恋姫婆娑羅
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終結」

 

 

 

 

 

 

攻城戦が始まって早数日が経とうとしていた。

戦況は思わしく無く、一進一退の攻防が続いていた。

 

「ただいま戻りました」

 

「お帰りなさい、様子はどうだった?」

 

「全然、ダメでした。上からああも反撃されたら、手も足も出ないですよ」

 

城への攻撃と偵察を兼ねて出撃していた、流琉と季衣が戻り、華琳に報告する。

二人の報告によれば、劉備や袁紹の軍も攻めてはいるがどこも同じような状況らしい。

 

「なるほどね・・・。あまり時間も無いし、早く決着を着けたいのだけれど」

 

「あの〜、華琳様。一つ聞いても良いですか?」

 

「何かしら、季衣?」

 

「時間が無いなら、なんで兄ちゃん達を出撃させないんですか? 兄ちゃん達ならあの城壁も簡単に突破出来そうな気がするんですけど・・・」

 

季衣の疑問も、もっともである。

華琳はこの都攻めが始まってから一度も政宗たちを戦場に立たせていない。

彼らが出撃すればあの高くそびえる城壁も簡単に突破できるだろう。

しかし、それが出来ない訳があるのだ。

 

「そうね、季衣。あなたの言う事も分かるわ・・・、もしこれが単なる砦攻めなら、躊躇無く彼らを使うでしょう。でもね、今回は彼らを前線に出す訳にはいかないの」

 

「どうしてですか! 華琳様?」

 

「分かりやすく言えば、ここは都・・・。非戦闘員、つまりは民衆がたくさんいるの。そこに彼らが行ったら?」

 

華琳の説明にハッとしたような顔になる季衣。

そう、理由は彼らの力が強過ぎるからだ。

単なる杞憂であれば良いが、もしもの事があった時、関係ない民衆を巻き込んだと悪評が立つ事は目に見える。

さらに、華琳としても関係ない民衆は極力、戦に巻き込まれないようにしたいとも思っている。

恐らく、劉備や孫策も同じことを考えているからこそ彼らを出してないのだろう。

 

「すいません、華琳様。ボク・・・」

 

「良いのよ、季衣。本当はここにいる誰もが、思っている事なんだから」

 

しょげる季衣を慰める華琳。

正直、虎牢関で決着を着けたかったと言うのが本音だ。

ここでは、せっかく、百ある戦力もその半分を出すのが精いっぱいと言った所だった。

だからこそ、一刻も早く敵の籠城をやめさせたい、華琳は不敵な表情で季衣から桂花に視線を移す。

 

「それで、桂花? 策は思いついたの?」

 

「はい! これで敵もあの城から出てくる他ないでしょう」

 

ここ数日の間に情報と戦力をまとめた桂花はこの状況を打破する策を考えていたのだ。

 

「そう、では、全諸侯を集めなさい軍議を始めるわよ!」

 

そう言って華琳は自信満々に歩きだすのであった。

 

 

 

 

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華琳の招集で連合に参加する全諸侯が集まった。

 

「・・・攻め続ける? どういう事だ?」

 

「うわぁ・・・えげつないですね」

 

「張勲、どう言う事なのじゃ! 妾にも分かるように説明してたも!」

 

「今も我が軍が間断なく攻め続けているでしょう? やり方をどう変えろとおっしゃいますの?」

 

華琳の提案した策は。

まず、一日を六等分に分ける、それから、一つの部隊が一日の六分の一ずつ攻め続けると言う物である。

 

「一日の六分の一しか攻めないようでは、いつまで経っても城なんか陥ちませんわ!」

 

「麗羽の言う通りなのじゃ! 残りを昼寝されたらたまらんぞ!」

 

名門の袁家(笑)の二人が反論する。

どうやら作戦の趣旨を理解出来ていないようだ。

皆が冷ややかな視線を浴びせかける。

 

「あくまでも、一隊が、の話ですよぅ。お嬢様、それが六隊あればどうですか?」

 

「六分の一が六個あるのかえ・・・・」

 

「・・・・・!? 一日が全て埋まってしまいますわ!!」

 

「数で圧倒的に優る、今だからこそ出来る策でしょうね。昼夜問わずの攻撃が続けば、向こうもすぐに音を上げると思うのだけれど・・・どうする?」

 

悔しげな顔をする袁紹だが、自分にこれを上回る策も無いため、華琳の策を採用する。

策はその日の内に実行され、その後、数日に渡って攻撃が続けられたのであった。

 

 

 

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董卓軍の朝は早い・・・と言うより、ここ最近はまともに就寝出来ていない。

 

「うぉはよぉ・・・」

 

「ああ、おはよう!」

 

「・・・・・ぐぅ」

 

「れ、恋殿ー起きてくだされー!」

 

「賈駆っちー月はー?」

 

「調子が悪くて、まだ寝てるわ。流石に夜もまともに寝てないみたい」

 

華琳の策は確実に董卓軍の体力も精神も疲弊させていた。

約一名、何故か、溌剌としているが。

 

「ここ数日の連中、一体何なんや・・・。朝も晩も延々攻めて来よって・・・おはようからおやすみまで仕掛けられても困るっちゅーねん!」

 

「それが連中の狙いなんでしょうね・・・ふわぁ」

 

「楽しい、楽しい、我慢比べちゅうわけかい・・・。やられた方は堪らんな・・・」

 

まさに張遼の言う通りである。

そもそも、それを狙って行っているのだ。

約一名、何故か、溌剌としているが。

 

「ふみゅ・・・効果的な作戦である事は間違いないのです・・・」

 

「実際、これが続くようだったらホント保たんで」

 

「・・・決戦しかないわね・・・」

 

「せやなぁ、こっちの力が残っとる内に、仕掛けるか・・・」

 

彼女らはついに決断した。

これ以上の籠城は、自分たちはもちろんの事、兵士たちも保たない。

ただ、疲弊していくのを待つより、こちらから仕掛けていく方がましであると判断したのだろう。

 

「じゃあ、月を起こして・・・」

 

「よしとき、ギリギリまで休ませたり。」

 

「恋とねねは・・・」

 

「休むのも仕事の内や、どうせ恋の仕事は決戦が始まったら山ほどあるんやし」

 

それからは張遼と賈駆は作戦の立案を、華雄は物資の確認をする事になった。

最後に張遼は華雄に勝手に突っ走らないように、何度も念を押すのであった。

 

 

 

 

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「・・・と言う訳で、敵の抵抗がいつもより大人しかった事もあり、早ければ今日中、遅くても明日には決戦を仕掛けてくるかと・・・」

 

「なら、こちらもしっかりと準備を整えて・・・」

 

「ダメよ、攻撃はこのまま続けなければ意味が無いわ。ここで兵を引いては、敵に休ませる機会を与えてしまうわよ」

 

昼夜問わずの攻撃を続けて、数日、ついに敵が決戦の用意をしているで有ろう兆しが見えた。

今日の軍議でも、もちろんこの事について論議されるが、敵を休ませる訳にはいかず、誰かが確実に貧乏くじを引く事になるのであった。

 

「ハズレを引いたらどうなるんじゃ?」

 

「そりゃ、運が悪ければそのまま決戦に参加するか、撤退するしかないんじゃないか?」

 

「そんな不名誉な事、妾は嫌なのじゃ!」

 

「そうですわ! 今日からしばらく、あなた達だけで城攻めしなさい! これは連合の総大将からの命令ですわよ!」

 

また、とんでも無い我儘を言い出した名門袁家(笑)の二人に集まっている諸侯は怒りを通り越し呆れ返る。結局、袁術の代わりは孫策が務める事なったのだが。

問題は袁紹の代わりであった、なんと袁紹はこの連合軍で最も兵力の少ない劉備を代わりにしたのであった。

 

「あなたの所は優秀な将が多いようですし? それに水関もお一人で落とすような方もいるのですから。隊を二つに分けても何も問題ありませんわよね?」

 

「そ、そんな・・・! 私の軍は兵の数はそんなに・・・」

 

「ならば、私の兵を貸しましょう・・・関羽のような将に使われるなら、私の兵も本望でしょう」

 

「曹操さん・・・ありがとうございます」

 

「それでは、決まりですわね。華琳さん決戦の布陣を説明してくださるかしら?」

 

華琳は言われた通りに布陣を説明していき、皆が理解した所でこの軍議は解散となった。

 

「あの、曹操さん。ありがとうございました!」

 

「あら、礼を言われる程の事をした覚えはないわ。少なくともこの戦いの間は同盟を組んでいるのだから」

 

「それでも、お礼が言いたいんです。あなたと私を繋ぐこの絆に感謝します!」

 

「・・・絆、ね。・・・・兵は後で連れて行かせるから、なるべく減らさずに返してちょうだい」

 

「はい、ありがとうございました!」

 

何か思う所があったのか、嬉しそうに帰っていく劉備の背中を見えなくなるまで、見送る華琳であった。

 

 

 

 

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都の城壁にて眼下に広がる大軍勢を前に張遼が呟く。

 

「いよいよ、最後の決戦やね・・・」

 

「三万か・・・これで良くもったものだ」

 

「どっかのバカが、無茶せんかったら、もうちょいおったんやけどねぇ・・・。まぁ今更言っても仕方ないけどな」

 

「・・・全部、倒す・・・!」

 

「その意気やで、恋。・・・・賈駆っち、ねね、城の守りはよろしゅうな」

 

「任せて・・・!」

 

「恋殿の背後は守るです!」

 

董卓軍の諸将は決戦を前に決意を固める。

 

「報告です。敵軍は、城を四方から囲み、いつでも攻められる状態になっています!」

 

「まぁ、モロバレなのは、わかっとったけどな・・・。ま、ええわ。景気付けに、お前ら聞けぇ!!」

 

張遼の号令に続き賈駆が声を上げる。

 

「皆の者! 今までよく頑張った! ここが最後の決戦だ! この戦いに勝てば、再びゆっくり眠れるあの日々が帰ってくるだろう! しかし、もし退けば、この悪夢の日々は未来永劫続くことになる! 我らの平和を、略奪者から守るのだ! 総員、戦闘用意!」

 

董卓軍は、これまでの疲労を微塵も感じさせない咆哮で城門より敵陣向けて動き出した。

 

「報告! 城の正門が開きました!」

 

城の正面にて董卓軍を待ち構えるのは曹操の軍勢。

城から出撃してくる董卓軍を見据え華琳の号令が響く。

 

「皆の者、聞きなさい! ここが正念場! この戦いが終われば、長い遠征も終わりよ! けれど、奴らを、あの城の中に押し戻してしまったら、この遠征は永劫に続いてしまうでしょう! この戦いばかりの日々を終わらせるわよ! 総員、突撃!!」

 

そして華琳は隣に立つ竜に告げる。

 

「Are you ready 政宗?」

 

「No problemだ。いつでも行ける!」

 

「そう、ならばここまで温存した、その力・・・存分に振るって来なさいな」

 

「Ha! All right! 往くぜ?」

 

「「Let's  Party !!」」

 

双方から決戦の号令は掛けられた。

決戦の始まりである。

 

 

 

 

 

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董卓軍と連合軍の決戦は一言で言うなら、阿鼻叫喚だった。

雷光が閃き、豪炎が轟く、さらには陽光のごとき光が敵を次々に屠っていく。

 

「おら! どうした? 俺の心臓はここだぜ?」

 

戦場のど真ん中で自らの心臓を指して挑発する政宗だった。

いきり立って挑んでくる兵士たちであるが、竜の鱗一枚所かその身に傷すら付けられない。

すらりと抜き放たれた六爪が蒼雷を宿し、敵を貫く。

 

「Phantom Dive!」

 

「「「「「「「うぎゃぁぁぁぁ!!!」」」」」」」

 

「Ha! So easy・・・! もっと気合入れてこいよ?」

 

「竜だ! 青い竜がいるぞぉぉ!!」

 

「か、勝てっこねぇ・・・」

 

董卓軍の兵士の前にいるのは、人では無かった。

天を駆け抜ける竜、独眼の蒼竜が戦場に閃いていた。

 

 

 

 

 

「うおぉぉぉぉ!! 熱血っっっ!!」

 

大地を焼き焦がす炎の塊、それが通った後には灰の一欠けらすらも残っていない。

 

「ゆぅぅきむぅらぁぁぁ!! 猛っておるかぁぁぁぁ!!」

 

その炎の塊のすぐ傍には、血風を巻いて走る大虎がいた。

莫大な闘気をまき散らして、周りの敵を吹き飛ばしている。

 

「うおぉぉぉぉ!! 猛っておりまするぞぉぉぉ! おぉぉやかたさばぁぁぁぁ!!」

 

二人の熱気に辺りの気温が急激に上昇する。

 

「何だよぉぉぉー! あいつら、滅茶苦茶だろぉぉー!!」

 

「と、虎だぁぁぁ!! 赤い虎が二匹いるぞぉぉぉ!!」

 

猛り過ぎたのか、急に二人が接近すると、その場で殴り愛をし出した。

呆気に取られる董卓軍だが、次の瞬間、尋常では無い衝撃が彼らに襲い掛かって来た。

 

「うぉぉぉやかたさぶぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ゆぅぅぅぅむぅらぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「「「「「「「うぎゃぁぁぁぁぁ!!!」」」」」」

 

衝撃の爆心地で尚も殴り合う二人を呆れ気味に佐助が呟く。

 

「はぁ・・・・全く相変わらずだねぇ。あのお人たちは・・・」

 

そう言いつつも寄ってきた敵を振り向きもせずに切り払ったのであった。

 

 

 

戦場に太陽があった。

いや、正確には太陽の様な温かい光が輝いていた。

 

「さぁ、来い! ワシの身体に切り付けて来ると良い!!」

 

彼の武器は己の拳と絆の力。

素手の人間が何を出来るのかと董卓軍の兵士は襲い掛かるが、家康の軽やかな体捌きと、鎧を容易く打ち砕く剛拳が次々と打ち伏せられる。

 

「うぎゃ!」

 

「うごっ!!」

 

「どうだ? ワシの拳は重かったろう!」

 

敵なのだが、どこかこの人には魅かれる所があると、董卓軍はつい呆けてしまう。

その時、彼らの足元に黄金の家紋が浮かび上がる。

 

「さぁ、往くぞ! 淡く微笑め東の照!!」

 

家康が腕を振り上げると光の奔流が天へと昇って行く。

この世界でも、この男は全てを照らす天道であった。

 

 

 

 

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「く・・・・っ! やっぱ、この戦力じゃ厳しいかっ! 恋と華雄ともはぐれてしもうたし」

 

「待てぇぇ! 張遼!」

 

「待つか! ボケッ!」

 

「く、この私が馬術で追いつけんとは・・・!?」

 

公孫賛の追撃を振り切った張遼は一息入れる。

 

「やれやれ、やっと撒いたか・・・しかし、この戦は負けやなぁ。月と賈駆っちはうまく逃げられたやろか・・・」

 

「やれやれ、やっと、見つけたぜ! 張遼さんよ?」

 

「自分、それどうなってるん? 槍に乗って馬に追いつくなんて聞いた事ないわ!」

 

張遼の前に立ちはだかった元親。

槍から降りると穂先を彼女に向け、不敵な表情で言い放つ。

 

「お忙しい所、悪いんだが・・・。俺と勝負しちゃくれねぇか?」

 

「・・・その目、ダメっちゅうても挑んでくる目やな。恋や華雄と同じ目ぇや」

 

「はんっ! そう言う、あんたも良い目してんじゃねぇか?」

 

くつくつと笑いながら、馬から降りる張遼。

 

「あかんなぁ、自分殺してるつもりやったけど・・・ええよ。どうせ、この戦ウチらの負けや。最後くらい自分の趣味に走っても罰は当たらんやろ。・・・名ぁ名乗りぃ!」

 

「俺は長曾我部元親! 西海の鬼たぁ、俺の事よ!」

 

「なんや、自分で鬼なんて名乗るなんて、随分、酔狂なやっちゃの・・・。まぁ、ええ。この張遼の神速の槍で、鬼退治と洒落込むでぇ!」

 

「へっ! あんた、鬼との戦い方を知ってんのかい?」

 

一通りの名乗りを終えて、二人は一気に距離を詰める。

神速の槍と鬼の槍が火花を散らしてぶつかり合った。

 

 

 

 

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呂布の周りを秋蘭、季衣、流琉、張飛、文醜の五人が取り囲んでいた。

 

「・・・・・・」

 

「くぅっ・・・! 呂布め、何と言う強さだ・・・!」

 

「流琉、いっちー、ちびっ子! もう一度、仕掛けるよ!」

 

「うん!」

 

「おっしゃ!」

 

「チビがチビって言われたくないのだ!」

 

五人の一斉攻撃にも関わらず、呂布は何の焦りも無く全てを捌いてしまう。

 

「何度やっても無駄・・・」

 

「くっ・・・。やはり関羽でも連れて来ねば足止めすら厳しいか・・・!」

 

圧倒的過ぎる呂布の武力に、皆、もうボロボロになっている。

これ以上は抑えきれないと思い始めた時、劉備の陣営の方から、この世界では聞きなれない、ほら貝の音が聞こえた。

 

「この音はっ!? 皆っ! 呂布から離れるのだ!!」

 

「どうしたんだよ、ちびっ子?」

 

「張飛よ、何があったのだ?」

 

「ふふふ、ついに、鈴々たちの軍の最強がお出ましなのだ!」

 

何やら、自慢げに胸を反らせる張飛に呂布を含めた六人が怪訝な顔をする。

その時であった、呂布の目の前に何かが轟音を轟かせて降って来た。

流石の呂布もこれには驚きを隠せない。

砂煙が晴れるとそこに立っていたのは黒鉄の巨人であった。

 

「何だ・・・!? あいつは・・・!?」

 

「うわぁ・・・おいっ、ちびっ子の知り合いか!?」

 

「うひゃー! でっかいなぁ!」

 

「どうなのだ!! あれこそ戦国最強・忠勝兄ちゃんなのだ! すっごく強くて、堅くて、でっかいのだ!」

 

対峙する、二人の最強。

どちらの武人も勘が告げていた。

目の前にいる者は強敵だと、油断は許されないと。

 

「・・・・・・!!」

 

「ッ!!」

 

最初に動いたのは忠勝であった。

巨大な機巧槍・黒王の穂先を回転させ、大上段から呂布に叩きつける。

かろうじて躱す呂布であったが、さっきまで自分がいた所には巨大なクレーターが出来上がってた。

直撃していたら、いかに自分であっても命は無かったであろう。

 

「・・・次、恋の番!」

 

「・・・・・・!」

 

あれだけ、大きな武器だ、その重量もきっと重いだろう。

ならば、振り下ろして隙だらけの背後に一撃喰らわせれば終わりだろうと呂布の方天画戟が閃く。

 

「・・・・うそ・・・!」

 

「・・・・・・!!!」

 

結果として呂布の一撃が届くことは無かった。

忠勝は常人では振るう所か、持ち上げる事すら不可能な黒王を軽々と振るい、攻撃を防いだのである。

それから、体制を立て直した二人は真っ向から打ち合う。

恐ろしい程の轟音と閃光、そして衝撃波が戦場を襲う。

 

「呂布とまともに打ち合うとは・・・」

 

「ていうか、あの方は人類なんでしょうか?」

 

「すごいぞー! かっこいいぞー! 忠勝兄ちゃん!」

 

「ぐぬぬ、羨ましくなんて無いんだからなちびっ子!! ボクにだってすごい兄ちゃんがいるんだぞ!!」

 

外野が何やら騒がしくしているが、そんな事は二人の武人には関係無かった。

二人の武術は決して洗練された美しい物では無い、むしろ、己の力を最大限に使った荒々しい物である。

だが、逆にそれが、この戦場にいる者たちの心を奪っていく。

純粋な力のぶつかり合い、荒々しく、そして華々しい戦いであった。

 

「・・・・・・!!」

 

「・・・うん・・・恋も楽しい・・・!」

 

しかし、それももう少しで終わりのようだ。

呂布の動きから見る見る精彩が失われていく。

常人であれば一撃必殺の攻撃を何十、何百と打ち合い続けた結果であった。

 

「・・ま・・だ・・。まだ・・終わりたく無い!!」

 

「・・・・!!!!」

 

掌の皮は破れ、骨は軋んでいる。

足は震えて、もはや、立っているのもやっとだ。

だけども、呂布はまだ終わりたく無かった、生まれて初めて自分より強い相手と戦った。

戦う事は嫌いでは無かったが、これほど楽しいと思った事も無かった。

この時がいつまでも続けば良いと思う事も初めてだった。

しかし、無情にも体は言う事を聞いてくれないようだ、呂布は戟を杖がわりに立つことがやっとだった。

 

「・・・・・!!!」

 

「・・・ありがとう・・・恋、とっても楽しかった・・・」

 

忠勝はこの強敵に最後の称賛を贈り、槍を構える。

そして、最後はせめて苦痛の無いようにと全力の力を持って槍を振り下ろした。

 

「ま、待ってくだされ!! 恋殿! 恋殿を殺さないで欲しいのですっ!!」

 

忠勝の槍は呂布の目前で止まった。

それから、槍を引き、声の主を見据える。

 

「ねね・・・危ない! 来ちゃダメ・・・」

 

「いやです! ねねは、恋殿から離れたくないのです。」

 

「・・・恋、負けた。負けたら命は取られるもの・・・」

 

「そ、そうですが・・・。だ、だったら、ねねも一緒に殺して欲しいです! あの世でも恋殿と一緒にいたいですから!」

 

「それは、ダメ!」

 

二人の少女はお互いを慈しむように抱き合って離れない。

忠勝の目には、二人を結ぶ確かな絆が見えた。

 

「・・・・・・!」

 

「・・・いいの?」

 

二人を優しく立たせると忠勝は、逃げるように促す。

呂布は困惑ぎみだが、陳宮は泣きながら忠勝に礼を言ってきた。

 

「・・・・・・」

 

「・・・うん、ありがとう、忠勝」

 

そうして二人は行ってしまった、彼女らの去った方角を見つめ続ける忠勝。

 

「うにゃ〜、良いのか?逃がしちゃっても?」

 

「・・・・」

 

「そうかー。兄ちゃんがそう言うなら良いのだ!」

 

何やら、和やかな空気を出し始めた二人に秋蘭が声を掛ける。

 

「助けてもらったばかりか、呂布を退けてもらった事には感謝する。だが、休んでいる暇はないぞ! 呂布がいなくなった今、残りの勢力を一気に制圧する機会は今しかない。皆、自陣に戻り制圧を急いでくれ!」

 

秋蘭の言葉に頷く忠勝と張飛。

 

「じゃあ、鈴々たちも戻るのだ!」

 

「・・・・!」

 

そう言って、颯爽と忠勝の頭によじ登る張飛。

 

「もう、来なくても良いよ! ちびっこ!」

 

「いい加減にしなさい、季衣!」

 

そう言って張飛を茶化していた季衣であったが、張飛を乗せた忠勝の背中が開き、そこから炎を噴射したかと思えば、空に飛び立っていったのを見て絶句する。

 

「・・・あの者、空も飛べるのか・・・」

 

同じ光景を見ていた秋蘭も少しの間、制圧の事を忘れ呆けてしまった。

 

 

 

 

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「でりゃあああああ!!」

 

「おおりゃああああ!!」

 

忠勝と呂布の戦いが終わった頃、こちらの戦いも絶頂を迎えていた。

 

「ふふ・・・! 楽しいなぁ、やっぱ、本気で戦える相手っちゅうんは、血が滾るわ!」

 

「はっ! 鬼とここまで渡り合うなんざぁな! あんた自慢して良いぜ?」

 

戦いが始まってから二人はもう何十合と打ち合って来た。

しかし、二人の顔に疲労は無い、むしろこの時が楽しくて仕方がないと言った顔だ。

 

「チカ兄ちゃん!」

 

「チカ兄様!」

 

「おう、季衣に流琉じゃねぇか! お前ら華琳に伝えな! デッカイ大漁旗の準備をしとけってな!」

 

「分かったよ! でもまず、この周りの敵をなんとかしなくちゃね!」

 

「ここは私と季衣でなんとかするので、兄様は張飛を!」

 

「おうよ! 任せな!」

 

季衣と流琉から視線を移し、張遼を見据える。

 

「悪ぃな! 待たせちまったか?」

 

「女を待たせる男は最悪やけど・・・今回は許したる! それよりあんた、あとどれくらい戦えそうや?」

 

「そうだな、後、三日三晩は、この調子で打ち合えるぜ?」

 

「ええなぁ・・・それ、良すぎるわ・・・! なら、遠慮無く行くで!」

 

「おうよ!かかって・・・ッ!!」

 

元親の視線に入ったのは、張遼を背後から狙う、弓兵部隊であった。

鎧から察するに恐らく袁紹の軍だろう。

こっちに向かって走ってくる張遼は彼らの存在に気付いていない、このままでは勝負に水を差される。

そう判断した元親の動きは速かった、駆けてくる張遼の槍を躱し、背後に回って抱きかかえる。

そして・・・肉を穿つ音が元親の脳内に響いた。

 

「ちょっ!? チカちゃん!? 真剣勝負の最中に何の冗談や!!」

 

いきなり抱き着いて来た、元親に顔を真っ赤にして困惑する張遼であった。

 

「「チカ兄ちゃん(様)!?」」

 

「ごふっ・・・。よお、張遼さんよ、無事か?」

 

ゆるゆると手を離し、張遼から離れる元親、口から血を吹き出し、背中には無数の矢が刺さっている。

 

「チ、チカちゃん!? どないなっとんねん! クソッ! 誰じゃあ! ウチの一騎打ちに水差しおったド阿呆ぅは! 出て来い! ウチが叩き切ったる!!」

 

「兄ちゃん!? 大丈夫なの? ねぇ!?」

 

「お兄様! 動かないで・・・ああ、血がぁ・・」

 

「心配すんなよ・・・。鬼がこの程度でくたばるかよ・・・!」

 

口元を拭い、背中の矢を引き抜いていく元親、全ての矢を抜くと先ほどよりも激しく血が噴き出す。

しかし、そんな事は知った事かと、袁紹の弓兵たちを睨み付け一言言い放つ。

 

「てめぇら・・・人様の一騎打ちを邪魔するなんて野暮は二度とすんじゃねぇぞ・・・!」

 

その鬼気迫る様はまさに鬼のそれであった。

それから、張遼に向き直り朗らかな顔で言ったのである。

 

「すまねぇな、張遼さんよ。さぁ、これで、心置きなく打ち合えるってもんだぜ!」

 

「なっ・・・・」

 

「おいおい、なんだぁ? その呆けた顔は、来ねぇなら、こっちからいくぞ?」

 

この言葉に我に返ったのか張遼も槍を構える。

 

「なんやぁ・・・アンタって奴は・・・。ええ、ええなぁ・・・最高や・・・。まさかあの世に行く前に修羅と戦えるとは思わんかったわ!!」

 

「あぁん? 修羅だぁ? 違うね・・・俺は鬼神・・・。西海の鬼神よ!!」

 

「そうやったな! ほんなら西海の鬼神さん、ウチと死ぬまで踊ろうやないか!!」

 

「上等ッ!!」

 

二人は心底楽しそうに槍をぶつけ合う。

この時に終わりが来ない事を祈りつつ。

 

 

 

 

 

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政宗は外の敵兵を粗方倒し終わると城内に入って行く。

政宗が入る頃には大方の制圧は完了していたようだ。

多くの連合軍兵士が忙しなく走り回っている。

 

「おお! 政宗殿も居られましたか!」

 

「ご苦労だったな! 独眼流!」

 

「何だよ、あんたらに先を越されていたとはな・・・」

 

城内を歩きまわっていた、政宗に幸村と家康が声を掛けてきた。

 

「それにしても皆、無事で良かったでござるな!」

 

「いや、そうでもねぇんだな・・・・」

 

「なんだ?独眼竜、怪我でもしたのか・・・?」

 

「いや、俺じゃなくて右目の方がな・・・まぁ、大した事は無いんだが」

 

「「片倉殿が!」」

 

心配する二人に少しだけ事情を話す政宗、小十郎は曹操軍のある将と共に行動していたらしいのだが、その将が無茶な突破を図り、危険な状態に陥った。

そこに小十郎が助けに入り、矢を数本喰らったと言う事らしい。

 

「そうだったのか・・・見舞いに行かなくてはならないな!」

 

「そうでござるな! 武田式の看病を披露する時がきたでござる!」

 

「Ah〜、なんかお前らが来ると悪化しそうだな・・・?」

 

そんな他愛も無い話をしながら歩いていると、城の庭で着飾った少女たちがこそこそとどこかに行こうとしていた。

 

「Hey! そこの御嬢さん方、ちょっと聞きたい事があるんだが・・・良いか?」

 

「ひゃう!」

 

「うぅ・・・」

 

「な、何故、斯様に怯えておられるので・・・? ハッ! 政宗殿の顔が怖いからであろうか!」

 

「うるせー! 真田は黙ってろ・・・」

 

「まぁまぁ、この男は外面は怖いが案外優しい所もあるんだ! どうか、怯えないで欲しい・・」

 

そんなに顔が怖いかとちょっと気にし始める政宗を尻目に、幸村と家康が話を進める。

 

「お主たち、董卓がどこに行ったか知りませぬか?」

 

「何か知っている事があれば、何でも良いから教えてくれないか?」

 

「「・・・・・」」

 

何かに驚いているような表情を浮かべる少女たち。

三人もどうしたのかと首を傾げている。

と、そこへ。

 

「はいはいはいっと! 俺様参上!」

 

「おお、佐助ぇ! どうしたのだ? 董卓は見つかったのか!」

 

「えっ! あ〜うん、見つけたよ! たった今・・・」

 

「流石は、猿飛! 本当に優秀な忍だな! で、その董卓はどこにいるんだ?」

 

「えっと・・・そこに・・・ねっ?」

 

三人は佐助の指差す方向を見る。

そこにいたのは、さっきの少女たち、明らかにさっきより怯えた顔になっている。

 

「佐助ぇぇぇ!! 嘘を申すでないぞ! 斯様な女子がとうた、うごご・・・」

 

「Shut up!! 声がでけぇんだよ!!」

 

叫びそうになった幸村を押さえつける政宗。

どうやら、周りには聞こえて無かったようだ。

それから、佐助に董卓の事を聞いていく、どうやら董卓は大方の予想通りに単なる傀儡でしか無かったらしい。佐助の調査によれば、真の黒幕たる十常侍は、すでに張遼が始末してしまったらしい。

 

「しかし、この少女が、あの董卓とは・・・この世界では信じられん事も多くあったが、もしかすると一番の衝撃かもしれないな・・!」

 

「俺様も初めは目を疑ったよ・・・こんな可憐な少女が董卓とは思わなかったしねー!」

 

「しかし、どうする・・・。このままこいつらを放置していく訳にもいかないだろ?」

 

庭の隅の方でひそひそと話す男たちと少女たち、端から見れば怪しい事この上ない。

 

「某の所は無理でござろう・・・雪蓮殿は客将の身、もし袁術殿にバレでもしたら立場が危うくなるでござる・・・」

 

「俺ん所も無理そうだな・・・最近、華琳の奴、俺が女と歩いてると妙に機嫌が悪くなるんだよな・・・それに、あいつの覇道に恐らく董卓は要らない・・・最悪、殺される可能性もあるしな・・・」

 

「では、ワシの所で預かろう! きっと皆、歓迎してくれるはずだ! それで良いかな?」

 

「は、はいぃ・・・」

 

「月が良いなら・・・」

 

「・・・家康・・・分かってるとは思うが・・・」

 

「心配するな独眼竜、彼女たちは単なる傀儡でしか無かったとしても、彼女の名で多くの者が傷ついたのだ・・・。今の彼女らを見るに、それも重々分かっているようだが・・・。それでもちゃんと後で言って聞かせるよ」

 

「・・・なら良いさ」

 

こうして、董卓らは家康が引き取る事になった。二人を連れて帰った時、妙に皆の機嫌が悪かったと家康は後に語る。

 

 

 

 

 

-11ページ-

 

 

 

 

 

 

「あーあ。負けてもうた・・・」

 

「久しぶりに楽しい戦いだったぜ! 感謝するぜ張遼!」

 

「ウチも最高やったわぁ! 生きとる内にこんな勝負が出来るとは、思いもせんかったで!

・・・もう悔いは無いわ! さぁ、殺しぃ」

 

満足そうな顔で己の死を待つ張遼に元親が言う。

 

「何言ってんだ? お前には、これから曹操に会ってもらわねぇとな!」

 

「曹操にぃ・・・何でぇよ?」

 

「あー、なんでも曹操がお前の事欲しがってな。それで俺は捕獲の係だったんだよ」

 

「・・・・」

 

しばし呆然とする張遼に元親が声を掛ける。

 

「まぁ、曹操に降れって事だな・・」

 

「・・・ええよ、降ったる。曹操の所におればチカちゃんともいつでも戦えるしな!」

 

「おっしゃ! これで俺の仕事は完了だ・・な・・・」

 

「ちょっ、チカちゃん!?」

 

張遼を無事に捕まえて安心したのか、元親はぶっ倒れた。

背中の傷口からは絶え間なく血が流れ、正直、このままだと死んでしまうのではないかとも思われた。

 

「ああ、もう! せっかく恰好良かったっちゅうのに・・・曹操に会う前に手当てや! 急ぎ!」

 

こうして元親は療養所に担ぎこまれたのであった。

 

 

 

 

-12ページ-

 

 

 

 

後半、完全に力尽きたよ・・・・でもこれで、反董卓も終わりです。この後の展開は何も考えてないよ!

 

 

 

それでは、ここまで読んで下さった方には最大級の感謝を!

 

 

 

 

 

 

 

説明
長いよ今回! そして後半力尽きたよ! 

こんな作品ですがこれからもよろしくおねがいします!
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コメント
2828 さん 誤字報告ありがとうございます。 これからも誤字が有りましたら気軽にお教え頂くとありがたいです(KG)
ひっとーさん そうですねww この二人は言葉を使わずとも感じる事が出来る気がします。 それから各陣営のお話は書きたいとも思っていますがどうなるか現段階では分かりません(KG)
M.N.F. さん 三つ巴になるか、まだ決まっていないんですよね・・・この作品は行き当たりばったりなものでwww(KG)
元親が張飛と戦ってる誤字あるよ〜(2828)
今後は両袁家そっちのけで三つ巴の争いになるんですねわかりたくありません^^(M.N.F.)
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