真・恋姫†無双 裏√ 第十六話 |
月と詠と恋のいる風景
咲夜「詠!五番の料理が出来た!」
詠「い、今行くわ!」
零士「悠里ちゃん、月ちゃん、これを六番と七番に!」
悠里「了解でーす」
月「は、はい!」
恋「……すー…すー……」
月、詠、恋が来て一ヶ月が過ぎようとしていた。
彼女達の加入後、彼女達目的に来る客も少なくなく、今まで以上に忙しくなった。
店としては良い事なんだが、さすがに彼女達にはきつそうだ。
今だって
詠「あれ?お水が人数分足りない?す、すいません!すぐご用意します!」
月「しょ、少々お待ちくださいお客様。もうすぐお料理できますので」
恋「…んー…にゃぁ〜…」
とまぁこんな風に、てんてこ舞いな感じだ。
恋は店の入り口に設置したソファで呑気に眠っている。
その恋の周りには、寝顔を見ようとする客でいっぱいだ。
そしてその客がさらに入店することで、店内の忙しさはさらに増す。
まったく、素敵な仕組みだよ
ちなみにうちの番犬のセキトも、店の外に設置した犬小屋の中で寝ている。
さすがにうちは飲食店だからな。
清潔を保つ為にも外にいてもらっているんだが、番犬としての仕事はしてくれないようだ
詠「うがー!なんでこんなに忙しいのよ!」
詠があまりの忙しさにとうとう吠えたが、まぁこれも普段通りだ
昼の一番混む時間を乗り越え、店内はようやく静けさを取り戻す。
この時間は主にお茶を飲みに来る客が来るだけで、大して忙しくはない。
昼時とは打って変わって、ゆったりした時間が流れる
悠里「ふぅ、やっと落ち着きましたねー」
咲夜「あぁ。月、詠、休憩入っていいぞ。って言うか大丈夫か?」
そう言って詠を見る。
彼女は机に突っ伏して、脱力していた
月「詠ちゃん大丈夫?」
詠「…大丈夫よー、少し休めば…月は大丈夫なの?」
月「うん。大分慣れて来たし、この仕事も楽しいよ!」
詠より月の方が逞しかった
零士「釣銭確認終了っと。
さて、月ちゃんと詠ちゃんは今から休憩かい?
何か作るけど、食べたいものはあるかな?」
詠「うー、軽いもの」
月「いつもすみません。私も軽いものでよろしいですか?」
二人とも、食べなきゃいけないとはわかっていても、疲れのせいか食欲はなさそうだった
零士「軽いものか。
…あーなら、サンドイッチにしようか」
詠「いいわね。具は任せるわ」
月「私もそれでお願いします」
最近うちで出すようになった、女性間で人気のあるサンドイッチ。
作るのに相当苦労したようだが、それ相応の味と売り上げを叩き出している。
食べやすく、具も様々だ。
丁度こういった時間帯に向いているな一品だな
零士「お待たせ。
たまごサンドに野菜サンド、それと果物サンドだ。
飲み物はコーヒーでいいかい?」
詠「お願いするわ」
月「何から何まで、ありがとうございます」
月と詠は食事を始める。すると外から恋が入ってきた
恋「………ご飯」
は?まだ食べるのか?
恋はさっきからずっと客から飯をもらっていた。中には恋に料理を奢る者もいた。
実はこれもまた、売り上げ上昇の理由の一つだったりする
零士「ふふ。もちろん恋ちゃんのもあるよ。
恋ちゃんには特別にカツサンドも作ってある」
恋「♪」
そして恋も一緒に食べ始める。
いつものように、頬をパンパンにして
悠里「はぁ〜…なんかもう、この瞬間だけで、一日の疲れとか吹き飛んじゃいそうです」
咲夜「まったくだな。恋には人を癒すなにかを発しているとしか思えない」
私と悠里が、三人の食べる姿を見て癒されていると、
他のお客さんもそれを見て和んでいた。さすが恋だ。
こんな場でも、飛将軍の名は伊達じゃないということだ
詠「ご馳走さま。それにしても、ホント美味しいわよね。
見た事ない料理ばっかりだけど」
食事を終えた詠が、一息ついてそう呟いた。
ちなみに月と恋はまだ食べている。月も体の割りによく食べるから驚きだ
零士「そう言ってくれると嬉しいよ。
僕が出す料理は、基本的に僕の居た国の料理ばかりだからね。
なんなら作り方を教えようか?」
月「え?教えてくれるんですか?」
先に食いついたのは月だった
零士「もちろんだよ。もう少し仕事に慣れて、余裕が出来たら教えるよ」
月「ありがとうございます!」
零士「詠ちゃんはどうする?」
詠「うーん…難しくないかしら?」
零士「そうだね。
このサンドイッチにしてもそうなんだけど、作るのは大して難しくないんだ。
ただ材料を揃えるのが大変なだけで。料理に慣れていたらあっという間だよ」
詠「うっ、ならまずは、料理の基礎から教えてくれると嬉しいわ」
零士「ふふ。わかった」
月も詠も、案外乗り気だった。
確かに飯を作れるようになると、動ける幅も増えるし、作る側の負担も減る。
こちらとしても、喜ばしい事だ
それぞれが休憩を取り、時刻は夜。
昼ほどではないが、この時間帯もそこそこ忙しい。
開店当初は、もともとこの時間帯で営業していた。
零士が、仕事終わりにふらっと立ち寄って、美味い飯と酒を喰らい、
明日への活力にして欲しいという狙いのもとで立ち上げた。
だが、今ならわかる。それは昼営業したくなかっただけの、単なる言い訳だと。
正直二人じゃ絶対回らないからな
詠「ふふん!昼を乗り越えた僕に、この程度の忙しさ笑止!余裕だわ」
月「ふふ、詠ちゃん元気だね」
詠、疲れてるのか?微妙にテンションがおかしな事になってるぞ
そう言えばここ最近、夜だと言うのに迷惑な客が減ってきた。
減ってきただけで、いなくなったわけではないが、それでも頻度はかなり減った。
というのも
客「おいこら!酒はまだか!」
月「こ、困りますお客様…」
客「なんだお前!逆らう気オフッ!」
恋「…他の、お客様の、迷惑」
このように、恋の制裁が入る。
その容赦のない制裁が、噂となって広がり、
今では悪党の中で危険地帯認定にされたという話を聞いた
秋蘭「ずっと気になっていたんだが、あれは呂布だよな?何故ここに?」
咲夜「いろいろあってな。今じゃ家族の一員だ」
秋蘭「そ、そうか。最強の武人が用心棒とは、いよいよもってこの店は手がつけられなくなるな」
咲夜「だが、一般の客からしたら、夜だっていうのに、
最高の安心感を抱いて飯が食えるんだ。悪い話じゃないだろ?」
秋蘭「まぁ、そう言われたらそうなんだが」
言いたい事はわかる。
最強の武に、正体はばれていないが、賈?の智謀がある。
それを世の為に使わずに、この店で使っているんだ。
秋蘭からしたら、微妙な気分にはなるだろうな
やがて客も帰って行き、今日の営業も無事に終える。
月と詠と悠里は風呂へ、私と零士と恋は店で茶を飲んでいた
月「あがりましたー」
詠「ふぅ、いいお湯だったわ。正直これがないと、明日まで疲れを引っ張るわね」
悠里「いやぁ、私は月ちゃんと詠ちゃんの裸でゲフンゲフン」
悠里は風呂以外でも、活力を得ていたようだった。
零士「さて、今日は親愛なる君たちに渡す物があるんだ」
そう言って零士は四人分の封筒を持ってくる。
そうか今日はあの日か
零士「はい。これが悠里ちゃんの分。
悠里ちゃんには犬猫の飼育費もあるから、少し多めにいれておいたよ」
悠里「ありがとうございまーす!」
零士「そしてこれが、月ちゃんと詠ちゃんと恋ちゃんの分だ。大事に使ってくれ」
詠「これ、もしかして給料?え?でもいいの?
私たちはここに住ませてもらってるのに」
月「そうです。さすがにちょっと、お世話になりすぎています…」
零士「労働に対する対価を支払うのは、上の責務さ。
それに、君たちだって欲しい物の一つや二つあるだろ」
恋「……ありがとう」
零士「うん。恋ちゃんは素直でよろしい!さぁ、君たちも」
詠「うぅ、なら有難く受け取るわ」
月「本当にありがとうございます!」
零士「もうすぐ定休日だし、それで遊んで来るといいよ」
月「えへへー。詠ちゃんどこ行こうか」
詠「そうね……って!貰い過ぎよ!
なんで官で働いてた頃と同じくらいあるのよ!」
詠は封筒の中を確認して大声をあげる。
あぁー、やっぱり多いんだ
悠里「ほらぁ、やっぱり多いんですよ。
私も最初貰った頃おかしいと思ったんですよ。
ここの給料で、孤児院の維持費の半分以上まかなえるんですもん」
詠「あんた、こんなに渡して大丈夫なの?」
零士「うーん…うちって基本的に材料費くらいしかお金使わないからね。
それに君たちが来てからさらに売り上げも伸びたからね。
いろいろ差し引いてそれだけ渡しても、まだ余るんだよね」
月「さ、さすがにそれでも、貰い過ぎな気が…」
咲夜「いいんだよ。素直に受け取っとけ。遠慮は無しだ」
詠「ねぇ月。僕たちって、もしかしてとんでもないところで働いてるんじゃ」
月「へぅ、詠ちゃん、頑張ろうね」
恋「月、詠、頑張る」
はは、まぁなんというか、うちってやっぱり、いろんな意味で普通ではないんだろうな
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今回は日常編です ゆるゆるです ありふれた日常の、ほんの一幕 |
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