まずは・・・・ |
その日の内に、俺達は出発した。俺はバイク(マニュアルによると正式な名前はガードチェイサーとか言うらしいが)に打ち跨がり、ハンヴィーを運転する静香の隣で走行していた。国道に差し掛かると、一旦エンジンを止める。どこまで行けるかどうかは分からないがな。EMPのお陰で市街地からの音は消されたが、俺達の移動手段が発するエンジンの音はかなり響いている。
「そんなにいないな。」
「うん・・・・」
開いた窓から頭を突き出した静香が辺りを見回す。
「これからどうするの?」
「行ける所まで行こう。幸い<奴ら>はまだそこまで車道を埋め尽くしていない。突っ切っても問題無い数だ。俺も避け切れる。銃弾もある程度は百合子さんのお陰で補充出来たけど、避けられる限り消費は避けよう。」
俺はそう言いながらポケットから床主の地図を取り出して現在地を確認した。結構デカい上に細かいから現在地の把握が少し面倒だ。GPSがいかれてしまったから無い物強請りは出来ないが。
「俺達が今いるのがここだ。孝、俺達が向かってるのは、お前の母親が働いてる新床第三小学校だよな?」
「はい。」
「この近くは確か・・・・あ、そうだ。ここ、ショッピングモールがある。」
俺は現在地から人差し指約一本分離れた所にある。距離はそれなりにある。
「食料はどうか分からないが、他の物資は手に入れられる筈だ。」
「化粧品とか洗面用具ね。確かにウェットティッシュとかは水道が使えない今、必要になるわ。」
「近道を知ってる、ついて来い。」
俺はバイクで<奴ら>の間を縫いながら、静香はハンヴィーで<奴ら>を蹴散らしながら前進した。だが近道に差し掛かると、段々と<奴ら>の量が増えて来た。当然と言えば当然だが、それでも不愉快だ。
「一杯いる・・・・・」
「迂回するぞ。別のルートがある。」
直ぐに向きを変えてスピードを上げた。かなりの間運転していたが、日が完全に暮れる半歩手前でショッピングモールに到着した。ハンヴィーは建物の中に入れられなかった物の、バイクにも武器は積んであるので押して入った。
「まずは一休みだな。」
エンジンを切ると、バイクハンドルに付いているボタンの事を記述しているマニュアルのページを探した。最初の奴が左側の収納スペースを空けて、真ん中が左側、最後の右端が荷台に固定された奴のロックを解除すると言う訳か。武器の説明が掻いてあるページを探し当てると、それを読み始めた。ピストル型のマシンガン、GM-01スコーピオン。装弾数は七十二発?それに十口径って・・・・威力低くないか?まあ、22LR弾で倒せない事は無いだろうが、使ってみてからのお楽しみだな。お次がGG-02サラマンダー。スコーピオンに接続するポンプアクション式のグレネードランチャー。こいつはまあダネルMGLが使えなくなったら使うとしよう。最後がGX-05ケルベロス。暗証番号1・3・2でアタッシュケースみたいな物からガトリングに変わる。コイツは威力が高い代わりにかなり弾食うんだよなあ・・・・
「よしと。」
一通りマニュアルを読み終えると、雨の日に使う防水シートをかぶせた。コイツは見つかったらヤバい。皆もそれぞれ銃を隠し終わると、集合した。
「これからどうする?」
「まずは食料調達ね。EMPが使われてから一日経った。生の魚や肉類は腐って行くわ。使える物は拾って、後は保存食を探しましょう。」
少しずつしか食べていないとは言え、残り物を手早く料理して作った食料もいずれは鮮度が落ちて悪くなる。医療設備が無いのに食あたりを起こしたらそれこそ冗談では済まない。
「缶詰、瓶詰め、発酵食品、後は乾き物とか薫製だな。後出来ればビタミン剤と洗面道具だ。歯ブラシ、フロス、歯磨き粉、後はウェットティッシュ。あ、後さ、着替えたければ各自勝手に服屋を物色してろ。最後に、二人一組で行動するんだ、絶対一人では動くな。特に肉弾戦が出来ない三人。頭に血が上っておかしくなってるヤバい奴だっているんだ。襲いかかって来たら、遠慮はいらない、ぶちかませ。冴子は静香と、孝はコータ、麗は沙耶と行ってくれ。」
「滝沢さんはどうするんですか?」
「この中に生存者がいるかどうか確かめに行く。」
バイクに座りっぱなしだったから背筋を伸ばし、肩を回しながら麗の質問に答えた。
「危険なら排除、そうでないなら、情報を貰う。街から離れてそれなりに時間は経つ、何かが変わったかどうか、それが俺達の今後の行動にどう影響するか。そうすればプランも立て易い。」
「でも一人じゃ・・・・」
「お前らの命に比べたら、俺のなんて軽い軽い。それに、戦いなら、俺の方がお前らより断然強い。お前らが束になって来ても、俺は負けないぜ?」
そう言って踵を返すと、俺は適当にモールの中を練り歩き始めた。エアウェイトとM327は緊急用に持っている。後は足と袖の中に仕込んだナイフだ。歩き回りながら適当な店を物色し、俺はまず汗だくになった服を脱いで別の物を適当に棚から取って着替えた。後ろで足音がしたので棚の後ろにしゃがんで身を隠す。足音の主は元々俺の事が視界に入っていなかったのか、直ぐに歩き去った。足音が遠ざかると立ち上がってソイツを呼び止めた。
「おい。」
「は、はひぃ!?」
よく見ると、俺が呼び止めたのは制服姿の婦警だった。
「お、警察官でもここら辺でまだ生きてる奴っていたんだな。」
「あ、あの・・・・さっきここに来たんですか?」
「ああ。ここの状況を教えてくれないか?街で何が起こってるか、ここにいる人数は君を含めて何人か。落ち着いて教えてくれ、俺は元警察官だ。」
こう言った方が接し易いと思うからついそう言ってしまった。それにしても、警官が及び腰でどうするんだ、もっと堂々としろよ、堂々と。そんなんだから最近の警察は嘗められるんだよ。
「え、そうなんですか?」
「ああ。元SAT第一小隊制圧一班班長、滝沢圭吾って言えば分かるか?」
「え・・・・・?滝沢、圭吾・・・・って射撃大会で『カルロス・ハスコック二世』って呼ばれていた、あの、滝沢巡査長ですか?!」
「そうそう、それそれ。で、教えてくれるか?」
「はい・・・本官も加えて十人弱であります!」
ピシッと敬礼をして返してくれた。
「そんなに堅苦しくする必要は無い。今の俺は一般人だ。えーと・・・・」
俺とした事が名前聞いてなかったな。
「床主東署交通課所属の中岡あさみ巡査であります!」
相変わらず敬礼を崩さない。まあ、職務に忠実なのは良い事だが、正直コイツのメンタル面が心配だ。こう言うピュアで真っ直ぐな奴程、自分ではどうしようも無い状況に陥るとパニくってどこかミスをする。
「オッケー。今から俺らの仲間と合流するから、ソイツらとも話してくれるか?その中の一人、親父が公安の刑事なんだ。所轄の警官が生きてるって分かれば少しは安心するだろうし。」
「わ、分かりました!」
説明 | ||
とある民間軍事会社に勤めていた傭兵は、僅か二十六でその生涯に幕を閉じたが、次に目を開けた時には、赤ん坊として生まれ変わっていた! チートな特撮の武器も『神の介入』と言う事で出します。 |
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