番外編:海外でのお買い物
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SATに入ってようやく安定して来た時期、久々に出た有給。俺はリカと一緒に海外旅行に行く事にした。本来は静香も一緒に連れて行きたかった所だが、大型連休でもない限り学校の業務からは解放されない。そう言う事情もあり、二人で楽しんで来いと後押しされて踏み切った。

 

「良い所だな。」

 

床主洋上空港から出航して十時間以上経ち、俺とリカはマイアミ空港に降り立った。

 

「ここがマイアミ?良いわね。大型連休の時に静香も連れてきましょう。」

 

「そのつもりだ。時差ボケを直したいから、そうだな・・・・・ホテルにチェックインしたら海にでも行くか?」

 

「良いわね。ほら、行くわよ。」

 

「待て待て、落ち着け。迎えがまだなんだよ。」

 

そう言った直後、黒いアウディーA8が俺達の前に停まった。

 

「これ、レンタカーよね?」

 

「知り合いにやり手のトレーダーがいてな、その人のツテで色々世話になってるんだ。車も、レンタカーではあるがタダ同然で借りてる。仮にお釈迦にしても保険が利くしな。」

 

『おい、乗らねえなら帰るぞ?』

 

『分かったよ、俺の女と話ぐらいさせろって。せっかちな野郎だなお前は。』

 

乗って来た奴がクラクションを鳴らす。運転席を空けると、握手すると同時に二十ドル札をそいつの手に握らせた。

 

『ありがとよ。』

 

荷物をトランクに押し込んでホテルまで飛ばした。久々に乗る高級車は文句無し、気分は黒い外車を乗り回す元軍人の某運び屋だ。と言ってもスーツは着てないがな。ホテルに到着すると、ボーイが荷物を運んだ。三十フロアはある建物の中で、スイートルームに通された。内装はシンプルだが、部屋自体はかなり広い。流石はスイートと言うべきか。奥の方には巨大なダブルベッドが鎮座している。

 

「凄いわね。」

 

窓を開けてベランダに身を乗り出し、少しばかり傾き始めた太陽を見てリカはそう零した。言い忘れていたが、彼女の着ている物は結構肌を露出させている。

 

「庶民的な所も良いが、こう言う高尚な所もたまには良いだろ?」

 

「ええ、スッゴイわ。滞在期間はどれぐらい?」

 

「二泊三日だ。ここにいる間に色々と『買い物』があるからな。」

 

パソコンを立ち上げてネットマップに記載された複数の場所を見せた。

 

「ガンショップ・・・・?まさか」

 

「そのまさかだ。俺もかねてから欲しいと思っている物が幾つかある。場所も幾らか当たりを付けている。どうだ、行く気は無いか?殆どの事業もそのトレーダーがちょいと噛んでるから、ソイツの知り合いだって事を伝えればある程度値切ってくれる。」

 

「やっぱりあんた最高。」

 

後ろから抱きつかれてふわりと甘い匂いがした。俺にしか分からない、リカの匂い。そのまま首筋を舐り始めた。小麦色の細い指をタンクトップの下に滑り込ませる。

 

「おいおい、お前欲情し過ぎ。そう言う事は夜にでもシてくれ。」

 

「良いじゃない別に?。好きな男に触れてると安心するのよ?」

 

「意外だな、お前の口からそんな言葉が出るなんて。俺が知ってる中でそう言う事を口にするのは静香位しかいないと思っていたんだが。」

 

まあ別に嫌な訳じゃないんだがな。ともかくその夜俺達は早めに寝た。と言っても、二時間位はリカに色々と搾り取られた末にやっと解放されてから就寝したんだがな。

 

 

 

 

次の日、時差ボケをある程度は直す事が出来たので昨日の内に作成した店の候補リストと俺達が探している品物のリストを手に早速車を飛ばした。

 

「よしと、着いた。」

 

「一件目で全部見つかれば良いんだけど。」

 

目当てのガンショップは、マイアミの外れにある少しガタついた木造の家だった。こんな所に盗みにはいる様な命知らずはいないだろうな。強盗も裸足で逃げ出す。丁度在庫の一掃セールをしていると張り紙があった。

 

「ここ?」

 

「ああ。何でもそれなりの老舗らしい。ご老体の兄弟二人で商売をしてるんだが、片方はガンスミス、もう片方は売ると言う風に役割分担をしている。どっちも銃の知識はそこいらにいる軍人以上だ。騙されたと思って一度見に行こう。」

 

俺と腕を組んで店の中に入ると、恰幅の良いフレーム無しの眼鏡をかけた白髪の老人が出て来た。

 

『らっしゃい。お二人で何をお探しで?』

 

『いや、一掃セールをしてるって聞いてね。お目当ての物があるか探しに来たんだ。』

 

流暢な英語で返すと、早速探しに来た銃のリストを見せる。外装は兎も角、内装は中々綺麗で銃もしっかりラックに並べてあるし、掃除も行き届いている。

 

『隠居でもするのかい?』

 

『ああ、まあな。息子夫婦と孫がいい加減商売畳んで一緒に暮らそうってうるせえんだ。弟のマーカスは反対してたんだが、あいつもカミさんには相変わらず勝てねえからな。』

 

『盥回しにされないだけマシよ、一緒に住もうって言ってくれるだけでも喜ぶべき。日本じゃそう言う人、あんまり見ないもの。』

 

『ほ?、あんたら日本人かい?俺も一度は行ったが、銃が余りにもしょぼい所だ。特に警察じゃあ特殊部隊でもない限り銃なんざ早々触れねえしなあ。』

 

後三、四十年程若返っていたらコイツとは是非どこぞの居酒屋で銃の話を肴に酒を奢ってやりたい。リカも恐らくそう思っているだろう。彼女も俺と同じく筋金入りのガンオタだ。

 

『よくぞ言ってくれたわね、ホントその通り。だからここで幾つか買う事にしようって有給取って来たのよ。こう見えても私達二人とも警察の特殊部隊SATの隊員だから。』

 

『そいつぁ良い客が来てくれたな。どれどれ。ん?、あんたら良い趣味してるねえ。ここに書いてある奴ぁ殆ど手に入るよ。まあ、ちょいと待っててくんな。』

 

カウンターの奥にある扉のを開けて姿を消すと、その間にリカと俺は中にある銃を幾つか見て回った。中にはコルトM1911のオリジナル、ワルサーP99、ルガー・レッドホーク、M4A1カービンなど、古い物から新しい物まで品揃えはかなり豊富だった。

 

『待たせてすまんね。ほら、そこの美人の姉ちゃんのご注文の品だ。』

 

店主が持ち出して来た物は、イサカM37ライオット、M1A1スーパーマッチ、そしてAR10だ。全てリカが欲しがっている物である。それを見た瞬間リカの顔が喜色満面になった。作動桿を引いて調子を確かめたり、実際に構えたり、まるで子供だ。

 

『このM14に使える銃剣はある?』

 

『一緒に付いて来るよ。中々良いだろう?ドットサイトやスコープ、フォアグリップとかのオプションパーツもあるけど、どうする?』

 

『じゃあ・・・・フォアグリップ、ライト、スコープ、後バイポッドを一つずつ、ドットサイトは二つ。改造する為のパーツは他にもある?SR-25みたいな。』

 

『ん??、そいつぁちと無理だなあ。』

 

『あるよ、トーマス。倉庫で埃被ってるパーツが幾つか持って来たよ。』

 

奥の方から声がして、店主とは真逆の痩せた男が現れた。髭も綺麗に剃ってある。恐らく彼が店主トーマスの兄弟マーカスだろう。彼が持って来た黒いケースの中を見ると、確かに見紛う事無きナイツSR25狙撃ライフルのパーツがあった。

 

『ここまでマニアックな物を買う物好きはいないし、元々一部使い物にならない部品があったからね。良かったら只であげるよ?』

 

棚牡丹万歳だな。普段はクール&気丈に振る舞うリカも少女の様にはしゃぎ回っている。

 

『トーマス、そっちのリスト貸してくれ。』

 

半ばトーマスから奪い取る様な形で俺が欲しい銃を見て行くと、カウンターの後ろにある一番上にあるラックからスリングベルト、シェルホルダー、ライト、そしてシース付きの銃剣が付いたモスバーグM590A1を下ろして来た。

 

『ここに書いてある物は丁度あの美人トレーダーが買ってくれって言った奴だよ。あんたらあの人と知り合いかい?』

 

『俺はな。以前にもちょいと世話になったんだ。』

 

『そうかい。じゃあ、サービスしなきゃあな。』

 

マーカスはカウンターの下から二つのケースを取り出して開いた。一つは木製グリップとサイレンサーが付属しているシグザウエルP226 X LW、九ミリ弾を十九発装填出来るマガジンを使う化け物みたいな拳銃だ。俺も傭兵時代は防弾ベストやケブラーヘルメットの事を考慮して45ACPをよく使っていたが、九ミリ弾でも当たり所次第では充分高い威力を発揮する。

 

『すげえだろう?』

 

俺の反応が気に入ったのか、ニヤニヤしながら銃を手に取ってスライドを引いてみせる。

 

『ああ、すげえよ。じゃあ、こっちは・・・?』

 

マーカスは残ったケースを俺に見せた。

 

『スミス&ウェッソンのM327 357マグナム。M19なんざ簡単に上回る代物さ、何せシリンダーには八発入るんだからなあ。』

 

『正に人を殺す為だけに作られた、パワー重視の銃って事か。良いぜ、買った。』

 

値段は思っていたよりも安く、弾丸の紙箱を幾つかと銃を六丁で以外に手軽な値段だった。後で百合子さんに電話しとかなきゃな。

 

説明
リカとの絡みです。あの数々の銃をどうやって手に入れたか、その経緯を書きました。では、どうぞ。
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