模型戦士ガンプラビルダーズI・B 第7話
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「あ……エールストライカー、尻尾(スタビライザー)組まないで作っちゃった。どうしよう……」

 

「大丈夫、接着剤使ってないんだし、それくらいの組み間違えだったら簡単に対処できるよ」

 

ナナをアイは落ち着かせるように諭した。二人がいるここはアイの家、そしてアイの部屋、部屋の中心にある四角い白テーブルを向かい合う形でアイとナナは座っていた。

ナナはアイのレクチャーを受けつつ初めて買ったガンプラを製作していた。ナナが買ったのは旧HGのエールストライクガンダム。

もうすぐリニューアル版が出るとアイに言われて作り始めは少し不満そうだったが作ってるうちにそんな不満は吹き飛んだようだ。今は集中してガンプラを作っている。

時刻は夜八時を過ぎている。家が隣同士の為、この時間でもアイの家にいる事にお互いの親に許しは事前に得ていた。

 

「隙間にデザインナイフを差し込んで慎重に開けて……」

 

「ん……よしっ」

 

一度組んだエールストライクのエンジン部を開けるナナ、製作中の間違いの修正だ。

うまく開けるとスタビライザーを組み直す。

 

「ふーっ、良かった」

 

「本体は出来たからあと少しだね」

「うん、工具借りちゃって悪いね」

 

「いいって、工具だけでもお金かかるもん」

 

長い時間アイは教える形で喋りつづけているが疲れた様子はない。反面ナナは慣れない作業で少し疲れたようだ

 

「後少しだけどちょっと休憩しようかな?ずっと体勢変わらなかったから疲れちゃった」

「OK、じゃあ飲み物持ってくる」

 

「お願い」

 

アイが部屋を出ると『ん〜っ』とナナは両腕を上げて体を伸ばす、そのまま時計を見て時間を確認する。もうかれこれ組み始めてから一時間以上たっていた

 

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「あっという間に組み立てられると思ったけど、結構時間かかるもんなんだね。ガンプラって」

 

アイが持ってきたオレンジジュースを飲みながらナナは言う、しばらく何も口にしない状態だったからか飲むと体全体に染みるようだった。

 

「うん、面倒に感じちゃった?」

 

「全然、結構夢中になって作っちゃった。出来上がってくると止まんなくなっちゃってさ。なんか、この年齢でこういう夢中になる気持ちって新鮮かも」

 

たはは、と笑うも直後フッとしんみりした表情をするナナ、

 

「そう?好きな事やってれば割と当たり前だと思うけど?」

 

「そんな事ないよ。アタシあんまり熱心に打ちこんだ事ってないからさ……あんまり趣味っていうのもった事ないんだ。

流行とかは付き合いで参加したりするんだけど、そのまま離れていくのがほとんどかな?」

 

そう、器用ではあるものの、あまり趣味らしいものを彼女は持った事がない、ナナはそんな自分を煩わしく思っていた。

 

「そんな時アイが転校してきた。普段どんくさいアイがバトルではあんなにカッコよく立ち回って、作る物も綺麗で、

なによりガンプラやってる時のアンタの顔、凄く楽しそうだったから、アタシもやってみたいって興味に繋がったってわけ」

 

「そっかー、……ん?どんくさい?」

 

途中の発言に戸惑うアイ、あ!と同時に戸惑うナナ、これは純粋な感想であってやましい気持ちのある発言ではなかった。

ナナは思ったことをすぐ口に出す為、こういったトラブルがたまにある。

 

「あ!ゴ!ゴメン!別に悪意はないから!」

 

「もう!」

 

「まぁ、要はだからアイと同じ物に触れてみたいって事よ。それがアタシにはきっかけをくれた感じ」

 

「そんな、きっかけになるような事私してないよ。でもちょっと照れるかな?」

 

顔を赤らめてやや恥ずかしそうに頭をかくアイ、

 

「そういえばさ、アイはガンプラ作るきっかけってどんなだったのよ?」

 

ナナの質問が出た瞬間、ビクッとアイの体が震えた。

 

「え?私……?いや、なんとなくだよ。そんな……」

 

ジュース片手にどもるアイ。明らかに「何かある」という反応だ。

 

「何か隠してる……?言ってよーアタシ言ったんだからさー」

 

ねーねーと笑顔ですがるナナ、アイはとぼけるような動作をしていたがしばらくそれが続いて根が折れたのだろう。

 

「わ・わかったよ……話すよ……話すから」

 

手に持ったコップを置いてアイは語り始めた。

 

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――あれは何年か前、年に一度、全国のガンプラビルダーが参加する大会「ガンプラバトル選手権」での事だった。

当時私は中学生、その時の仲のいい友達が今の私並にガンプラ好きでさ。一緒に参加しようって言ってきて、わざわざ静岡まで行ったの。

当時はガンプラは男の子向けだって印象持ってたから、とっつきにくかったんだけど押し切られちゃって……その時初めてガンプラを作った。

HGの『ダブルオーライザー』ガンダムOOの後半主人公機だよ。

 

でも大会当日、会場で友達とはぐれちゃって……、会場の廊下で途方に暮れててウロウロしてたら転んじゃってさ、

カバンにいれておけばよかったのにガンプラを手に持ってたから、落としてバラバラにばらけちゃったんだ。

 

散らばったパーツを這いつくばって探して、ほとんどは見つかったんだけど、一個だけ……額のクリアパーツだけ見つからない……。

 

周りに人もいなくて、すごく悲しくなってきて泣きそうになって、その場にへたり込んで、

とうとう顔を伏せながら声を殺して泣いちゃった……『こんな思いをするのなら作らなければよかった……』そう思ったその時……

 

「あの……何かあったんですか?」

 

声がした。顔を上げると青髪の男の子がいたの。見た感じ年齢的に小学校高学年くらいかな。年齢が近そうな子だったよ。

 

「ガンプラ……落としちゃって……パーツがないの……」

「良かったら探すの手伝いますよ」

 

私が消え入りそうな声で伝えるとその子は一緒に探してくれたんだ。二人で探してたからか、それとも運が良かったのか、その子がパーツを見つけてくれたの。

 

「あった!これですよね!?」

「うん!それだよ!そんな所に飛んでたんだ!」

 

その子が失くしたパーツを見つけてくれて、私は壊れたダブルオーライザーを治す事ができた。うれしくてその子にもう何度も頭下げてお礼言った

 

「ありがとう!ありがとうございます!」

「いいですよ。当然の事をしたまでですから」

 

こう謙虚な態度されるとどっちが年上か分からなくなってきちゃって何故か私の方が敬語になっちゃった。

ふと私はその子がガンプラビルダーのパイロットスーツを着ていることに気が付いた。

情けないけど、探してるときは気が動転してたから気付けなかったんだ。

 

「その格好、あなたも選手なんですか?」

「え?あ!あぁぁ!!いけない!試合参加するの忘れてた!急がなきゃ!それじゃ!」

 

そのままその子は急いで会場に走っていった。名前位聞いておけばよかった。

そう思っていたまま会場に戻って、結局試合出れなかったから観客席で試合見てたんだけど……、

その時、突然白いガンダムが試合に乱入してバトルで大暴れしたの!もう物凄く強くてさ!そしてそれの相手をするのは青いアーマーを着たガンダム!

その戦いは別のガンプラが割って入れないようなバトルだったよ!

 

普通だったらレベルが高すぎて『私にはこんなの無理だ……』そう思っていたかもしれない。でもね、そんな事は思わなかった。

 

むしろ『なんて楽しそうなんだろう。私も参加したい』そんな風に思えてきた。周りの皆も同じ気持ちだったのかな?

観戦モニターに集まって楽しそうに見ててさ!本当に楽しそうに戦ってたんだよ!

 

「フフフ……!楽しいな、少年!」

「はい、ガンプラは楽しいです!それに奥深い……、そしてなんと言ってもこんなにも面白い!」

 

その時、白いガンダムからした声から乗っていたのがあのパーツ探すのを手伝ってくれた男の子だって気づいたんだ。

大人びた印象すら感じた子が、相手とお互い大好きな物で楽しそうに戦ってる。

 

「そっか……君だったんだ……」

 

私はその戦いに見とれつつも、そう呟いた……。

 

その後、試合すっぽかしちゃったから友達に凄い怒られちゃった。助けてくれた子にもう一度お礼を言いたかったんだけど

怒られてる内に帰っちゃったみたいで会えなかった……、でもその子の事がどうしても忘れられなかったの。

 

「アンタがすっぽかさなきゃもうちょっとはマシな結果になったのに!!ちょっと聞いてんの!?」

「ぇ……うん……あ、あの白いガンダムに乗ってた子は?」

「あ?白いガンダムの子?あ〜あのガンプラマイスターのボリス・シャウアーと戦った。確かイレイ・ハルって名前だったっけ」

「イレイ・ハル……ハル君……か」

「って何話すり替えようとしてんのよアイ!大体アンタはね……」

 

 

自分の中で、自分でも解らない感情が彼に湧いてるのを感じた。もう一度その人に会いたい。けど方法が思いつかない。

だからガンプラの腕を上げればもう一度その人……イレイ・ハル君に会えると思ってガンプラを進んで作る様になったんだ。

しばらく作ってていつの間にか凄く楽しく感じて、勝手に熱中しちゃってたけどね。

今は会いたいって気持ちから、あんなガンプラバトルをハル君としたいって気持ちに変わったのかもしれない。――

 

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「え!えぇぇ!?じゃあじゃあ!好きな人ともう一度会う為にガンプラにハマったわけ!?」

 

驚いたリアクションを取るナナ、しかし表情は物凄い笑顔で眼は物凄くキラキラしてる。恋愛には興味深々になるのはどこの女の子でも同じらしい。

 

「ち!違うよ!別に好きだとかそういう感情じゃなくて……だぁあもう!!だから言いたくなかったんだよ!!皆そう言うんだもん!」

 

顔を真っ赤にして頭をかきむしるアイ

 

「でも好きなんでしょ?その子の事」

「そういうんじゃないよ!……正直今となっては自分でも解らないよ……憧れか……恋か……それともあの試合位自分が熱中したい?

それとももっと別の何か?……答えが出た試しがないよ……」

 

ジュースの入ったコップを両手で持ち、水面を見つめるアイ、

 

「そっか、でもちゃんとした理由になってる。いいと思うよ、アタシは」

「ありがとう……というべきなのかな?」

「でもまさかそんな理由だったなんてね〜」

 

ナナは頬杖をテーブルにつきながらニヤニヤする。アイはその顔を見ていたらまた無性に恥ずかしくなってきた。

 

「も!もう休憩十分でしょ!さっさと完成させようよ!後少しなんだから!」

「あはは。りょーかーい」

――……もし、アタシが興味もった理由があったなら、バトル見てたアンタと同じだったのかもね……――

 

ナナは誰にも気づかれない様心の中でクスリと笑った。

 

 

十数分後……

 

「出来た……」

 

「うん、普通に組んでシール貼っただけだけどよく出来てるよ」

「アイのレクチャーのおかげだよ」

そういうとナナは完成した自分の初のガンプラHGエールストライクガンダムを手に取り、自分の目線にもっていった。

「エールストライクガンダム……アタシの初めてのガンプラ。よろしくね。アタシのガンダム」

 

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翌日、学校が終わり、家に帰るアイとナナは模型店「ガリア大陸」に再び集合する。ナナがガンプラバトルをする為だ。

 

「とりあえず、基本的な操作は私が言った通りだから後は自分の感覚で覚えて」

 

「でもアタシに出来るかな」

「大丈夫、誰でも出来るように出来てるから、要は慣れだよ慣れ」

 

「ありがとう、フォローお願いね」

 

店内ではアイがナナに操作説明をしていた。ナナは白地に赤と黒で彩られたパイロットスーツを着ていた。

と、その時カシャッとデジカメを切る音が聞こえる。

 

「へぇ〜似合うじゃんナナ。まさに新しい戦士の誕生!って感じ?」

 

アイとナナにとっては馴染みある音と声だった。

 

「タカコ、ムツミも来たんだ」

 

「ゴメン、遅れちゃった……」

 

「これでも急いで来たんだよ?ナナがこうやって自主的にやりたがるってそうないからね〜」

 

タカコの発言にムツミもうんうんと頷く。

 

「勝利のシーンはバッチリ撮っておくからね!ドーンとやっちゃいなよ〜!」

 

「あはは、ま、頑張るわ……」

 

緊張してるのだろう。ナナの声のトーンはいつもより低い。ムツミはそれを見抜いたようだ。

 

「初めては緊張するだろうけど、気楽にねナナ……」

 

「ムツミ……うん」

 

 

 

その後ナナとアイはGポッドに入る。今日はアイとナナのチーム戦、狙いはナナがガンプラバトルを体験する事、初心者のナナに出来る限りフォローを入れる為アイも同じチームだ。

 

「ナナちゃん。ムツミちゃんの言った通り、まずは気楽にいこうよ。私だって初めての時は緊張したけど今はこんな気楽にやってるからさ」

 

「わかった、やってみるね」

 

ナナのヘルメットにアイの声が通信で入る。そして暗かった画面が急に格納庫内部に切り替わる。画面上部に『シャングリラ内部』とフィールド名が表示される。

『シャングリラ』ガンダムZZにおいて物語の幕開けとなったコロニーだ。

 

「っと始まった!えっと……出撃は……」

 

ナナの表情に余裕がない。口ではああは言ったが緊張は拭いきれない。初めて体験するガンプラバトルに頭の中が真っ白になってしまう。

 

「さっき説明した通り「いきます!」っていって出撃だよ!」

「……思ったんだけどそのいきますっているの?なんか恥ずかしい……」

「もぉ〜、挨拶みたいなものだよ!ハイ言った言った!」

「あぁ〜もう!わかったわよ!ハジメ・ナナ!エールストライクガンダム出ます!」

 

母艦、アーガマのカタパルトからエールストライクガンダムが出撃する、……ストライクガンダム、ガンダムSEED前半の主人公機だ。

背中の装備を変える事によって様々な戦局に対応する事が出来る。今つけてるのはエールストライカーという装備で長距離のジャンプが可能となるストライクの代名詞ともいうべき装備だ。

狭苦しい空間から一転、コロニー内部に出る、目の前に広がる広大な、だが円柱の内部にいるような街にナナは非常に新鮮な気分だ。

自分の眼下にはジャンクが積み上げられた山がいくつもあり、アーガマもその中に潜るように隠れている。露出した部分はカタパルトの部分だけだ。

その向こうには街、さらにその向こうの山の上には高級住宅街が見えた。

 

「凄い!本当に漫画の中にいるみたい……」

 

しかし呆けてる暇はなくナナは次にするべきことを思い出しうろたえた。

 

「ちょ!着地方法どうやんの!ってきゃああ!!!」

アーガマから飛び出したはいいがどうすべきか解らず、ストライクガンダムはジャンク山の中に頭から突っ込んだ。

 

「ナ・ナナちゃん……スラスターを全力噴射しすぎ……」

 

続けて出撃し、ジャンク山から足だけ出したストライクを引っ張り出すのは、アイの乗った105ダガーだ。

ストライクの量産型でこちらも背中の換装が可能な機体だ。今の装備は巨大なビーム砲、『アグニ』を備えたランチャーストライカーだ。

 

「うう……仕方ないでしょ、アタシ初心者なんだから……」

 

モタモタしてる暇はない、とダガーに支えられる体勢でナナのストライクは起き上がる。

敵が近づいてきてるのは飛びながら近づいて来る機影で解る。

 

「といっても……敵は待ってはくれないんでしょうけどね」

 

「あいにくね……きたよ!」

 

こちらが視認できたと同時に向こうも確認したようだ。今日のバトルは2on2。故に敵はこちらと同じ二機、片方はRGストライクガンダムルージュ、

もう片方は大型ビーム砲を持った細身の青い機体、シグーディープアームズ。

RGストライクルージュはグレーの戦闘機をそのまま背中に付けたような装備で、空からこちらに狙いを定める。

 

「アタシと同じストライク!?でも装備と色が違う!」

 

ピンクと赤に彩られたストライクにナナが驚愕する。

 

「ううん!あれはRG(リアルグレード)ストライクルージュ!それも装備はI.W.S.P.!色も装備も通販限定の奴だよ!」

 

ストライクルージュ、ストライクガンダムの仕様変更ともいうべき機体、装甲にかける電圧の変化で色が変わったという設定だ。

装備のI.W.S.P.は全てのストライカーの長所をかけ合せたストライクのいいとこどりの重装備。

今回バトルで出てきた機体はプレミアムバンダイの通販限定の仕様だ。

もう一機、シグーディープアームズはこちらもガンダムSEEDの外伝に登場したシグーの公式バリエーション機だ。前途の通り身長ほどもあるビーム砲が特徴だ。

 

「げ!限定!?勝てるのアタシ!?」

 

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「同じ機体?!でもなんかナナのより強そう!」

 

観戦モニターでバトルを見ていたタカコも同じ感想だった。

 

「アイちゃん……ナナを守ってあげて……」

 

 

 

「私が注意をひきつけるからナナちゃんは隙をついて攻撃を加えて!」

 

ナナのストライクはいつでもビームライフルで援護できるように後方のジャンク山に待機している。

 

「うん……できるだけやってみる」

 

「こっちにおいで!!」

 

初心者のナナに無理させるわけにはいかない。二機の注意をひきつけるべく105ダガーは背中のアグニを展開。

そしてRGストライクルージュに撃つ、赤いビームの奔流がルージュを襲う、ルージュは難なくかわす、それはこちらからでも確認できた。

続けてシグーに撃つ、こちらもかわされたが狙い通り二体の敵はこちらに注意が向いたようだ。二機の頭部が105ダガーに向く。

 

 

「よし!こっちだよ!」

 

まず近づいてきたのはシグーの方だ。上空から両肩のビーム砲を撃ってくる。アイはこれをかわすと腰のビームサーベルを抜き、一気にシグーに飛び上がる。

アグニでは連射が効かない上にエネルギー消費も激しい。その上撃ちあいでは向うの方が連射が効く分こちらが不利になると思ったからだ。

シグーも負けじと腰のレーザー重斬刀を構え応戦する。実体剣だが片刃の部分がビームになってる剣だ。

二体が斬り合いビームのぶつかるたびに激しいフラッシュを生み出す。

 

――よし!このままストライクルージュも!――

 

アイがそう思った矢先だった。ナナの待機していた後方のジャンク山が爆発する。

 

「!?ナナちゃん!?」

「くぅぅ……びっくりした……」

 

たいしたダメージは無いものの吹き飛ばされた状況に狼狽するナナ、上を見るとRGストライクルージュが飛びながらこちらを狙っていた。

見抜かれていたか。もしくは途中で目標を切り替えたのか。いずれにせよこちらは狙われてる。どうするかと一瞬考えを巡らせるナナ。

 

「アイ、狙われちゃった以上こいつはアタシが相手をする!」

「ナナちゃん?!待って!まだ慣れてないのに!」

 

「大丈夫!自分から動かなきゃ慣れやしないでしょ!?」

 

通信でまくしたてる二人、立ち向かうという結論になったナナは、相手の至近距離で撃とうとライフルを構えそのままエールストライカーのスラスターを全開、高く飛び上がる。

 

――そこはサーベルがセオリーだよナナちゃん!――

 

そう思ったアイをよそにナナのストライクはルージュに迫る。ナナの予想では相手の腹部、コクピットにライフルを押し当て撃ち抜く、というものだ。

 

――後少し!――

 

ナナはそう思っていた。だが急にガクンと機体が止まる、

 

「え?!」

 

その瞬間を待っていた。とばかりにRGストライクルージュが右手に刀の様な武器、対艦刀を持ち落ちかけたエールストライクに斬りかかる。

エールのジャンプ飛距離が足りなかったのだ。向うはこちらがどれだけのジャンプ力を持っているのか、おおよそながら知っていたのだろう。

 

「ヤバっ!」

 

とっさにシールドを構え防ぐナナ、だがRGストライクルージュはそのまま対艦刀をシールドに切り付けた。

ルージュの刀身は塗装されており、バトル上の切れ味は増している。その所為でただ組んだだけのナナのシールドは真っ二つにされ、

エールストライクはその勢いで地面にたたきつけられた。

 

「ぅわっ!!」

 

ストライクの落ちた地点はアイの105ダガーから離れた場所だった。

 

「ナナちゃん!もう!邪魔しないでよ!」

 

アイはすぐさまナナの所に向かおうとしたが、シグーはしつこく追撃する、アイはレーザー重斬刀をビームサーベルで受けながらも右肩のガンランチャーとバルカン砲を発射。

シグーの頭部に当たりシグーの頭は爆散。致命傷ではないものの隙を作るには十分だった。

 

「もらった!!」

 

そのままアグニを展開させシグーのコクピットに『ガッ!』と思いっきり押し当てた。そのままアイはアグニを発射。零距離でビーム砲を発射されたシグーは腹に大穴が空いたまま沈黙した。

 

「よし!」

 

すぐさまナナのところに向かおうとするアイ。

 

 

一方ナナの方はRGストライクルージュが対艦刀を両手に一本ずつ構え地面に降りてくる。接近戦で確実に倒すつもりなのだろう。

片膝をついた体勢のエールストライクの前で対艦刀を振り上げるRGストライクルージュ、普通ならここで諦めるのかもしれない。だが……

 

「諦めるもんか!こんのぉぉ!!!」

 

エールストライカーのスラスターを全開にし、ロケットの様にRGストライクルージュに突っ込む。さすがに向こうも突っ込んでくるとは思わなかったのだろう。

ルージュはみぞおちにストライクは頭から突っ込み、そのまま後方のジャンク山に突っ込んだ。その衝撃で雪崩の様に崩れるジャンク。

 

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『なっ!』

 

タカコとムツミはナナのやり方に唖然としていた。

 

 

倒れたRGストライクルージュがジャンクに飲まれる一方でナナは無我夢中でスラスターを全開し崩れるジャンク山から脱出した。同時に駆け付けるアイの105ダガー 。

 

「ナナちゃん!大丈夫!?」

 

「アイ!?やった!アタシやったよ!一人で倒せた!」

 

初勝利に喜ぶアイ、だがその直後、ジャンク山が爆発し、中からRGストライクルージュが空に飛びだす。

ダメージ覚悟でジャンク山の内側から撃ちまくったのだろう。 ルージュのパーツは所々取れていた。

 

「え?!」

 

ナナが驚く声を上げる。RGストライクルージュはシールドに取り付けられたガトリング砲とI.W.S.P.のレールガンを二人に向けて撃ちまくる。

アイは逃げつつもエネルギー残量を確認する。アグニを何度も撃ったせいでエネルギー残量が少ない。あと一発撃てばエネルギーが尽きる。

向うもそれを狙っていて積極的に接近戦を仕掛けてこないのかもしれない。高度を変えないからだ。

 

「アイ……やっぱ……初心者のアタシじゃ無理なのかな?」

「そんな事ないよ。向うは射程ギリギリから狙ってるだろうから、せめてあそこまで飛べれば……」

「さっきアタシ飛ぼうとしたけどアタシ一人じゃ……ん?」

 

ナナはハッとした。ナナのエールストライカーなら後ちょっとまで届いた。ある程度の距離を保ってるのだろう。向うは飛んでる高度を変えない。

もう少し高く飛べればサーベルで切れるかもしれない。

 

――だけどさっきアタシが飛んだらギリギリ届かなかった……なにか足場があれば……――

 

周りはジャンクの山、乗ったらすぐ崩れるかもしれない。もっとしっかりした物があれば使えるかも……と、ナナは思いついた。

 

「アイ、そのランチャーでアイツを狙い撃ちできる?」

「?出来るけど、一発しか撃てないよ?」

「大丈夫!アタシに考えがある!」

 

 

ルージュのビルダーは逃げ回る二機が動きを止めるのを確認する。と同時に105ダガーがこちらをアグニで狙ってるのが見えた。直後、アグニが放たれる。

撃ったと同時にギリギリでルージュは回避。安堵するルージュのビルダー、その時だった。

 

「ナナちゃん!お願い!」

 

「ぅあああああ!!!」

 

ダガーの後ろで控えていたエールストライクが、105ダガーの肩を足場にし、そのままハイジャンプした。同時にナナはストライカーを最大に吹かす。

 

「いけぇぇっ!!!」

 

ルージュの目の前にビームサーベルを振り上げたエールストライクガンダムが飛んできた。

 

「!?」

 

「これで!!」

 

エールストライクはルージュ目掛けてビームサーベルを振り落す。対応の遅れたルージュは頭から真っ二つに切り裂かれ、爆散した。

 

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これによりバトルは終了。ナナは見事初陣を飾る事が出来た。

 

「ナナちゃん!やったね!初勝利だよ!」

 

「本当凄いよナナ!機転であのハイジャンプするなんて!」

 

アイとタカコがはしゃぐ、ナナのGポッドをアイが開ける。中でナナは汗びっしょりで呆けていた。

 

「あ……アイ、やったんだ……アタシ」

 

ナナはとにかく無我夢中だった。自分が勝ったというのを実感するのにアイに言われるまで気づいてなかったのかもしれない。

 

「ナナちゃん?」

 

「なんて顔してんの〜。折角の初勝利だってのに」

 

二人のあとからムツミが話しかける。

 

「どうだった……?ナナ……」

 

「ムツミ……色々大変な目にあったけど……結構いいかも」

 

自分で作った感覚、本気でガンプラバトルで遊んだ感覚、そして勝利した感覚。

改めてナナの心の中から湧き上がってくる。いずれもナナの心の中では初めて、もしくは久しく感じてなかったものだ。

もっと感じたい、ナナはそう思った。そしてその為には……

 

「もっとうまく作れるようになりたいな、もっと作り方教えて、アイ」

「ナナちゃん……。もちろん!一緒に楽しもうよ!」

 

自分にとって熱中出来るものが見つかって、更に友達との距離が近くなれた、ナナにとって今日はそんな風に感じた一日だった。

 

 

「うん……気に入ったみたいだね……。ナナ……」

 

よかった、と言わんばかりにムツミは微笑んだ。

 

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これにて第7話終了となります。

ついにガンプラビルダーズ本編のキャラと絡ませてしまった……

正直本編に水を刺してしまった設定なんじゃと不安もあります。反面これでこの話の最終目標が定まりました。

アイがガンプラビルダーズ公式主人公、イレイ・ハルと会い、バトルをする事です。

 

またこの小説で出したストライクを投稿しました。

http://www.tinami.com/view/638038

見てくれたら嬉しいです。

※写真のストライクは改造してましたが実際ナナの作ったエールストライクは旧キットそのものです。

説明
第7話「『始まり』のきっかけ」

ガンプラチーム「ウルフ」の挑戦は続く、そんな中ナナがガンプラに興味を持ち始めた。
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コメント
mokiti1976-2010さん まぁ特別出演みたいな感じですね。恋愛対象というより目標か憧れみたいな感じも含んでますので本当に恋愛となるかどうか…リナちゃんの登場は今のところ考えてません。(コマネチ)
ほほう…ハル君の登場とはちょっとびっくりです。という事は…アイのライバルはリナちゃんか!?(mokiti1976-2010)
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