アクセル・ワールド 〜Blaze Brave〜 第1話 prologue;序章 |
第1話 prologue;序章
痩せ細った寸胴色の木々が立ち並び、その根元の地面にはボコボコと毒気を吐き出す紫色の沼地が広がっている。
そんな情景の只中で、二つの影が激戦を繰り広げていた。
「フン!ドリャ!セイヤァァー!」
「ッは!ふっ!」
薄青色の装甲を持つ大柄なアバターの巨大なツノと拳から繰り出される大振りの攻撃を、両刃の大剣を持ち紅
蓮の鎧を身に纏う騎士型アバターは軽やかに躱しながら跳躍して距離をとる。
「くーっそぉーー、人の攻撃をサラサラと躱しやがってッ!ブレイブッ!テメェーーM型のバーストリンカーだったら真ッ正面から正々堂々戦いやがれッ!!」
「そう言われてもねホーン、君の攻撃をマトモに受けたら僕の体が持たないよ。こんな見た目だけど防御面は大したことないからね」
自身の攻撃をことごとく躱す騎士型アバター≪サラマンデル・ブレイブ≫に対して、サイを思わせる大型アバター≪フロスト・ホーン≫は怒りの声を上げる。
「オメェー、さては俺の一撃で負けるのが怖くてこのままタイムアップを待とうって魂胆だなァー!」
「あのねぇ〜………まぁ〜確かに君の一撃は受けたくないけど、そんなせこい手段使わなくても"君には"勝てるよ」
「いいやがったなッ、このヤロォーッ!!」
ホーンの質問に如何にもな挑戦的なセリフで返答するブレイブ。
それを聞いたホーンは怒りでその巨体を振るわせながら、太い両腕を左右に構える。額と両肩に生えた合計三本のツノが強烈な光を帯びる。
「≪フロステッド・サークル≫!!」
技名発動と共にツノから光の輪が広がり、ブレイブを突き抜けて後方へと拡散する。
すると、ホーンから円形状に彼の足元の毒沼が凍結し始め、きらきらとした白い粒が空中を舞い始めた。
毒沼を凍結させ木々にも次々と霜を纏わせながら、ホーンの発動した必殺技≪フロスデット・サークル≫の範
囲は、遂にホーンの7m程先に立つブレイブへと達した。
しかし、ブレイブの周囲は凍結することなく、彼自身に降り掛かる水分の結晶も鎧に触れた瞬間に、ジュっ、ジュっ、と蒸発音を立てて水蒸気に変わってしまう。
「…君と僕との対戦は今回で通算3度目。僕のアバターの"特性"からこうした結果になる事は予想できた筈だ。頭に血が昇って平常心を失うのは君の悪い癖だよ、ホーン」
「う、うるせぇーッ!こ、これも計算のうちだッ!喰らいやがれェーーーッ!!」
ブレイブの指摘に一瞬言葉を詰まらせたホーンだったが、当たって砕けろと言わんばかりに咆哮をあげながらツノを突き出し猛然とダッシュした。
凍った沼地の水面を滑りながら加速し、一気にその距離を詰める。
付着した霜でより長大に伸びたツノがブレイブの胸甲を貫こうとしたまさにその瞬間――
猛烈な噴出音と共にブレイブの左脇の鎧の隙間から"炎"が噴射され、それによって生じた推進力でその体が右へと大きく逸れる。
炎熱属性に弱いホーンは顔面にその炎の塊をまともに食らい、残りのHPを2割近くまで減少させてしまう。
それでも尚怯むこと無く5メートル程進んで大きくUターンしたホーンは、溶けて幾分か短くなった額のツノをブレイブへと向け、再度ダッシュした。
しかし、その眼前に立つ騎士型アバターは既に刃が紅く輝く大剣を構え、迎え撃つ体勢を整えていた。
「悪いけど、これで終わりだ……≪バーニング・カリバー≫!!」
発声開始と同時にブレイブは紅蓮のライトエフェクトを帯びた大剣≪ブレイズ・ブリンガー≫を振り上げ、一気に振り下ろす。
すると、ブリンガーから真紅の斬撃が眼前のホーンめがけて熱風を巻き上げながら放たれた。
飛翔する斬撃は霜で形成されたホーンの氷の装甲を容易く切り裂き、その巨体を真っ二つに分断する。
さらに後方の木々をも切断しながら斬撃は10m程飛んだ後、空中で揺らめきながら自然消滅した。
そして、ホーンの体はポリゴンの断片を飛散させながら綺麗に左右に分かれながら倒れ、水色の光柱へと変化した。
「ふー、やっとケリが着いた。…さてと、次は…」
ブリンガーを背中に収めながら辺りを見渡すサラマンデル・ブレイブ。
程なくして、ブレイブの右後方から空気をしならせる衝撃音が鳴り響き、それに続き青緑色の物体がブレイブの方向へと吹っ飛んできた。
そして、その"物体"の飛んできた方角から少し遅れて花冠の形をしたドレス状の装甲を纏った薄黄色のアバターが姿を現した。
「ブレイブさん、すみません!そっちに飛ばしちゃいました。大丈夫ですか?」
「いや、こっちはちょうど終わった所だったから全然大丈夫だよ"エーデル"」
「そうですか、よかった〜」
ペコペコと可愛らしく頭を下げるF型アバター≪カナリー・エーデル≫に言葉をかけるブレイブと、一安心するエーデル。
そんな毒の沼地が広がる≪腐食林ステージ≫にそぐわないほのぼのとしたやり取りから少し離れた所で、エーデルに飛ばされた物体…では無くフロスト・ホーンのタッグパートナーである≪トルマリン・シェル≫は、飛ばされた衝撃で視点の定まらない中どうにか立ち上がろうとしていた。
「あいたたた、頭がクラクラする。ホーン君、こっちは大丈………あれ、ホーン君?…ホーン君!ホーンくううーーーーん!」
頭を抱え立ち上がりながら相棒に声を掛けるシェルであったが、返事が無い事に慌てて辺りをキョロキョロと
見回しながら相棒の名前を叫び続ける。
もちろんそれに答えるものはおらず、自身を取り巻く事態を飲み込んだシェルはブレイブとエーデルを交互に見ながら叫んだ。
「よ、よくもホーン君をッ、まとめてけちらしてやる!か、かかってこおぉぉぉおいッ!!」
果敢にも戦いを挑もうと拳法家のような構えを取るシェルを見つめたブレイブとエーデルは互いの顔を見合った後、ブレイブは兜の中で嫌な笑みを浮かべ、エーデルは真剣な表情で両手を前にかざす構えを取り、「それじゃあ(ニヤリ)…」「いかせてもらいます!」という掛け声と同時にシェルにかかっていった。
2046年4月6日 15時32分35秒 渋谷区代々木公園
4月に入るもまだまだ肌寒い風が吹く代々木公園。
桜の花もそんな気候の影響か、ようやく小さく薄桃色の花を三分咲きほどに開花させ始めている桜の並木道を一組のカップル(?)が新宿方面へと歩を進めていた。
「…やっぱり、"暁隆君"の戦闘って無駄な動きが無くて、なんていうか…そう!洗練された感じて凄くカッコよかったです!」
「見てたの?」
「ハイ!シェル君の攻撃はしっかりと防御してましたけど、チラっと見えちゃって。特に最後の一撃で決めたところなんてもう!」
少々興奮気味に語る少女の言動を傍らから見つめる少年は、顔半分を隠すように伸びた前髪の下で表情を微笑ませていた。
「"美浦さん"もだいぶ対戦のコツがわかってきたみたいだね。この調子だったら夏に入る頃にはレベルを4まで上げられてると思うよ」
「そんな!私なんかまだまだですよ。…でも、早くレベル4になって暁隆君やみんなと一緒に戦いたいとは思ってます…」
真剣な眼差しで自身を見る少女に少年はフーっと白い吐息を吐きながら空を見上げながら呟く。
「そうだね……でも、まずは焦らずに自分の力を着実に磨いていく事。焦ったら勝てる戦いも勝てないから
ね」
「そうですよね……よしッ!私、頑張ります!」
「うん、その意気だね。じゃあ、とりあえず新宿駅に行こうか。二人組でこの辺りにいるのをさっきの二人に
見られて、万一"リアル割れ"でもしたらマズイし…それ以上にうるさい事になりそうだし…」
「それはいけないですッ!さぁ暁隆君、急いで駅に向かいましょう!!」
そういって不意に少年の右手を掴んで駆け出す少女。
そんな少女の手の温もりを感じながら、少年は少女の歩幅に遅れないように、風の少し強い春の昼下がりの
代々木公園を新宿駅方面へと駆けていくのであった。
prologue;序章 END
『過去の否認は有害な態度である。現在と戦い、未来を創造するには、往々にして過去が最も有効な武器なのである』
ジュリアン・グリーン
≪Brain Burst 2039≫通称BB。
量子接続通信端末であるニューロリンカーの量子通信機能を拡張することで、思考を1000倍にまで"加速"させる事を可能とするプログラム。
そして同時に、その加速に必要なバーストポイントを、プレイヤー自身の深層心理に眠る欲求や欠落等のイメージから構成されたデュエルアバター同士の対戦によって争奪し合う、対戦格闘ゲームプログラムとしての側面も持ち合わせている。
このプログラムをインストールし、加速世界の住人となったBBプレイヤー…通称≪バーストリンカー≫は、如何なる者であってもバーストポイントを巡る争いの渦中にその身を置く事となる。
怨恨、憎悪、嫉妬、憤怒、絶望………負の感情が怨嗟の声となって絶えず鳴り響く加速世界。
これより紡がれるは、そうした混沌の世界の只中にあって"加速"の可能性に一縷の希望を追い求め続ける少年少女達の物語である。
いや〜如何でしたでしょうか?
長年考えてきた構成をどうにか形に出来たと思っています。
次に登場人物一覧を投稿しようと思っています。
そちらは連載が続くに連れて随時書き込まれていきますのでどうぞよろしくお願いします
では、また次回ノシノシ
説明 | ||
アクセル・ワールドの二次創作になります。 処女作品なのでお見苦しい点が多々あるかと思いますが、宜しくお願いします。 意見・批評・アドバイスなどありましたらドシドシお願いします。 |
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コメント | ||
天龍焔さんへ ありがとうございます!!頑張ります!(遼東半島) ありがとうございます!ご期待に沿えるよう頑張ります!(遼東半島) 投稿待ってましたよ〜! 続きも楽しみにしていますね♪(本郷 刃) |
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