真・恋姫†無双 巡る外史と仮面の魔神 六話 |
王宮の部屋の一室にある冷たい床の上…牢獄から出された二人の少女は体を縛られながら、横たわっていた。
少女の一人は儚げな雰囲気を出し、もう一人は気の強そうな雰囲気を出しているが、目の前にいる男に向けて怒気を放っている。
一方の男は少し焦ってもみえ、苛立っていた。
「―――何の用よ、張譲!?」
「ふん、先程わしの兵が帰ってきてな…。この戦、どうやら負けたようだ」
気の強そうな少女…賈駆は後ろにいる董卓を縛られながらも、なんとか庇うように睨む。
睨まれた相手…張譲は期待外れだと言わんばかりの表情だ。
数ヵ月前、董卓は何進に呼ばれ落陽に来ていた。
はじめは順調だった…十常侍を排除し、治安を取り戻そうとした矢先、殺したと思っていた張譲が一瞬の隙をついて董卓と賈駆を捕まえたのだ。
殺した張譲は影武者…本物の張譲は宮殿の中の隠し部屋に籠り、機会を伺っていた。
落陽に来たばかりの董卓の武官達は、その事に気づかずにいたのだ。
張譲は董卓と賈駆を盾にし、董卓の名を使い悪政を続行…そして、その事が袁紹の耳に入り、現在の反董卓連合ができた。
張譲は自らが逃げる時間稼ぎのために、張遼達を脅して泥水関を守るように命令。
命令に背けば、董卓達の命はないと言われた。
そして現在に至る。
「だがよくやってくれたわ、わしが逃げるだけの時間は稼いでくれた」
「だったらこの縄を外しなさいよ!あんた、まさかボク達も連れていくつもり…」
「そんな訳がなかろう。貴様らが居ても邪魔なだけ…だが、まだ役にたつ方法は残ってはいるがな」
にやり、としわくちゃな顔を歪める張譲。
その顔を見て、賈駆は彼が何をしようとしているのか理解できた。
「まさか…ボク達を…」
「そういうことよ、悪政は董卓…貴様がやったと世間で広まっているからな。それがわしのやった事だと言われては都合が悪い」
「そ…それって…」
「貴様らには死んでもらおう。なぁに、『董卓は自決した』とでも言えばばれはしない。何せ、悪逆非道の董卓だからな。わしがしたと誰も気づかんだろうよ」
張譲はにやにやと笑いながら告げた。
張譲が董卓を傀儡に悪政をしたとはいえ、世間では董卓がやったとされている。
その董卓が自決をすれば、誰もが自らの終わりを悟ったのだと思うだろう。
それに張譲は董卓に粛正されたと思われている。
しばらく姿と名前を隠せば、再び悪政をすることが可能だ。
「このっ…卑怯者っ!」
「負け犬の言っていることなど聞こえんなぁ…?さて、そろそろ町に放った炎が回る頃だ」
そう言って張譲は右手を挙げると、後ろに控えていた二人の兵が剣を抜き、董卓達の前出る。
すぐさま賈駆は董卓の前に移動し、盾になるように向き合う。
「せめて祈りながら死ぬがいい。暴君董卓と賈駆よ。………やれ」
「詠ちゃん…」
「月ぇ…!」
二人の兵は大きく腕を挙げる。
董卓と賈駆は身をよせながら、目を瞑った。
張譲は振り返り、悲鳴を今か今かと楽しみながら部屋の扉へ向かう。
そして、兵の剣が降り下ろされる…………
筈だった。
「……うがっ!?」
「……ぎゃあ!?」
「っ!?なん…」
聞こえてくるはずの悲鳴は二人の兵のもの。
なにかが起こったことを察知した張譲は後ろを振り返る。
そこには……両手を切断された、二人の兵の姿があった。
「……えっ…!?」
「う…ん…?」
「なんだ…!?誰だ…!?誰がやった!?」
『―――他人の影で、こそこそと悪政をするとはな。小者のしそうなことだ』
董卓、賈駆、張譲が驚く中、ある場所から声が聞こえる。
まさか…そんな馬鹿な、と思いながらも張譲はある場所…天井を見上げた。
暗くてよく見えないが、そこには確かに人影がある。
黒い仮面、黒いマント、漆黒の大鎌……魔神がそこにいた。
「な…なんだ貴様は!?」
『俺か?そうだな……他の奴らには魔神と名乗ったが、貴様には死神とでも名乗ろうか』
「っ!?魔神…!?」
「…へぅ…?」
魔神は天井から床に静かに降り、そう告げる。
賈駆は魔神の名を聞いた途端に、緊張した表情に。
「魔神…だと?そうか、貴様が畏れ多くも神を、天を名乗る者か!」
『天は名乗ってはいない。魔の神…としか、言ってはいないがな』
「御託はいい、天子である皇帝陛下こそ唯一の天!貴様の存在は万死に値する!」
『その皇帝の名を使っていた者が言うか……それで、俺を裁くつもりか?』
「はははッ!何を寝ぼけたことを、この王宮の中にはわしの部下が…」
『残念だな、もう斬った』
は?、と高笑いしていた張譲の表情は固まる。
今何を行った……そう思いながら冷静に考える。
魔神はどこから入ったのか、入ったとして兵にも見つからずどうやって来たのか。
「まさか…そんな……」
『まあ、ある意味貴様の兵はここにいるぞ……首だけ、だがな』
そう言って魔神はマントからなにかを取り出す。
それは―――張譲にとって見覚えがある、兵達の首。
ぅううう…と蠢きながらも、首は動いているのでまだ死んではいないだろう。
「ひぃ!?」
『数が少なくて助かった。そうでなければ目撃者が増えるからな』
「目撃者……?」
「ぎ、ぎゃぁああああ!!あつ、熱いぃぃぃぃぃっっ!!」
「ぐっ!?ぐえぇええ!?」
「な…なんだ!?」
『こいつらには、まだ首から下を動かせるようにしておいた。どうやら炎の中に入ったか、どこからか落ちたのだろう』
急に騒ぎ出す兵の首に怯える張譲に冷静に答える魔神。
いつもなら首から下までの体の感覚を遮断しているのだが、今回はしていないようだ。
それはせめてもの慈悲か。
『もうすぐここに連合が来るだろう。さて、貴様はどうする?』
「くっ…!」
「あ!」
ゆっくりと魔神が近づくのを見て、張譲はすぐに扉へ走る。
一秒でも早く逃げ出したいのだろう。
だが扉の取っ手を触った瞬間、張譲の手からジュゥゥゥ、と音がした。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
『すぐそこまで炎が来たか』
「く、くそっ!早くここから…!?」
脱出しようとした張譲だが、あることに気づく。
―――手が取っ手から離れないのだ。
何回手を離そうとしても、まるでくっついているように離れない。
『どうやら皮が溶けてくっついたようだな』
「あつ…た、助けろ!魔神、貴様は神なのだろう!?金でも地位でもやる!だから助けろ!」
『神を買収するつもりか、哀れな奴だ。……だが、張譲。この質問に答えれば、助けてやらんでもない』
「な…にぃ…!?」
『…国とは一体なんだ?何でできている?』
訳の分からないことに一瞬思考が停止する。
だが、再び焼けるような感覚が手を襲い、叫ぶ。
「く、国は上に立つものが作り上げる物!民草共はひれ伏し、漢王朝の皇帝と地位のあるものにより作られ…」
『…貴様にはがっかりだ。そこで果てろ』
なんとも自分かってな答え。
最後まで聞かずに董卓のもとへ歩き出す。
「ま、待て!間違って、間違っていないはずだ!これこそが漢の…」
『根本から間違っている。それに気付かない、貴様は愚かだな』
「ひっ!?ほ、炎が!」
そうこうしている間に、扉が燃え上がる。
手が離れない張譲の袖に、とうとう炎が燃え移った。
「た、助け…!慈悲…慈悲をぉ…!!」
『貴様は本質を見抜けなかった。天子と言われる皇帝を操った。それは貴様の落ち度だ』
全身に炎が移り、じたばたと暴れる張譲。
最早、手遅れだろう。
「じ…ひを…」
『俺に言う暇があれば、神にでも祈れ。まあ、もう救えないし祈ったとしても、救う神はいないがな』
動かなくなった張譲を背に、魔神は董卓達のもとに歩きながら刄金を抜く。
何をするか分からない魔神に対し、賈駆は警戒する。
そして、魔神は董卓達を縛っていた縄を斬った。
「えっ…」
「な、何のつもり!?」
『貴様達には死んでもらっては困るのでな』
そう言って、魔神は腕が消えたのではないかと言わんばかりの速さで床を斬る。
ポッカリと開いた床下はまだ火が回っておらず、まだ安全だ。
『…よし、移動するぞ』
「え…」
「へぅ!?」
そして、魔神は董卓と賈駆を担いで下に下りる。
賈駆は少し暴れるが、すぐに下ろしていた。
『さて、もうそろそろここに張飛…劉備元徳の将がやってくる。そいつについて行って、劉備に全てを話せ。貴様達を保護するはずだ』
「な、何でそんな事分かるのよ!あんた劉備ってやつの仲間!?」
『いや…今は敵だ』
やはり警戒している賈駆。
魔神は少し考え答える。
そうしていると、董卓が魔神に近づき、頭を下げた。
「……すみません、私は連合軍に身を引き渡します」
「ゆ、月!?」
『……理由を聞こう』
「はい、私は何進将軍にこの落陽をより良くするために来ました。ですが私はなにもできず、民の皆さんには苦しい思いをさせてしまいました』
「そんな……それは張譲が…!」
「ううん…そうだとしても、私の責任。弱い私に罪はある。だから…」
『…死んで罪を償う、と?』
「はい…それが私の責任です」
顔を傾け、ぽつりぽつりと喋る董卓。
罪の意識の表れか、じわじわと目尻に涙が溜まる。
だが…
『それは勘違いだな、董卓』
「「えっ?」」
魔神はそれを否定した。
『死で罪を償うことが、最も適していると?違う、それは只の逃避だ』
「逃避…?」
『悪行をした人は死んだ後、地獄に墜ちる。張譲もそうだろう。その罪の数だけ、地獄が待つ。だが、俺はそう思わない。まだ足りないからな』
「何が足りないのよ…」
『死んでしまえばそれまで。だが生きることは違う。生きている間はいい意味でも、悪い意味でも自由だ。貴様が罪を償いたいのなら、それは生きてこそ意味のあるもの』
「生きて…意味が…」
『たとえ惨めな生き方でも、あがき、もがきながらでも生きろ。生きている間、貴様は罪を償える筈だ』
「で…も…」
『……それに、貴様が死ねば賈駆は…お前を大事に思う奴等はどうなる?今の貴様にとって、死は罪だ』
「あっ…!」
『幸せになるなとは言わない。ただ、生き続けろ。自らの罪を償うためにも、他者の為にも、自らの為にも。それが神としての、俺の判決だ』
「ありがとう…ございます…!」
「月…」
ボロボロと、涙を流す董卓。
それをあやす賈駆も、半泣き状態だ。
それを見た魔神は天井の穴へと飛ぶ。
それとほぼ同時に、張飛が中へ入ってきた。
『…これで大体は終わりか』
炎が渦巻く部屋のなか、魔神はそう呟く。
不思議とマントには火が燃え移らない。
そうしていると…後ろから刃物を押し付けられた。
「…動くな」
『………名を聞こうか』
「貴様には知る必要がない」
チリン、とした音が聞こえるなか、振り返らず魔神は後ろの人物に尋ねる。
魔神としては誰なのか見当はついていた。
一応、聞いただけなのだが。
『何のようでここに来た?』
「関係のないことだ」
『では何故俺に接触した?』
「貴様が怪しげだからだ」
『………悪ふざけもいい加減にしろ、白い魔法使い』
「………あれ、バレてた?」
刃物を放し、後ろに数歩下がる人物…甘寧。
だが、その姿は魔方陣が通り全く別の姿になる。
白いローブで覆われた、粗削りした宝石のような仮面。
『やっほい、おひさー』
『それで…お前がここにこれたのは…』
『あれ、スルー?まあいいや、そうだよ。物語が安定してきて外史の壁が緩くなってきたんだ』
『そうか……だが、完全ではないと?』
『うん、俺がこれたのも八回ぐらいかかって来れたからね。それで…後はどうするの?』
『そうだな……呂布の件については大丈夫だろう。むしろ、張譲が関わっていたのは驚きだがな』
『そだね、なんか最初の外史に似てる気もしないんだよねー』
『……後は定軍山と孫策暗殺…ぐらいしか介入はしない』
『劉備は?一応接触してるんでしょ?前の…だけどね』
『…そこは考えておく』
『そっか。じゃあまた暫くしたら来るよ。その間にその似合わない口調変えといてね』
〈テレポート!ナウ!〉
それだけ言い残すと、白い魔法使いは一瞬で消える。
魔神は白い魔法使いが消えた場所を暫く見ると、その場から姿を消した。
XXX「作者と!」
一刀「一刀の!」
X一「「後書きコーナー!」」
XXX「というわけで、反董卓連合はこれで終了です」
一刀「早いな、三話だけとか」
XXX「まあね、俺が書きたいのは物語の後の方なんだよねー」
一刀「訳が分からないよ」
XXX「まあ、フラグも少し立ってたけど、黒幕は張譲です」
一刀「イメージは?」
XXX「皺が入った年期のあるじいさん」
一刀「て言うか、けっこうグロくね?生首が暴れるとか、皮がくっつくとか」
XXX「ちょっと残酷にしちゃった!」
一刀「月なんか儚げ…」
XXX「そういうイメージなんだよ俺のなかでは」
一刀「て言うか白い魔法使い出した意味は?」
XXX「特に何も?只のノリ」
一刀「それで次回からどうすんの?あんま介入しないって話だけど」
XXX「まあね、とりあえず定軍山と孫策暗殺とついでに劉備との対話?やって次にレッドクリフ」
一刀「あ、そう」
XXX「ちなみにやる順は時系列がぶれてるかもです」
一刀「じゃあお決まりの…次回、真・恋姫†無双巡る外史と仮面の魔神七話!」
XXX「魔神編 “だって気になるじゃない”。あ、いい忘れてたけど借りキャラの半分許可下りたから」
一刀「マジか!?」
XXX「マジで」←伝言板見せながら
一刀「マジだ!」
XXX「ショーターイム」←詳しくは『Life is show time』を聞いてね!
再見>ω<ノシ
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魔神編 神にでも祈れ |
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話しがメチャクチャで、ストーリーがガキ(獅子神様) 刃さん いっそいで直します!(XXX) アーマイルさん お子さまの方はなんかしばきにくいんで爺にしました(XXX) 匿名希望さん まあ、お約束っすよ(XXX) xxx様3ページの「幸せになるなとは言わな。ただ、行き続けろ。」「生き続けろ」では?(^_^;)。(黒鉄 刃) アニメ版だと張譲はお子様だったな(性別は分からないけどたぶん男)アニメ版もシバイてほしかった(アーマイル) |
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