ゆり式5-ゆずこ?頼子2- |
おかーさん先生のうちに泊まり込んでから数か月。最初は借りてきた猫のように
大人しかった私たちも少しずつ気を緩めるようになってきた。
おかあさんが学校へ行っていて、私の仕事が休みの時、ちょっとした好奇心で
休みの日に弄っているお母さんの3DSを開いてみた。
ソフトはRPGのゲームが入っていて学生の頃に話していたことを
思い起こさせる。くだらなくも楽しくて輝かしい思い出である。
「んぷっ・・・!」
思わずへんてこな声が漏れてしまうことが目の前に広がっていた。
キャラクター名の中に懐かしい響きがあった。
その名も「なまおっぱい」
「おかあさん律儀に名前つけてるよ〜」
おかしくて嬉しくて変なテンションになってしまった。
私たちが卒業してから今までの間、どんな気持ちだったか聞きたくなってきた。
「はひー、はひー・・・」
笑いすぎてお腹が痛くなっていたが続きが気になるから他のキャラも
見てみる。人のキャラの名づけ方によってどんな気持ちとかが大体わかるから。
まるで裸のおかあさんを見ているようで興奮してしまう。
「あっ・・・」
その中に私たちの名前もあった。このゲーム数年前に出ていたやつだから
私とおかーさんが同棲する前のやつで。
「私の名前もある・・・」
ステータスを見ているとどうやらキャラ間の関係性まであるようで
私はそのままの勢いですべての関係を見てしまった。
「恋人・・・」
どくんっ
表示されていた言葉を口にした途端、胸がドキドキもきもきしてたまらなくなった。
これって女の子同士でもそういう関係になれるゲームなんだ…
まるで私たちみたいではないか。
「おかーさん、意識してくれてたのかな。偶然かもしれないけれど」
そうやって誤魔化そうとしても一度根強くついた意識はそう簡単に払拭
されることはなく、おかあさんが仕事から帰ってくるまでの長い時間をベッドの
上で悶えて過ごすことになった。
「あはは、唯ちゃんは縁ちゃんと結ばれてるや」
「あれ〜、アイちゃんたちの名前はないか・・・」
それだけ私たちとおかあさんの距離が近かったんだなぁって
しみじみしながら考えていた。なんだかこういうのってうれしい。
別に確かな約束してたわけじゃなくてただの口約束にしか過ぎなかったから。
これは予想外過ぎた。
「そうだ…」
私は携帯を出してその映像を写真に撮ってメールで送ってみた。
送り先は唯ちゃんと縁ちゃんの二人だ。二人はあのことを今でも覚えているだろうか。
いや、案外私くらいのものじゃないだろうか。
忙しいらしく暫く経っても返事は来ず。私は我に返って時計を見やると
午後1時を回っており、お腹が空いたのでペペロンなパスタを軽く作って
胃の中に収めた。なかなか美味しゅうできたので割と満足。
まだ時間もあったからおかあさんのゲーム履歴を余すところなく
見まくっているうちに外の景色もすっかり暗く染まっていた。
ガチャッ
玄関の音が聞こえると、疲れたような声が聞こえてきた。
好きな人の声ってどこか癒される。
「ただいま〜」
「おかえり、おかあさん」
「あれ、野々原さんずいぶん機嫌いいのね」
「うん!…てひひ」
「てひひ?」
私が首を傾げながら言うと同じように傾げてそこから見えた光景に
おかあさんは動揺して慌てふためいていた。
「ちょっと、何勝手に見てるのお〜」
「ちゃんとあの時の名前つけてくれたんだね」
「なま」
「おっぱい」
「もう〜!」
恥ずかしいのか顔を赤くして少し涙目になっていた。
ちょっと可哀そうなことをしてしまっただろうか。でもその様子が可愛くて
しかたないので私はニヤニヤしながら見守っている。
「ほんとは書くつもりはなかったのよ」
「え?」
「最初は生徒の一人だと思っていたのにね…」
起動していたゲームを確認して止めたおかあさんは振り返って
私を見ると、私はその表情を見てドキッとした。
少し潤んだ瞳と切なそうにしかめる表情がそこにあったから。
もしかしたら私以上に…。
「いなくなってからしばらく経って本当に寂しく感じたの。
野々原さんと日向さんの笑い声、それを諌める櫟井さんの言葉が
耳に響くの。ふと、一人になるとそういうことの繰り返し」
だから少しでもそれを紛らわすために昔こういうやりとりしていた
ことを思い出して書いていたのだという。
「特定の生徒に対してこんな感情抱くなんて・・・ダメな先生よね」
泣きそうな顔をして笑うからとても痛々しくて見ていられなかった。
だから私は今にも泣き出しそうになる先生をぎゅっと強く抱きしめた。
「私はすごく嬉しいよ。そこまで私たちのこと想ってくれてたんだから。
本当、今の関係になれてすごい嬉しい」
恥ずかしいとか恥ずかしくないとかじゃない。素直なまっさらな私の感情を
おかあさんにぶつけると、照れるような控えめな笑い声が私の耳に入って
ホッとした。
ホッとしたついでにおかあさんは私と視線を合わせる。
やや上目遣いでもじもじしながら。
「私も・・・」
ズキューンッ!!
漫画の表現とかで胸に矢が突き刺さるようなシーンがあるがまさにそんな感じ。
そんなに誘われてしまうと・・・もはや私に我慢という文字は頭の中から
消去されていた。
「おかあさん!」
ちゅっ
「んっ」
ちゅっちゅっ
「ぷはっ」
勢いに任せてキスをする私に抵抗する気配を見せないおかあさん。
それはOKという意味合いでいいんだと私は勝手に解釈した。
合間合間に息継ぎをするように二人の艶めかしい声に興奮しながら
キスを続ける。舌を入れて私はおかあさんを感じていた。
もはや最初のように歯をぶつけたりうっかり噛んだりすることはなく
最初から最後まで気持ちのいいキスを二人で味わう。
その後の行為もお忘れすることもなく満喫した。
「ふぅ…」
「もう…野々原さん元気すぎ。先生つかれた・・・」
「なにいってんの。夜からが本番でしょ」
「そんなぁ〜・・・」
本当に疲れている様子だったから私は今日のとこはやめておこうと
思って話を切り替える。悩みがありそうだったら聞いてあげたいから。
本当に慣れというのはすごいもので、学生のときおかあさんの胸を
触りたい飛び込みたいと思ってても実行に移せなかったのに
今では容易く行うことができる。
でもそれは学生の時に感じる感覚じゃないんだろうけど。
そんな一抹の寂しさを感じながらも今の方が幸せに思えた。
だって愛する人ができると人は強くなれるから。
「そういうことがあってぇ、怒られて・・・」
「うんうん」
ベッドの隣に腰かけて背を預けて私たちは言葉をつかって相手に伝える。
手を握ったり頭を撫でたりそれだけでも何だか愛情を感じてしまう。
幼いかもしれないけど、私にはこの時間もとても大事だ。
「お疲れ様、おかあさん」
「ありがとう…」
私の肩に頭を預けるおかあさん。おかあさんの匂いを感じて
ちょっとムラムラしてしまうが、がんばって耐えることにした。
だから代わりに少し、おかあさんと繋いでいる手を強く握る。
「あぁ、幸せだなぁ」
「私も・・・」
「私もね、おかあさんのことずっと見てたよ。ずっと好きだった」
「・・・」
「あれ・・・。寝ちゃってるよ」
苦笑しながら私はおかあさんを何とかベッドの上に寝かせて布団をかける。
年上の彼女がとても可愛らしい寝顔をしているのがなんだかこそばゆい。
「もう、無抵抗すぎるぜ・・・」
私はそんな変な口調で言うともう一度だけおかあさんの唇に私の唇を
重ねて。微かに聞こえる寝息に蓋をした。
私にはこれが何よりも美味しく感じる幸せの味。
こういう日々が長く続くように祈りながら長く長くキスを続けた。
お終い
説明 | ||
前の続きのようなそうでないような。大人になったゆずことおかあさんせんせの百合話。 | ||
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