真・恋姫†無双 裏√ 第十七話
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零士の休日

 

 

 

 

 

 

今日は定休日。ということで、やることがない。

咲ちゃんは月ちゃんと詠ちゃんと一緒にどこかへ。

悠里ちゃんは恋ちゃんと一緒に犬猫の世話をしにいった

 

この世界に来て五年以上が経つ。

最初こそ、物珍しいもので溢れていたが、慣れてしまえばなんてことない。

ありふれた日常になる。

特に娯楽が少ないので、休みになると何もする事がない

 

零士「仕方ない。散歩にでもいくか」

 

休日はこうして外に歩きに行く事が多い。

外を歩くと、たまに思わぬ掘り出し物があったりするが

 

零士「んー、香辛料の香りがするなぁ」

 

今回はなんとなく、飯店が多くある通りを歩いていた。

昼時だし、かなり賑わっている。

だいたい毎日、自分で作って食べることが多いが、たまにこうして他所で食べる事もある。

そうすることで、料理に関する思わぬヒントを得る事があるからだ。

決して、自分で用意するのが面倒だった、なんて訳じゃないからな?

 

零士「んん?こんなところに、飲食店なんてあったか?」

 

なになに?『泰山』?

確かこの大陸のどこかにある地名だったよな?新しくできたのかな

 

零士「うん!新しい店を開拓するのも、悪くないかもしれないな」

 

そして僕は入店する。

中はこじんまりとしているも、どこか温かみのある雰囲気。

カウンター席をメインに、大人数用と思われるテーブル席が三つ。

昼時ではあるものの、客は少ない。頼めばすぐ出てきそうだな

 

 

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店主「らっしゃい!好きな席へどうぞ!」

 

店員に促されるまま、僕はカウンター席に座る。

さて、何が美味しいのかな

 

店主「はい嬢ちゃん!麻婆豆腐お待ち!」

 

客「ありがとうございます。

いただきます…はふはふ、んく。もくもく」

 

すぐ近くに座っていた銀髪の少女が、一心不乱に麻婆豆腐をかき込んでいた。

なるほど麻婆豆腐か。それもいいかもしれないな

 

零士「すいません。麻婆豆腐を一つ」

 

店主「あいよ!」

 

ふぅ、それにしても、凄い香辛料の匂いだな。

もしかして、結構辛いんじゃないか?

でも、あの銀髪の子は汗一つ流してる様には見えないし

 

銀髪「店主!おかわりをお願いします」

 

店主「あいよ!」

 

おぉ!あの銀髪の子、麻婆豆腐をおかわりか。

そんなに美味いのか。楽しみだな

 

店主「お待たせ!麻婆豆腐一つね」

 

お、きたきた。うん!いい匂いだ。思わず生唾を飲んでしまうな。

どれ、じゃあさっそく

 

零士「ありがとう。いただきます。…はむ……ンッ!」

 

辛っ!うぅわっ辛っ!かっらー!なんだ、なんだよ、なんなんだこれ。

想像以上に辛い!ウッ!…口にする度、手が震えて、汗が止まらない。

なんて辛さだ。だが…

 

零士「はふはふ、はむっ」

 

辛い!だがイケる!

この、脳を焼くような刺激が堪らなくいい。食べる手が止まらない!

しかし、あの銀髪の子、こんなに辛いのによく汗一つかかないで食べられるな

 

銀髪「店主!おかわりをお願いします」

 

さ、三皿目だと?凄いペースだ。しかしあの子、大丈夫なのか?

だが、確かに僕も、もう一皿欲しくなってきたな

 

零士「店主、僕も麻婆豆腐のおかわりを頼む」

 

一皿目をさらえ、水を飲み一息つく。

すると銀髪の子がこちらに近づいてきた。

よく見るとこの子、相当鍛えているのがわかる。軍人かな?

 

銀髪「あの、辛いもの、お好きなんですか?」

 

零士「そうだね。僕はこれでも料理人だし、なんでも好んで食べる方かな。

そういう君は、相当辛いもの好きだね」

 

銀髪「はい!最近許昌に来て、料理店を食べ歩いていたんですが、ここは当たりですね。

ここ以上に辛さを追求した店はありません」

 

店主「へへっ。うちはそういう店よ!なんでもかんでも辛いぜ!

それでも嬢ちゃんには驚いたがな。なんたって、

嬢ちゃん用に作った、通常の三倍の辛さの麻婆豆腐をぺろっと平らげちまうんだからよ!」

 

なん…だと…?あれの三倍?

通常の辛さでこれなのに、これが三倍になると一体どうなるんだ

 

店主「お待ち!嬢ちゃんはこっち、兄ちゃんはこっちだ」

 

店主はおかわりの麻婆豆腐を二つ出す。

だがその二つは、明らかに違った。主に色が。

通常のものはかなり赤に近いオレンジといった色だが、三倍は、そう、正に真紅だ。

鮮やかな赤だ。もはや芸術と言える域だろう

 

銀髪「もぐもぐもぐ…」

 

銀髪ちゃんは再び一心不乱に食べ始める。

僕も麻婆豆腐を口にし始めるが、意識は銀髪ちゃんの麻婆豆腐に集中していた。

気になる。こっちはこっちで十分辛いのに、そっちは一体どれだけ辛いのか。

そんな僕の様子に気づいたのか、銀髪ちゃんは食べるのを止める

 

銀髪「あの、食べてみますか?」

 

零士「いいのかい?」

 

銀髪「はい。どうぞ」

 

そう言って銀髪ちゃんは、蓮華ですくった麻婆豆腐をこちらに差し出した。

僕はそれを口に近づけ、やがて一口

 

零士「あーんっ………ンッ!」

 

その瞬間、僕の中で何かが弾けた。

それはまるで、対物ライフルで撃ち抜かれたかのような衝撃。

もはや、辛さを超越している。

辛いのか、美味いのか、痛いのか、なんだかよくわからなかった。

………ハッ!!危なかった。危うく意識を手放すところだった。

気づけば、銀髪ちゃんはこちらの様子を心配そうに伺っているのが見えた

 

銀髪「あの、大丈夫ですか?」

 

零士「あ、あぁ。大丈夫だ。しかし、なんというか、凄まじいね」

 

店主「さすがの兄ちゃんも、三倍はきつかったと見える」

 

店主の言うとおりだ。僕には恐らく、通常の辛さが限度だろう

 

 

 

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やがてお互い麻婆豆腐を完食する。

ふぅ、久々に有意義な食事だった気がするな。

しかし、辛さを追求するか。うちにはない料理だな。

今度僕も、何か辛い料理を作ってみようかな

 

零士「店主、お勘定だ。ごちそうさま」

 

店主「おう!また来てくれよ!」

 

零士「あぁ。銀髪ちゃんも、今度はうちにも来てくれ」

 

銀髪「ぎ、銀髪ちゃんですか?

そう言えば名乗っていませんでしたね。

私の名は楽「食い逃げだー!誰か捕まえてくれ!」…!!」

 

銀髪ちゃんが名乗ろうとした瞬間、外で大声した。

食い逃げか。どれ、食後の運動だ。ちょっくら懲らしめてやるか

 

銀髪「店主!勘定置いときます!」

 

銀髪ちゃんはお金を置いて、凄い速さで店を出る。

僕もその後をついて行くように店を出た

 

 

 

食い逃げ「ヒャッハー、捕まるかよ!」

 

食い逃げは思ったよりすばしこく、また身軽に動いていた。

人と人との間をするする通り抜けたり、民家の屋根に登ったりと、

結構やっかいな感じだった

 

銀髪「クソ!逃がさないぞ!」

 

銀髪ちゃんは走りながら拳に氣を溜めていた。

へぇ、氣を使えるんだ。まぁこの世界じゃ、珍しくはないか

 

銀髪「はぁぁ」

 

って、え?溜め過ぎだろ。

そんなんじゃあ民家が吹き飛ぶぞ。

それにあの方角には、『晋』もある。止めないとまずい

 

零士「ちょ、ちょっと待つんだ!それじゃあ一般人にも被害が出るぞ」

 

銀髪「な!あなたは先ほどの…何故止めるんですか!」

 

零士「君のやり方じゃ、食い逃げ犯がケチった金額より、被害額の方が高くなる」

 

銀髪「クッ、離してください!逃げられてしまいます!」

 

零士「あぁ。少し待っているといい。捕まえてきてあげるよ」

 

銀髪「え?」

 

そう言って僕は民家の屋根に飛び移った。

食い逃げ犯はおよそ百メートルといったところだな。

魔術は…やめておこう。一般人が多すぎる

 

零士「まぁ、関係ない、なっ!」

 

僕は一気に飛び、食い逃げ犯に肉薄する

 

食い逃げ「な、なんだおまグヘッ!」

 

接近した勢いのまま、ラリアットを敵の背中に命中させた。

すると、食い逃げの背骨がメシメシっと鳴ったのが聞こえた。

……しまったな。強くやり過ぎてしまった。食い逃げ犯は白目を向いている。

まぁいいや

 

銀髪「はぁはぁ、大丈夫ですか?」

 

零士「お疲れ様。見ての通り、捕まえておいたよ」

 

そう言って僕は食い逃げ犯を差し出す。

食い逃げ犯はそのまま、兵士に連れて行かれた

 

楽進「ご協力、感謝します。改めて、私は楽進。

曹操様の下で、警邏隊の隊長を務めさせてもらっている者です」

 

なるほど。この子が楽進か。

確か魏軍でも、かなりの勇将だったっていうイメージがあるな

 

零士「よろしくね楽進ちゃん。僕は東零士。

『晋』という飲食店の料理人だ」

 

楽進「東零士…『晋』…!!

あなたがあの東零士さんですか?お話は伺っています。

あの華琳様や秋蘭様が絶賛した料理人がいると」

 

へぇ、秋蘭ちゃんはともかく、あの華琳ちゃんが僕をねぇ。

あの子、男には興味無さそうだったのに

 

零士「それは光栄な事だ。君も今度来るといいよ。

と言っても『泰山』さんみたいな激辛料理は置いてないけどね」

 

楽進「ぜひお邪魔させていただきます。

それにしても、鮮やかな手並みでした。武術の心得が?」

 

零士「…こんなご時世だ。自分の身を守れるくらいの力はあった方がいいだろ?」

 

楽進「確かにそうですね。

あの、もしよろしければ、一度手合わせをお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

しまった。この手のタイプか。

強い力に興味があり、試してみたい。

多くの武将がこれに該当するが、あまり派手にやるのはよくないな

 

零士「手合わせか…構わないけど、仕事はいいのかい?」

 

楽進「うっ、そうでした。ではまた後日、お願いしてもよろしいでしょうか?」

 

零士「あぁ。構わないよ」

 

楽進「ありがとうございます!それでは私はこれで」

 

 

 

僕は彼女を見届け、その場を後にする。

参ったな。手合わせか。

正直武将級の人間とはあまりやりたくないけど、

あんな目をらんらんと輝かせていたら、断れないよなぁ。

仕方ない。しばらくは、咲ちゃんの早朝訓練に付き合おうかな

 

 

 

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あとがき

 

 

 

 

 

 

布団が恋しい季節になってきましたね

 

最近朝布団から出るのが億劫な桐生キラです!

 

 

 

さてさて、日常編三作目は月、詠、恋の『晋』でのお話でした

 

私はこの三人、というより董卓軍が大好きです

 

みんなマジ天使だと思うんですよ。どう思います?(笑)

 

とは言え、詠のキャラが若干素直すぎた気がしてならない

 

次回はもっとツンツン書けたらなって思ってます(笑)

 

 

 

 

そして日常編四作目は凪ちゃんのお話

 

某ドラマCDを聞いたとき、「これ凪のイメージぴったりだなぁ」なんて事を思い、書いた作品でした

 

それに私、恋姫の中で凪が1,2を争うくらい好きなんで早く出したかったんですよね。

 

ちなみに争っているもう一人は愛紗さんです(笑)

 

 

 

次回も日常編の予定です

 

次が終わったら、ストーリーを進めていきたいと思います

 

それではまた次回!!

 

 

 

説明
今回はやってみたかったパロディネタをお送りします
そういうのが嫌い、苦手って方はそっと戻るを
大丈夫だよって方はお付き合いください!
元ネタがわかった方は、麻婆を食べよう(笑)
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コメント
あら、さり気に間接キスじゃないかしら?(M')
?「辛さこそ趣向! 辛さこそ美味!」 泰山と書かれていたからとある世界の神父を思い出した(アーマイル)
タグ
真・恋姫†無双 オリキャラ  麻婆 

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