに・・・」
サーニャはその小さな手が抱える黒いケースを私に差し出した
それを受取って、手元で開いてみる
「エイラが持って来たけど・・・”私には向いてナイ〜”って言って埃をかぶってたから・・・
エイラには許可をとったから・・・フィリアさんに・・・」
サーニャは申し訳無さそうに私に伝えた
「私にくれるの?」
「・・・はい」
銀色に輝くその楽器は、不思議と私の心を吸い込むようにそこにあった
「フルート・・・それもこんなに綺麗なのを・・・いいの?」
コクっと、サーニャは頷いた
「・・・ありがとう。大切にするからね?」
と、サーニャを抱きしめる
「・・・///」
そんなサーニャは、なんとなく妹のような感じに思える
「吹き方は・・・知っている範囲でなら・・・」
「じゃあ教えてもらおうかな。せっかくいいものをもらったから」
そうして、私の昼間はリトビャク先生による指導によって流れていった
「はい。これがグラス。これにお水を入れて飲んだりするの。やってみて?」
子守りを任されていた鈴音はラプアに色々身の回りの事を教えていた
「・・・こう?」
と、両手でコップを支えるラプアは少し恐る恐る鈴音に聞く
「うん、よくできました(上目遣いって反則物よね・・・かわいい)」
「・・・うん♪」
「(笑顔が苦しいよぉぉぉぃ!!何なのこのかわいい生き物ぉぉぉぉぉお!!)」
「ラプちゃんあそぼっ!!」
と、フィアちゃんがラプちゃんの手を引いていく
「うん!!」
嬉しそうに、ラプちゃんは一緒にかけていく
ちなみに向かうは・・・
ぼすっ
「おふっ!?・・・何だ、おまえらか。今度はどうした?」
「あれやって!!」
「アレ?・・・ああ、あれか。よし、今度は複座だ。離陸するぜぇぇぇぇぇぇぇ!!」
肩に二人を乗せて、またしてもハンガーから外に出るチョッパー先輩
・・・うむ、日本じゃ捕まってるね。私が警官だったら確実に逮捕しちゃうわ・・・主に変態として
そうしてうんうんと自分で頷いていると、どこかからかうっすらと何かの音色が聞こえてきた
誰か管楽器でも演奏してるのかな?
私もあれば昔みたいにやるのにな〜・・・サイファーも一緒にやってたからね
ただサイファー、サックス系は苦手なんだよね・・・リズム的に
なんかこう、緩やかなオーケストラ系の方が合ってるとか
「ま、いまのサイファーには望むべくもないか・・・」
飛べなくなった彼女の気持ちを考えると、少し心が重くなる・・・今の私がそうだから
「でも、不思議なものよね・・・それでもまたいつか、サイファーは空に戻っていくんだよね」
羨ましい
本当に、追いつけない
そんな気がして、私はまた地面を踏みしめる
飛びたいなぁ・・・また、一緒に・・・ん?
待って・・・考えてみたら、私も持ってるじゃん魔法力
後は私の心だけ・・・でも・・・
「恐怖って、本当に無くならないよね・・・」
簡単に皆は飛んでいくけど
皆知らないだけなんだ・・・為す術もなくストールする事の恐ろしさを
思い出して、そして身を竦ませる
「どっ、どうかしたんですか!?」
と、心配そうに声を掛けてきたのは黒髪セミロングヘアのパイロット
克笙 葉夏という、幼い雰囲気のパイロットだ
「・・・いや、何でもないよ」
「何でもない顔じゃありませんよ」
この子は、思った事を素直に言う子だよね
あの芳佳って子と同じタイプ
「・・・どうしたら恐怖に勝てるのかなってね」
「恐怖・・・ですか」
「そう、恐怖に」
スタスタと休憩室の水場に行って水道を捻る
コップを二杯分、水を注いでテーブルの上に置く
「空を飛ぶのが怖いの、いつ失速してしまうのかが怖くて私は地面に張り付いたままなの」
「・・・それなら、いい方法がありますよ」
と、彼女は言って私の手を引く
連れて行かれたのは・・・彼女の機体の近くだった
「さて、後ろに乗って下さい」
「え・・・?」
「いいからいいから」
と、背中を押されて後部席に詰め込まれる
「さあ、大空にただいまって言いましょう」
「ちょっと!!私対Gスーツも着てないわよ!?」
「ラーズグリーズ1 テイクオフ」
キュイィィィィン
やばっ!!ちょっ・・・死んじゃうぅぅぅぅ!!
加速する機体のGでシートに押し付けられる
気圧の変化で耳が遠くなる・・・が、それも一瞬の出来事でしか無かった
「(・・・あれ?体が苦しくない・・・)」
もしやと思って頭を触る
するとフサッと、鳥の羽のような軽い手触りが頭にあった
自発的に、空を飛ぶっていう事に反応して魔法力が発動していた
「ほら、今は雲の上です。それに、あなた自身の心は飛びたいともがいているんじゃないですか?」
「・・・・・」
「それに、あなたは・・・あなたの仲間は羨ましがってますよ。きっと」
「私を?」
「はい、あなたの遺したっていうパイロットさんも・・・きっと戻ってくる事を望んでいるはずです」
・・・そうなのかな
私の相棒は・・・そう思っててくれるのかな
”空を飛ぶ事ができるのが俺達の特権だ、使わないと勿体無いだろ”
昔相棒が言っていた、それを思い出す
思い出して、それに賛同していた同期の仲間を思い出す
皆・・・みんなっ・・・目の前で・・・っ!!
”そう想うのなら、彼等の想いの分お前の翼ははばたけるはずだ”
頭の中で、何かが話しかける
”あいつも、お前と同じように
自分の翼を守る為に他人の翼を喰らっていた
そして、その喰らった翼を背負って飛んでいるのがあいつだ”
サイファーは・・・エースだ
それだけ多くの戦闘機を墜としている
それに比べたら・・・
「私の背負わなくちゃいけない翼なんて、僅かな雫だもんね」
そう考えれば、私の背負う翼なんて軽いもの
心の底から湧き上がる魔法力を感じ、そして気が付いた
”この世界は、想いを力に変える事ができる場所なんだ”
それならーーー
「また・・・まだ、私は飛べる」
あそこにーーーあの一番機の隣にーーー!!
後ろから、不思議な力を感じる
「ほら、そんなに考える必要なんてないんですよ」
皆、一緒なんです
ここに居る人たちは
基地の滑走路に機体を着陸させ、ハンガー内までタシキングする
そして自分の座るコックピットと操縦桿を見下ろす
「皆、飛ぶ事が純粋に好きなだけなんです」
本当に・・・本当は・・・
戦いたくはないのに・・・
そういう世界にしていた奴等の所為で
私達は、”無意味な友好国同士の殺し合い”を演じさせられた
普段なら演習を共に行い、隣を飛んでいたハズの友軍が正面から攻撃をして来たあの日
私の中の平和が、雲のように消えていったあの空を
私の、一番好きな場所を壊した奴等が憎かった
でも、それもここに居ると
不思議と、忘れてしまえる気がする
それ程、私にとって・・・私達にとって・・・
空という場所が、特別で、気持ちよくて、清々しくて
どこまでも続いているし、繋がっている
空が好きだと思う人達は、みんないい人達だと思う
実際、私が今居る世界の人達も・・・私が目標とするパイロットも
みんな、優しい人達だから
だから・・・私はその人達と一緒に居たい
その人達と同じ空を、飛んで行きたい
”そうかーーーお前もそれを望むか
望むのならば、我はそれに答えよう
翼の色は、空を飛ぶのには関係ない
それが純白だろうが、漆黒だろうが・・・翼には変わりはない”
そうだよね
だから、私は飛んでるんだ
一度は死んだ人間だから
もう自分の本当の名を名乗る事は許されない事だけど・・・
”そう・・・だけど、名前も関係ないよ”
頭の中に、幼い声がこだまする・・・響く・・・馴染む
”名前なんて、空に居れば意味なんてないよ
それが悪魔であれ天使であれ、飛んでいる事には変わりはないよ”
うん・・・だからーーー
私も、空を駆けるんだ
「ヘイト!!」
「わかりました!!」
共に魔法力を発動させ、共振させる
「固有魔法、”零ノ空域”」
「固有魔法、”始ノ空域”」
「「最大解放!!」」
魔法力を、このハンガーという空間に完全に満たす
そして、固有魔法の特性が同じヘイトの魔法力と共振させて
乗数化した圧縮空気が、絶対的な防壁を作り出す
「うっ・・・」
魔法力が・・・もう・・・もたない・・・
意識が遠のく・・・
「フィリアさん!!」
倒れた彼女は、気を失っているだけで命の別状はない
でも、確実に体力を消耗してしまっている
そして、彼女が魔法力を使用する度に彼女の冷徹な雰囲気は薄くなっていく
同時に、彼女の特徴的な蒼い髪も色が淡くなっていく
何も無い、優しい”純白”になっていく
「おかあさん・・・」
と、彼女の子が駆け寄る
その子もまた、彼女と同じように変化していく
彼女はーーー空を飛ぶ能力を失いつつあるーーー
それでも、空を飛ぶ為に足掻いている
そういう人間だという事を、私は知った
だからこそ、私もまた彼女を追いかける
そんな彼女が、私にとっての目標だから
やっぱり私は誰かを追いかける方が好きだ
私はーーー死神じゃない
彼女もーーー鬼神じゃない
私達はーーーーーーー英雄でも悪魔でもないのだから
そうして、目の前の二人の仲間も覚醒を始める
自分自身の更新予定より大幅に遅れてしまいました
コタツが気持ちいいくらい寝坊の可能性を広げます
この話の次は詳細の設定解説をしようと思います
でもそろそろ本編も終盤に近づいてきました・・・
意見感想募集中
よろしくお願いします
説明 | ||
自分を追いかけてきた相棒をみて、主人公はある事を決意する。 そういう主人公を見て、背中を追いかける者 それを見上げる者 それがどうであれ、物語は進んでいく |
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コマンドーww 飛行能力に限界が来ている主人公。恐怖を克服した初代2番機。これからどうなるんでしょうね〜。(ガルム) | ||
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